ワインを飲むほど、自分の名前が薄くなる話
はじめに
ワインを飲むとき、
私は少しだけ、自分から離れる気がします。
離れるというより、
ほどける。
ほどけるというより、
戻る。
そのとき私は、
誰になっているのでしょう。
そのままの私か、
別の誰かか。
静かに見てみます。
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第1章 静かな私
グラスを持つと、
少しだけ声が落ち着きます。
急がなくなる。
答えを急がなくなる。
言葉が少し減る
呼吸が深くなる
周りの音がやわらかくなる
私はそのとき、
役割から少し離れています。
仕事の私でもなく、
評価される私でもなく、
ただ、ここにいる私。
新しい自分というより、
余計なものが静かに外れた状態。
ワインは、
何かを足すより、
少し削る飲み物なのかもしれません。
残った私が、
いちばん私に近い。
そんな感じがするときがあります。
第2章 時間の中の私
ワインには、
時間が入っています。
畑の時間、
人の時間、
眠っていた時間。
それを飲むと、
こちらの時間も混ざります。
昔の夜を思い出す
今の時間が少しゆっくりになる
理由なく落ち着く
味は忘れても、
その夜の空気だけ覚えていることがあります。
光とか、
沈黙とか、
そのときの自分の感じとか。
だから私は、
一人の私というより、
時間ごと私になっているのだと思います。
第3章 名前のない私
普段の私は、
いくつもの名前を持っています。
役割とか、
立場とか、
説明しやすい肩書きとか。
でもワインを飲んでいるとき、
それらは少し遠くなります。
説明しなくていい
強がらなくていい
結論を出さなくていい
そのときの私は、
何者かというより、
ただ存在している状態に近い。
空っぽではなく、
余白がある感じ。
そこに小さな灯がともる。
ワインを飲むとき、
私は誰になっているのか。
たぶん——
誰かになるのではなく、
名前のない私に戻っている。
その静けさが、
いちばん自然な私なのだと思います。
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