【ヨガインストラクターに取材】他人軸から自分軸へ、屋久島で出会ったヨガと生きる道
「自分のことは、ずっと後回しにしてきた」
責任感が強く、周囲の期待に応えようとし続けてきた会社員時代。
気がつけば心も体もすり減り
ふと立ち止まったとき、Yuriさんの頭に浮かんだのは
「このままでいいのかな」という漠然とした不安でした。
そんなときに決意した屋久島への一人旅。
そこで出会ったのは、美しい自然と「ヨガ」というこれまで知らなかった世界です。ストレッチやエクササイズだと思っていたヨガが、「生き方」だと知ったとき、Yuriさんの中で何かが動き始めました。
他人と比べず、自分を大切にすること。
ヨガを通して初めて「自分の感覚に正直でいること」の大切さを知った彼女は、「自分に優しくなれるヨガ」をコンセプトに、静岡県を中心に活動しています。
これは心をすり減らした一人の女性が他人軸から自分軸へと、今を丁寧に生きるまでの物語です。

Yuri
ヨガインストラクター。「自分に優しくなれるヨガ」をコンセプトに静岡県を中心に活動。ヨガとの出会いは、屋久島。心身のバランスを崩した時ひとりで訪れ、出会った人々にヨガを勧められる。ヨガとは無縁の人生だったが、屋久島で救われた経験から「体だけでなく心も整うヨガ」の魅力を多くの人に伝えたいと思い、ヨガインストラクターへ転身した。
<YuriさんのInstagram>
<ヨガレッスンの様子はこちら>
「このままでいいのかな」心と体がすり減るのを感じた
ーまずはこれまでのご経歴を教えてください。
Yuri:大学卒業後は、接客業を3年、その後は事務を約4年間していました。転職はしたものの、ずっと会社員として働いてきました。
ー会社員時代、どんなお気持ちで過ごしていましたか?
Yuri:やりがいは感じていたものの、将来への不安が募っていました。特に事務職は少人数体制だったので、責任も増え、忙しい日々でした。仕事に追われるうちに「このままでいいのかな」と、漠然としたモヤモヤが強くなっていったんです。
屋久島で2度も勧められたヨガ、自分を大切にする生き方に惹かれた
ーそんな中で、屋久島への一人旅を決意されたのですね。
Yuri:はい、当時はプライベートでも辛い出来事が重なって、かなり落ち込んでいました。「人生もうダメかも…」とまで思い詰めるくらい。そんな時、自分をリセットしたくて一人旅を思い立ちましたが、どこに行けばいいかも考えられないほどでした。たまたまテレビで屋久島の特集を見て「ここに行かなければ」と直感で思いました。
ー屋久島で印象に残っていることは何ですか?
Yuri:あの大自然ですよね。景色はもちろんですが、五感が研ぎ澄まされるような、空気や森の中の感覚が強く残っています。小さな野生の猿たちに出会ったり、鳥のさえずりを聴いたり…目に見える美しさだけでなく、自然の中に身を置くことで、感覚が戻ってくるような体験でした。

ー感覚が戻ってくる体験。その旅で「ヨガ」と出会われたと伺いましたが?
Yuri:現地で自然を満喫しようと思い、森林浴を専門としたガイドさんと一緒に、森へ入りました。その時ガイドさんから「ヨガ、やったことある?」と唐突に聞かれたんです。「ヨガ?」とは思いつつ、その時はそのまま民宿に戻りました。
民宿はご夫婦で営まれている温かな雰囲気があり、夕飯時になるとご夫婦は声をかけてくれました。「なんで屋久島に来てくれたの?」と聞いてくださったので、人生に疲れてしまったことを伝えると、そのご夫婦にも「ヨガやってみたら?」と言い、インストラクターまで紹介してくださいました。1日に2回も言われたので妙に気になり、一人旅を終えたあと、紹介されたヨガインストラクターのワークショップに思い切って参加してみたんです。

ー実際にワークショップに参加してみて、いかがでしたか?
Yuri:驚きました。「ヨガ=ストレッチ・フィットネス」というイメージでしたが、参加してみると、心のあり方や日々の過ごし方についても触れる内容で「ヨガは深くて広いものだったんだ」と気づきました。体を動かすだけじゃなく、自分自身と向き合う時間でもあって「これが私の求めていたものかもしれない」と思いました。
ーヨガの考え方や生き方の、どのような点に心を打たれたのでしょうか?
Yuri:ヨガの本質である「他人と比べず、自分を大切にする」ことです。私自身、いままで他人の評価や周囲の目を気にしてきたので、「自分を大切にする生き方」にすごく惹かれました。すぐさま、ヨガインストラクターになろうと思いました。
比べるべきは昨日の自分、体を知ることは心につながる
ーヨガインストラクターになることに、迷いや不安はありませんでしたか?
Yuri:全くありませんでした。ヨガ初心者なので、簡単な道ではないだろうと思いましたが、「やってみなければ分からない」という思いでした。
ー初心者からのスタートということですが、ヨガインストラクター養成講座で難しかったことはありますか?
Yuri:私のクラスは、プロのダンサーやバレリーナなど、体が柔らかい方ばかりだったので、圧倒されていました。私はヨガ初心者で、体も硬かいので、難しいポーズが出てくるたびに「私だけできない」と感じ、落ち込むことも多かったです。
ーその時、どんなふうに乗り越えましたか?
Yuri:ヨガでは「他人と比べない」「自分と向き合う」ことを学んだのに、その真逆の考えに陥っていることに気づきました。それからは、周りと比べるのではなく「前回の自分」と比べることを意識しはじめました。毎回少しずつ成長していれば、それでいい。そう思えるようになったのは大きかったです。

ーそうした学びを経て、Yuriさんご自身にどんな変化がありましたか?
Yuri:一番は「自分を大切にする」ことができるようになりました。以前は、自分の体や心の状態を深く知る機会もなく、どこか他人優先で、無理をしてしまうことが多かったんです。ヨガを始めてからは、まず自分の体や調子を知ること、そしてそれが心や考え方にも影響することに気がつきました。自分自身と向き合う機会が増えたことで、自分を認め、労われるようになってきました。
ー「自分を大切にする」とは、具体的にどんなことですか?
Yuri:たとえば、ヨガのレッスンで「今日はちょっと体調がよくないな」と思ったら、無理せず休む。「このポーズは得意だな」と感じたら、その感覚を素直に楽しむ。自分の状態を知るという小さな積み重ねが、いかに大切か実感しました。
また、ヨガと出会う前は、自分のコップに数的しか入っていないお水を、誰かに分け与えていて、自分はいつも喉がカラカラでした。でも今は、自分のコップにたっぷりと水を満たすことを意識しています。そうすることで、心に余裕が生まれ、自然と人にも優しくなれる。以前よりずっと健やかな気持ちで毎日を過ごせるようになりました。
どんな言葉に傷ついても、自分を見失わずに咲き続けたい
ーヨガを通して、心に残っている言葉や考え方はありますか?
Yuri:「蓮のように生きよ」という言葉です。これは、養成講座の中でふと学んだ言葉でしたが、とても印象に残っています。
蓮は泥水の中でしか育たないんです。どんなに泥がかかっても、その花びらは水をはじいて美しく咲きます。汚れや苦しみがあっても、すべてをまとわず、凛と咲く、そんな強さとしなやかさを持ちなさいという意味です。
この言葉に出会ってからは「どんな環境にいても、どんな言葉を投げかけられても、蓮のように自分を大切にして生きていきたい」と思うようになりました。辛い出来事やネガティブな感情があっても、飲み込まれるのではなく、自分自身の輪郭を保てるような、そんな強さを持っていたいです。

ー「ヨガ」と聞くと、どうしてもポーズのイメージが強いですが、Yuriさんが大切にしているヨガの本質とは?
Yuri:確かに、ヨガというとポーズを取るイメージが強いですよね。実際、身体を動かして柔軟性がついたり、体力がアップしたりするのも素晴らしい効果です。でも、ヨガの本質は、エクササイズではなく、心の状態を整えることです。実は、ヨガには図のような8つの段階があって、ポーズをとることはそのなかのひとつにすぎません。

ヨガは、本来「どう心と体に向き合うか」という考えを大切にするものであり、ポーズをとったり呼吸を整えたりしながら、「心の安定=サマーディ」(図の「深い瞑想状態)を目指します。ポーズがうまくできるかどうかよりも「自分を知り、心と体を丁寧に観察し整えること」を大切にしたいと思うようになりました。
もっと気軽にもっと自由に、ヨガを日常の選択肢に
ーこれからヨガインストラクターとして、どんなことを伝えていきたいですか?
Yuri:まずは「ヨガは特別な人だけのものではない」と伝えていきたいです。私自身、体が硬いことを気にしていましたが、実際はそんなことは問題ではありません。普段忙しくて自分のことを後回しにしがちな人、体や心に不安を抱えている人こそ、ヨガを通じて自分と向き合う時間を持ってほしいです。
ー今後、どのような活動をしていきたいですか?
Yuri:より多くの方にヨガを体験してもらえるように、オンラインクラスを開講したいです。外に出るのが難しい方や、子育て中の方にも自宅で受けてもらえるレッスンを考えています。参加のハードルを下げて、一人ひとりのペースを大事にできる環境を作りたいです。
将来的には、英語のヨガレッスンにも挑戦したいです。海外では瞑想やヨガは身近なものとして楽しまれているので、日本でも「難しそう」という先入観を取っ払い、自由に取り入れてもらえたらいいなと思っています。

ー最後に、新しいことに踏み出そうと思っているけど変化を恐れている方へ、メッセージをいただけますか?
Yuri:私もまだ道半ばですが、いま振り返ると「迷ったらやってみる」のが一番だと思います。進んでみて違うと思ったら、後戻りしたっていいんだと。進んでみないと自分に合うかどうかも分からないので、変わることを怖がらずに一歩踏み出してほしいです。私はヨガに出会って、自分を大切にするということがどれだけ大切か、わかるようになりました。変わることは勇気がいりますが、「やってみたい」という気持ちが浮かんだなら、それが自分の本音です。困ったら戻ればいいし、また新しい選択肢を探せばいい。そんなふうに、気軽に一歩を踏み出す人が増えてくれたら嬉しいです。

<YuriさんのInstagram>
編集後記
インタビューを終えたあと、私は何度も「自分を大切にするって、どういうことだろう」と考えました。
Yuriさんの言葉はどれも、繕ったものではなく実感から生まれたものでした。誰かの期待に応えようと走り続けた時間、ふと立ち止まって見上げた森の景色、昨日の自分と比べた瞬間。それはきっと、誰の人生にもある「立ち止まり」と「選び直し」ではないでしょうか。
ヨガは、特別な場所でなくても、特別な人でなくても始められる。そう感じさせてくれたYuriさんの物語が「変わりたい」とどこかで感じている誰かの背中をそっと押してくれますように願っています。
