アルゴナビスのために和歌データベースと国会図書館を使い倒す――キャラ名和歌の探し方
『from ARGONAVIS』のキャラクター名に関する和歌の記事公開から数ヶ月、多くの方に目を通していただき、誠にありがとうございました。
少し時間が空いてしまったのですが、今回は例の記事をまとめるにあたって私がどのような手順で調べものを進めたのか、つまり「キャラクターの名前から和歌を探す」方法を記録としてお話します。
はじめに
普段、当アカウントでは現代短歌を軸に活動していますが、この企画ではあえて「古典」の和歌に限定しました。そこには2つの理由があります。
ひとつめは、選定と共有のしやすさという現実的な側面です。現代短歌は日々新しい作品が生まれており、それらを網羅して選び出すことは容易ではありません。また、現代の作品は著作権への配慮も必要になります。その点、古典和歌ならある程度の区切りを持って探すことができ、気兼ねなく共有できると考えました。(※ただし、書籍などにある現代語訳や注釈には新たな権利が発生するので注意が必要です)
ふたつめは、この企画のコンセプトである「大人の自由研究」らしい、少し真面目っぽい雰囲気を大切にしたかったからです。あえて学生時代を思い起こすような古典に触れることで、知的なワクワク感を楽しみたいと思いました。
どうやって和歌を探したか
私は人並みに文芸を好みますが、人文科学系の専門教育は受けておらず、古典文学に関してはまったくの門外漢です。そこでまずは、国会図書館のリサーチ・ナビ「和歌・短歌を調べる」を参考に、インターネットを駆使して和歌を探す、といった方法から試行錯誤しました。
その具体的な手順を以下に紹介します。
ステップ1:一般的な検索エンジンの活用
まずは一般的な検索サイトで「キャラクター名 和歌」といったように検索を行いました。 これにより全体の半分ほどは候補が見つかりましたが、有名な歌に偏る傾向があり、キャラクターに合わせるにはあと一押し!という歌も少なくありません。そして名前の単語だけでは引き当てづらい歌も潜在的に残っていると考えました。
ステップ2:AI使用で挫折
次に、ある程度ゆとりを持ったファジーな検索としてAI(LLM)に候補を出してもらいました。しかし、結論から言うと失敗です。 AIは非常にそれらしい和歌を提示してくれますが、出典を精査するとこの世に存在しない「捏造された和歌(いわゆるハルシネーション)」が少なからず混ざっていました。考察においてこのような誤りは致命的であるため、AI活用は早々にあきらめて自力での資料調査へと切り替えました。
ステップ3:専門DBの活用
そして最後に、研究機関の和歌データベースに辿り着きました。
・日文研 和歌データベース:https://lapis.nichibun.ac.jp/waka/menu.html
これは日本文化を専門とする研究機関「国際日本文化研究センター」の構築したデータベースであり、ドメインも "ac.jp" であることから信頼性が高いと判断しました。最終的にはこのデータベースを主軸として、全員分の名前に関連する和歌を引き当てることができました。
ステップ4:情報の確認
忘れてはいけないのが、情報の精査です。先に述べたとおりハルシネーションで痛い目を見たので、探し出してきた和歌が確かに実在するかの確認を行いました。
まず先述の日文研和歌DBにある歌は出典(万葉集など)と番号を併せてweb検索し、違いがなければ実在としました。それ以外の和歌は収録歌集(とされるもの)をあたります。ここで役立ったのが国立国会図書館のNDLサーチおよび次世代デジタルライブラリーというwebサービスです。
NDLサーチ(国立国会図書館サーチ): 国会図書館の利用登録(webから申請可能ですが、本登録には数日かかります)が必要なものの、所蔵資料の一部をブラウザ上でそのまま閲覧することができます。(※より正確にいうと、NDLサーチ経由で「国会図書館デジタルコレクション」の「個人向けデジタル化資料送信サービス」を利用する形になります)
次世代デジタルライブラリー: こちらは登録不要で利用できます。閲覧できる資料は比較的限られますが、OCR(文字認識)処理された資料を全文検索し、手軽に原文へアクセスできるのが強みです。
ちなみにどちらも利用料金は無料です。(少なくとも個人利用の範囲では)
みんなの税金、ありがとう。
最終手段・物理書籍
実はwebだけでは確かな資料にあたれなかった和歌もわずかにありまして、それらについては地元の県立図書館へ出向きました。図書館内で『新編国歌大観』(全10巻・禁帯出・とても分厚い・ほぼすべての古典和歌が載っている)を閲覧し、無事に確認完了となりました。
ここまで調べるには時間がかかりましたが、利用料金はかかっていません。
みんなの税金、ありがとう。(大事なことなので2回言いました)
和歌を調べるコツ
先述のステップ3(専門DBの検索)に補足して、検索時のコツを書き記しておきます。
古典和歌が詠まれた時代の日本語とその書き記し方は、現代とは異なることがほとんどです。たとえば当時は現代のような漢字仮名交じり文は使われていなかったり、同じものでも違う名前(古語)で呼ばれていたり、歴史的仮名遣いであったりするため、単純な検索には引っ掛かりません。
そこで和歌を探す際には
まず中心にしたい言葉(ここではキャラの名前)を決める
その言葉、あるいは漢字がどのような意味か、とくに古語ではどのような使われ方をしたかを調べる
言葉の古い読み方や古語での活用形、仮名表記の候補を挙げる
(ここではAIが役立ちました……確認は必要ですが)これらを使って和歌データベースなどで検索する
という手順をとりました。
今回の中で例を挙げると、「蓮=はちす」、「奏でる=かなづ(る)」といったところです。
やってみないと気付かないことでしたが、調べること自体は簡単なので気軽に挑戦してみてください。
おわりに
軽い気持ちで始めた「大人の自由研究」、その裏側では現代のインターネットを活用したり、AIとケンカしたり、物理書籍に会いに行ったりといろいろなことが起こっていました。途中でもう無理なんじゃないか……と思うこともありましたが、ぴったりの和歌が見つかった時の「運命だ!」という気持ちは何にもかえがたいものでした。
最後になりますが、ここまでお読みいただきありがとうございました。
そして、皆さんもご自身の好きなキャラクターの和歌を探してみませんか。
今回はアルゴナビスを対象としましたが、作品のジャンルは問いません。もし自分だけの「運命の一首」が見つかったり、新しく「大人の自由研究」を始められたりした方がいらっしゃれば、ぜひその成果を教えていただけたら嬉しいです。一緒に沼にはまりましょう。
以下はお世話になったサイトのメモです。
以上、誠にありがとうございました。
