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【TSMC(TSM)Q2 FY2026】なぜTSMCだけがAI需要を予測できるのか。

TSMC(TSM)のQ2 FY2026決算をアウトプットする。

今回の決算は強かった。

売上高は$40.20B、前年同期比+33.7%。

粗利率は67.7%、営業利益率は60.3%。

親会社株主帰属純利益はNT$706.56B、前年同期比+77.4%。

希薄化後EPSはNT$27.25、前年同期比+77.4%だった。

売上高は会社ガイダンスの上限に着地し、粗利率と営業利益率はガイダンスの上限を上回った。

さらに2026年通期の米ドル建て売上成長率見通しは、従来の約30%から、40%をわずかに上回る水準へ引き上げられた。

2026年の設備投資計画も、当初の$52B~56Bから$60B~64Bへ大幅に増額された。

数字だけを見ても、過去最高水準の成長と利益率を同時に実現した決算である。

しかし、私が今回最も重要だと考えたのは、売上高でもEPSでもない。

TSMCは現在、世界で最もAI需要を正確に把握できる企業になりつつある。

その理由は、TSMCが単なる半導体受託製造会社ではなく、世界中のAIインフラ投資に関する情報が集まる場所になったからだ。

TSMCは、NVIDIAやAMD、Broadcomなどの半導体設計企業から提示された需要予測だけを見ているのではない。

その先にいるクラウドサービスプロバイダーとも対話し、複数年の商品ロードマップや生産計画を把握した上で、トップダウンとボトムアップの両面から必要な生産能力を判断している。

だから今回の決算は、単に「AI需要が強かった」という話では終わらない。

なぜTSMCだけがAI需要を予測できるのか?

なぜ製造業でありながら粗利率67.7%を稼げるのか?

なぜ競合企業が巨額投資を続けても、その差を簡単には埋められないのか?

そして、私がアメリカンオオカミFuture40でTSMCを5位に置いた理由まで、一次情報をもとに整理していく。

■ 4四半期の決算数字


Q3 FY2025 → Q4 FY2025 → Q1 FY2026 → Q2 FY2026

・売上高 $33.10B → $33.73B → $35.90B → $40.20B
YoY:+40.8% → +25.5% → +40.6% → +33.7%
QoQ:+10.1% → +1.9% → +6.4% → +12.0%

Q2は会社ガイダンス$39.0B~$40.2Bの上限に着地。先端プロセスへの強い需要を背景に、売上規模は4四半期連続で切り上がった。

・HPC売上構成比 57% → 55% → 61% → 66%

Q2のHPC売上はQoQ+20%。AIアクセラレータを含むHPCが全社売上の約3分の2を占め、TSMCの成長の中心となっている。

・Smartphone売上構成比 30% → 32% → 26% → 22%

Q2のSmartphone売上はQoQ-4%。季節的な需要減少に加え、HPCの成長が圧倒的に速いため、構成比は22%まで低下した。

・IoT売上構成比 5% → 5% → 6% → 5%

Q2のIoT売上はQoQ+4%。全社売上に占める構成比は5%で推移している。

・Automotive売上構成比 5% → 5% → 4% → 4%

Q2のAutomotive売上はQoQ+15%。絶対額は増加したが、HPCの成長がさらに速かったため、構成比は4%にとどまった。

・Digital Consumer Electronics売上構成比 1% → 1% → 1% → 1%

Q2のDCE売上はQoQ+5%。構成比に大きな変化はない。

・その他売上構成比 2% → 2% → 2% → 2%

構成比に大きな変化はない。


プロセス別売上構成比
・2nm売上構成比 0% → 0% → 0% → 3%

Q2から2nm売上が初めて計上された。量産開始初期ながら、すでにウエハー売上の3%を占めている。

・3nm売上構成比 23% → 28% → 25% → 30%

Q2は30%まで上昇。2nmの売上計上が始まる中でも、3nmは引き続きTSMCの主要な成長ノードとなっている。

・5nm売上構成比 37% → 35% → 36% → 33%

構成比は低下したものの、依然としてTSMCの主力プロセスの一つである。

・7nm売上構成比 14% → 14% → 13% → 11%

より新しい3nm、2nmへの世代移行に伴い、構成比は緩やかに低下している。

・7nm以下の先端プロセス売上構成比 74% → 77% → 74% → 77%

売上の8割弱を先端プロセスが占める構造が続いている。Q2は2nmが加わり、先端プロセス内部での世代交代が始まった。

・GAAP粗利率 59.5% → 62.3% → 66.2% → 67.7%

4四半期連続で改善。Q2は会社ガイダンス65.5~67.5%の上限も上回った。

・GAAP営業利益率 50.6% → 54.0% → 58.1% → 60.3%

営業利益率も4四半期連続で改善し、Q2は初めて60%を超えた。

・GAAP純利益 NT$452.30B → NT$505.74B → NT$572.48B → NT$706.56B
YoY:+39.1% → +35.0% → +58.3% → +77.4%

Q2は過去最高益を更新。利益成長は売上成長を大きく上回った。

・希薄化後EPS  NT$17.44 → NT$19.50 → NT$22.08 → NT$27.25
YoY:+39.0% → +35.0% → +58.3% → +77.4%

4四半期連続で増加し、Q2は過去最高のNT$27.25となった。
ただし、Q2にはVanguard株式の売却・時価評価益NT$63Bが含まれ、EPSをNT$2.24押し上げている。本業の利益成長は強いが、EPS+77.4%のすべてを営業利益の増加として捉えるべきではない。

・営業CF  NT$426.83B → NT$725.51B → NT$698.97B → NT$783.36B

Q2は過去4四半期で最高。巨額設備投資を支えるキャッシュ創出力は依然として非常に高い。

・設備投資 NT$287.45B → NT$356.91B → NT$350.76B → NT$496.00B

Q2は売上高の39.0%に相当するNT$496.0Bまで増加。米ドルベースでは$15.7Bを投じた。

・2026年通期CapEx計画 当初$52B~56B → Q2時点$60B~64B

継続的な需要増加とAgentic AIを含む構造的成長を背景に、設備投資計画を大幅に引き上げた。
投資配分は70~80%が先端プロセス、約10%が特殊プロセス、10~20%が先端パッケージ、テスト、マスク製造などとなる。

・FCF  NT$139.38B → NT$368.60B → NT$348.21B → NT$287.36B

Q2は設備投資の急増によってQ1から減少した。それでも、売上高の約4割を設備投資へ振り向けた後に、NT$287.36BのFCFを残した。

・現金+市場性金融商品 NT$2.751T → NT$3.069T → NT$3.384T → NT$3.518T

巨額設備投資と配当を両立しながら、財務基盤はさらに強化されている。

・在庫回転日数 Q1 FY2026:80日 → Q2 FY2026:87日

在庫日数は7日増加したが、主因は需要悪化ではなく、2nmの立ち上げに伴う在庫増加である。


■ 決算所感


TSMCは、売上高、粗利率、営業利益率、純利益、EPSを同時に切り上げた。

Q3 FY2025からQ2 FY2026までに、

売上高は$33.10Bから$40.20B。

粗利率は59.5%から67.7%。

営業利益率は50.6%から60.3%。

EPSはNT$17.44からNT$27.25まで拡大した。

事業構造では、HPC売上構成比が57%から66%へ上昇する一方、Smartphoneは30%から22%へ低下した。

かつてスマートフォン向け半導体の製造基盤として評価されていたTSMCは、現在ではAIアクセラレータ、CPU、カスタムASIC、ネットワーク半導体を含むHPC中心の企業へ変化している。

そして重要なのは、Q2がピークではないことだ。

Q3売上ガイダンスは$44.6B~$45.8B。

中央値ではQoQ約+12%、YoY約+37%となる。

粗利率ガイダンスは65~67%、営業利益率は56~58%。

2nmの急速な立ち上がりによる初期コストを吸収しながら、売上規模はさらに一段切り上がる見通しである。

数字だけを見ても、非常に強い。

だが、ここからが本題である。

なぜTSMCだけが、これほど巨大な設備投資を決断できるのか?


■ なぜTSMCだけがAI需要を予測できるのか


今回のQ2決算コールで、TSMCは繰り返し「顧客だけでなく、顧客の顧客」と対話していると説明した。

“We talk to customers and customers’ customers.”

顧客とは、半導体を設計する企業である。

顧客の顧客とは、主にAIアクセラレータやカスタムASICを導入するクラウドサービスプロバイダーである。

TSMCは、半導体設計企業から提示された需要予測をそのまま信じて工場を建てているわけではない。

顧客の複数年の商品ロードマップや生産計画を把握し、その先にいるCSPからも需要情報を得る。

さらに社内では、トップダウンとボトムアップの両面から市場需要を評価する。

最先端プロセスは、技術と製品の開発、生産能力の準備、量産立ち上げまでに5年以上かかる。

A14では、その期間が5~7年にまで伸びている。

つまり、注文を受けてから工場を建設しても間に合わない。

数年後に必要となる計算能力を先に読み、顧客と生産能力を共同で設計する必要がある。

一般的な製造業は、顧客から注文を受け、その受注に対応して生産する。

しかしTSMCは、そのさらに前にいる。

数年後にどのようなチップが必要になるのか。

どのプロセスに需要が集中するのか。

CPU、GPU、カスタムASICの比率はどう変化するのか。

先端パッケージ能力はどの程度必要になるのか。

それを顧客と一緒に計画している。

TSMCは、注文を受けてから動く受注企業ではない。

未来の半導体需要を顧客と共同で設計する、製造プラットフォームになっている。


■ すべての顧客の予測を足しても、真実にはならない


ここで重要なのは、TSMCが顧客の強気な予測を無条件に信じているわけではないことだ。

CEOはQ2のQ&Aで、各顧客が真実を伝えているとしても、「すべての真実を足し合わせたものが真実になるとは限らない」という趣旨を語った。

各社は、それぞれの成長戦略に基づいて需要を予測する。

NVIDIAはGPU需要を強く見る。

カスタムASIC企業は、独自チップの拡大を見込む。

CPU企業は、Agentic AIによるCPU需要の復活を期待する。

クラウドサービスプロバイダーも、それぞれが大規模なAI投資計画を持っている。

しかし、すべての企業の予測を単純に足し合わせれば、市場全体の需要を過大評価する可能性がある。

だからTSMCは、自ら判断する。

顧客のロードマップを見る。

CSPの投資計画を見る。

データセンター建設の状況を見る。

電力、場所、ラックの整備まで確認する。

供給したチップが在庫として積み上がるのではなく、実際の計算能力として稼働するのかを見る。

TSMCがAI需要を正確に把握できるのは、受注残が見えるからだけではない。

半導体設計からAIデータセンターの実装まで、需要の連鎖を一段深く検証しているからである。


■ AIバブルを最も警戒しなければならないのはTSMC


AI需要に対して、TSMCは楽観一辺倒ではない。

むしろ、AIバブルを最も慎重に検証しなければならない立場にいる。

半導体設計企業であれば、需要が弱くなれば発注量を減らせる。

クラウド企業であれば、データセンター投資の時期を調整できる。

しかしTSMCは、工場を建設し、EUV露光装置を導入し、人材を採用し、数年間にわたる減価償却費を背負う。

一度実行した設備投資は、需要が弱くなったからといって簡単には取り消せない。

2026年のCapExは$60B~64B。

TSMC自身が需要予測を誤れば、その影響は数年間にわたって利益率とFCFに残る。

だからこそ、経営陣は顧客が示す数字を単純に合計せず、需要を慎重に精査している。

そして、そこまで検証した上で、今回さらにCapExを引き上げた。

私は、この資本配分こそ、TSMCがAI需要をどう見ているかを示す最も重い経営メッセージだと思っている。

AI需要を信じているのではない。

AI需要を検証した上で、$60Bを超える資本を投じている。


■ CapExは「未来需要への投票」である


今回、TSMCは2026年の設備投資計画を、当初の$52B~56Bから$60B~64Bへ引き上げた。

さらに会社は、今後3年間のCapExが過去3年間を大幅に上回るという従来の説明から、今後3年間は過去3年間をさらに大きく上回るとの表現へ踏み込んだ。

経営者は、言葉だけなら強気になれる。

しかし、工場、製造装置、先端パッケージ能力へ実際に資本を投じる判断は軽くない。

しかも今回、TSMCが示した投資規模は2026年の年間CapExだけではない。

アリゾナでは追加で$100Bを投資する。

これによりアリゾナへの累計投資額は$265Bとなる。

追加投資では、2nm以下の最先端ロジック向けを含む複数のウエハー工場と、先端パッケージ工場を建設する。

Q&Aでは、追加される工場について「約4棟」と説明された。

同時に台湾では、今後数年間で先端プロセスおよび先端パッケージの工場を13棟建設する計画である。

これは、単なる四半期需要への対応ではない。

TSMCは、2030年代まで続く半導体需要を前提に、台湾と米国の両方で生産基盤を拡張しようとしている。

もちろん、追加$100Bが直ちにすべて支出されるわけではない。

アリゾナの増設時期は、実際の市場需要に応じて決定される。

それでも、TSMCが建設候補地、人材、インフラ、装置、顧客との調整を進め、需要が確認され次第、生産能力を立ち上げられる体制を準備している意味は大きい。

TSMCのAI需要への確信を見るなら、CEOの形容詞ではなく、CapExを見るべきだと思う。

CapExは、経営陣による未来需要への投票である。


■ 巨額投資と増配を同時に実行する


TSMCは、巨額設備投資を進めながら株主還元も拡大している。

2025年の年間配当は1株当たりNT$18。

2026年はNT$24となり、前年から33%増加する。

さらに会社は、2027年も1株当たり配当を増加させる方針を示した。

2026年の設備投資は$60B~64B。

アリゾナへの追加投資は$100B。

台湾では13棟の先端プロセス・先端パッケージ工場を建設する。

それでも配当を減らすのではなく、増やす。

これはTSMCのキャッシュ創出力の強さを示している。

ただし、重要なのは「投資も配当も多い」という表面的な話ではない。

TSMCは、将来の成長機会に必要な資本を最優先で投じた上で、それでも余るキャッシュを株主へ還元できている。

巨額CapExと増配を同時に実行できる企業は多くない。

それを可能にしているのが、粗利率67.7%、営業利益率60.3%、営業CF NT$783.36Bという事業構造である。


■ Agentic AIはGPUだけでなくCPU需要も増やす


今回の決算で、もう一つ重要だったのがAgentic AIである。

これまでAIデータセンターの主役は、GPUやAIアクセラレータだった。

しかしAgentic AIでは、複数のAIエージェントが外部システムと連携し、継続的に推論し、判断し、処理を実行する。

その結果、AIアクセラレータだけでなく、汎用的な処理や制御を担うCPUの役割も再び大きくなる。

TSMCは、Agentic AIの普及によってAIデータセンター内のCPU需要が増加すると説明した。

しかも、CPUのアーキテクチャがx86、Arm、RISC-Vのどれであっても、そのほぼすべてがTSMCの顧客だという。

これは、TSMCの利益捕捉力を考える上で非常に重要である。

NVIDIAのGPUが伸びる。

BroadcomやMarvellが関わるカスタムASICが増える。

Arm系CPUが伸びる。

x86 CPUが再評価される。

新しいXPUが登場する。

設計企業やアーキテクチャの勝敗は変化する。

しかし、その多くが最終的にTSMCの先端プロセスと先端パッケージを必要とする。

TSMCは、どのAIチップ設計企業が勝つかを一点で当てる必要がない。

AI計算量の増加そのものを、製造段階で捕捉できる。

これはTSMCの最大の強みの一つだと思う。


■ 先端パッケージの供給不足は、TSMCの成長を止めるのか


AI半導体では、先端ロジックを製造するだけでは製品にならない。

GPUやカスタムASICとHBMを高密度に接続する先端パッケージが必要になる。

現在、TSMCの先端パッケージ能力は非常に逼迫している。

CEOは、パッケージ能力の不足が顧客の成長を制限しているとまで説明した。

そのためTSMCは、他社のパッケージ技術や外部能力の拡大を必ずしも脅威と見ていない。

外部のパッケージ供給が増えれば、顧客はより多くのAI製品を出荷できる。

その結果、TSMCのフロントエンドにおけるウエハー需要も増えるからだ。

この発言は興味深い。

通常、自社が供給不足なら、他社の参入は競争激化として警戒する。

しかしTSMCは、先端パッケージ市場全体の供給拡大を歓迎している。

それほどAI半導体の需要が強く、現時点ではシェア争いよりも供給能力の不足が大きな問題になっている。

同時に、先端パッケージはTSMCの成長機会であるとともに、顧客の成長を制約するボトルネックでもある。

次回以降は、CoWoSを含む先端パッケージ能力がどの速度で拡大し、需要とのギャップを縮められるかを確認する必要がある。


■ 2nmは成長源であり、短期的な粗利率の逆風でもある


Q2から2nm売上が計上され、ウエハー売上構成比は3%となった。

量産開始直後の四半期で全社ウエハー売上の3%を占めたことから、立ち上がりは非常に速い。

一方で、最新ノードは量産開始直後から高利益率になるわけではない。

設備の初期稼働率、歩留まり改善、減価償却費、製造工程の最適化などに時間がかかる。

TSMCは、Q3の粗利率中央値がQ2の67.7%から66%へ低下する主因として、2nmの急速な立ち上がりを挙げた。

2nmは2026年後半の粗利率を約3~4ポイント希薄化する見通しである。

一見すると悪材料に見える。

しかし、これは需要が弱いことによる利益率低下ではない。

次世代ノードを急速に立ち上げるための初期コストである。

売上はQ3ガイダンス中央値でQoQ約+12%増える。

一方で粗利率は一時的に低下する。

ここで見るべきなのは、粗利率が67.7%から下がることそのものではない。

2nmがどの速度で売上構成比を高めるか。

歩留まりと稼働率が改善するか。

初期コストを吸収した後、利益率への貢献が始まるか。

である。

TSMCの投資家にとって、2nmは短期的には利益率の逆風だが、長期的には次の売上・利益成長源になる。


■ A14は、すでに2028年の未来を作り始めている


今回の決算では、2nmの次に位置するA14についても重要な進展が示された。

A14は、N2に続く第2世代のナノシートトランジスタを採用する。

N2と比較して、

同じ消費電力で10~15%の速度向上。

同じ速度で25~30%の消費電力削減。

約20%のチップ密度向上。

を見込む。

社内の製品相当テストでは、デバイス性能と256Mb SRAM歩留まりの双方で約90%に到達した。

スマートフォンとHPC・AIの両方で顧客の関心が強く、新規テープアウト活動は計画を前倒ししている。

A14は2027年にリスク生産を開始し、2028年に量産へ入る予定である。

さらにA14ファミリーとしてA13とA12が追加され、両プロセスは2029年に量産を予定している。

これは、TSMCを短期のAIブームだけで見るべきではないことを示している。

現在の売上を牽引しているのは3nmと5nm。

次の成長源は2nm。

その先ではA14が2028年に量産へ入り、A13とA12が2029年に続く。

最先端プロセスは、一つの世代が完成してから次を考えるものではない。

5~7年先の顧客需要を見ながら、複数世代を同時に開発する。

TSMCが2026年に見ている未来は、2026年のGPU需要ではない。

すでに2028年、2029年の計算需要を見ている。

この時間軸の長さは、アメリカンオオカミFuture40でTSMCを評価する上でも重要になる。


■ NVIDIAでさえTSMCの価格決定権を簡単には崩せない


今回の決算で私が最も驚いた数字は、粗利率67.7%だった。

TSMCは過去最大規模の設備投資を続けながら、製造業とは思えない利益率を維持している。

CFOは、今回の粗利率改善について、高い稼働率、生産性改善、ノード間の能力最適化などが寄与したと説明している。

一方で私は、この利益率を長期にわたって維持できる背景には、TSMCの価格決定権があると考えている。

ここで重要なのは、TSMCが価格決定権を持っていることではない。

価格決定権を持ちながら、それを短期的な利益最大化のために乱用していないことである。

TSMCは以前の決算説明会で、自社の価格戦略について「Strategic, not opportunistic(機会主義ではなく戦略的)」と表現している。

つまり、顧客との長期的な関係を維持しながら、継続的な技術投資を支えられる価格を設定しているということだ。

NVIDIAをはじめとする最先端半導体の顧客は、当然ながら製造コストを少しでも下げたい。

通常であれば、大口顧客ほど価格交渉力は強くなる。

しかし、最先端半導体では話が違う。

顧客が必要としているのは、「安く作れる工場」ではない。

高い歩留まりで量産できること。

必要な数量を納期通りに供給できること。

さらに先端パッケージまで含めて製品ロードマップを支えられることである。

この条件を大規模に満たせる製造パートナーは、事実上TSMCへ集中している。

だからNVIDIAほどの巨大企業であっても、「価格が高いから他社へ移る」という交渉は簡単にはできない。

もちろん、TSMCが自由に価格を決められるわけではない。

顧客との長期的な信頼関係を維持することも、TSMCにとって重要な競争力だからだ。

それでも、最先端プロセスでは供給能力を握るTSMC側に、価格決定の主導権が残る。

TSMCの粗利率67.7%は、単純な値上げの結果ではない。

高い稼働率、生産性改善、優れた歩留まり、製品ミックス、そして長期的な価格決定権。

それらが積み重なった結果として実現している利益率なのである。


■ なぜ顧客はTSMCから離れられないのか


今回の決算で、CEOはファウンドリーの切り替えについて、印象的な表現を使った。

「コンビニで牛乳を買い替えるようなものではない。」

この一言は、TSMCのモートを非常によく表していると思う。

最先端半導体では、価格だけを見て製造先を変更することはできない。

ファウンドリーを変更するには、製品設計、IP、EDA環境、物理設計、検証、テストチップ、生産能力の準備まで見直す必要がある。

さらに、新しい製造パートナーと量産実績を積み重ね、高い歩留まりを確立しなければならない。

TSMCによれば、この移行には約5年を要する。

つまり、顧客がTSMCを選んでいる理由は、単に「世界最高の技術を持っているから」だけではない。

一度TSMCのプロセスを前提に製品を設計すると、その後の開発、生産、供給体制まで含めて、TSMCを中心としたエコシステムが構築される。

だから、他社へ移るコストは非常に大きい。

このスイッチングコストこそが、TSMCの価格決定権を支えている重要な要因の一つである。

TSMCのモートは、歩留まりや先端プロセスだけではない。

顧客がTSMCを選び続ける限り、量産データは蓄積され、歩留まりは改善し、さらに次の顧客を引き寄せる。

この自己強化の循環こそが、TSMC最大のモートなのだ。


■ TSMCの本当のモートは「歩留まり」だけではない


TSMCの強さを説明するとき、歩留まりは重要である。

同じ枚数のウエハーを投入しても、良品として得られるダイの数が違えば、顧客が負担する完成品1個当たりの実質コストは大きく変わる。

そのため、ウエハー単価だけを比較してTSMCが高い、競合が安いとは判断できない。

歩留まり、性能、消費電力、納期、設計変更コストまで含めた総コストで考える必要がある。

ただし、本当のモートを歩留まりだけに限定するのも不十分だと思う。

歩留まりは、TSMCの競争優位の一部であり、同時に長年の量産学習が生み出した結果でもある。

顧客が増える。

量産数量が増える。

製造データが蓄積する。

不良の原因を特定する。

工程を改善する。

歩留まりが上がる。

供給能力と信頼が高まる。

さらに顧客が集まる。

TSMCは、この正の循環に入っている。

顧客が増えるほど、設計資産、IP、EDAツール、先端パッケージ、材料、装置メーカーとの協力関係も厚くなる。

これは単なる製造技術の差ではない。

量産学習と設計エコシステムが互いを強化する構造である。


■ Samsungとの差は、設備投資額だけでは埋まらない


Samsungも最先端プロセスへ巨額の設備投資を続けている。

Intel Foundryも米国政府の支援を受けながら、先端製造能力の構築を進めている。

しかし、最先端ファウンドリーの競争は、設備投資額の大きさだけで決まらない。

同じEUV装置を導入しても、顧客基盤、歩留まり、量産データ、設計エコシステム、先端パッケージ能力、顧客からの信頼まで一度に獲得できるわけではない。

CEOは、ファウンドリー競争で最も重要なのは、

技術。

製造。

顧客の信頼。

という三つの基礎だと説明した。

政府支援や資金は重要だが、それだけで技術パートナーとして選ばれるわけではない。

顧客が少なければ量産データが増えにくい。

量産データが少なければ工程改善が遅れる。

歩留まり改善が遅れれば、顧客は重要製品を預けにくい。

顧客が増えなければ、さらに量産学習で差が付く。

逆にTSMCは、顧客が集中するほど学習速度が上がり、次世代ノードへの投資余力も増える。

この循環が続く限り、競合企業が一世代の技術仕様で近づいたとしても、事業全体の差は簡単には縮まらない。

SamsungやIntelとの差は、単一ノードの性能競争ではない。

顧客、量産、歩留まり、設備投資が回り続ける複利構造の差である。


■ 巨額CapExはコストであると同時に参入障壁でもある


TSMCの$60B~64Bという設備投資は、当然ながらコストである。

減価償却費を増やし、FCFを圧迫し、需要予測を誤れば稼働率低下を招く。

したがって、CapExは大きければ大きいほど良いわけではない。

しかし、TSMCが高い稼働率と利益率を維持しながら投資を続けられる限り、そのCapExは競合企業にとっての参入障壁にもなる。

先端ノードだけではない。

先端パッケージ。

テスト。

マスク製造。

海外生産拠点。

研究開発。

人材育成。

これらを同時に拡大する。

競合企業が追いつくためには、同等の資本を投じるだけでなく、投資した設備を埋める顧客需要も必要になる。

TSMCには顧客がいるから投資できる。

投資するから供給能力が増える。

供給能力が増えるから、顧客がさらに集まる。

巨額CapExそのものがモートなのではない。

巨額CapExを高い投資効率で繰り返せることがモートなのである。


■ 私のポートフォリオから見たTSMC


私のポートフォリオでは、NVIDIAをAIコンピューティングのコアとして保有している。

Marvellでは、カスタムシリコンと接続の拡大を見る。

Dellでは、AIサーバーとAIファクトリーの実装を見る。

Rubrikでは、AI時代に増え続けるデータの復元力とセキュリティを見る。

TSMCは、これらと同じレイヤーにいる企業ではない。

NVIDIAのGPUが勝っても、BroadcomやMarvellが関わるカスタムASICが増えても、Arm系CPUが伸びても、x86 CPUが再び拡大しても、AIデータセンター内のネットワーク半導体が増えても、その多くがTSMCの製造能力を通過する。

つまりTSMCは、どのAIチップ設計企業が最終的に勝つかを一点で当てなくても、AI計算需要の増加そのものを捕捉できる。

NVIDIAは、AI計算の標準プラットフォームである。

TSMCは、その設計を物理的なシリコンへ変換する製造プラットフォームである。

両社は競合ではない。

NVIDIAが設計とソフトウェアの料金所であるなら、TSMCは製造と量産の料金所である。

ただし、ポートフォリオ上では同じAI需要に接続するため、完全に独立した分散投資にはならない。

NVIDIAとTSMCを同時に保有すれば、AI半導体需要の拡大を異なるレイヤーから捕捉できる一方、AIインフラ投資の減速や地政学的ショックでは、同時に影響を受ける可能性がある。

したがって、TSMCを実際にポートフォリオへ加えるかどうかは、企業価値だけでなく、現在の保有比率、相関、株価、バリュエーションまで含めて判断する必要がある。

一方で、保有の有無にかかわらず、TSMCは私のポートフォリオを検証する上で最重要の先行指標になる。

HPC構成比。

先端ノードの売上比率。

2nmの立ち上がり。

先端パッケージ能力。

CapEx。

顧客の顧客から得る需要シグナル。

これらが強い間、NVIDIAやMarvellを中心とするAI半導体ストーリーは、少なくとも製造現場では継続している。

反対に、TSMCがCapExを下げ、顧客需要への表現を弱め、先端ノードの稼働率が低下し始めたときは、AI半導体ポートフォリオ全体を見直す必要がある。


■ アメリカンオオカミFuture40でTSMCを5位に置く理由


私は、アメリカンオオカミFuture40でTSMCを5位に置いた。

今回の決算は、その評価をさらに補強するものだった。

Future40では、企業を単純な売上成長率や株価上昇率では見ていない。

2031年のボトルネックは何か。

未来の利益プールを捕捉できるか。

利益が競争や代替先へ漏れずに残るか。

その防衛構造が5年間で拡大するか。

この四つで考えている。

TSMCを当てはめると、構造は明確である。

2031年のボトルネックは、AIモデルそのものだけではない。

最先端ロジックを、高い歩留まりと巨大な供給能力で量産できる製造基盤もボトルネックになる。

TSMCは、GPU、AI ASIC、CPU、ネットワーク半導体、スマートフォン向けSoCまで、設計企業の勝敗をまたいで未来の利益プールを捕捉する。

NVIDIAが勝っても、カスタムASICが増えても、CPUアーキテクチャが変わっても、製造先としてTSMCに残る可能性が高い。

そして防衛構造は、技術だけではない。

歩留まり。

量産データ。

顧客信頼。

設計エコシステム。

先端パッケージ。

巨額CapEx。

これらが時間とともに積み上がる。

さらに今回、2nmの量産が始まり、A14は2028年、A13とA12は2029年の量産へ向けて進んでいる。

Future40が見る2031年の時点でも、TSMCは現在と同じ技術を売っている企業ではない。

現在の3nmから2nmへ。

2nmからA14へ。

A14からA13、A12へ。

数世代先へ技術を更新しながら、顧客を同じエコシステム内に残す。

TSMCがAI需要を予測できることは、Future40で高く評価した直接の理由ではない。

因果関係は逆である。

世界中の最先端半導体需要がTSMCへ集まるほど製造モートが深いから、その結果としてAIの未来まで見える。

今回のQ2決算は、TSMCをFuture40の5位に置いた理由を、売上、利益率、CapEx、技術ロードマップ、顧客との関係のすべてで確認する四半期だった。


■ TSMCは「AI時代の料金所」なのか


私は、TSMCをAI時代の料金所と考えている。

ただし、VisaやASMLのように、一つの通過点を独占する単純な料金所ではない。

TSMCの料金所は、顧客が設計を始める前から作られる。

どのプロセスを使うか。

どのIPを使うか。

どのEDA環境で設計するか。

どの先端パッケージを使うか。

何年後に、どの数量を量産するか。

こうした判断を顧客と共同で積み上げる。

そして一度製品がTSMCのプロセスへ組み込まれると、簡単には別のファウンドリーへ移れない。

同時にTSMCは、NVIDIAだけに依存する料金所でもない。

GPUからカスタムASICへ需要が移っても捕捉できる。

CPUアーキテクチャがx86からArmへ移っても捕捉できる。

スマートフォン需要が弱くても、HPCが伸びれば捕捉できる。

AIアクセラレータだけでなく、ネットワーク、CPU、電源管理IC、センサー、先端パッケージまで、計算量の増加に伴う半導体需要を広く捕捉する。

その意味でTSMCは、特定の製品の勝者ではない。

半導体設計企業同士が競争する市場の下に置かれた、製造インフラの料金所である。


■ 投資家としての考え


今回の決算を見て、TSMCの企業価値はさらに強くなったと感じる。

2026年の米ドル建て売上高は40%をわずかに上回る成長が見込まれる。

HPC構成比は66%。

粗利率は67.7%。

営業利益率は60.3%。

2nmの量産が始まり、2026年のCapExは$60B~64Bへ引き上げられた。

アリゾナには追加で$100Bを投じ、台湾では13棟の先端プロセス・先端パッケージ工場を建設する。

A14は2028年、A13とA12は2029年の量産を予定している。

数字と設備投資と技術ロードマップのすべてが、同じ方向を向いている。

ただし、投資判断では企業価値と株価を分けて考える必要がある。

TSMCが不可逆的なモートを持つことと、現在の株価が常に割安であることは同じではない。

さらにTSMCには、明確なリスクがある。

台湾を巡る地政学。

海外工場のコスト。

巨額CapEx。

為替。

2nm立ち上がりによる利益率希薄化。

先端パッケージ能力の不足。

一部の巨大顧客への需要集中。

AIインフラ投資の減速。

特に、今後の粗利率はQ2の67.7%をそのまま延長すべきではない。

2nmの初期コストと海外工場の希薄化は、明確な逆風になる。

一方で、短期的に利益率が低下したとしても、それが需要減少ではなく次世代ノードの立ち上がりによるものであれば、投資ストーリーの毀損ではない。

見るべきなのは、

2nmの売上構成比が上がるか。

歩留まりが改善するか。

Q3以降も売上ガイダンスを達成するか。

CapExに見合う需要とFCFが続くか。

先端パッケージの供給不足が緩和するか。

海外工場のコストを価格と生産性で吸収できるか。

である。

TSMCは、AI需要の恩恵を受ける企業である。

しかし、それだけではない。

AI需要を最も早く知り、設計企業の勝敗をまたいで製造需要を捕捉し、その利益を次の技術と生産能力へ再投資する企業である。

私は、そこにTSMCの本当の強さがあると思う。

■ 次回決算チェックポイント


・Q3売上ガイダンス$44.6B~$45.8Bを達成できるか
・2026年米ドル建て売上成長率40%超の見通しが維持されるか
・AI半導体売上の中長期成長見通しに変化はあるか
・顧客および顧客の顧客からの需要シグナルに変化はあるか
・データセンター建設、電力、場所、ラックの制約に変化はあるか
・HPC売上構成比66%からさらに上昇するか
・2nm売上構成比3%からの立ち上がり速度
・在庫回転日数87日が2nm立ち上がりに伴う一時的な増加にとどまるか
・2nmによる粗利率3~4ポイントの希薄化が想定内に収まるか
・粗利率65~67%、営業利益率56~58%のQ3ガイダンスを達成できるか
・3nm、5nm、7nmの売上構成比と世代移行
・A14の2027年リスク生産、2028年量産計画に変化はないか
・A13、A12の2029年量産準備
・CoWoSを含む先端パッケージ能力の増設進捗
・先端パッケージ不足による顧客の成長制約が緩和するか
・CPU、GPU、XPUの需要配分
・Agentic AIによるCPU需要が実際の売上へ表れるか
・2026年CapEx $60B~64Bの執行状況
・今後3年間のCapEx見通しに追加変更はあるか
・アリゾナ追加$100B、累計$265Bの投資スケジュール
・台湾における13棟の先端プロセス・先端パッケージ工場の建設進捗
・CapEx増額後も営業CFとFCFを維持できるか
・海外工場による粗利率希薄化が想定範囲内か
・Samsung、Intel Foundryとの競争環境に変化があるか
・先端プロセスの稼働率、歩留まり、コスト改善に関する会社コメント
・年間配当NT$24と2027年の増配方針が維持されるか
・Q3売上ガイダンス$44.6B~$45.8Bを達成できるか
・2026年米ドル建て売上成長率40%超の見通しが維持されるか
・AI半導体売上の中長期成長見通しに変化はあるか
・顧客および顧客の顧客からの需要シグナルに変化はあるか
・データセンター建設、電力、場所、ラックの制約に変化はあるか
・HPC売上構成比66%からさらに上昇するか
・2nm売上構成比3%からの立ち上がり速度
・在庫回転日数87日が2nm立ち上がりに伴う一時的な増加にとどまるか
・2nmによる粗利率3~4ポイントの希薄化が想定内に収まるか
・粗利率65~67%、営業利益率56~58%のQ3ガイダンスを達成できるか
・3nm、5nm、7nmの売上構成比と世代移行
・A14の2027年リスク生産、2028年量産計画に変化はないか
・A13、A12の2029年量産準備
・CoWoSを含む先端パッケージ能力の増設進捗
・先端パッケージ不足による顧客の成長制約が緩和するか
・CPU、GPU、XPUの需要配分
・Agentic AIによるCPU需要が実際の売上へ表れるか
・2026年CapEx $60B~64Bの執行状況
・今後3年間のCapEx見通しに追加変更はあるか
・アリゾナ追加$100B、累計$265Bの投資スケジュール
・台湾における13棟の先端プロセス・先端パッケージ工場の建設進捗
・CapEx増額後も営業CFとFCFを維持できるか
・海外工場による粗利率希薄化が想定範囲内か
・Samsung、Intel Foundryとの競争環境に変化があるか
・先端プロセスの稼働率、歩留まり、コスト改善に関する会社コメント
・年間配当NT$24と2027年の増配方針が維持されるか



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