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恋の詩:縦読み詩💞秘密(ひ・み・つ)

縦読み詩

縦読み詩「秘密」

と晩だけの

せかけの強さ

らいと知っても

密やかに
ついていった夜


ショート・ストーリー「秘密」

ひと晩だけの約束だと、
何度も心に言い聞かせながら、
私はあなたの隣を歩いていた。

夜の街は思ったより静かで、
ネオンの光が濡れた道に滲み、
まるで夢の中みたいに揺れている。
あなたのコートの裾が風に揺れるたび、
その距離が縮まるのが、
少し怖くて、でも嬉しかった。

みせかけの強さで、私は笑う。
「平気だよ」
そう言えば、本当に平気な女になれる気がして。
でも心の奥では、今この瞬間が終わることを、ずっと数えていた。

小さな店に入ると、
やわらかな灯りと低い音楽が、
夜の続きを包み込む。
グラス越しに見るあなたの横顔は、
昼間より少しだけ近くて、
少しだけ遠い。
指が触れそうになるたび、息を止めてしまう自分が、
可笑しくて、切なかった。

つらいと知っても。
この恋が、どこにも行き着かないこと。
あなたには帰る場所があって、
私はただの「今夜」だということ。
それでも、あなたの声に名前を呼ばれるたび、
胸の奥に小さな灯りがともる。

夜が深まるほど、言葉は減り、沈黙が増える。
でもその沈黙は、冷たくなかった。
まるで「まだ終わらせないで」と、
お互いが言えずにいる合図みたいで。

店を出ると、月が雲の間から顔を出し、白い光で私たちを照らした。
あなたは歩きながら、何度か私の方を見る。
そのたびに、私は心の中で願う。

もし、この夜が、ほんの少しでも続いたなら。
もし、あなたの気持ちが、私に傾くことがあるなら。

密やかに。
誰にも聞こえない声で、私は祈っていた。
大きな奇跡じゃなくていい。
次に会う理由が、ひとつだけ欲しい。

ついていった夜。
それは、終わりを知りながら選んだ夜で、
同時に、始まりになるかもしれないと、どこかで信じてしまった夜。

別れ道で、あなたは立ち止まり、少し迷うように視線を落とす。
そして、ほんの一瞬、私の手に触れた。
「また、ね」
その二文字が、胸に深く刺さる。
約束でもなく、嘘でもなく、ただの言葉。
それでも私は、その中に、わずかな希望を見てしまう。

ひとりになった帰り道、夜風が頬を冷やす。
涙はこぼれそうで、こぼれなくて、
代わりに胸の奥で、小さな灯りだけが残っていた。

きっと、何も変わらないかもしれない。
明日になれば、あなたは日常に戻り、私は秘密を抱えて生きていく。
それでも
あの夜の「またね」が、嘘じゃないと信じたい。

ひと晩だけの、みせかけの強さの裏で、
私は今も、あなたが振り向く未来を、
ほんの少しだけ、待っている。


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