Blur B面16選:よく語られるアルバム未収録曲(Disc 2)
Blurって、B面がとにかく多い。しかも「隠れた名曲」って言っていい曲が普通にたくさんある。
最初にかなりびっくりしたのが、各アルバムにDisc 2があること。しかも中身はリミックスやライブ版だけじゃなくて、Disc 2にしか入っていない曲がごろごろある。これは2012年の21周年記念リイシュー『Blur 21』で、各アルバム期のB面や未発表音源等がまとめ直されたからで、他のバンドと比べてもB面をかなり体系的に追いやすいバンドになっていると思う。
そのあたりは別記事にまとめてみたのでよかったらどうぞ↓
で、BlurのA面やアルバム曲って好きな曲を挙げるとかなり人によってバラけるけれど、B面に関してはファンの間でよく語られる曲が比較的共通している気がする。なので今回は、そういう16曲を選んでみた。
選曲の基準は、バイオ本やインタビューでメンバー自身が思い入れを語っている曲、Redditなどのファンコミュニティでよく名前が出る曲、そしてほんのちょっとだけ私情です。なお、今回はアルバム未収録でもシングルとして単独で出ている曲は除外している。(『Popscene』や『Music Is My Radar』、『Under the Westway』など)
Disc 2収録曲は各サブスクでSpecial Editionを選べばだいたい聴けるのでぜひ。
超定番のB面曲たち
まずは、B面というより、本編に入っていても何もおかしくなかった曲たち。ファン人気も高く、メンバー自身が後から後悔や愛着を語っているものも多い。
All Your Life - 『Beetlebum』B面 - 1997
セルフタイトル期のB面。方向転換しようとしていた時期なのに、あまりに「古いBlurらしすぎる」という理由でアルバムから外された曲。だけどメロディも歌詞も完成度が高く、デーモンもこの曲を気に入っていて、後年のソロコンサートでもセットリストに加えている。
歌詞はかなり痛々しい。90年代の狂騒と、メディアに使い潰されていく感覚、その中にある恨みがましさややけくそさがかなりストレートに出ている。
“Oh England, my love, you lost me, made me look a fool”
という一節は、もはや皮肉ですらなく、逃げ場のない場所からの悲痛な叫びに聴こえる。
Young and Lovely - 『Chemical World』B面 - 1993
2nd期のB面で、ほぼ満場一致で評価されている曲。デーモンは後に「この曲はアルバムに入るべきだった。これが入らずに『Turn It Up』が入ったのは間違いだった」と認めているらしい。先日Redditのファン投票でもBest B-sideに選ばれていた。
“You can get what you want / You're so young and lovely”
若い頃のBlurが歌うと少し冷めた皮肉に聞こえるけど、後年のBlurが再結成ライブで歌ったこの曲は、完全な応援歌ではないけれど「それでもやってみればいいんじゃない」と背中を押しているようにも感じる。同じ曲でも、歌っている側の年齢で意味が少し変わるのが面白い。
※再結成ライブの映像が公式にあったのでそれを貼ってます。
Theme from an Imaginary Film - 『Parklife』B面 - 1994
『Parklife』期に制作された、優雅で少し異質なワルツ。
スティーヴン・バーコフの映画『Decadence』のために書き下ろされた曲だったけれど最終的にはお蔵入りになり、"Imaginary Film"のテーマ曲として生まれ変わった。
日本のファンやライターの間でもよく語られる印象があるし、2023年の再結成ツアーでも数十年ぶりに演奏されたらしい。
いつか本当に、何かの映画のテーマ曲として使われても全然おかしくないと思う。
初期Blurが本当にやりたかった曲たち
次に、初期のBlur。
メンバーはデビューアルバム『Leisure』の出来にあまり納得しておらず、当時流行していたバギー的な方向へマネージメントやレーベルに無理やり寄せられた、という不満を後から何度も語っている。
ここでは、そうした外側の期待とは別に、彼らが本当はやりたかったことが見える曲を並べてみる。
Inertia - 『There's No Other Way』B面 - 1991
初期の代表曲のひとつ。レーベルに求められていた音とは違う、より浮遊感のあるサウンドで、後の方向性の原型がすでにここにある。デーモンは、この曲こそが初期の Seymour から『Modern Life Is Rubbish』へと繋がるミッシング・リンクだったと語っている。1990年の初期ライブではセットリストのオープニングを飾ることもあったという。
歌詞のテーマは 「取り残されることへの恐怖」。初期なのにかなり内省的で、この時点でもう後のBlurに繋がる感覚がはっきりある。
Luminous - 『Bang』B面 - 1991
サイケデリックで美しい曲。メンバーの言う通り、確かにこれが『Leisure』に入っていたら、アルバムの印象はかなり変わっていたと思う。
録音時、メンバーは “drunk and stoned” 状態だったらしく、その危うい感じがそのまま音になっている感じがある。デーモンもかなり気に入っていて、「本当に素敵な雰囲気を持っている」と語っている。
Day Upon Day - 『There's No Other Way』12インチ・リミックス盤B面(LIVE音源)- 1991
初期のライブ感と衝動がそのまま残っている曲。初期ライブの定番締め曲で、サブスクで聴けるのは1990年12月のライブ音源。
録音されたライブでは、興奮したアレックスがベースを振り回した際にデーモンの鼻に当たり、鼻血を流しながらそのまま演奏したというアクシデントがあったらしい。さらにグラストンベリー1992ではこの曲の最中に足を骨折し、痛みで転がりながらもパフォーマンスしている映像が『Starshaped』で見られる。元気すぎる。
Bone Bag - 『For Tomorrow』B面 - 1993
「ほとんど発見されていない宝石」と評される初期B面。デーモンが書いた繊細で優しい歌詞をグレアムが気に入っており、2本のトレモロギターが織りなす、眠たげでバラバラなアンビエント感が特徴。
派手さはないけれど、この時期のBlurが持っていた気怠さや影の部分がよく出ている。
Peach - 『For Tomorrow』B面 - 1993
初期のサイケデリックサウンド、この時期のBlurらしさがすごくよく出ている曲。1992年1月に「Mace」と同じセッションで録音された。Mace もよく名前の出るB面だけど、今回は16選には入れなかった。とはいえ、本当に名前はよく見る。
ハーモニウムという楽器が使われていてとても特徴的。デーモンが中古屋で5ポンドで買ったものを、修理に1,000ポンドかけて使っていたらしい。終盤がレコードのループみたいに終わるのもいい。
ファンの間でよく名前がでてくるB面
Magpie - 『Girls & Boys』B面 - 1994
『Parklife』期のセッションで録音された曲。もともとは2ndアルバム候補曲だったけれど、デーモンが歌詞に苦戦した結果、ウィリアム・ブレイクの詩「The Poison Tree」をAメロにそのまま使うという手法を取った。
当時の悪名高いレーベル代表デイヴ・バルフェ(Country Houseで悪口言われているのはこの人)が、止まったり始まったりする断絶的なリズムを聴いて「アメリカ人を混乱させるだけ」(…笑)と切り捨て、グレアムも流行のバギーっぽさを嫌って一度はお蔵入りしたらしい。でも結果的に『Girls & Boys』のB面として復活した。個人的にとても好きな曲。
Ultranol - 『The Universal』B面 - 1995
『The Great Escape』の日本盤ボーナス・トラックで、“The Universal” と対になっている曲。
“The Universal” が、プロザックをモデルにした「無感覚な幸福」というディストピア的な未来をかなり予言的に歌っているのに対し、この “Ultranol” はもっと明るく軽やかに、そしてもっと露骨で滑稽な形で、「薬に頼り切った解決策」を揶揄している。同じテーマを表と裏から見るような関係で、この2曲はセットで考えたくなる。
『The Great Escape』期のツアーには巨大な「Ultranol」の錠剤という大掛かりなステージ小道具が存在していて、デーモンがその巨大な錠剤?の中に入って激しいストロボライトを浴びて調理されるという演出があったらしい。
Tame - 『Stereotypes』B面 - 1996
グレアムはBlurのディスコグラフィーを「メインストリート」と「少し暗く不気味な脇道」に分けて語ることがあり、この曲はまさにその“脇道”代表みたいな存在。
歌詞には「Orwell cities」みたいなフレーズも出てきて、この時期のデーモンが感じていた現代社会への息苦しさや不穏さが、断片的なイメージとしてかなり生々しく出ている。
The Man Who Left Himself - 『Stereotypes』B面 - 1996
自分自身から少しずれていく感覚、終わりのない労働や精神的疲弊、身体の限界みたいなものが、そのまま歌になっている。
「君がいなくなったことに誰も気づかない」「今日、君は自分を置いて去った男になった」みたいなフレーズはかなり切実で、迷走と内省がそのまま形になったような曲。
Blurとしては長らくライブ未演奏曲だったけれど、2014年のデーモンのソロツアーでようやく演奏された、という流れも含めて印象的。
※TGEのB面からは『No Monsters in Me』も好きだけど多くなるので入れませんでした!
Polished Stone - 『Song 2』B面 - 1997
歪んだギターとメロディのバランスが不安定で、その感じがものすごくいい。『13』に向かう気配も感じる。
歌詞はアルコールによる感覚の麻痺や深い孤独感がテーマで、“And when the alcohol's done / I won't feel a thing” や、最後に繰り返される “It’s numb” が、この時期のバンドの内省的な空気をかなりよく表している。
「今日はもうだめだ、起き上がれないけどもういいや、どうせ骨ごと起こされて誰かを磨くための砂扱いされるんだ」という感じの歌詞で、かなりしんどい。でもそのしんどさが魅力でもある。
Bustin’ + Dronin’ - 『Song 2』B面 - 1997
音響的な実験としてのBlur。曲というより「やってみた」感じの面白さがあって、こういうものまで残っているのがB面の良さだと思う。
タイトルの “Bustin’” と “Dronin’” という対照的な言葉が、そのまま当時のBlurの二面性を表している気がする。パンキッシュな衝動と、低音の持続やローファイな音響工作。この時期の彼らが、ブリットポップの顔から、もっと知的で実験的なアートロック・バンドへと脱皮しようとしていたことを象徴している曲でもある。
しかもこのタイトルが後の日本限定リミックス・アルバム名に採用されたことまで含めて、当時の実験精神の象徴みたいな位置にあるのが面白い。
All We Want - 『Tender』B面 - 1999
『13』期の緊張感がそのまま残っている曲。ノイズとメロディがぎりぎりのバランスで共存していて、この時期の不安定さと創造性がそのまま出ている。歌詞も、『13』全体のテーマである感情の麻痺や疎外感を色濃く反映していて、
“All we want, all anybody wants / Is to feel something, but I just feel nothing”
というフレーズは本当に切実。
人気の高い曲なのに一度もライブで演奏されていないというのも、なんだかこの曲らしい。
※なぜか公式YouTubeでみつからなかったので非公式のリンクになってます。
Black Book - 『Music Is My Radar』B面 - 2000
本来はシングルA面として公式に発表される予定だったのに、土壇場で “Music Is My Radar” にその座を奪われ、B面へ回された曲。8分に及ぶ長尺の曲で、かなり実験的。
あとから振り返ると、デーモンのその後の活動に繋がっていくような要素がすでに見える。
ちなみに、この曲名を冠した『Black Book: The Live History of Blur』という本がある。これはファンの Drew Athans が長年にわたって追い続けたライブの記録をまとめたもので、セットリストや日付、細かい出来事までがひたすら蓄積されている膨大なアーカイブ本。この曲が、いかにコアなファンに愛されているかが伝わってくるエピソードだと思う。
※これもYouTube公式になかったので、非公式のライブ版映像です。
まとめ
B面を聴いてみると、Blurってアルバムごとに急に別のバンドみたいに変わったというより、最初からたくさんの面を持っていて、A面はその時々の「表の顔」になっているんだな、ということがよくわかる。
初期はレーベルや時代の空気に合わせて、その後はデーモンだったりメンバーだったりが「今はこっちを見せたい」と思った方向にアルバムを作っていた。
B面は、アルバムの枠では拾いきれなかったもの、ちょっと変すぎたもの、まだ早すぎたもの、逆にあまりに良すぎたのに落とされたもの、そういうものがそのまま残っている場所なんじゃないかと思う。
アルバム本編だけでももちろんすごくいいんだけど、もしそこまでしかまだ聴いていないなら、ぜひ一度Disc 2も聴いてみてほしい。
「え、これB面なの?」ってなる曲がたくさんあるはず。
ここまで書いておいてなんだけど、正直自分自身がまだB面は聴き込みきれていないので、自分の好みで絞る前にまずは定番どころのメモみたいなまとめにしてみました。
「これもおすすめだよ」という曲があれば、ぜひ教えてください~
