磁力が弱まった罪作りなマグネット
124番のルージュはいつも〈当たり〉で、機嫌のいいあたしにあなたが笑いかけたの。
あたしたちは一緒に暮らさないし、次いつ会えるかも分からないし、何より添い遂げるつもりもないのよ。
だからあたし、結婚式じゃなくてお葬式で流して欲しい曲を決めていたんだけど。
あなたが「今どきCDは棺に入れられないらしいよ」なんて意地悪を言う。ひどい人よね。
それなら何も持っていけないのね、と、少し、ほんの少し、生暖かい部屋が涼しく感じたわ。

ねえ。あたしの睫毛を秋桜色に染める、あのマスカラが廃盤になってしまうの。
新しいときめきより、安定感を選んだらいつかはこんな日が来るのよね。
あたしとあなたの関係だって、突然リニューアルされる恐れがない、とは言い切れなくって。
「大袈裟だな」と揶揄う、あなたの目尻の皺が、愛おしくて憎たらしくてやっぱり愛おしい。
