【連載小説】声を聞かせて#23 intro 「イントロ」
イントロ
1.
「待って!」
ガラス窓がしびれるような大声で叫んだら、
「やかましい!」
と、母さんが言い返してきた。
「家ん中でそげ大声ば出すな!」
「置いてかれっで! 遊びに行ってくっで!」
俺は玄関から運動靴をかかえて戻り、掃き出し窓から放り投げた。ひやっとするコンクリのポーチの上で足をねじこむ。そうして母さんの返事も聞かず、表へ駆け出していった。
「おせぇど!」
通りの向こうで待っていた友達が叫ぶ。蝉が鳴いていた。
「行ったこたなか公園まで行ってみっど、あっちの!」
「家からなんか持ってく? 取ってくっか?」
「いらね!」
すでに息をきらしている。そこらじゅう走り回って集まったのだ。みんな同じクラス。腹心の友、というやつ。
「金は? 持った?」
「百円」
「おいは五百円あっで」
口々に叫び合った。
「行くど」
俺は思っていた。
——なにも怖くない、なにも考えない。ああ、こういうのなんだ。
——こういうのを、僕はずっとやりたかったのだ、と。
#24に続く……
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