彼女の記憶が変わっても、あの思い出は永遠
冬になると、ふと胸の奥に灯るような思い出がでてきます。
それは、僕が人生で初めて「好きな人と過ごす幸せ」というものを知った冬の記憶です。
学生時代は、勉強や部活、アルバイトで忙しく、僕は誰ともお付き合いできませんでした。
そのため、24歳の冬に初めて彼女ができた時はとても嬉しく、遠距離恋愛でしたが、日々充実していました。
25歳の冬には、彼女の方から会いに来てくれて、観光したり、初めて夜を一緒に過ごしたり、旅館に泊まったり、自宅で手料理を振舞ってくれたり、たった数泊でしたが、その旅行中に過ごした時間が、人生で一番幸せだと感じました。
旅行最終日、彼女をバスで見送った後、僕は家までの帰り道、幸せで涙が止まりませんでした。

その2年後、ずっと希望していた彼女の住む地元へ異動が決まり、いつでも会いに行けることになりました。
「今までずっと遠距離で、
寂しい思いをさせてごめんね。
でも、これからは、
ずっと近くにいるから、大丈夫だよ」
ですが地元に移動してから1か月後、彼女は病院に運ばれました。

ある日の夜、彼女は突然裸足のまま家を飛び出して、道路に向かったそうです。
彼女は急に心のバランスを崩し、幻覚や幻聴に苦しむようになったのです。
医師からは統合失調症だと告げられました。
実際、病院で会った彼女は、手に打たれていた点滴を毒だと思って、無理やり注射を引っ張っていました。

「ねぇきいて、さっきあのお医者さんが、点滴に毒入れた話をしてたの聞いたの」
「あのね、私のお父さん、裏で暴力団と繋がってるの」
などと、真顔で僕に耳打ちで話していました。
その日以来、彼女とは連絡がつかなくなり、やっと連絡が取れて会えたのが4か月後でした。

久しぶりに会った彼女は、少し痩せていて、病院の時よりも落ち着いていましたが、かつて僕と過ごしたあの旅行中での思い出は、僕の記憶とは対照的に、ネガティブな内容に変わっていました。

最終的に彼女とは、お互いのために別れることになりました。
今後はもう、お互い会うことはないと思います。
あの旅行中に感じた、彼女との全身全霊で感動するような経験は、僕1人が忘れずに覚えている思い出になりました。

でも、当時のあの頃の僕たちは、確かにお互いが、幸せな時間だと感じて過ごしていた。
その事実は変わりません。
彼女の記憶が変わっても、僕は忘れない。忘れられない。
人生で一番幸せだと感じたあの思い出は、僕の心の中で生き続ける贈りものであり、永遠なのです。

追伸
こたらさん、分析ママさん。
素敵な企画をありがとうございました。

