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AIが“見えない生命”を描くとき|ソフィア・クレスポ/エンタングルド・アザーズ|《Synthetic Natures》展を訪れて

某日、銀座三丁目・シャネルのビルにある〈シャネル・ネクサス・ホール〉で開催中の展覧会

Synthetic Natures ─ もつれあう世界:AIと生命の現在地」(ソフィア・クレスポ / Entangled Others)

を鑑賞してきました。


同日、別の展示を巡った流れで立ち寄ったのですが、会場に足を踏み入れた瞬間、空気の密度がふっと変わるような感覚があり、思わず立ち止まってしまいました。

ここで展示されている作品は、一般的な“現代アートの延長線”とは異なり、
テクノロジーとアートがちょうど臨界点で交差する瞬間を目の前にしているような体験でした。

作品の前に立つと、単に「新しいものを見た」という以上に、未来へ向けて視界がひらけるような強い衝撃があります。

Synthetic Natures ─ もつれあう世界:AIと生命の現在地

AIと人間の創造性が交わる場所

本展の中心となるのは、アルゼンチン出身で現在はポルトガルを拠点に活動するアーティスト、ソフィア・クレスポ

彼女はノルウェー出身の研究者と組むユニット “Entangled Others(エンタングルド・アザーズ)” としても知られ、2020年の結成からわずか数年で国際的な存在感を放っています。

彼らの制作は、AI、生命科学、バイオアート、デジタル工学など、本来であれば別々の領域とされてきた分野を軽やかに横断しながら進められます。

一般的にイメージされる「AIアート」とは異なり、
見えない生命の痕跡を再構築し、存在していない生物の“可能性”を可視化する試み。
展示されている映像や立体物は、手仕事感をあえて排しながらも、その精度とスケールに圧倒されるものでした。

ここには、クラフト的な質感とは異なる、
“テクノロジーが生む美しさ” が確かに立ち上がっています。

-self-contained 009.4 自己完結モデル (2023-2024)Entangled Others
-self-contained 009.4 自己完結モデル (2023-2024)Entangled Others

目に見えない生命をAIで“再生”するという試み

クレスポらが探究しているテーマのひとつに、
「人類がまだ知らない生命の構造」 があります。

海の深いところに潜む生物。
進化の過程で失われたかもしれない形。
あるいは、歴史の隙間に存在したはずの“見逃された生命”。

AIによる生成と、遺伝情報の解析を組み合わせ、
“存在しなかったが、あり得たかもしれない生命像”
を再構築していくプロセスは、単なるSF的想像ではありません。

それはまるで、

  • 生物進化の空白を埋める作業

  • 歴史に埋もれた微細な生命の発掘

  • 原始の地球がもっていたダイナミズムの再翻訳

のような行為にも見えました。

「私たちは圧倒的に“知らないこと”の上に世界を理解している」

作品を眺めながら、その事実が静かに胸に残りました。

TEMPORALLY UNCAPTURED 捉えきれなかったものたち(2023-2025)Sofia Crespo
TEMPORALLY UNCAPTURED 捉えきれなかったものたち(2023-2025)Sofia Crespo

分断されていた学問領域を、アートが再びつなぐ

生命科学、海洋生物学、AI研究、工学、植物学、データ解析──。
本来なら個別に語られる領域が、展示空間の中では滑らかに縫い合わされていきます。

かつて江戸の絵師たちが、観察・記録・科学的興味を含んだ表現を行っていたことを思い出しました。

アートは、さまざまな知の領域をつなぐ装置である。

その役割は、200年前も今も変わらないのだと感じます。

ただ、その“つなぎ方”が、現代ではテクノロジーの方向へ大きく広がっている──
今回の展示はそのことをはっきりと示していました。

12月7日終了「銀座シャネル・ネクサス・ホールで開催中の 《Synthetic Natures》を鑑賞してきました。。

個人制作と巨大スケール作品の“距離”について

圧倒的な技術とスケールに魅了されつつ、
ふと頭をよぎった問いがあります。

「この制作環境は、どうやって成り立っているのだろう?」

個人で作品を作るとき、素材・設備・時間・制作費など、すべてが自分の暮らしと直結しています。
一方で、この展示にある作品群は、企業協賛や専門技術者との協働、大規模な制作環境によって成立しているものです。

アートの制作条件そのものが、世界規模で大きく分岐しつつある。
その“距離”をまざまざと感じました。


国境を越え、言語を越え、アートはどこへ向かうのか

展示解説は英語で行われており、アーティスト自身も国籍や母語に縛られず活動拠点を選び、世界へ作品を届けていると感じました。

日本語だけで暮らし、日本語だけで作品を紹介する自分の環境が、むしろ特殊なのかもしれない。
そんな思いがふっと胸をよぎりました。


【私の他の活動】

♦Blog: [Karasawa Megumi Blog] (日々の気づきやアートに関する深い考察を、毎日発信しています)
♦Pinterest: [Megumi Karasawa] (作品のインスピレーション源や、絵画作品を共有しています)
♦BASE:[artmegumi](ポストカード、ZINEなど、販売はこちらから)

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Art.MegumiKarasawa 展覧会に足を運び、この記事を書くため数日かけて言葉にしました。もし何か残るものがあれば、サポートいただけると嬉しいです。 いただいたお気持ちは、次の作品の画材代として大切に使わせていただきます。作品制作と執筆の大きな励みになります。これからもどうぞよろしくお願いします。

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