静寂に恋をした苔庭ー江戸から続く「貞観園」/新潟県柏崎市
今日はちょっと告白をさせてください。
――私、お庭に恋をしてしまいました。
そのお庭というのは
新潟県柏崎市高柳町にある三大庭園のひとつ
貞観園(ていかんえん)
新潟の山あいに
こんな静けさの楽園があったなんて。
また絶対訪れたい!
そう思わせてくれた貞観園の魅力を
今日はたっぷり語らせてください。
貞観園ってどんな場所?

まずはちょっとだけ真面目にご紹介。
貞観園とは・・・
場所:新潟県柏崎市高柳町岡野町
形式:池泉回遊式庭園(池と築山、石組みなどが配置された日本庭園の様式)
歴史:江戸時代後期に、地域の名主だった家の庭として造られた
文化財:昭和に「国指定名勝」に指定、今も文化財として守られている
敷地の広さは山や周囲の景観も含めて
なんと約11ヘクタール。
そのうち実際に公開されている庭は
約2,300坪ほど。
ですが
後ろの山々まで含めてひとつの庭として
守られているのが貞観園のすごさなんです。

庭と聞くと
どうしても花や紅葉の華やかさを想像しがち。
でも貞観園の主役は 苔と 静寂。
一面に広がる苔庭と低くたおやかな木々。
そこに山の稜線まで含めた景色が溶け合い
まるで静けさそのものを眺めているような
感覚になります。
京都の西芳寺に次ぐ苔庭が新潟にあるなんて
新潟人として鼻が高い。
石段を登った瞬間から別世界

貞観園の始まりは
駐車場から少し歩いた先の石段から。
市街地から車で30分ほど走ってたどり着くと
外に出た瞬間、空気がふっと変わるんですよね。
ピンと張りつつ、やわらかい感じ。
朝の清々しさだけではない
何か特別な空気が流れているよう。
石段を一段
また一段と登っていくと――

木々を駆け抜ける風の音
サワサワと歌う葉っぱの音
くらいしか聞こえない。
静か・・・

特別なことは何も起きていないのに
なんだか特別な場所に来てしまった。
そんな不思議な高揚感と静けさに包まれながら
ゆっくりと貞観園の入口へと向かいます。

ただ流れる水音すらアートだった
入口に入る前に思わず足を止めたのが
脇を流れる小さな水路。

普通ならジャーと
BGM的に流れていくはずの水音。
ここではなぜか
景色の一部として聞こえてくるようで。

音だけを聞いているのに
目の前の緑や石の質感まで
一緒に立ち上がってくるような
不思議な感覚。
ここら一帯は別の時間が流れているようです。
入る前から伝わってくる空気感。すごいな。
苔庭の奥ゆかしさに、完全ノックアウト
貞観園の庭は派手さで攻めてきません。

弥彦公園や同じ柏崎市にある松雲山荘のような
「紅葉ドーン!」なインパクトとは対照的で
一面に広がる苔
雪の重みで低く育ったドウダンツツジなどの低木
ところどころに配された石と灯籠
…という、静かな構成。
でもね、その静けさが
ずるいくらい美しいんです。
建物の中に入り
縁側に腰を下ろして庭を眺めると――
秋の光がふっと苔の上に落ちた瞬間
緑がいくつもの層になって深呼吸を始めるみたいで。

庭のことに詳しくなくても はっきり分かる。
ここ、ただものじゃないーーー
ずっと見ていられる。
いや、ずっと見ていたい。
そんな場所に出会ったのは本当に久しぶりでした。
中には入れない庭なのにここまで心をつかんでくる理由
ひとつ大事なポイントがあります。
この庭、中には基本的に入れません。
入れるのは年に数回の特別開放のときだけ。
通常は母屋の中から
庭全体を「眺める」スタイルなんです。

行く前:え?中に入れないの?それってちょっと物足りなくない?
↓
行った後:ごめんなさい、完全に間違っていました。
建物の中から眺める庭って
本当に絵画のようなんですね。

窓枠や縁側がそのまま額縁みたいだし
苔、石、木、山のラインまでが
一枚の作品としてまとまっているし
そこに光と影だけがゆっくりと動き変化していく・・・

江戸時代、テレビも映画もなかった頃。
この庭に腰を下ろして
季節や時間ごとに変わる景色を眺めながら
美意識や感性を磨いていた人たちが
いたのかもしれない。
そう思うと目の前の静けさが
いっそう尊く感じられました。
数百年間、庭と山を守り続けるということ
貞観園がすごいのは
美しさだけじゃありません。

江戸時代にこの庭は作られたのですが
徳川幕府の庭師を招いて造園した――
そんなエピソードが残っているそうです。
幕府御用達の庭師!?そりゃすごいわけだ。
しかも名勝に指定されているのは庭だけではなく
庭から見える山々
庭園の背後にある杉林
庭と一体になっている景観
まるごとひっくるめて作品として
扱われているんです。
だからこそ山の一部も所有して
借景としての美しさを
守り続けているという徹底ぶり。
さらにすごいのが樹木と苔の手入れ。
雪で押しつぶされて低くなったドウダンツツジなどの低木
盆栽を地面におろしたような、独特の枝ぶり
一面に広がる苔

これらはすべて代々の当主と
今の保存会の皆さんが
手作業で手入れを続けてきたもの。
石は一度置けば変化しません。
でも、木と苔は生きているから
放っておけば形もバランスも崩れてしまう。
庭ってつくるより維持する方が大変。
そんな言葉がすっと腑に落ちる
圧倒的な説得力がそこにありました。

私たちが「きれいだなぁ」と
息をのんでいるこの景色は
誰かが何百年もかけて
ずっと大事にしてきてくれた
時間の結晶なんです。
一人で訪れると庭との距離がぐっと近くなる
私が訪れたとき
たまたまお客さんは私ひとり。
贅沢にも庭を独り占めする時間になりました。

人が少ないと
庭がすっと自分の傍に寄ってくる感じがするんですよね。
光の当たり方や苔のわずかな色の違い
遠くの山のラインとか
さっきまで気づかなかった石の存在感とか
そういったものが
じわじわと立ち上がってくる。
自然と自分だけの空間になったような
不思議な充足感がありました。
私が貞観園に恋した理由
私が恋してしまったのは
静かで 奥ゆかしくて
光景がとにかく美しくて
その背景に庭を守り継いできた人の
想いがびっしり詰まっている
そんな ここでしか味わえない時間 でした。
秋の貞観園は特別です。
静けさをまとった庭園に
秋の光がゆっくりと溶けていく。
また来よう。
季節が変わったら 別の顔を見に来よう。
そう心に決めて 庭をあとにしました。
新潟県観光協会公式ブログ「たびきち」でも紹介しています
柏崎三大庭園を巡った紅葉の旅の様子は
新潟県観光協会公式ブログ「たびきち」で
しっかりまとめてあります。
↓
貞観園のHPはこちら。
以上、静けさの庭に本気で恋した
新潟在住の綺麗道がお送りしました。
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同じく柏崎の松雲山荘の紹介記事はこちら↓
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