子どもの「まだ言葉にならない思考」をどう扱うか―小学校国語授業におけるグラフィックレコーディング実践―

東京学芸大学附属小金井小学校の国語授業にて、
グラフィックレコーディング(以下:グラレコ)を実施しました。
今回扱われたのは、まど・みちおさんの詩「地球の用事」。
ただし授業では、最初から「地球」という言葉は提示されません。
「〇〇の用事」と伏せられた状態で、
「これは誰の用事なんだろう?」
という問いから授業が始まりました。
1.対象者とねらい
【 対象者 】
東京学芸大学附属小金井小学校 5年生 34名
【 ねらい 】
詩を「作者の意図を読むもの」としてではなく、詩に触発された子ども自
身の世界を再創造すること
【 実施日時 】
2023年5月30日 50分間実施
2.なぜ国語授業にグラレコを取り入れたのか
本実践は、教職大学院での講座をきっかけに、小野田先生よりお声がけいただき実現しました。
打ち合わせの中で出てきたキーワードは「再創造」です。
物語や詩を読むことは、「正解を当てること」ではなく、
作品に触れた自分が、何を感じ、何を立ち上げるかに価値がある。
子どもたちが語りを受け取り、自分の中で意味づけし、新しい形として表現していく。
そのプロセスを支える手段として、グラレコを導入しました!
3.実践の流れとグラレコの役割
授業はまど・みちおさんの詩「地球の用事」を「〇〇の用事」という伏せられた状態で
「これは誰の用事なんだろう?」
という問いから授業が始まりました。

小野田先生が子どもたちの発言をつなぎ、
私が発言をグラレコとして可視化し、
さらにそのイメージをもとに思考が広がっていく。
対話 → 可視化 → 再思考
という循環が生まれる授業設計です。
4.グラレコによって視えたこと

①「わからないまま考える」ことの価値
この授業で印象的だったのは、すぐに正解が与えられないこと、
そして子どもたちが
「わからないまま考え続けている」状態
にあったことです。
まだ言語化されていない思考
イメージによる表現
他者のイメージによりゆるやかに変化する視点
それぞれの感じ方や想像が、かけらのような言葉として教室の中に現れていました。グラレコによって、それらが
似た考えのつながり
発言同士の関係性
思考の広がり
として視覚的に立ち上がってきます。
②再創造と居場所の形成
印象的だったのは、授業が「正解に収束しない構造」を持っていたことです。
教師は子どもの発言を評価するのではなく、
「そうだね」「じゃあこれは?」「どうしてだろう?」
と、次の思考を生み出す素材として扱っていました。
そのやりとりの結果、
発言が他者の思考を引き出す
イメージが共有される
言葉だけでなく絵(イメージを表す表現)でも参加できる
という状態が生まれていました。
グラレコは、「言語優位の子どもだけでなく、非言語で表現する子どもにも居場所をつくる」役割を果たしていたと感じます。
授業後の振り返りで、私は小野田先生に「自分のイメージで描きすぎてしまったかもしれません」と不安を伝えました。
すると先生は、
「黒木さんの感性と子どもたちの感性のコラボですから」
と言ってくださいました。
その言葉から、この場は一人でつくるのではなく、全員で再創造しているのだとあらためて実感しました。
5.教育におけるグラレコの可能性
今回の実践を通して明確になったのは、
グラレコは単なる記録ではなく、
思考のプロセスを可視化し、共有するツールであるという点です。
特に、
正解が一つではない問い
多様な解釈が生まれる場面
未言語の思考を扱う場
において有効です。
「地球」という言葉が現れた瞬間
最後に「地球」という言葉が提示されたとき、
点だった発想が、線になり、面になる。
一人で読んで創造したものが、誰かのイメージをきっかけに「どうしてだろう?」「こうかもしれない」と考え直すきっかけになっていたと思います。
これは、子どもたち自身が
「わからないまま考え続けたプロセス」があったからこそ生まれた理解でした。
6.おわりに
子どもたちは、常に何かを考えています。
ただ、それがすぐに既存の言葉になるとは限りません。
グラレコは、その「まだ言葉にならない思考」をすくい上げ、
場の中で共有できる形に変えていきます。
「考えるとはどういうことか」を問い直す実践として、
今後も継続していきたいと思います!
また
今回の実践は、公開研究授業に向けた試みの一つでもありました。
次回の記事では、公開授業本番でのグラレコ実践と、その前後で行ったグラレコ講座の様子を通して、さらに見えてきたことをまとめます!
研修・授業のご相談
小学校・中学校・高校・大学において、
グラフィックレコーディングを活用した
思考の可視化
探究・国語授業の設計支援
教員研修・校内研修
を行っています。
特に、
「正解が一つでない問いを扱う授業」や「対話を深めたい場」
において効果を発揮します。
※授業内でのグラレコ実施・共同設計のご相談も可能です。
ご関心のある方はお気軽にご相談ください。
