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大暑|夏の香りをたっぷりと、身体全体で受け止めたような気になっていた。

朝4時半に起きるつもりだったが、一旦は4時に目が覚めた。汗を拭いて、もう一度布団の上に寝転んだ。その次に目が覚めたのは5時過ぎだった。
おっとっと。ワンコと散歩に行って、そのあとは庭に植えた黒大豆と畑のキュウリの水やりをしようと思っていたのに。

ワンコと歩く先にはぼんやりと朝陽が昇ってきている。蚊がしつこく耳元を飛び回るので、すぐに退散した。

後ろを振り返って空を見上げると、どんよりと波打つ灰色の雲が見えた。今日も暑くなりそうだ。

庭では黒大豆の発芽が始まっていた。早く畑に移りたくてうずうずしているようにも見える。蚊取り線香に火を点ける。煙がゆっくり上っていくのを確認する。水やりを済ませて畑へと向かう。
まだ6時前なのに、歩いているだけでじわりと汗が出る。じょうろを2つ用意して、水をすくう。2つあれば1回で十分だ。

誰の仕業か、20㎝ほどのキュウリが1本、隣の畝に転がっていた。右手の人差し指で触れてみる。しっかりと実がつまっている。
水やりの途中で、さっきのよりもさらに5㎝は長そうな1本を見つけた。塩をふって、丸かじりしたらおいしそうだ。
ミニトマトの畝も見ておく。端から観察していくと、穴が開いているもの、実が割れているものがある。これから色づきそうなものもいくつか見つけた。
親指と人差し指で実を挟んだときに感じる弾力性、ヘタが上向きになっているかどうかなど、一つずつ確認しながら<これはいける>と感じたものから順に取っていく。
ミニトマトは指でも取れるが、ハサミでカットするほうが安心だ。

手のひらいっぱいになるぐらいのミニトマトが取れた。
家に持って帰って、台所に並べて置いておく。両手の指先からはミニトマトの匂いが漂っている。
空の色。雲の形。虫が飛ぶ音。蚊取り線香の煙。野菜の匂いたち。夏の香りをたっぷりと、身体全体で受け止めたような気になっていた。
シャワーを浴び、歯を磨いて、着替えながら時計を見た。7時35分だった。電車の出発まで11分しかない。
「行ってきます」と、すぐに出る。
ギリギリになるかもしれない。
バイクは風を切るので、走っている間は気持ちがいい。自転車を一台抜かした。
踏切で遮断機が下りている。電車の進行方向を示す赤色の矢印は双方向だった。

仕事終わり、駅に向かって歩く。思っていたほど暑くはなかった。向かって左手に見えるお山を見上げた。
帰宅して、真っ先に台所へ向かう。グラスをとって、氷を3個入れる。重曹とクエン酸を順に小さじ3分の1ずつほど入れる。水を足してかき混ぜる。一気に飲み干した。

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