[ Human ] 三つの魔術 (白・黒・灰):後編
はじめに
本稿は『三つの魔術:中編』の続きとなります。未読の方は、まずは中編からお読みくださいまし。本稿はシリーズの核心。しっかり仕上げましょう!
では早速中編の続きから始めましょう。
三つの魔術

魔術というものは単なる迷信や超常現象ではなく、我々の日常生活における「エネルギーの使い方」や「生きる姿勢」そのものの定義です。マンリー先生曰く、魔術には「白」「黒」「灰」の三つの形態があり、それらは我々が持つ知識や技術、そして内なる生命力をどのような動機で用いるかによって決まるとされています。
要するに、魔術というものをどのような動機に基づき行使しているかにより三つの魔術に自動的に分類されるということ。
したがって、定義を知らずに魔術を行使しますと、自分は白だと思っていても実際は黒を行使していたなんてことになりかねません。特に厄介なのが灰魔術。白魔術と黒魔術はあからさまに分かりますが、白のようでいて黒い灰色の魔術は知らず知らずのうちに使用してしまいます。ゆえに、古代の智慧に触れる者はまず先にこれら三つの魔術の定義を知る必要があります。
ではそれぞれの定義と動機を見てゆきましょう。
魔術は行使する者の動機により三つに色分けされる
・その定義
白魔術: 神聖なエネルギーを人類への奉仕のために正しく用いる
「使用(Usage)」黒魔術: 知識や力を私利私欲や他者の支配、破壊のために用いる
「悪用(Abuse)」灰色魔術: 小さな善行で大きな欠点を覆い隠し、自己を正当化する
「誤用(Misuse)」
ではここから上記の三つの魔術の詳細を順に述べてまいります。
白魔術

・無私の奉仕と調和
白魔術の根源にあるのは、「奉仕」と「無私」の精神です。これは、自分個人の利益や名声のためではなく、他者や人類全体、さらには宇宙の調和のために自身の能力やエネルギーを捧げる生き方を指します。わたくしがCampのメンバーに何度も繰り返し「利他的に」と申し上げている理由がここにあります。詳しく見てみましょう。
・白魔術の動機と力の源
白魔術師にとっての「智慧」とは、個人の所有物ではありません。それは、自分自身の内側に宿る「神聖なエネルギー(精神の力)」を自覚し、その源(道徳的実態の宇宙)にふさわしい使い方をすることから生まれます。
建設的な目的
常に何かを築き、癒やし、向上や発展させるために力を使います。誰かを傷つけたり、不当に貶めたり、自己利益のために魔術を行使したりすることはありません。自己犠牲を伴う愛(御大切)
御大切や希望、信仰に基づいた献身的な奉仕こそが、白魔術の具体的な形です。これは母親の子に対する見返りを求めない「無償の愛」の表現でもあります。
・現代における白魔術
現代において白魔術は特別な儀式の中にではなく、我々の「選択」の中に現れます。例えば、自分の才能を社会の課題解決のために使うこと、見返りを期待せずに困っている人を助けること、そして何より、自分自身の内面を磨き、より良い人間であろうと努めること自体が最高の白魔術なのです。
『象徴学入門』(神話・宗教)でDecodeした数々の密儀神話の本質が、どれもこれも自己変容を促すものであったのはこのためです。Cavalier Campの『三つの誓い』の本質もまた同じ。したがって、現代において悪と定義される秘密結社の秘密とは、より良い人間になろうとする自己変容のことであり、これを嫌がるのは他ならぬ支配層ということ。魔術というものを黒一色に一括りにし悪と定義づけ、一般大衆が触れられぬようにしたのです。精神的開放をさせないために。
黒魔術

・私欲による濫用と破壊
一方で黒魔術は、神聖な知識を「破壊」や「支配」のために悪用することを指します。これは決して過去の物語ではなく、現代社会においてはより高度で、より巧妙な形で存在しています。
・黒魔術の動機と本質
黒魔術の根底にあるのは「力への渇望」であり、報復を顧みない利己的な目的です。簡潔に申し上げれば「利己的な心」からくる「私的な悪用」です。
私欲の追求
個人の権力、富、名声を獲得するために、他者を犠牲にしたり、恐怖や心理的操作によって人々をコントロールしようとしたりする行為です。現代においてはTVのCMや雑誌の広告、SNSのインフルエンサーなどが最たる例。マーケティングと呼べば聞こえは良いですが、実際は人間の心理的脆弱性を突き行動をコントロールする黒魔術です。知識の濫用
現代の科学技術や高度な教育は、破壊的な武器の開発や経済的な搾取に利用されており、これは現代版の黒魔術といえます。数学や物理学、心理学や医学など、その使い道が他を傷つけるものであれば、それはかつての妖術師と同じ黒い性質を持つことになります。
・現代の黒魔術
上記でも触れましたが、現代の黒魔術は古びた儀式の中にあるのではなく高度に洗練された科学技術や経済システムの中に潜んでいます。魔術というと古き時代を連想してしまいますが、古き時代から存在する魔術は時代とともに進化しております。そして、それぞれの時代を支配した者たちは魔術を黒く黒く研ぎ澄ましてきたため、その本質は、生命の尊厳や宇宙の調和を無視し、自らの欲望を達成するために他者や環境を犠牲にする「知識の組織的な濫用」になってしまいました。
たとえば、人類を豊かにするために発展してきた科学的知見を、大量破壊兵器の開発や他国を支配するための軍事技術に転用する行為は現代における黒魔術の典型的な姿です。本来は生命を育むべき知性が破壊のために使われるとき、それはかつての妖術師が放った呪いよりも強大で悲劇的な影響を世界に与えます。
……というかもうすでに悲劇的な影響を与えられ100年近くが経ちますから、今現在カオス真っ只中なのですよ。
破壊的な技術の追求
特徴
自然の摂理を解明し人類を豊かにするための科学(白)を、大量破壊兵器の開発や他国を支配するための軍事技術に転用することです。
本質
「何ができるか(技術)」が「何をすべきか(倫理)」を追い越してしまい宇宙の法則(道徳的実態)を軽視したとき、それは科学という名の黒魔術へと変貌します。
また、現代のデジタル社会においては、アルゴリズムを駆使して人間の恐怖や怒りといった低い次元の本能を刺激し、無意識のうちに消費行動を取らせたり思想を操作・変容させる行為もまた、相手の自由意志を奪うという意味で黒魔術的であると言えます。
アルゴリズム(SNS)による精神的支配
特徴
人間の恐怖、怒り、依存心といった低い次元の本能を刺激し、特定の思想に誘導したり、不要な消費を煽ったりする行為。
本質
相手の自由意志を尊重するのではなく、無意識の弱点を突いて「自分の思い通りに動かす」という動機は、かつての黒魔術師が他者を呪縛しようとした構図と全く同じです。
さらに、他者がどのような苦境に立たされようとも、自らの利益さえ最大化できれば良いと考える極端な利益至上主義も同じ「黒」です。強烈に搾取的なビジネスモデルや独裁的な階級社会システムは、宇宙の富を循環させるという自然の法則に真っ向から背き、他者のエネルギーを不当に奪い取って自分の手元に固定しようとする強欲な黒魔術そのものです。しかしながら現代人は、「お金を持ってさえいれば素晴らしい」という常識に染まっておりますから、黒いものが白く見えおかしな常識に疑念すら持てません。
利益至上主義
特徴
過剰な労働、環境破壊、あるいは公衆の健康を損なうと分かっていながら利益のために情報を歪曲・隠蔽するような行為です。
本質
宇宙の富は循環するべきものであるという法則を無視し、他者の生命エネルギー(労働力や生存権)を不当に奪い取り、自分の手元に固定しようとするはっきりとした黒魔術です。
権力による恐怖政治と扇動
人々の不安を煽り、特定の集団を敵として設定することで権力を維持する政治的手法です。
特徴
真実を歪め憎しみのエネルギーを組織化し、自分の支配基盤を固める行為。
本質
統合ではなく「分断」を、平和ではなく「闘争」を力の源泉にする生き方です。
・黒魔術がもたらす報い
これら黒魔術的な生き方は一時的な繁栄をもたらしますが、それには必ず「自己破壊」という報いが伴います。他者を道具としてしか見られない精神は最終的に共感能力を失い、自らが生み出した負の連鎖の中に自滅していく運命にあるのです。宇宙の法則に背きエネルギーを濫用する行為は、最終的にその行いをした本人に「報い」となり返ってきます(自業自得・因果応報)。それは外部からの処罰というよりも、自らが生み出した負のエネルギーによって、自身の精神や生活が退廃し、似たような人種を引き寄せ、苦しみの中に沈んでいくという必然的な結果(因果律)です。

自業自得の因果律
自分が食べることになる尻尾は、良くも悪くも自分の行動の結果。
「自業自得」と「類は友を呼ぶ」は因果律であり、全ては自分の行いの結果です。多くの人が己の不幸を嘆きますが、その不幸の源がどこから来るのか考えなければなりません。多くの場合は自分です。
灰魔術

・自己正当化と妥協の罠
最も多くの現代人が陥っている「灰色の魔術」。これは白と黒の中間に位置し、「不完全な転換」や「自己欺瞞」の状態を指します。これが最も厄介な魔術です。きっとあなたも陥っておりますから自覚が難しいと思いますよ。ここから先を読んでいて「でも」と「だって」が心の中で浮かんだら、それが灰色の魔術につながります。詳しく見てみましょう。
・灰色魔術の特徴
灰色の魔術を行使する人々は、自分は白魔術を行使していると信じておりますが、その根底にある利己的な心を完全には捨てきれていません。建前は白でもやっていることは黒。したがって「灰色」なのです。魔術の学びを少しだけ齧り諦めた人によく見られます。「魔術を中途半端に知るくらいなら全く知らないほうが良い」と言われる理由はここにあります。
小さな美徳で大きな欠点を隠す
表面上では道徳的な言葉を説き宗教的な行動をとりながらも、実生活やビジネスの場では無慈悲で利己的な判断を下すといった「二重基準」がその典型です。妥協した生き方
精神的な教えを学び言葉では誓いを立てながらも、それが自分の経済的な利益や個人的な楽しみを損なう場合には、平気でその教えを無視し誓いを破る行動をとります。
・偽りの安心感
灰色の魔術師は、トラブルにならない程度に誠実であり、捕まらない程度に正直であろうとします。言ってしまえば全てにおいて中途半端なのです。彼らは自分自身を騙し、内面的な変化を伴わない「形だけの善行」によって魂の救済を得ようとしますが、そこには真の平和はありません。結局のところ、根底にあるのは黒魔術と同じ「自己利益」ですから。
現代社会において最も蔓延しており、かつ自覚しにくい厄介な灰魔術。黒魔術のような「明確な悪意」や、白魔術のような「完全な無私」の間で、我々が無意識に行っている「自己正当化」や「妥協」こそが、現代における灰色魔術の正体で、その呪文は「でも」と「だって」です。
わたくしはこの灰魔術が最も危険であると考えます。白魔術も黒魔術も、どちらも使用者はそれなりの覚悟が求められます。無私・無欲の覚悟を背負う白、自業自得の精算の覚悟を背負う黒。しかしながら灰魔術は覚悟を必要としないため簡単に陥ります。己の「楽」や「自己正当化」のために言い訳並べて簡単に「誓約」や「制約」を破れてしまうから。しかも、他者に対してだけでなく、自分自身の心に対しても言い訳(自己正当化)をして、自分自身でそれを信じれてしまいます。
具体的にどのようなシチュエーションがこれに該当するのか、その本質を掘り下げてみましょう。
最も危険な魔術
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