MBA 小麦譚【第2章:20ドルの脅し】
※MBA時代に実際に経験した出来事をもとにした、全13章の短期連載です。
→ 第1話はこちら:第一話:不意な修羅場
GA に採用されたのはよかったが、そこで安心できたのは一晩だけだった。
というより、翌日からいきなり本番が始まった。
教授のオフィスに呼ばれ、椅子に座った瞬間。
開口一番、いきなりこう言われた。
「これを覚えられなかったらクビだ。」
机の上には、分厚いマニュアルと資料の山。
ページをめくるだけで、英語の海に沈むのがわかる。
“昨日採用されたばかりなんですが……?”
もちろん口には出さなかった。
教授は冗談ではなく本気の目をしていた。
◆厳しい。でも、理不尽とは違った
声は厳しいのに、不思議と嫌な感じはしなかった。
教授の言葉の奥には、
「誰の時間もムダにはしない」
という強い意志がにじんでいた。
彼は甘やかすタイプではない。
しかし怒鳴り散らすような人でもない。
学生が“適当に時間を消費する”ことを嫌う人だった。
だからこそ、
「覚えられなかったらクビ」
は脅しではなく、
“本気で向き合うなら最後まで面倒を見る”
という裏返しだったのだと、今になって分かる。
ただ当時の私はというと、
「本当に覚えられなかったらクビなのか……?」
という、わりとリアルな不安に包まれていた。
◆逃げ道のない中で腹をくくる
マニュアルを読み始めると、
知らない単語のオンパレード。
ページをめくるたびに、胃がキュッと縮む。
ただ、このときの私は “逃げ道” を持たなかった。
ここは日本ではない
相談できる相手もいない
頼れるのは自分だけ
その事実が腹の底まで落ちた瞬間、
自然とスイッチが入った。
「…やるしかない。」
教授の真剣さに触れたことで、
私自身もどこかで覚悟が決まったのだと思う。
◆こうして、GA 初日は“クビ宣告”で幕を開けた
インパクトの強すぎる初日だったが、
この出会いがのちに私の留学生活の軸になっていく。
“あの教授は本当の意味でのメンターだった”
そう言える日が来るなんて、
このときはまだ想像もしなかった。
【次回予告】
本番だと思っていたあの日は、実は“序章”にすぎませんでした。
丁寧に積み上げてきた手順の、その先で待っていたのは──静かに訪れる異変。
あの時はまだ気づけなかった“狂った歯車”の回転が、次の章で動き出します。
第3章はこちら:第3章:地獄のフロッピー
📘 英語版はこちら
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→ [MBA Wheat Chronicles: Chapter 2]
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