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【Micron Technology(MU)Q3 FY2026】AIブームが生んだ幻想。メモリ株に不可逆モートは存在しない!

Micron Technology(MU)のQ3 FY2026決算をアウトプットする。

プライベートが非常に忙しくなり、なかなか整理できなかったので、私がずっと考えていたこともしっかり交えて今回の決算を通じて、アウトプットすることにした。

まず、今回の決算は、市場予想を大きく上回る記録的な内容だった。

HBM需要を背景に売上高、粗利率、EPSは過去最高水準を更新。

Q4ガイダンスもさらに増収増益を見込む非常に強い内容となっている。

数字だけ見れば、AIファクトリー時代の最大の勝ち組に見える。

しかし私は、この決算を読んで全く逆の結論に至った。

今回の決算は、「メモリ株には不可逆モートが存在しない」ことを、むしろ証明した決算だったと考えている。

この記事では、決算数字を整理したうえで、AIファクトリーに不可欠なHBMとGPUを同じ視点で評価してはいけない理由、そしてMicronをコア銘柄にできない理由を構造的に整理していく。


Q4 FY2025 → Q1 FY2026 → Q2 FY2026 → Q3 FY2026


なお、MicronはQ3 FY2026から事業区分を以下の4事業で整理している。

・CMBU:Cloud Memory Business Unit
大型クラウド顧客向けメモリ、および全データセンター顧客向けHBM。

・CDBU:Core Data Center Business Unit
中堅クラウド、エンタープライズ、OEM向けデータセンターメモリ、および全データセンター顧客向けストレージ。

・MCBU:Mobile and Client Business Unit
モバイル・PC向けメモリおよびストレージ。

・AEBU:Automotive and Embedded Business Unit
自動車、産業、コンシューマー向けメモリおよびストレージ。

この分類上、HBMはCMBUに含まれる。Micronの10-Qでも、CMBUは「大型ハイパースケールクラウド顧客向けメモリ、および全データセンター顧客向けHBM」と説明されている。

・売上高:$11.3B → $13.6B → $23.9B → $41.5B
YoY:+46.0% → +56.7% → +196.3% → +345.7%
QoQ:+21.7% → +20.6% → +74.9% → +73.7%

Q1までは強いメモリ回復局面だったが、Q2、Q3ではAIファクトリー向け需要とメモリ価格上昇が一気に数字へ反映された。

・CMBU(Cloud Memory Business Unit)
売上:$4.5B → $5.3B → $7.7B → $13.8B
売上構成比:40.2% → 38.7% → 32.5% → 33.2%
YoY:+213.5% → +99.5% → +162.9% → +306.6%
QoQ:+34.2% → +16.3% → +46.7% → +77.7%

CMBUは、MicronのAIファクトリー色が最も強い事業。HBMはこのCMBUに含まれる。
Q3では$13.8Bまで拡大し、全社売上の約33%を占める。
ただし、Q4 FY2025とQ1 FY2026の時点では40%前後あった構成比が、Q2・Q3では30%台前半に低下している。これはCMBUが弱くなったというより、CDBUやMCBUも急激に価格上昇の恩恵を受けたため、全社的にメモリ価格上昇が広がったという見方が自然だと思う。
Q3のCMBU売上は$13.769Bで、Q2の$7.749Bから+78%。会社は、価格上昇とbit shipment増加が要因と説明している。

・CDBU(Core Data Center Business Unit)
売上:$1.6B → $2.4B → $5.7B → $11.5B
売上構成比:13.9% → 17.4% → 23.8% → 27.8%
YoY:-23.0% → +3.8% → +210.8% → +653.2%
QoQ:+3.1% → +50.9% → +139.1% → +102.6%

今回、最も変化が大きいのはCDBU。
Q4 FY2025時点では全社売上の約14%だったが、Q3 FY2026では約28%まで拡大した。
CDBUは、データセンター向けDRAMだけでなく、データセンターSSDも含む事業である。Q3ではデータセンターSSD売上が$5Bを超え、前四半期から倍増したと会社は説明している。
この数字を見ると、今回のMicron決算は「HBMだけ」の決算ではない。

・MCBU(Mobile and Client Business Unit)
売上:$3.8B → $4.3B → $7.7B → $11.5B
売上構成比:33.2% → 31.2% → 32.3% → 27.8%
YoY:+24.5% → +63.2% → +244.9% → +253.9%
QoQ:+15.5% → +13.2% → +81.2% → +49.4%

MCBUはモバイル・PC向け。
AIファクトリーそのものではないが、メモリ市況全体の改善を強く受けている。

・AEBU(Automotive and Embedded Business Unit)
売上:$1.4B → $1.7B → $2.7B → $4.6B
売上構成比:12.7% → 12.6% → 11.3% → 11.2%
YoY:+16.6% → +48.5% → +161.9% → +311.2%
QoQ:+27.3% → +19.9% → +57.4% → +71.1%

AEBUも急成長している。
自動車・産業向けは通常、AIサーバーほど急激に伸びる領域ではない。それでもQ3でYoY +311.2%となっている。
これは自動車・産業の構造成長というより、広範囲にメモリ価格が上昇している影響がかなり大きいと考える。

Q3 FY2026 製品別売上

・DRAM:$31.3B
売上構成比:76.0%
QoQ:+67.0%
YoY:+343.0%

・NAND:$9.9B
売上構成比:24.0%
QoQ:+99.0%
YoY:+361.0%

Q3のDRAM売上は$31.328B、NAND売上は$9.943B。会社資料では、DRAMが売上の76%、NANDが24%と開示されている。
Q3のASP、つまり平均販売価格の上昇も極端だった。

・DRAM ASP:QoQでlow-60%上昇
・NAND ASP:QoQでmid-80%上昇

bit shipmentはDRAMがlow-single digit増、NANDがmid-single digit増にとどまる。つまり、Q3の売上急増は数量増というより、価格上昇が主因である。だから今回の利益拡大は、「数量」ではなく、「価格」が利益を押し上げた決算だった。

・GAAP粗利率:44.7% → 56.0% → 74.4% → 84.6%
・non-GAAP粗利率:45.7% → 56.8% → 74.9% → 84.9%

粗利率は異常な水準まで上がっている。
Q3 FY2026では84.9%まで上昇した。
会社はQ3の粗利率改善について、主に価格上昇によるものと説明している。
これは見た目には「モート」に見える。

・GAAP営業利益率:32.3% → 45.0% → 67.6% → 80.4%
・non-GAAP営業利益率:35.0% → 47.0% → 69.0% → 81.2%

営業利益率も急上昇している。
Q3 FY2026のnon-GAAP営業利益率は81.2%。
メモリ企業としては過去の常識では考えにくい利益率である。
固定費比率が高い製造業のため、一度ASP(平均販売価格)が上昇すると営業利益率は急激に拡大する。

・GAAP EPS:$2.83 → $4.60 → $12.07 → $24.67
・non-GAAP EPS:$3.03 → $4.78 → $12.20 → $25.11

EPSは爆発的に伸びた。
Q3 FY2026のnon-GAAP EPSは$25.11。
前年同期の$1.91から大幅増加である。Q3プレスリリースでも、non-GAAP EPSは$25.11、GAAP EPSは$24.67と開示されている。
この数字だけを見ると、Micronは極めて割安に見える。

・営業CF:$5.7B → $8.4B → $11.9B → $25.4B
営業CFマージン:50.6% → 61.7% → 49.9% → 61.2%
・FCF:$0.8B → $3.9B → $6.9B → $18.3B
FCFマージン:7.1% → 28.6% → 28.9% → 44.2%

今回の決算は、会計上の利益だけではなく、キャッシュフローにもきちんと反映されている。ただし、FCFの定義には注意が必要。
Micronのadjusted free cash flowは、営業CFから、政府インセンティブ控除後のnet CapExを差し引く形で示されている。Q3のnet CapExは$7.084Bで、FCFは$18.304B。

・net CapEx:$4.9B → $4.5B → $5.0B → $7.1B
net CapEx / 売上高:43.5% → 33.0% → 21.0% → 17.1%

設備投資は高い。ただし、売上が急拡大しているため、売上比率では低下している。
Q3後の見通しでは、Q4 FY2026のCapExは約$10B、FY2026通期では約$27Bになる見込み。FY2027は四半期CapExがQ4 FY2026を上回る見込みで、増加分の半分超は建設CapExになると会社は説明している。 ここは今後の重要論点。
現在は価格上昇によりFCFが急拡大しているが、供給能力拡大のためのCapExも同時に大きく増えている。この投資が2028年以降の供給増につながる。

・SBC:$262M → $280M → $297M → $341M
SBC / 売上高:2.3% → 2.1% → 1.2% → 0.8%

SBC、つまり株式報酬は売上比率ではかなり低い。
Micronの株主価値を見るうえで、主な論点はSBCではなく、メモリ価格サイクル、CapEx、FCF、そして自社株買いのタイミングだと思う。

・GAAP希薄化後株式数:1.131B → 1.138B → 1.142B → 1.145B

株式数は大きく減っていない。
Micronは財務改善を進めており、Q3時点ではネットキャッシュが大きく積み上がっている。
会社は、CHIPS契約の2周年にあたる2026年12月9日以降、資本還元を増やす意向を示している。さらに、長期的には excess cash の100%を株主へ還元する方針も示している。
ただし、ここでも重要なのはタイミング。
メモリ株で自社株買いが最も効くのは、ピーク利益で株価が高い局面ではなく、サイクルの谷で市場が見捨てた局面である。

・現金・投資等・制限付き現金:$11.9B → $12.0B → $16.7B → $30.2B
・在庫:$8.4B → $8.2B → $8.3B → $8.6B

Q3 FY2026末の現金・投資等・制限付き現金は$30.155B。10-Qでは、cash and marketable investments が$30.13Bと記載されている。
在庫はQ3時点で$8.567B。
売上が爆発的に増えている一方で、在庫は大きく膨らんでいない。
この点は非常に良い。
ただし、次回以降は在庫日数の反転に注意したい。
Q3 prepared remarksでは、在庫は$8.6B、days of inventoryは120日、DRAM在庫は120日未満で非常にタイトと説明されている。

・Q4 FY2026ガイダンス
売上高:$50.0B ± $1.0B
QoQ:約+20.6%
YoY:約+337%

non-GAAP粗利率:約86.0%
QoQ:+約1.1pt

non-GAAP EPS:$31.00 ± $1.00
QoQ:約+23.5%
YoY:約16倍約(+1,500%)

Q4 FY2026ガイダンスは非常に強い。
売上高はQoQ約+20%、YoY約+337%を見込み、non-GAAP EPSもQoQ約+24%とさらに過去最高を更新する見通しである。
ただし、ここで見落としてはいけない一文がある。会社はQ4粗利率見通しについて、「価格上昇率の意味ある鈍化(meaningful moderation in pricing appreciation)」を反映していると説明した。
これは価格下落を意味するものではない。
しかし、価格上昇の”加速度”が落ち始めているという意味では、メモリサイクルを考える上で極めて重要なシグナルだと思う。


数字は圧倒的に強い。

売上高はQ4 FY2025の$11.3BからQ3 FY2026の$41.5Bまで拡大。

non-GAAP粗利率は45.7%から84.9%へ上昇
non-GAAP EPSは$3.03から$25.11へ拡大。
FCFは$0.8Bから$18.3Bまで増えた。

特に今回の決算で特徴的だったのは、bit shipmentは小幅な増加にとどまる一方、DRAM ASPはQoQでlow-60%、NAND ASPはmid-80%上昇したことだ。

今回の利益拡大は、数量よりも価格上昇によって生み出された部分が大きい。

CMBUだけでなく、CDBU、MCBU、AEBUまで全事業で売上が急拡大している。

つまり今回の決算は、HBMだけが強かった決算ではない。

AIファクトリー需要を背景に、メモリ市場全体の需給が逼迫し、その結果として価格上昇が全社の売上、粗利率、営業利益率、FCFを押し上げた決算である。

ここまでなら、MicronはAIファクトリー時代の最大級の勝ち組に見える。

しかし、私は今回の決算を読み終えたあと、むしろ「メモリ株に不可逆モートは存在しない」という考えをさらに強めた。

AIファクトリーにHBMは必要不可欠である。
これは間違いない。

しかし、AIファクトリーに必要であることと、不可逆モートを持つことは全く別の話である。

ここを混同すると、AI投資は必ずどこかで判断を誤ると思っている。

■ AIファクトリーに必要だからといって、モートがあるとは限らない


まず、私がよく使うモートについて考えてみたい。

ここでの「モート」とは、需要が減少しても利益率を守れる構造である、と定義する。

AIファクトリーを構成する部品は数多く存在する。

GPU、HBM、CPU、NIC、光通信、Ethernet、ストレージ、電源、冷却。

どれ一つ欠けてもAIファクトリーは成立しない。

つまり、HBMはAIファクトリーに不可欠である。
ここに異論はない。

しかし、多くの投資家はここから一歩飛躍してしまう。

AIファクトリーに必要→だからHBMメーカーは長期的に勝ち続ける、この論理は必ずしも成立しない。

なぜなら、「必要不可欠」であることと、「価格決定権を持つこと」は全く別だからだ。

私は今回の決算を読んで、その違いを改めて強く感じた。


■ GPUとHBMを同じ投資対象として見てはいけない


HBMとGPU。

どちらもAIファクトリーには絶対に必要だ。

しかし、投資家として見るべき構造は全く違う。

例えばGPU。

仮にNVIDIAのGPUを100万個欲しい企業があったとしても、「代わりに別会社のGPUでいい」とは簡単にはならない。

CUDA、ライブラリ、ソフトウェア資産、開発者コミュニティ、AIフレームワーク、推論・学習環境。

これら全体がGPUと一体化している。

つまり顧客が買っているのはGPUではなく、AIコンピューティングプラットフォームそのものなのである。

だからNVIDIAは価格を決められる。

価格を上げても需要が残る。

これが私が考えるモートである。

一方HBMはどうか?

HBMも極めて高性能である。

しかし顧客はMicron製だから買うわけではない。
SK hynixでもいい。Samsungでもいい。

条件を満たしていればよい。

もちろん品質差は存在する。

歩留まりも違う。

認証もある。

最終的には「規格を満たしたHBM」であれば代替可能なのだ。

つまり、顧客が欲しいのはMicronではない。
HBMそのものなのだ。

この違いは極めて大きい。


■ 高い参入障壁と、深いモートは全く違う


ここは投資家が最も混同しやすい部分だと思う。

HBMは非常に難しい。

数千億円規模の設備投資。

最先端プロセス。

積層技術。

歩留まり改善。

高度な実装技術。

簡単に参入できる世界ではない。

だから、「参入障壁が高い」。

これは事実だ。

しかし、参入障壁が高いことは、不可逆モートを意味しない。

重要なのは、一度市場へ入った企業同士の競争構造である。

現在HBM市場には、SK hynix、Samsung、Micron。この3社が存在する。

つまり、競争相手は既に存在している。

新規参入を心配する必要はない。

問題はその先である。


■ 供給不足では価格が上がる。しかし供給が追いつけば何が起きるのか


AIファクトリーの建設ラッシュ、HBM不足、需要超過。

だから現在は価格が高い。

粗利率も高い、利益率も高い。

これは極めて自然な話だ。

しかし、工場は増設される、歩留まりも改善する、設備投資も続く。

やがて供給能力は需要へ近づいていく。

すると何が起きるか?

答えは非常に単純だ。

価格競争である。

3社とも同じ顧客へ売りたい。

3社とも設備を回したい。

3社とも固定費を回収したい。

すると、少しずつ価格を下げる。

競合も下げる。

さらに下げる。

これはメモリー産業が何十年も繰り返してきた歴史そのものだ。

AIファクトリーが来ても、この原理だけは変わらない。

私はそう考えている。


■ 「50必要なら100注文する」現象は、永遠には続かない



現在は典型的な需給逼迫局面である。

GPUも足りない。
HBMも足りない。

そのため、企業は「本当は50必要だけど、どうせ入らないから100注文しておこう」という行動を取る。

これは過去の半導体でも何度も見られた。

つまり、現在の受注には実需だけではなく、需給不安による前倒し需要も含まれている可能性がある。

だから私は、受注だけを見て長期需要を判断しない。
ここは注意深く経営者の説明する、奥にある本当の意味を考えなければならない。


最終的には、供給能力が整えば、企業は余剰在庫を抱える。

その時初めて、本当の需要が見えてくる。


■ NVIDIAは、HBMメーカーにモートを作らせない


ここで非常に面白い構造がある。

NVIDIA自身が、HBMメーカーを複数採用していることだ。

SK hynix、Samsung、Micron。

すべて認証を進めている。

NVIDIAにとって重要なのは、特定メーカーを勝たせることではなく、HBMの供給を安定させることである。

つまり、AIファクトリー全体の価格決定権はGPUを握るNVIDIA側にあり、HBMメーカー側にはない。

これは供給リスクを避けるためでもあるが、同時に、どこか1社へ価格決定権を与えない構造にもなっている。

もしHBMメーカーが1社しか存在しなければ、今度はNVIDIAが困る。

だからしたたかにNVIDIAは常に複数社を育てる。

結果として、HBMメーカー同士の競争は続く。

私はこの構造自体が、HBMメーカーに深いモートを形成させない決定的な仕組みになっていると思っている。


■ SCAはモートなのか。それとも谷を浅くする金融装置なのか


今回の決算で最も重要なのは、Strategic Customer Agreement、つまりSCAである。

Micronは16件のSCAを締結した。

通常は2026年から2030年までの5年契約で、自動車向けは概ね3年契約。

16件のSCAは、この期間におけるDRAM volumeの約20%、NAND volumeの約3分の1をカバーする。

将来的には、会社売上の半分以上がSCA下に入る可能性があると会社は説明している。

契約内容も強い。

SCAはtake-or-pay、つまり顧客が実際に購入するかどうかにかかわらず、一定量への支払い義務を負う契約である。

大口契約では、既存製品についてCQ2 2026時点の市場価格に近い上限価格と、契約期間を通じた下限価格が設定されている。

さらにMicronは、価格バンド付きSCAについて、下限価格であっても過去サイクルのピーク四半期粗利率を大きく上回る粗利率を得られると説明している。

14件のSCAについては、下限価格ベースの累計売上が約$100B。

さらに、顧客からの現金預託および関連金融コミットメントは$22Bに達する見込みである。

ここだけ読むと、反論が出る。

「それなら、もうメモリサイクルは終わったのではないか」、「谷が過去より浅くなるなら、Micronは構造的に再評価されるべきではないか」、これは正しい反論だと思う。

私もSCAを軽く見てはいない。

むしろSCAは、今回のMicron決算で最も重要な構造変化だと思っている。

しかし、それでも私はSCAを不可逆モートとは見ない。

理由は4つある。

第一に、SCAは全売上を守っていない。

現時点で締結済みの16件は、DRAM volumeの約20%、NAND volumeの約3分の1をカバーするものにとどまる。

将来的に会社売上の半分以上をSCA下に置く計画はあるが、まだ全社利益を恒久的に守る構造ではない。

第二に、SCAには価格上限がある。

Micronは、固定価格または上限価格がCQ2 2026時点の市場価格付近に設定された契約が、全SCA実行時の売上の約40%を占める見込みだと説明している。

つまり、Micronは下値を守る代わりに、将来さらに供給逼迫が進んだ場合の上振れを一部放棄している。

本当に不可逆モートを持つ企業なら、価格上限を受け入れて利益の上振れを抑える必要はない。

NVIDIAやASMLがこのような契約で価格決定権を守るだろうか。

私はそうは思わない。

第三に、SCAは価格決定権そのものではなく、価格決定権の欠如を補う仕組みである。

MicronがSCAを結ぶ理由は、顧客に供給確度を与え、自社には価格と需要の見通しを与えるためである。これは経営として極めて合理的だ。

しかし、それは「顧客がMicronから逃げられない」ことを意味しない。

むしろ、顧客が複数サプライヤーを選べるからこそ、契約によって価格と数量を固定する必要がある。

第四に、SCAは谷を浅くする可能性はあるが、谷そのものを消す証明ではない。

Micron自身も、今回のQ4粗利率ガイダンスについて「価格上昇率の意味ある鈍化」を反映していると述べている。

これは価格下落ではないが、価格上昇の加速度が落ち始めているという意味では重要である。

つまり、SCAによってメモリサイクルの振幅は過去より小さくなるかもしれない。

しかし、それは不可逆モートではない。

私の結論はこうだ。

SCAはMicronの谷を浅くする可能性がある。
しかし、SCAはMicronをNVIDIAやASMLのような不可逆モート企業に変えるものではない。

この違いを見誤ってはいけない。


■ 私の結論は変わらない


Micronは素晴らしい会社だ。

今回の決算も非常に強かった。

HBM需要も本物だと思う。

しかし、私はそれでもメモリ株を5年保有するコア銘柄にはできない。

なぜなら、現在見えている利益率は、Micronだけが生み出した利益率ではない。

AIファクトリーという巨大な需給の歪みが生み出している利益率だからである。

そして需給は、いずれ正常化する。

その時に残るものこそが、本当のモートだ。

そして興味深いのは、市場もまた、この利益率が永続するとは評価していないように見える。


■ 市場はなぜMicronに高いPERを与えないのか


今回の決算だけを見ると、不思議な点がある。

売上は過去最高、粗利率は過去最高、EPSも過去最高、HBMの需要は強い、ガイダンスも強い。

それにもかかわらず、MicronはNVIDIAやBroadcomのようなバリュエーションを市場から与えられていない。

実際、Forward PERを見ると大きな差がある。

・Micron:約14倍
・NVIDIA:約22倍
・Broadcom:約32倍
・Marvell:約67倍


この差は、今回の利益の大小では説明できない。

私は、この理由こそ市場が最も冷静に見ているポイントだと思っている。

市場は決して今回の利益を疑っているわけではない。

市場が疑っているのは、「この利益が5年後も続くのか」という一点だけである。

PERとは利益を評価する指標ではない。
利益の持続性を評価する指標だ。


だからPERが低いということは、「利益が低い」と市場が考えているのではない。

「利益がピークかもしれない」と市場が考えているのである。


■ AIがサイクルを消したのではない


AIによって、メモリ需要は大きく変わった。

HBMという新しい市場も生まれた。

私はこれを否定しているわけではない。

むしろ今回のAIファクトリーによって、メモリ市場の利益水準は一段高くなる可能性は十分あると思っている。

しかし、利益水準が上がることと、サイクルが消えることは違う。

メモリは依然として供給産業である。

設備投資が続けば供給能力は増える。
歩留まりも改善する。
やがて需給は均衡する。

その結果、価格競争が始まる。

AIはサイクルの高さを変えるかもしれない。

しかし、サイクルそのものを消すことはできない。

これが現在の私の結論である。


■ 私がコア銘柄として保有したい会社


私が5年以上保有したいと思う会社には、一つの共通点がある。

価格ではなく、構造で利益を守れる会社である。

例えばNVIDIA。

CUDAというソフトウェア資産、開発者エコシステム、ネットワーク、AI Factory全体の設計思想。
GPUそのものではなく、プラットフォームを売っている。
だから価格競争へ陥りにくい。

ASMLも同じだ。

EUVは代替が存在しない。
顧客は「今年はこちらのEUVを使おう。」とはならない。
ASML以外に選択肢がない。

Broadcomも同じである。

AI ASIC、ネットワーク、VMware、企業ソフトウェア。
顧客が積み上げたシステムそのものがスイッチングコストになっている。

Marvellも同様だ。

DSP、Custom ASIC、Ethernet、CXL。
AIクラスターの接続そのものへ入り込んでいる。
単なる部品メーカーではない。
設計段階から顧客へ深く入り込む構造がある。

もちろん、これらの企業にも競争相手は存在する。

決して独占企業ではない。

しかし、競争相手がいることと、価格競争へ落ちることは違う。

私が見ているのは、「利益を守る仕組み」なのである。


■ Micronは悪い会社ではない


ここまで読むと、Micronをかなり否定しているように見えるかもしれない。

しかし、私はそうは思っていない。

今回の決算は本当に素晴らしかった。

経営陣も優秀だと思う。

HBMでも存在感を高めている。

だから、時限的なモメンタム投資としては十分成立する。

AI需要が続く限り、利益がさらに伸びる可能性もある。

私はそこを否定するつもりはない。

ただし、今からサテライトとして乗るには少し遅い。

私が慎重なのは時間軸である。

サテライト投資で重要なのは、「良い会社を買うこと」ではない。

良いタイミングで買うことである。

現在のMicronは、過去最高の売上、利益、粗利率。

HBMは極めて強い需要環境にあり、市場の期待も極めて高い。

つまり、良いニュースは割安と判断しても、もうかなり株価へ織り込まれている可能性がある。

もちろん、さらに上昇する可能性はある。

しかし、期待値という意味では、私は以前より魅力は下がったと考えている。

もしSCAによって谷が過去より浅くなるならば、従来のような粗利30%台までの急落を待つ戦略は機能しないかもしれない。

ただし、SCAによって利益の谷が浅くなったとしても、投資の入口が消えるわけではない。

なぜなら、市場はメモリ株を依然としてサイクル株として評価しており、価格上昇率の鈍化、在庫日数の反転、CapEx過剰懸念が出れば、PERは再び圧縮される可能性があるからだ。

私が待ちたいのは、利益の絶対的な谷というより、市場センチメントの谷である。

ここは私自身も次回以降、考え方を更新すべき論点だと思う。

ただし、それでも現在のように過去最高売上、過去最高粗利率、過去最高EPSの局面からサテライトとして乗るよりは、価格上昇率の鈍化、在庫日数の反転、SCAフロアの実効性が試される局面を待ちたい。

さらに、会社はRPO約$100Bを保守的な最低数量・最低価格ベースとし、実際の売上はそれを大きく上回る可能性があると説明している。

これは一見強い材料だが、逆に言えば、今の超高収益はSCAのフロアだけではなく、市場価格というサイクル要因にも依然として依存しているということでもあると、冷静に考えれる。


■ 私のポートフォリオにコア銘柄として接続しない


私は長期投資をするとき、AIというテーマではなく、不可逆モートへ投資している。

だから、AIファクトリーに必要という理由だけでは買わない。

利益率が高いという理由だけでも買わない。

必要なのは、5年後、10年後も、価格決定権を維持できる構造である。

今回のMicronの決算は、AI時代の強さを証明した決算だった。

同時に、メモリ産業が依然として需給産業であることも証明した決算だった。

だから私は、Micronをコア銘柄としてポートフォリオへ組み入れることはない。

一方で、サイクルを利用した時限的なサテライト投資としては、今後も十分に投資対象になり得る。

私にとってMicronは、「AIの勝者」ではある。

しかし、「不可逆モートの勝者」ではない。

この違いこそが、私がAI時代のポートフォリオを組む上で、最も重視している判断基準である。

今回の決算で私が学んだことは、Micronが弱い会社だということではない。むしろ逆で、Micronは過去最高に強い。

しかし、過去最高に強いMicronですら、価格決定権を契約で補強しなければならない。

ここに、メモリ株と不可逆モート企業の決定的な違いがある。


■ 次回決算チェックポイント


* HBM価格とDRAM ASPの推移
* HBM売上比率・HBM4の立ち上がり
* SCA(Strategic Customer Agreement)の拡大状況
* DRAM・NANDの需給バランスと在庫推移
* CapEx計画と供給能力拡大ペース
* 営業CF・FCFが利益成長に追随しているか
* 粗利率が高止まりするのか、それともピークアウトの兆候が出るのか
* NVIDIA、SK hynix、SamsungとのHBMシェア変化
* 2027年以降のHBM契約と価格条件
* 「AI需要の拡大」と「メモリーサイクル」のどちらが利益を支配し始めるのか



(免責事項)
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