「公爵様に無礼を働いた結果、嫁ぐことになりました」第1話 #エンタメ原作部門
【あらすじ】
魔法の才能が開花せず、皇女の爵位を剥奪されて使用人に成り下がっていたモモエリア。
不幸な境遇にありながらも人情を失うことなく前向きに過ごしていたモモエリアは負傷した子猫を助けるためにクロフォード公爵に無礼を働くも、彼に臆せず異見した人柄を買われて嫁ぐことになる。
幼少期に両親を失い、皆から恐れ慄かれて、愛に飢えているクロフォード。両親がいなければ恋愛経験もない彼は、不器用ながらもモモエリアと愛を育もうと試みる。
普段は俺様系だけど恋愛に初心な公爵と、どんなときでも心に素直に前向きでありつづける元皇女のロマンスファンタジー。
【第1話・キャラクター表】
〇モモエリア・(ライベル)『女/18歳/ピンク髪』
・伯爵家のひとり娘。
幼少期から魔法の才に恵まれず、それを見かねた両親が一族の恥だと爵位を剥奪した。現在は使用人に成り下がっており、魔法の才に恵まれた元使用人のプラリネが爵位を授かり実の娘のように暮らしている。
明るく前向きで、多くの人に好かれている。
魔法は使えない。と本人は思っているが、遅咲きなだけで実際は特級魔法使いに匹敵する実力を秘めている。
〇クロフォード・サディエ『男/22歳/金髪』
・〝獅子王〟のふたつ名を冠する公爵。
凄絶な戦いぶりと高慢な人柄から皆に慄き恐れられている。
いわゆる俺様系だが、愛に飢えていて人情に篤い人となりである。
自分と対等な立場で話せる誰かをずっと欲している。恋愛が絡む場面になると、人が変わったように後手にまわる。
生まれつき魔法を使えない体質である。しかし、そのハンデを感じさせないほど剣術の腕が立つため、皆からは特級魔法使いだと勘違いされている。
〇カルデス『男/19歳』
・クロフォードの御傍付き。
過去にクロフォードに救われた恩があり、彼のためならなんでもする心意気でいる。
クロフォード以外には基本的に心を開かない難儀な性格。準一級魔法使いである。
〇シクリー『女/28歳』
・元モモエリアの御傍付き。
モモエリアの廃位に異議を唱えた結果、使用人をクビにされ現在は医務官としてラプティア王城に従事している。
モモエリアにとって母親のような存在。二級魔法使いである。
【第1話】
〇ラプティア王城【中庭】(現在)
鼻唄交じりに花に水やりをする使用人。
草葉の陰で、脚をケガした猫を発見する。
治療するために猫を抱きかかえて宮廷に駆け出し、曲がり角でモモエリア(公爵夫人)に衝突する。
使用人とモモエリアが揃って尻持ちをつく。
使用人「す、すすすいません……!」
涙目で青ざめ、猫を抱き締める使用人。
視線の先では、モモエリアの隣にいるクロフォード(公爵)が殺気を放っている。
クロフォード「俺のモモにぶつかっておきながら、謝罪した程度で許されると思っているのか?」
使用人「ひぃぃ……! ごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ!」
使用人(M)「クロフォード・サディエ」
使用人(M)「〝獅子王〟の名を冠する冷徹無比の公爵」
使用人(M)「今はもっぱら戦場に出向いてないって聞いていたけど、まだまだ現役バリバリの眼をしてるじゃないの……!」
モモエリア「そんなにペコペコしなくていいわよ。クロフォードも威嚇するのはよしなさい」
使用人「モモエリア様……」
使用人(M)「モモエリア・サディエ」
使用人(M)「ちまたで〝聖母〟と呼ばれている心優しき公爵夫人」
使用人(M)「こうして間近で目にするのははじめてだけど……綺麗な人だなぁ」
クロフォード「……(無言で睨み付けている)」
モモエリア「やめなさい」
クロフォード「……(無言で視線を切る)」
モモエリア「うん、良い子ね」
顔を赤らめてやや頬を緩めるクロフォード。
使用人(M)「なんだか見ちゃいけないものを見てしまった気分だわ……」
使用人が抱きかかえる負傷した猫に気づくモモエリア。
回復魔法で猫の傷を癒す。
猫がモモエリアに飛びつきぺろぺろと顔を舐める。
モモエリア「あはは、くすぐったいわ」
猫の模様を見て、なにかに気づくモモエリア。
モモエリア「……あなた、もしかして」
使用人「どうかされましたか?」
モモエリア「あなたはこの子を助けるためにわたわたしていたの?」
使用人「あ、はいっ。……なんて言い訳がましいですけどね」
目を逸らす使用人の手を包み込み、笑顔を向けるモモエリア。
モモエリア「あなたのおかげでこの子の命は助かったの。もっと自分を誇りなさい」
使用人「……私を罰しないのですか?」
モモエリア「しないしない。公爵に無自覚に無礼を働いてしまうほど誰かの命のためにわたわたできるのは立派なことだもの。ね、クロフォード?」
クロフォード「なにを言っている。俺のモモを傷つけたんだ。重刑を課すに決まっているだろう」
青ざめる使用人。
モモエリア「ね?(にぱっと笑顔)」
クロフォード「……はぁ。モモ、その笑顔でどんなワガママも押し通せると思っていないか? 俺とて公爵としての矜持が――」
モモエリア「ね?(満面の花が咲くような笑顔)」
クロフォード「……今回は特例だ」
モモエリア「だそうよ」
使用人「あはは……」
使用人(M)「笑顔の暴力……」
手をぶんぶん振り去って行くモモエリア。
使用人「評判通りの素敵な御方だったなぁ」
猫とじゃれ合う使用人。
使用人「……けど、信じられないなぁ」
使用人「モモエリア様が元は私と同じ使用人だったなんて」
猫をアップして、場面が切り替わる。
〇ラプティア王城【中庭】(10年前)
脚をケガして苦しそうにしている猫。
モモエリアは猫の傷を魔法で癒そうと試みるが成功しない。
モモエリア「……だよね」
不発に終わる魔法を見て苦笑する。
テロップ「モモエリア/使用人歴1年」
モモエリア(M)「魔法が使えない自らの不才に対して苛立ちを覚えたことはない」
モモエリア(M)「だけど、誰かが怪我をしてしまったときは切に思う」
モモエリア(M)「すぐに癒してあげられる魔法が使えたらいいのに、と」
モモエリア「……なんて魔法が使えないことを言い訳にするのは卑怯よね」
モモエリア(M)「生まれつき魔法は使えないけれど、わたしには魔法にも勝る恵まれたものがいくつもある」
猫を脇にかかえ、大急ぎで医務室を目指すモモエリア。
モブA「わっ!?」
モモエリア「驚かせてしまってごめんなさい!」
モモエリア(M)「思い通りに動く手足、違和感なく刻まれる鼓動」
モブB「あ、モモ! あのね、今日の仕事なんだけどね」
モモエリア「ごめん、今はちょっと手が離せないから後にしてくれる?」
モブC「あんたってばいつも騒がしいわね」
モブD「それがモモのアイデンティティじゃない」
モモエリア(M)「気兼ねなく話せる使用人仲間たち」
階段を飛び降りるモモエリア。
モモエリア(M)「わたしは不幸以上の幸せに恵まれている」
医務室に到着する寸前の通路。
モモエリアは曲がり角でクロフォードと衝突する。
モモエリアだけが尻持ちをつく。
それを冷徹に見下ろすクロフォード。
モモエリア「いてて……ご、ごめんなさい! 怪我はないかしら!?」
モモエリア(M)「わ、すごい身分が高そうな人だ……」
カルデス「貴様、この方が誰か――!」
手を伸ばして側付きを制すクロフォード。
クロフォード「おい女」
モモエリア「はい、なんでしょうか!?」
モモエリア(M)「良かった。猫ちゃんにケガはないみたいね」
クロフォード「この期に及んでその猫を気に掛けるか。自分の身を案じようとは思わないのか?」
モモエリア「すいません、急いでいるので話が長くなりそうなら後からにしていただけませんか?」
まっすぐクロフォードの目を見て異見するモモエリア。
クロフォードは目を剥く。
カルデス「き、貴様どれだけ無礼を働けば……!」
モモエリア「あ、旦那様、そのままじっとしてて」
クロフォードの髪についていた桜の花びらを手に取り、くすっと笑うモモエリア。
モモエリア「これで一段とカッコよさに磨きがかかったわ」
クロフォード「……お前は俺を恐れないのか?」
モモエリア「うん、恐れないわよ。威圧的な空気を纏っているけれど、瞳に優しさが滲んでいるからね」
モモエリア「では、わたしはこれにてドロン!」
軽く会釈し、医務室に飛び込むモモエリア。
カルデス「呆れた。あの女、王城務めのくせにクロフォード様のことを知らないのか?」
クロフォード「カルデス」
カルデス「はっ、なんでしょう?」
クロフォードは微笑を携えている。
クロフォード「あのピンク髪の女について調べろ」
カルデス「はっ! ……え、今の女でございますか?」
クロフォード「あぁ。少々興味が湧いた」
〇ラプティア王城【医務室】
魔法で猫の脚をケガを治癒するシクリー。
シクリー「ふぅ。これでよしっと」
元気になり、モモエリアに飛び掛かって顔をぺろぺろする猫。
モモエリア「あはは、くすぐったいわ」
シクリー「酷いことをする人もいるものです。今、私が治癒した怪我は明らかに人為的なものでした。モモエリア様が偶然見かけたからよかったものの、そうでなかったら出血多量で命を落としていたでしょう」
モモエリア「だってさ。よかったわね、わたしと出逢えて」
モモエリアが頬擦りすると、機嫌を損ねて猫が顔をひっかく。
瞳をうるうるさせるモモエリア。
それをすぐに治癒するシクリー。
シクリー「明日はプラリネ様の婚約日ですね」
モモエリア「そうね。例の公爵様が噂に反して心根のあたたかい御人なら良いのだけど」
シクリー「……ほんとうにお優しい人です。私は貴方こそが皇女になるべきお人だとつねづね思っております」
モモエリア「あはは、わたしが皇女の地位からおろされて一年経つのに未だにそんなことを言うのはあなたくらいよ?」
モモエリア(M)「一年前まで、わたしはラプティア王国の皇女だった」
モモエリア(M)「それを覚えているのは、今となってはごく少数の人だけなんだけど」
モモエリア「それでいつになったらモモって呼び捨てで呼んでくれるの?」
シクリー「私はこの身が尽きるまで貴方様をお慕いする所存です」
モモエリア「もう、頑固なんだから」
窓の外を見つめ、ふとなにかに気づいた素振りをみせるモモエリア。
モモエリア「ねぇシクリー」
シクリー「はい、なんでしょう」
モモエリア「プラリネ様が結婚するクロフォード公爵って金髪だっけ?」
シクリー「はい。獅子のように気高い逆立った金糸の髪が特徴的だとお伺いしております」
モモエリア(M)「獅子のように気高い逆立った金糸の髪……」
モモエリア「瞳の色は、湖畔のような青?」
シクリー「えぇ。それがどうかされたのですか?」
モモエリアの脳内で、さっきぶつかった男が公爵というイメージが結びつく。
モモエリア「……なんでもないわ」
モモエリア(M)「あれ? じゃあもしかしてさっきわたしが無礼を働いてしまったのって……」
だらだらと冷や汗を垂らすモモエリア。
勢いよく開かれる医務室の扉。
険しい面持ちのカルデス。
カルデス「ピンク髪、ちょっと付き合え」
モモエリア(M)「あ、わたしの人生積んだかも」
モモエリア(M)
「モモエリア・ライベル
元・ラプティア王国皇女
現・ラプティア王城使用人」
モモエリア(M)
「その肩書きでいられるのが今日で最後になるなんて。
このときのわたしは思いもしなかった」
第1話 -FIN-
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