【記憶の再訪】ポルトからロカ岬へ、地の果ての風
【記憶の再訪】シリーズ、後編。
今回は、ポルトガル第二の都市『ポルト』を訪れた日のことから。
この旅のテーマは、とにかくリスボンを堪能することだった。
ただ、やはり少し欲が出る。せっかくポルトガルまで来たのだから、第二の都市『ポルト』にも足を延ばしておきたい。
そんなわけで、ポルトへは日帰り旅。
朝一の特急列車へと向かった。
ところが、ここで少しハプニング。
駅までの道を迷い、気づけば発車時刻が迫っている。
優雅なヨーロッパ列車旅のはずが、実際は朝から全力疾走。
滑り込むようにして、なんとか特急列車に間に合った。

車窓を眺めながらコーヒーを飲み、ようやく一息つく。
ポルトに到着すると、ドウロ川が待ち構えていた。

とりあえず向かうは、ポートワインの醸造所。

一般的なワインとは違う、濃厚で、容赦のない甘み。
とろりとした琥珀色の液体が喉を滑り落ちると、旅の緊張がゆっくりと解けていくのが分かった。

かつてワイン樽を運んだ木造船が、静かに波に揺れていた。


大航海時代からこの街の胃袋を支えてきたという、伝統の味。
一歩間違うと敷居が高くなるヨーロッパの街で、こういう大衆的な滋味が一番身体に馴染む。

腹を満たした後は、街を彩るアズレージョ(青いタイル)を眺めながら歩を進める。

青と白のコントラストが、午後の光に映えていた。
甘いワインと下町の味。わずか一日の滞在だったけれど、ポルトはどこか哀愁を帯びた優しい街だった。
さて、リスボンへ帰還します。
旅の本拠地に戻り、ディナーへと。
向かうは、テージョ川の対岸にある名店『PONTO FINAL(ポント・フィナール)』

目指す『PONTO FINAL』は、Netflixの番組『腹ぺこフィルのグルメ旅』を観て以来、ずっと憧れていた場所だ。
この旅における、密かな大本命でもあった。




テージョ川を眺めながら、熱々のリゾットを口に運ぶ。画面の向こう側の憧れだった場所は、期待を遥かに超える、特別な時間を私にくれた。
そして次の日は、ロカ岬へと向かった。
ロカ岬。
ユーラシア大陸の最西端。
かつて、引き篭もり同然の生活に閉じこもっていた少年が、大人になり、こんなに遠い世界の果てまでやってきた。
到着した瞬間、不意に感極まって、涙が出そうになった。


地の果ての風に吹かれながら、ただ海を眺めた。
思えば遠くに来たものだ。
あの日々も、この果てしない海へと繋がっていたのだと思えたら、胸の奥につかえていたものが、静かに波の彼方へ溶けていくようだった。
岬の一角に、石碑が立っていた。
ポルトガルの詩人、ルイス・デ・カモンイスの言葉が刻まれている。

「ここに地終わり、海始まる」
新しく始まるこれからの日々を祝福してくれるような、優しくて、力強い言葉だった。
(終)
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