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コミュニケーションとは『物語』を伝えること

マーケティング概論3
コミュニケーションとは『物語』を伝えること

 前回のコラムでターゲティングが企業の「選ぶ勇気」だと述べたが、ターゲットが決まったら、次はそのターゲットとどのようにコミュニケーションをとるのか、という問題に行き当たる。
 マーケティングにおけるコミュニケーションとは、単なる情報のやり取りではなく、「心を動かす物語」を伝えることだ。

 現代は情報があふれている。誰もがスマートフォンを手にしており、一日に目にする情報量は20年前の数十倍とも言われている。そんな情報過多の時代に、単に商品情報を伝えるだけでは消費者の記憶に残ることは難しい。消費者が覚えているのは「情報」ではなく、「感情を伴った物語」だからだ。

 例えば、ナイキはただ靴を売っているのではなく、「挑戦する勇気」を売っている。ナイキのCMや広告を見れば分かるように、その中心にはいつも「困難に立ち向かい、自分を超える」という物語が描かれている。この物語に共感した消費者は、単にスポーツ用品を買うのではなく、自分自身の物語にナイキのブランドを重ねるようになる。

 ここで重要なのが、ターゲットの心に刺さる物語を作るためには、ターゲット自身の価値観やライフスタイルを深く理解することが欠かせないということだ。ターゲットが何を求め、どんな感情を抱いているかを知らなければ、彼らの心に響く物語を描くことはできない。

 コミュニケーションの失敗の多くは、企業が伝えたいことと、消費者が聞きたいことが一致していないために起こる。企業が「我々の商品は高品質だ」といくら主張しても、消費者が知りたいのは「この商品が私の人生をどのように変えるのか」という具体的な物語だ。

 そのため、コミュニケーション戦略の基本は、消費者が主役の物語をつくることにある。企業が伝えるべきなのは、「我々の商品が優れている」という情報ではなく、「この商品を使うことで、あなたの生活がどのように豊かになるのか」という具体的なイメージなのだ。

 もう一つ忘れてはならないのは、現代の消費者が企業の一方的なメッセージに疑いの目を向けているということだ。
 そのため、「物語」は一方的に伝えるだけではなく、消費者と企業の双方向の対話を通じて生まれるべきである。SNSなどのオンラインツールを使って、消費者の声を聞き、その声を反映した物語を企業が再び発信するという循環が理想的だ。

 コミュニケーションとは、消費者の心の中に企業の物語を刻む行為である。人は情報ではなく物語を記憶し、物語に共感して行動するのだ。

次回の最終回では、この物語を通じて顧客との深い関係を築く、「カスタマーエンゲージメント」の重要性と具体的な手法について考えていこう。

※本稿のマーケティン概論は、REACH REACH『Bootcamp』での講義の一部を再編したものです。
※ MBS、博報堂、博報堂DYメディアパートナーズの3社が提供する『REACH REACH』では、戦略的な発信力向上プログラムの提供 · 発信情報の再発見と価値化のお手伝いをしています。

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