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「Watashiは変われましたか」第11話

次に、高校の制服で泣いている沙羅のシーンを選択した。彼女は夜の公園でブランコに乗って泣いていた。高校生活の中で経験した挫折や悩みが、彼女の涙となって溢れていた。

アプリを通してこのシーンに入り込むと、冷たい夜風が頬を撫で、沙羅のすすり泣く声が聞こえた。彼女の涙の理由を知ると、私の心は痛みでいっぱいになった。沙羅は進学をするために勉強に励んでいたが、家庭の事情が彼女の夢を打ち砕いた。

沙羅は動物が大好きで、獣医さんになることが夢だと言っていた。小さい頃から動物の世話をするのが好きで、家でもよく犬や猫の世話をしていた。その夢を叶えるために一生懸命勉強していたのに、父親との離婚がその夢を壊してしまった。

目の前に現れたのは、父親が愛人を連れて家に来た日の光景だった。父親は冷たい目で私に離婚を突きつけ、私はその場に泣き崩れた。愛人は私を馬鹿にするように嘲笑いながら、父親と一緒に家を出て行こうとした。

その時、沙羅が高校三年生だったことに気づいた。彼女はすべてを捨てて家族を守ろうとしたのだ。その姿を見ると、私の胸は締め付けられるような痛みでいっぱいになった。

「待って!」と叫びながら、沙羅は必死に父親を追いかけた。父親の背中にすがりつき、「お願い、行かないで。家族を捨てないで」と泣きながら訴えた。愛人は嘲笑を浮かべたまま、腕を組んで二人のやり取りを眺めていた。父親の冷たい視線に、沙羅の心はさらに深く傷ついた。

その時、私は「パパとママどっちを選ぶの」と沙羅に言ってしまった。究極の選択を強いることで、彼女を私の元に縛りつけてしまった。その言葉が彼女にどれほどの重荷を背負わせてしまったのか、今になって取り返しがつかない。

さらに、父親からの養育費もなく、離婚する前から家には入れてくれなかった状況もあり、沙羅は学費をアルバイトで賄うようになった。公立高校だったのでなんとかやりくりできていたが、その負担は彼女にとって非常に重かった。

私は更年期障害の影響で起伏が激しく、彼女にやつ当たりしてしまったこともあった。沙羅はその時も何一つ言い返さなかった。沙羅なら私を守ってくれる、と私は錯覚してしまったのだ。

沙羅を縛りつけてしまったこと、本当はわかっていた。進学を諦めさせたこと、更年期障害で罵倒したこと、沙羅は何一つ言い返さなかった。沙羅なら私を守ってくれる、そう錯覚してしてなかったことにしていた。彼女が犠牲にしていたことはわかっていたのに、私が辛くて目を背けたのだ。

高校三年生春、沙羅必死の日々を送っていた。クラスメイトのほとんどが進学を選択していく中で、ギリギリまで彼女も希望を捨てなかったが、大学進学を諦め、就職を決意した。その後、地元企業にすんなりと就職が決まったのは、彼女の学校での成績や態度が良かったからなのだと、私は後になって気づいた。

就職することに決める前、担任の先生がなんとか進学できないかと家まで来てくれたことがあった。先生は沙羅の成績が優秀で、将来有望だと力説した。親身になる良い先生だったのだろう。しかし、私は家庭の事情を理由に進学を諦めさせる決断をさせた。

ブランコに乗って泣いている沙羅の姿を見ると、私は何もできずにただその光景を見つめることしかできなかった。彼女の涙は純粋な悲しみや絶望を物語っていた。高校生活の中で経験した挫折や悩みが、彼女の涙となって溢れていた。

私は彼女を抱きしめようとしたが、私の手は彼女をすり抜けてしまった。どうしたらいいのだろうと悩みながら、私はブランコの柵に向かい合って座り、ただ彼女を見つめることしかできなかった。

「沙羅、本当にごめんね」と心の中でつぶやいた。彼女の努力や苦労を理解してあげられなかった自分に対する後悔と自己嫌悪が込み上げてきた。沙羅は私のために、家族のために、どれだけのことを犠牲にしてきたのだろうか。

ごめんねでは足りない。この頃にもう一度戻れるならそんな後悔が押し寄せる。子供をしっかり育てなくてはと思っていたはずなのに、いつの間にか沙羅に守られていた。彼女が一生懸命に家庭を支えてくれたことで、私はそのことに甘えてしまっていた。沙羅が犠牲にしていたことを知りながらも、私は辛くて目を背けてしまった。

夜の公園で彼女が泣いている姿を見て、私は何もしてあげられない自分の無力さを痛感した。沙羅の心に寄り添い、彼女の苦しみを少しでも和らげることができたらと強く願った。

画面には再びアイテムの表示が現れた。月のアイコンが輝き、そこには「光」と書かれていた。私はそのアイコンに指を伸ばし、画面をタップした。

月の光が優しく広がり、ボヤっと光る街灯の光と重なり合い、沙羅の涙を優しく包み込んだ。その光は彼女の心に届き、少しだけ安らぎを与えるように見えた。私はその光を見つめながら、彼女の心に少しでも安らぎが訪れることを願った。

「沙羅、本当にありがとう。そしてごめんね。ずっと沙羅に頼ってばかりで、本当は私があなたを支えるべきだったのに」と心の中でつぶやいた。彼女の小さな肩にどれだけの重荷を背負わせてしまったのかを思うと、胸が痛んだ。

「沙羅、自分の道に進んでいいんだよ。もう無理しなくてもいい。あなたにはあなたの夢がある。獣医さんになりたいって言ってたでしょう?その夢を諦めないで」と心の中で強く念じた。彼女が自分の未来を見つけ、幸せになることを心から願った。

「あなたの幸せを願っているよ、沙羅」と最後にもう一度つぶやいた。その言葉が彼女に届くことを信じて。

その瞬間、月の輝きが増し、画面には再び「このシーンをクリアしました。ロックが解除されました。次のシーンに進みますか?」というメッセージが表示された。今度こそ沙羅の心に寄り添う決意を新たにし、次のシーンに進むことにした。

#創作大賞2024 #ファンタジー小説部門



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