MBA 小麦譚【第1章:不意な修羅場】
※MBA時代に実際に経験した出来事をもとにした、全13章の短期連載です。
📘 英語版はこちら
※お読みいただいているタイミングによっては、公開前のためリンクが開けない場合があります。予めご了承ください。
公開後はそのまま同じリンクでお読みいただけます。
→ [MBA Wheat Chronicles: Chapter 1]
大学院に入ったばかりの頃、私は生活を安定させるために
GA(Graduate Assistant)を取ろう と決めていた。
理由は実にシンプルだ。
普通のバイトより、はるかに時給が良かったからである。
きれいごとは抜きにして、完全に “生活のため” だった。
当時、「GPA が 3.2 以上なら採用のチャンスがあるらしい」という噂を耳にして、
私は勢いのまま学長室へ向かった。
そして真正面からこう言った。
「GA をやらせてください。」
よく考えれば、英語力にも自信がないくせに、
堂々とそんなお願いをしたものだと思う。
実際には、学長は私が何度もオフィスに来るのを明らかに嫌がっていた。
「GA になりたいのは君だけじゃないんだ。」
そんな嫌味を言われたこともある。
それでも食い下がったのは、他に頼れるものがなかったからだ。
最終的には、私の GPA が他の学生より高かった という事実には勝てなかったようで、
学長は担当教授のオフィスへ私を連れていくことになった。
ここまでは順調だった。
問題は、このあとだった。
◆教授室前で、まさかの “修羅場” を聞く
教授の部屋の前には、小さなコピー機の置かれた中継部屋があった。
「ここで少し待っていて」と言われ、私は立ち尽くしていた。
すると――
隣の部屋から、教授と学長の声が聞こえてきた。
いや、かなり大きな声が 聞こえてきた。
内容はざっくりしか分からなかった。
当時の英語力では知らない単語も多かったし、確信を持てなかった。
ただ、ひとつだけハッキリ分かったのはこれだ。
「学長、私が求めているのは“使える”学生です。」
「アメリカ人の学生が務まらないのに、留学生に務まるはずがないでしょう。」
……いや、その留学生、いま隣に立ってるんですが。
コピー機の前で私はただ固まっていた。
どう動いていいのかも分からなかったし、
何より、留学直後の不安と緊張で、状況を判断する余裕すらなかった。
◆初対面で放たれた言葉
しばらくして呼ばれ、教授の前に座ると、
最初に言われたのはこのひと言だった。
「本当に留学生に務まるのか?」
初対面である。
ただ、その言葉からは怒りというよりも、
「学生を本気で選んでいる」
そんな迫力が伝わってきた。
私はただ一言、
「やります。」
とだけ答えた。
それしか言えなかったし、当時の私にできたのはそれだけだった。
こうして私は GA に採用された。
◆後になって分かったこと
後になって思えば、
コピー機の前で聞こえていたあの緊迫したやり取りも、
初対面とは思えないほどの教授の真剣な眼差しも、
「一度、自分をまっさらにして再構築する留学生活」
その最初の一歩だったのだと思う。
【次回予告】
あの日の重い扉が開いたのは、まだ序章にすぎませんでした。
翌日、私は“覚えるか、去るか”という最初の試練に向き合うことになります。
第2章はこちら:第2章:20ドルの脅し
📘 英語版はこちら
※お読みいただいているタイミングによっては、公開前のためリンクが開けない場合があります。予めご了承ください。
公開後はそのまま同じリンクでお読みいただけます。
→ [MBA Wheat Chronicles: Chapter 1]
■ この記事出版されています
一連の記事にオリジナルの短編を追加した書籍版が絶賛販売中です。
もし一気に読みたいとおっしゃっていただける方は是非手に取っていただければ幸いです。
現在のMBA 留学の話に加え、大学時代にラグビーをやっていた頃の話の二段構えです。オリジナル短編7編は書籍の中でしか見られませんので是非、ご検討のほどよろしくお願いします。
紙版(1518円)
Kindle版(780円:)
いいなと思ったら応援しよう!
読んでくださってありがとうございます。
サポートは、今後の制作を続けるための大きな力になります。
無理のない範囲で、応援していただけたら嬉しいです。