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異世界ミートリア 【第3話】③ 食べる力を取り戻せ!元気もどりの豚汁


【前回のあらすじ】

肉神モツによって創られた国、異世界ミートリア。
魔王ムダニクスによって王国中の肉が封印され、人々の笑顔は失われてしまった。
肉と笑顔を取り戻すため立ち上がったのは、救国パーティー《タカーズ》。
自由すぎる4人の冒険が始まった。
ミートリア王国へ戻ったタカーズは、王国全体を覆う黒い影に気づく。

それは人々のため息や疲れが集まった、重く静かな影だった。
みーちゃんPが見つけた小さな光の正体は、
王国に住む癒し手・看護師うめこ。
うめこは、人々の顔色や声、ため息から小さな不調を見抜き、
それを「未病」と呼ぶ。
うめこが人々のため息を言葉に変えていくと、
黒い影は少しずつ弱まり始める。

その時、肉屋の空っぽだった木箱から黄金色の光があふれ出した。
木箱の中に現れたのは、ミートリア王国から消えたはずの豚肉。
黒い影の下で、王国に小さな希望が戻り始めていた。

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【第3話】③

食べる力を取り戻せ!元気もどりの豚汁


ミートリア王国から消えたはずの豚肉が、
黄金色の光に包まれて戻ってきました。


「豚肉……!」
「本当に戻ってきたのか……?」

人々の間に、ざわめきが広がります。

けれど、広場の人々は、
すぐには動き出せませんでした。

「うれしいはずなのに……」
「なんだか、体が動かない」

戻ってきた豚肉を前にしても、
人々の顔には疲れの色が残っています。

うめこさんは、静かにうなずきました。

「体が疲れきっていますね。食べる力が、まだ追いついていないんです」

うめこさんは、人々の顔色や声の小ささを見つめます。


小さなサインを、見逃しません。


「今、必要なのは、無理に食べさせることではありません。まずは、食べたいと思えるきっかけです」

ヒロパンダは、
戻ってきた豚肉をじっと見つめました。

「豚肉は、疲れた体にぴったりの肉だ。
体を動かす力を作る助けになる」 

「ヒロさん、ちゃんとした肉知識!」

「肉賢者として当然だ」


「まずはひと口で食べやすい大きさに切ろう。
疲れた体でも、無理なく食べられるようにな」

ヒロパンダが肉を切ろうとした、その時。

広場のすみから、
ひとりの女性がそっと歩み寄ってきました。


まきマネが顔を上げます。

「もちちゃん?」


そこにいたのは、王国に住むもちちゃんでした。

もちちゃんは、
小さな包みを大切そうに抱えています。

「……あの、元気は、急に戻ってくるものじゃないと思うんです」

もちちゃんは、少しだけ目を伏せました。

「でも、いい匂いがしたり、
あたたかいものをひと口飲んだりすると
……少しだけ、ほっとすることがあります」


うめこさんは、静かにうなずきました。


「そうですね。
今のみなさんには、その“少しだけほっとする”が必要です」

もちちゃんは、小さな包みを開きました。

中には、生姜とねぎ。
そして、小さな器に入った味噌がありました。


「生姜は、ぽかぽかします。ねぎは、ふわっといい香りがします」


もちちゃんは、味噌をそっと見つめます。

「味噌を入れたら、
なんだか“帰ってきた”みたいな味になりますよ」


「帰ってきたみたいな味……」

まきマネは、その言葉をそっとメモしました。

もちちゃんは、広場の人々をやさしく見つめます。

「まずは、ひと口でいいんです。
あたたかい。おいしい。ちょっと安心した。
そんな小さなしあわせを、みんなで思い出せたら……」


ヒロパンダが、真剣な顔でうなずきました。

「豚肉のうまみは、汁に溶けて広がる。
そこに生姜、ねぎ、味噌が合わされば、体にも心にも届く一杯になる」


「ヒロさん、料理人みたい……!」

「肉賢者だ。肉は、切り方からすでに料理が始まっている」

たかっち社長が、静かにサングラスを押し上げました。

「今日は、脱ぐ日ではない」


「え!社長、今日はパンイチクッキングしないんですか?」


たかっち社長は、真剣な顔でうなずきます。


「今日は、ゆるめる日だ」

そう言うと、たかっち社長は、
どこからともなく緑色のパンツを取り出しました。

「疲れている時におすすめのパンツの色は、緑だ」


「今、その話します!?」

「緑は、がんばりすぎた心を、ふっとゆるめる色。
疲れた時は、パンツも心も締めつけすぎないことだ」

「……悔しい。ちょっと今の流れに合ってる」



うめこさんは、うふふと口元をゆるめました。

「たしかに、リラックスすることは大切ですね」

もちちゃんも、やさしくうなずきます。

「安心できることも、小さなしあわせのひとつですから」

パンツの妖精が、たかっち社長の肩の上で嬉しそうにくるりと回りました。


広場に、くすくすと笑い声が広がります。


その声は、ため息ではありませんでした。
もう黒い影にもなりません。

ヒロパンダが、ひと口で食べやすい大きさに豚肉を切りました。

もちちゃんは、生姜、ねぎ、味噌をそっと用意します。

うめこさんは、薬草を少しだけ合わせました。

そして、たかっち社長が大鍋に火を入れます。


もちちゃんが、静かに言いました。

「これは、がんばるためのごはんじゃなくて、
ほっとするための一杯です」

しばらくすると、
大鍋から温かな香りが広場に広がっていきました。


豚肉のうまみ。
生姜の香り。
ねぎの甘み。
味噌のやさしい匂い。


その香りは、忘れかけていた「食べたい」という気持ちを、
そっと呼び起こしていきました。

人々の表情が、少しずつ変わっていきます。

ため息が、言葉に変わり、言葉がぬくもりに変わっていく。


もちちゃんは、小さなお椀に豚汁をよそいました。

「元気もどりの豚汁です。まずは、ひと口だけでも。ほっとしますよ」

そう言って、もちちゃんは、
先ほどの女性へお椀を差し出します。

女性は、両手でお椀を包み込みました。

「……あたたかい」

うめこさんは少し後ろで、
人々の表情を静かに見守っています。

女性は、ゆっくりと豚汁をひと口、口にしました。


「食べるって、こんなにほっとすることだったんですね」


その声をきっかけに、
さっきまで重たく沈んでいた空気が、少しずつやわらいでいきました。


ムダニクスは、重たい影をよろめかせました。

『ば……ばかなヘト……』

けれど、その声はもう、
王国の人々には届きにくくなっていました。


ヒロパンダが、腕を組みます。

「ムダニクスよ。肉は味わい、感謝するものだ」

たかっち社長も、静かにうなずきました。

「そして疲れた時は、パンツも心も締めつけすぎないことだ」


「え!結局パンツ!?」 

まきマネが叫ぶと、広場に笑い声が広がりました。

その声は、黒い影に吸い込まれることなく、
空へ明るく響いていきます。

ムダニクスはぐらりと揺れました。
けれど、まだ消えません。


そのころ、広場のはずれにある屋根の上では、
一羽のフクロウが静かに羽をたたんでいました。

誰も、その存在には気づいていません。

フクロウは、元気もどりの豚汁を囲む人々を、
じっと見つめていました。

まるで、小さなしあわせが王国に戻り始めたことを、
どこかへ知らせようとしているかのように。


「……ホゥ」

小さな鳴き声が、黒い影のすき間に消えていきます。


その声に、みーちゃんPだけが、ふと顔を上げました。

「……うん」

みーちゃんPは、小さくつぶやきます。


まきマネが気づいて、首をかしげます。

「みーちゃん?」


けれど、みーちゃんPは、
にこっと笑うだけでした。

元気もどりの豚汁を囲む広場に、
久しぶりの湯気と笑顔が戻り始めていました。


✨第3話④へつづく✨

現在の物語:8,903字
目標:15,000以上
残り:6,097字


📋️まきマネの覚書

3話③:2,537字
現在の物語:11,440字
目標:15,000以上
残り:3,560字

まだ5話は書きたい!!🙌笑

創作大賞 エンタメ原作部門
〆切まであと⏰ 24日!

第3話 登場人物

もちちゃん

もちちゃんは、ミートリア王国に住む、小さなしあわせを見つける人です。

いい匂い。あたたかい湯気。
ひと口のおいしさ。ちょっと安心する気持ち。

誰かが見落としてしまいそうな日常のぬくもりに気づき、
人々に「食べるって、ほっとすることだったんだ」と思い出させてくれます。

もちちゃん、ありがとうございました💖



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