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「もしもの時はどうする?」今、家族で話してみてほしいこと


「うちの親に限って、そんな急なことにはならないだろう」

多くのご家族がそう思いながら、気づいた時には介護が始まっている。現場でよく見てきた光景です。

話し合いをしておくことの大切さは分かっていても、元気な親にそんな話を切り出すのは気が引ける。その気持ちもよく分かります。ただ、話し合いができるのは「元気なうち」だけだったりします。この記事では、何をどう話しておけばいいかを整理します。


話し合いができていたご家族、できていなかったご家族

現場で見てきた中で、事前の話し合いがあったかどうかで、その後がまったく違う経過をたどるケースを何度も見てきました。実際のエピソードをご紹介します。


本人も交えて話し合っていたことで、スムーズに動けたケース

認知症が進行し、ご本人の判断能力がほとんどなくなってしまった方がいました。それでもご家族が迷わず動けたのは、以前ご本人も交えて家族全員で話し合いをしていたからだったのです。

その方はかつて「皆に迷惑をかけたくないから、困ったら施設に入れてほしい」「施設に入ることに嫌な気持ちはない」とはっきり話されていたそうです。

施設入所と聞くと「本人に申し訳ない」という罪悪感から、無理をして在宅介護を続け、介護離職や限界状態に陥るご家族も多いです。でもこのケースでは、ご本人の意思が事前に共有されていたため、限界を迎える前にスムーズに施設入所へ移行することができました。

ご本人の言葉があるだけで、ご家族の罪悪感がまったく違います。


兄妹間で役割分担を決めていたケース

もうひとつ、印象に残っているケースがあります。お母様が要介護になった場合は娘さんが、お父様が要介護になった場合は息子さんが担当するという、明確な役割分担をあらかじめ決めていたご家族でした。

介護が始まってから役割分担を決めようとすると、感情的になりやすく、なかなかまとまらないことが多いです。このケースでは事前に決まっていたため、お互いに不満なく介護を続けることができていました。珍しいケースではありますが、「話し合いがあると、こんなにスムーズにいくのか」と感じた経験でした。


話し合いがなかったために、姉妹の縁が切れてしまったケース

一方で、事前の話し合いがなかったために、取り返しのつかない結果になってしまったケースもあります。

2人姉妹のお母様が、突然認知症を発症しました。精神症状もあり、急激に介護が必要になりました。長女さんは慌てて介護を始め、手続きや毎日の通いをほぼ一人でこなしていました。しかし妹さんは我関せずの姿勢を崩しませんでした。

長女さんのストレスはやがて限界を迎え、妹さんへの思いが爆発しました。それでも妹さんは協力しようとせず、結果として姉妹の縁は完全に切れてしまいました。今もお姉さまは強い憤りを抱えながら、一人でキーパーソンとして介護に奔走しています。

「もし事前に役割を話し合っていたら」と思わずにはいられないケースでした。介護は始まってからでは、話し合いの場を作ること自体が難しくなります。


「いざとなったら考えよう」が、一番重い判断を生む

事前に話し合っておくことが特に大切なテーマが2つあります。

施設入所をどう考えるか 在宅での介護が難しくなった時、施設に入るかどうか。この判断をいざという時に迫られると、「本人に申し訳ない」という罪悪感に囚われて、なかなか決断できないご家族が多いです。ご本人が元気なうちに「どう思うか」を聞いておくだけで、ご家族の罪悪感がまったく違います。

延命措置をどうするか 病状が進んだ時に、胃ろうや人工呼吸器などの延命処置を希望するかどうか。これは特にデリケートなテーマで、元気なうちに話すのは確かに難しいです。ただ、話さないまま「その時」を迎えると、ご家族が重い判断と責任をすべて背負うことになります。「もしもの時はどうしたい?」という問いかけを、日常の会話の中で少しずつしておくだけでも違います。


何を話しておけばいいか

難しく考えなくて大丈夫です。まず以下のことをご本人と話しておくだけで、いざという時の判断が変わります。

  • 介護が必要になったら、どうしてほしいか

  • 施設に入ることへの気持ち(嫌か、構わないか)

  • 延命処置についての考え方

  • 介護をお願いしたい家族は誰か

  • 財産や保険の管理をどうするか

一度にすべて話す必要はありません。日常の会話の中で、少しずつ確認しておくだけでも十分です。


最後に

「うちはまだ大丈夫」と思っているうちが、一番話しやすい時期です。

介護が始まってからでは、時間も気持ちも余裕がなくなります。話し合いの場を作ること自体が、難しくなっていきます。

今日この記事を読んだことを、きっかけにしてみてください。完璧な答えを出す必要はありません。「うちはどうしようか」と、家族で話し始めることが大切な一歩です。

あなたのご家族が、いざという時に後悔しないための準備を、今日から少しずつ始めてほしいと思っています。


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