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【Oracle(ORCL)Q4 FY2026】AIインフラ競争に巻き込まれた老舗IT企業か、それとも基幹業務AIで復活する企業か。

Oracle(ORCL)のQ4 FY2026決算は、表面的には強い決算だった。

売上高は$19.184B、YoY +21%。
Cloud Infrastructureは$5.787B、YoY +93%。
CPU & GPU revenueは$4.8B、YoY +119%。
RPOは$638Bまで拡大し、Q4だけで$85B増えた。

数字だけ見れば、OracleはAIインフラ需要を完全に取り込んでいる。

しかし、この決算をそのまま「Oracle復活」と見れない。

今回の強さは、Oracle Databaseが急に復権したからではない。主役は、AI向けCPU/GPUクラウド需要だ。

つまり、Oracle固有のモートが爆発したというより、AI計算資源の需給逼迫にOracleも乗れている、という性格が強い。

ここが今回の決算の核心だと思う。

Oracleは、Databaseという巨大な既存資産を持つ。Fusion、NetSuite、Oracle Health、Industry Appsも持つ。さらにOCIでAIインフラを急拡大している。

ただし、この3つが本当に一本につながるかはまだ証明されていない。

AIインフラを売るだけなら、CoreWeave、Nebius、AWS、Azure、Google Cloudと同じ土俵になる。
Databaseをマルチクラウド化するだけなら、防衛にすぎない。
私が考える本当にOracleが復活し不可逆なモートを有するためには、Database、Applications、AI Agentをつなぎ、企業の基幹業務ワークフローに入り込む必要がある。

今回の決算は、Oracleがその賭けに更に入ったことを示す決算だった。

そして同時に、かなり危うい決算でもあった。


Q1 FY2026 → Q2 FY2026 → Q3 FY2026 → Q4 FY2026

・売上高:$14.926B → $16.058B → $17.190B → $19.184B
YoY:+12% → +14% → +22% → +21%
QoQ:-6.1% → +7.6% → +7.0% → +11.6%

Q1は前四半期比で-6.1%だったが、これはOracleの季節性を含めて見る必要がある。Q2以降はQoQで+7.6%、+7.0%、+11.6%と連続して伸びている。特にQ4は明確に強い。
ただし、今回の売上成長の中身を見ると、Oracle Databaseが急に復権したというより、AI向けCloud Infrastructure、特にCPU/GPUクラウド需要が成長を牽引している。

・Cloud売上:$7.186B → $7.977B → $8.914B → $9.913B
YoY:+28% → +34% → +44% → +47%
QoQ:+6.7% → +11.0% → +11.7% → +11.2%
売上構成比:48.1% → 49.7% → 51.9% → 51.7%

Cloud売上はQ4で$9.913B。全社売上の約52%まで拡大した。
ここだけ見ると、Oracleはすでに売上の過半をCloudから得る会社になっている。
ただし、Cloudの中身を分解すると、成長の主役はCloud ApplicationsではなくCloud Infrastructureであることが分かる。

・Cloud Applications:$3.839B → $3.898B → $4.026B → $4.126B
YoY:+11% → +11% → +13% → +10%
QoQ:+2.6% → +1.5% → +3.3% → +2.5%
売上構成比:25.7% → 24.3% → 23.4% → 21.5%

Cloud Applicationsは安定しているが、爆発的ではない。
Q4は$4.126B、YoY +10%、QoQ +2.5%。
Fusion、NetSuite、Oracle Health、Industry AppsにAI Agentを組み込むというストーリーはあるが、少なくとも現時点の数字では、Cloud ApplicationsがAIによって大きく再加速しているとはまだ言えない。ここはOracleの本質的な確認ポイントになる。

・Cloud Infrastructure:$3.347B → $4.079B → $4.888B → $5.787B
YoY:+55% → +68% → +84% → +93%
QoQ:+11.8% → +21.9% → +19.8% → +18.4%
売上構成比:22.4% → 25.4% → 28.4% → 30.2%

ここが今回の決算の主役。
Oracleの成長角度を変えているのは、明らかにこのCloud Infrastructureだ。
ただし、この数字について私はOracleのモートについてメスを入れる。

・Software:$5.721B → $5.877B → $6.119B → $6.824B
YoY:-1% → -3% → +3% → -2%
QoQ:-17.9% → +2.7% → +4.1% → +11.5%
売上構成比:38.3% → 36.6% → 35.6% → 35.6%

Softwareはまだ大きい。Q4でも全社売上の35.6%を占めるが、成長エンジンではない。
Q4はQoQ +11.5%と伸びているが、YoYでは-2%。Oracleの従来型Softwareは、安定収益基盤ではあるが、未来の成長を作る主役ではなくなっている。

・Hardware:$670M → $776M → $714M → $924M
YoY:+2% → +7% → +2% → +9%
QoQ:-21.2% → +15.8% → -8.0% → +29.4%
売上構成比:4.5% → 4.8% → 4.2% → 4.8%

Hardwareは全体に占める比率が小さい。
Q4は$924M、YoY +9%、QoQ +29.4%と強いが、売上構成比は4.8%にすぎない。

・Services:$1.349B → $1.428B → $1.443B → $1.523B
YoY:+7% → +7% → +12% → +13%
QoQ:+0.1% → +5.9% → +1.1% → +5.5%
売上構成比:9.0% → 8.9% → 8.4% → 7.9%

全社売上に占める比率はQ1の9.0%からQ4では7.9%へ低下している。
Oracleの主戦場はServicesではなく、Cloudへ移っている。

・Cloud:48.1% → 49.7% → 51.9% → 51.7%
・Cloud Applications:25.7% → 24.3% → 23.4% → 21.5%
・Cloud Infrastructure:22.4% → 25.4% → 28.4% → 30.2%
・Software:38.3% → 36.6% → 35.6% → 35.6%
・Hardware:4.5% → 4.8% → 4.2% → 4.8%
・Services:9.0% → 8.9% → 8.4% → 7.9%

この構成比を見ると、Oracleの変化は明確だ。
Cloud全体は売上の過半になった。
その中でも、Cloud Infrastructureの比率がQ1の22.4%からQ4の30.2%まで上昇している。
一方で、Cloud Applicationsの比率は25.7%から21.5%へ低下している。
これはApplicationsが悪いというより、Cloud Infrastructureの伸びが強すぎる。
つまり現在のOracleは、AIインフラ需要を背景に、Cloud Infrastructure企業としての色が急速に濃くなっている。

・GAAP粗利率:67.3% → 66.5% → 64.6% → 65.2%
QoQ差:-2.9pt → -0.8pt → -1.9pt → +0.6pt

粗利率はQ3まで低下し、Q4で少し戻した。
これは、Cloud Infrastructure、特にAIインフラ比率の上昇が効いていると見るべきだ。
Oracleは従来、高粗利なSoftware / Database / Supportの会社だった。
しかしAIインフラは、GPU、CPU、データセンター、電力、冷却、ネットワーク、減価償却を伴う。売上は伸びるが、従来のソフトウェアほど軽いビジネスではない。

・GAAP営業利益率:28.7% → 29.5% → 31.8% → 32.0%
QoQ差:-3.4pt → +0.8pt → +2.3pt → +0.2pt

AIインフラ投資で粗利率が押される一方、営業費用の効率化で営業利益率を維持している。ここはOracleの強さだ。

・non-GAAP営業利益率:41.8% → 41.9% → 42.9% → 44.8%
QoQ差:-2.4pt → +0.1pt → +1.0pt → +1.9pt

non-GAAP営業利益率はQ4で44.8%。
売上成長が強い中で、non-GAAP営業利益率はむしろ改善している。
ただし、Oracleを見るうえではP/Lだけでは足りない。

・GAAP EPS:$1.01 → $2.10 → $1.27 → $1.45
YoY:-2% → +91% → +24% → +21%
QoQ:-15.1% → +107.9% → -39.5% → +14.2%

GAAP EPSはQ2に一時的な投資益の影響があり、大きく跳ねた。
そのため、通常収益力を見るにはノイズが大きい。

・non-GAAP EPS:$1.47 → $2.26 → $1.79 → $2.11
YoY:+6% → +54% → +21% → +24%
QoQ:-13.5% → +53.7% → -20.8% → +17.9%

non-GAAP EPSはQ4で$2.11。YoY +24%、QoQ +17.9%。
ただし、Q4のnon-GAAP EPSには一時的な投資益が含まれている。これを除くと$2.03。
それでも強いが、Oracleの本質を見るならEPSよりFCFを重視したい。

・営業CF:$8.140B → $2.066B → $7.151B → $14.620B
営業CFマージン:54.5% → 12.9% → 41.6% → 76.2%

Q4の営業CFは$14.620Bと非常に強い。
ただし、AIインフラ契約に関連する顧客前払いの影響もある。営業CFだけを見ると強いが、CapExとセットで見る必要がある。

・設備投資額:$8.502B → $12.033B → $18.635B → $16.493B
設備投資額 / 売上比率:56.9% → 74.9% → 108.4% → 86.0%

ここが今回の決算で最も重い部分だ。
Oracleは、もはや軽いソフトウェア企業ではない。
AIインフラを作るために、売上に対して極めて大きな設備投資を行っている。
Q3は単独四半期のCapExが売上を上回った。
Q4も売上の86.0%に相当するCapExを投じている。

・FCF:-$362M → -$9.967B → -$11.484B → -$1.873B
FCFマージン:-2.4% → -62.1% → -66.8% → -9.8%

OracleのQ4決算を理解するうえで、FCFは最重要。売上、EPS、RPOは強い。
しかし、FCFはFY2026を通じて大きくマイナスだ。
通年では、営業CF $31.977Bに対して、CapEx $55.663B。
FCFは-$23.686Bだ。
この変化を市場は警戒している。

・SBC:$1.124B → $1.156B → $1.328B → $1.203B
SBC / 売上比率:7.5% → 7.2% → 7.7% → 6.3%

ここはSaaS企業ほど過度に悪いわけではない。

・希薄化後株式数:2.909B → 2.922B → 2.912B → 2.915B
QoQ:+1.3% → +0.4% → -0.3% → +0.1%

希薄化後株式数は大きく増えていない。
ただし、OracleはFY2027にも約$40Bの債務・株式調達を予定しているため、今後の希薄化リスクは見ておく必要がある。

・現金・現金同等物:$10.445B → $19.241B → $38.455B → $31.289B
QoQ:-3.2% → +84.2% → +99.9% → -18.6%

現金はQ3で大きく増えた。
これは本業のキャッシュ創出だけでなく、資金調達の影響が大きい。
OracleはFY2026に$43Bの債務調達と$5Bの株式調達を行い、FY2027も約$40Bの債務・株式調達を予定している。
つまり、OracleのAIインフラ投資は、内部キャッシュだけではなく、外部資金も使う大勝負になっている。

・RPO:$455B → $523B → $553B → $638B
QoQ:— → +$68B → +$30B → +$85B

RPO、つまり契約済み未履行売上残高は非常に強い。
Q4で$638B、Q4だけで+$85B。
これはOracleの強気材料だ。
ただし、RPOは売上ではない。
Oracleがデータセンターを建て、GPU/CPU/ネットワークを用意し、顧客へ容量を納入し、契約通りのマージンで運用して、初めて売上と利益になる。


今回のOracleは、売上、Cloud Infrastructure、RPO、EPSだけを見るとかなり強い。

しかし、成長の主役はOracle DatabaseやCloud Applicationsではなく、AI向けCPU/GPUクラウド需要だ。
そして、その成長には巨額CapExが伴っている。


だから今回の決算は、単純な「Oracle復活」ではない。

AIインフラ需要は本物。
ただし、Oracle固有のモートはまだ証明されていない。
本当の勝負は、このAIインフラ需要をMulticloud DB、Fusion、Oracle Health、AI Agent、基幹業務ワークフローへつなげられるかにある。

■ 今回の決算で本当に起きたこと


今回の決算は、Oracle Databaseが急に復活した決算ではない。

実際に数字を押し上げたのは、AI向けCPU/GPUクラウド需要だ。

Cloud Infrastructureは$5.787B、YoY +93%。
その中でCPU & GPU revenueは$4.8B、YoY +119%。
一方、Databaseは$0.8B、YoY +29%。

この差は大きい。

Oracleは今、AIモデル企業や大企業に対して、OCI上で大規模なAI計算資源を提供している。顧客はOracleのデータセンター、GPU、ネットワーク、ストレージを使って、AIモデルの学習や推論を行う。

これは明確に強い事業だ。

しかし、この強さはOracle固有のものではない。
AI計算資源が不足しているから、Oracleにも需要が来ている。
同じ潮流は、AWS、Azure、Google Cloud、CoreWeave、Nebiusにも来ている。

つまり第1段階は証明された。
OracleはAIインフラ需要を取れている。

問題はここからだ。

そのAIインフラ需要が、Oracle Database、Multicloud DB、Fusion、NetSuite、Oracle Health、Industry Apps、AI Agentへ波及するのか。

ここが証明されなければ、Oracleは単に「GPUクラウド需要に乗った資本集約クラウド会社」になってしまう。


■ Oracleの勝ち筋は3段階で見るべき


OracleのAI戦略は、3段階で見ると分かりやすい。

・第1段階:AIインフラ容量を売る

これはすでに数字に出ている。

CPU/GPU revenue $4.8B、YoY +119%。
AI Infrastructure utilization 97.5%。
AI datacenter capacityの98%が契約済み。
RPO $638B。

ここは強い。

ただし、これはモートというより、AIインフラ需給逼迫の受益だ。
顧客はAI計算資源が欲しい。Oracleが供給できるから使う。

この段階だけなら、Oracleである必然性は弱い。


・第2段階:Multicloud DBでOracle Databaseを守る

ここはOracleらしい。

Oracleは、Oracle DatabaseをOCIだけでなく、AWS、Azure、Google Cloudの中、または近くで使えるようにしている。これがMulticloud Databaseだ。

顧客がAzureを使っていても、AWSを使っていても、Google Cloudを使っていても、Oracle Databaseを使える。
つまり、クラウドシェアでOracleがAWS/Azure/GCPに負けても、Databaseの課金ポイントは守れる。

Q4でMulticloud AI DatabaseはYoY +404%。
これは非常に強い。

ただし、絶対額は未開示。
Database全体のCloud Infrastructure内売上は$0.8B。ここから考えると、Multicloud DBは成長率こそ派手だが、現時点ではOracle全体を変えるほどの規模かはまだ分からない。

第2段階は有望だが、まだ確認が必要だ。


・第3段階:AI Agentで基幹業務ワークフローに入る

ここが本丸だ。

Oracleが本当に復活するには、AIインフラでも、Database防衛でも足りない。
Fusion、NetSuite、Oracle Health、Industry Appsの中にAI Agentを組み込み、企業の基幹業務ワークフローへ入り込む必要がある。

Oracleが強い領域は、会計、決算、購買、人事、給与、サプライチェーン、在庫、医療記録、ホテル、金融、公共、通信などだ。

しかし、これを列挙するだけでは意味がない。

問題は、Oracleがその業務データを持っているだけなのか、それとも業務の実行権まで取れるのかだ。

たとえば、AI Agentが月次決算を閉じる。
請求書を照合する。
予算差異を説明する。
購買申請を承認ルールに沿って処理する。
サプライチェーンの遅延を検知して代替調達を提案する。
医療記録を要約し、診療を補助する。

ここまで行けば、Oracleは単なるDB会社でもGPUクラウド会社でもない。
企業の基幹業務AIを握る会社になる。

しかし現時点で、ここはまだ証明されていない。

Cloud AppsはQ4で+10%。
Fusion Back-Officeは+12%。
NetSuiteは+9%。
Industry incl. Oracle Healthは+8%。

AI Agentで業務ワークフローを取れているなら、ここが再加速してこないといけない。

■ 財務の錬金術としてのBYOHと前払い


今回のOracleを見ていて、もう一つ重要なのは、CapExの重さをどうやって回しているのかだ。

Oracleは単純に自社のバランスシートだけでAIインフラを作っているわけではない。

Q4でOracleは、bring-your-own-hardware、つまり顧客がハードウェアを持ち込む契約や、prepaid、つまり顧客の前払い契約を強調している。累計では、このBYOHまたは前払いの契約が$75Bに達したと説明している。

これはかなり重要だ。

普通に考えれば、AIインフラ事業は非常に重い。
GPUを買い、データセンターを用意し、電力と冷却を確保し、ネットワークを構築し、数年かけて回収する。

しかしOracleは、一部の契約で顧客側にハードウェアを持ち込ませたり、先に資金を出してもらったりしている。

つまり、自社の資本だけでAIインフラを拡大するのではなく、顧客資本も使いながらインフラを拡張している。

これはうまいと感じるものの、私は単純にポジティブとは見ない。

なぜなら、これはOracleがそれだけ巨額の投資をしなければ、AIインフラ需要を取り込めない事業に入っているということでもあるからだ。

BYOHや前払いは、Oracleの資本負担を軽くする仕組みではある。
しかし、最終的にはOracleがデータセンターを建て、運用し、契約した容量を顧客に提供し続けなければならない。

RPOは需要の証拠であると同時に、Oracleが履行しなければならない巨大な約束でもある。

ここが難しい。

Oracleは財務の工夫でCapExの重さを一部やわらげている。
しかし、AIインフラ競争そのものから逃げられるわけではない。


■ データグラビティはOracleの最大の防衛線


Oracleの第2段階を考えるうえで重要なのが、データグラビティだ。

データグラビティとは、データが大きく、重要になればなるほど、そのデータを動かしにくくなるという考え方だ。

Oracleの強みは、まさにここにある。

企業の財務データ、人事データ、購買データ、在庫データ、医療データは簡単には動かせない。

なぜなら、それは単なるデータではなく、企業の正本だからだ。
監査、権限、規制、業務ロジック、過去のカスタマイズ、システム連携が絡んでいる。

SnowflakeやDatabricksにデータを寄せることはできる。
しかし、企業の基幹トランザクションそのものを簡単に動かせるわけではない。

ここでOracleの賭けが見える。

データを動かせないなら、AIの方をデータの近くに持ってくればいい。
Oracle Databaseのデータをそのまま使い、OCIやMulticloud DBの近くでAI推論を行い、FusionやOracle Healthの業務ワークフローにAI Agentを入れる。

これがOracleの理想だ。

この意味では、Oracleにはまだ防衛線がある。
DBという資産は簡単には崩れない。

ただし、防衛線があることと、成長モートがあることは違う。

Oracleが本当に勝つには、データを守るだけでは足りない。
データの上で業務を動かし、AI Agentに実行権を持たせ、顧客の業務フローを深く握る必要がある。

データグラビティはOracleの守りだ。
ワークフローはOracleの攻めだ。

今のOracleは、守りの強さはある。
しかし、攻めの勝ち筋はまだ証明されていない。


■ Oracle AI Agent Studioとは何か?


Oracle AI Agent Studioは、Oracle Fusion Applicationsの中にある業務データ、承認ルール、権限、業務フローを使って、企業やパートナーがAI Agentを構築・カスタマイズするための開発ハブだ。

もっと分かりやすく言えば、Oracle Fusionの中で業務を半自動化・自動化するAI Agentを作る場所だ。

Fusion ERPを使っている会社には、会計データ、購買データ、請求書、予算、承認ルール、ユーザー権限がある。
HCMには人事、給与、タレント、福利厚生のデータがある。
SCMには在庫、製造、調達、需要予測のデータがある。

AI Agent Studioは、それらを使って、

・売上差異を調べるAgent
・請求書を照合するAgent
・福利厚生登録を支援するAgent
・調達から支払いまでを処理するAgent
・サプライチェーンの例外を検知するAgent

のようなものを作る・調整する仕組みだ。

ここで重要なのは、AI Agentが単なるチャットボットではないことだ。

Oracleが狙っているのは、Oracle Fusionの中にある正式データ、権限、承認ルール、業務プロセスに沿って、AI Agentが業務を進める世界だ。

これは、Oracleにとって本当に価値がある。

なぜなら、基幹業務はLLMが自由に処理していい領域ではないからだ。
会計、購買、人事、医療、在庫、支払いには、権限管理、監査ログ、承認、正確性、規制対応が必要になる。

ここはOracleが戦える。

ただし、これは全社横断ワークフローOSではない。
Oracle AI Agent Studioは、まずFusion Applicationsの中で強い。
Oracleの外にあるSlack、Teams、ServiceNow、Salesforce、Workday、SAP、Snowflake、Databricks、Jira、GitHub、独自アプリまで横断して握るには、まだ弱い。

つまり、Oracleは「全社の仕事の入口」を握っているわけではない。
Oracleが握っているのは、基幹業務の正本データとトランザクション処理だ。

この違いは大きい。


■ Oracleはなぜ今までワークフローを取り切れなかったのか?


OracleはDB、ERP、HCM、SCM、NetSuite、Healthを持っている。
これだけ見ると、なぜもっと早く業務ワークフローを押さえられなかったのか、という疑問が出る。

答えは、Oracleの強みが「仕事の入口」ではなく「正本データと取引処理」だったからだと思う。

Oracleは企業の奥にある。
会計データ、人事データ、購買データ、在庫データ、医療記録。
どれも重要だが、社員が日々仕事を始める場所はOracleとは限らない。

日常の入口は、Outlook、Teams、Slack、ServiceNow、Salesforce、Excel、BI、社内ポータル、Jira、GitHubかもしれない。

ServiceNowが強いのは、まさにそこだ。
ServiceNowは、依頼、承認、チケット、例外処理、現場の業務フローを握る。
Oracleは記録と取引には強いが、仕事の入口を握り切れていない。

これがOracleの弱点だ。

Oracleは、DBという資産を持ちながら、もっと早く「データ → 判断 → 承認 → 実行 → 監査 → 改善」という流れに入り込むべきだった。

しかし、Oracleは長く、DBライセンス、サポート、ERP、オンプレ基盤の強さに支えられてきた。
安定収益が強かったからこそ、ワークフローの入口を取りに行く緊急度が低かったとも言える。

その間に、Microsoft、ServiceNow、Salesforce、Workday、Snowflake、Databricksがそれぞれの入口を取った。

Oracleは強いが、美しい統合ストーリーになっていない。
ここが今回の分析で最も重要な違和感だ。


■ Snowflake、Databricksに勝てるのか?


完全に同じ土俵ではないものの、OracleはSnowflakeやDatabricksと競合している。

Oracleの強みは、基幹DBと業務アプリの正本データだ。
会計、人事、購買、在庫、医療など、企業の重要なトランザクションを持つ。

一方、SnowflakeとDatabricksは、企業データをAIに使うための横断基盤に強い。
構造化データ、非構造化データ、ログ、画像、文書、外部アプリのデータを集め、AIモデルやAgentに使う。

Oracleは「処理の正本」に強い。
Snowflake/Databricksは「データとAI開発の横断基盤」に強い。

この違いがある。

Oracleが勝つのは、AI AgentがOracle FusionやOracle Healthの中で正式処理を実行する場合だ。
たとえば、仕訳を作る、購買申請を処理する、支払いを承認する、人事データを更新する、医療記録に基づいてEHR内で作業する。

こういう領域ではOracleが強い。

しかし、企業が複数システムのデータをSnowflakeやDatabricksに集め、AI Agentの頭脳をそちらに置くなら、Oracleはバックエンドのデータ供給元に下がる可能性がある。

ここが怖い。

OracleがDatabaseを守っても、AI時代のワークフローの主導権をSnowflake、Databricks、ServiceNow、Microsoftに取られれば、OracleのAI投資は中途半端になる。


■ SAP、Workday、Salesforceとは正面からぶつかる


SnowflakeやDatabricksは、OracleにとってデータAIレイヤーの競合だ。
ServiceNowやMicrosoftは、業務ワークフローの入口を奪いにくる競合だ。

しかし、Oracleが基幹業務AIを取りに行くなら、最も直接的にぶつかるのはSAP、Workday、Salesforceだと思う。

Oracleが強みとしているのは、Fusion ERP、EPM、SCM、HCM、CX、NetSuite、Oracle Health、Industry Appsだ。これは単なるデータ分析ではなく、会計、人事、購買、在庫、営業、医療などの基幹業務処理に入り込む戦略だ。

ここでは、SAP、Workday、Salesforceと真正面から競合する。

SAPはERPの本命競合だ。
財務、調達、サプライチェーン、製造、業界別業務では、Oracle FusionとSAP S/4HANAがぶつかる。AI Agent時代には、Oracle Fusion AI AgentとSAP Jouleが、財務締め、購買、在庫、サプライチェーン、業務判断の自動化で競合する。

WorkdayはHCMとFinanceでぶつかる。
Oracle HCMやERPが、人事、給与、タレント管理、財務、計画領域でAI Agentを入れようとするなら、WorkdayのAI機能と競争することになる。特に人事領域では、Workdayのブランドと導入実績は強い。

SalesforceはCX、CRM、営業、マーケティング、サービスでぶつかる。
Oracle CXは存在するが、CRM領域の市場認識ではSalesforceの方が強い。AI Agentが営業やカスタマーサービスの実行レイヤーになるほど、OracleはSalesforce Agentforce系の動きと競合する。

ここで重要なのは、Oracleの競争相手が一社ではないことだ。

ERPではSAP。
HCMではWorkday。
CRM/CXではSalesforce。
横断ワークフローではServiceNow。
業務UIではMicrosoft。
データAI基盤ではSnowflake / Databricks。
クラウド/モデル基盤ではGoogle / Microsoft / AWS。

Oracleは、全部と戦う必要がある。

これがOracleの難しさだ。

Oracleは、Database、Fusion、NetSuite、Health、Industry Apps、OCIを持っている。
資産は厚い。
しかし、各領域に強い専業または準専業の競合がいる。

だからOracleの勝ち筋は、SAP、Workday、Salesforce、ServiceNowを全部倒すことではない。
現実的には、Oracleがすでに強い顧客基盤の中で、Fusion、NetSuite、Oracle Health、Industry AppsをAI Agentで深く使わせ、既存顧客のスイッチングコストをさらに高めることだ。

つまり、Oracleの基幹業務AIは「新規市場を全部奪う」戦略ではなく、まずは既存Oracle顧客の深掘り戦略になる。

ここでCloud Applicationsの成長率が再加速しなければ、OracleのAI Agent戦略はまだ市場に刺さっていないと見るべきだ。


■ ServiceNowとぶつかる


Oracleが本当に業務ワークフローを取りに行くなら、ServiceNowとは必ずぶつかる。

ただし、役割は少し違う。

OracleはERP、HCM、SCM、EHRの中で正式データと基幹処理を持つ。
ServiceNowは、IT、HR、CS、セキュリティ、社内申請、チケット、例外処理など、横断ワークフローを持つ。

Oracleは「正本処理」に強い。
ServiceNowは「仕事の流れ」に強い。

たとえば、社員が購買申請をする。
入口はServiceNowかもしれない。
しかし、発注、支払い、会計処理はOracle Fusionで行われるかもしれない。

この場合、ServiceNowがユーザー体験とワークフローを握り、Oracleは裏側の基幹処理を担う。

それでもOracleの価値は残る。
しかし、AI Agent時代の主導権はServiceNow側に寄る。

Oracleが本当に勝つには、Fusion内のAgentが単なる裏側処理ではなく、業務担当者の日常UIになる必要がある。

そこまで行けるかは、まだ分からない。


■ Microsoft、Google、AWSと比べたときのOracle


AI時代の投資ストーリーとしては、Google、Microsoft、Amazonの方がきれいに見える。

Googleは、Gemini、TPU、Google Cloud、BigQuery、Workspace、YouTube、Search、Android、Mapsを持つ。モデル、チップ、クラウド、データ、アプリ、消費者接点が縦につながる。

Microsoftは、Azure、OpenAI連携、M365、Teams、GitHub、Dynamics、Power Platform、Copilot Studioを持つ。企業の従業員が日々使うUIを押さえている。ワークフローの入口として非常に強い。

Amazonは、AWS、Bedrock、Trainium、Inferentia、Graviton、巨大顧客基盤を持つ。インフラと開発者基盤では最強格だ。

一方、Oracleは違う。

OracleはLLMを持たない。
クラウドシェアでも三大クラウドに劣る。
AI AgentによるApps再加速も未証明。
DBは強いが、新規データ/AI基盤ではSnowflake、Databricks、BigQuery、Azure、AWS、PostgreSQL、MongoDBに囲まれている。

だからOracleの賭けは難しい。

ただし、Oracleにも強みはある。

企業の基幹データと基幹処理は、まだ大量にOracle内に残っている。
これをAI Agentで業務実行に変えられるなら、Oracleは再評価される。

問題は、そこまで行けるかだ。


■ Oracle Healthは試金石


Oracle Healthは、OracleのAI Agent戦略を見るうえで重要な事業だ。

Oracle Healthは、もともとCernerだ。
主力はEHR、つまり電子カルテ・電子医療記録システム。病院や診療所の患者データ、診療記録、検査、処方、入退院、請求、医師・看護師のワークフローを支える。

これは単なるデータベースではない。
医療現場の業務記録と業務処理そのものだ。

OracleはQ4で、Oracle Health application suiteにAI版Cerner患者ケア管理システムを追加し、Oracle Health全体の成長率をFY2027に二桁へ押し上げる見込みだと説明している。

ここは非常に重要だ。

Oracleが本当にAI Agentでワークフローに入れるなら、医療は分かりやすい実験場になる。
医師の記録負担を減らす。
診療記録を要約する。
検査・処方・紹介・フォローアップを支援する。
臨床試験を効率化する。

ここで成功すれば、Oracleは単なるGPUクラウド会社ではなく、産業別AIワークフロー企業として見られる可能性がある。

ただし、現状はまだ弱い。

Q4のIndustry incl. Oracle Healthは$1.2B、YoY +8%。
Oracle Health単独の売上は未開示。
競合のEpicは非常に強く、医療EHR市場ではOracle Healthは押されている面もある。

つまりOracle Healthは、可能性はあるが、まだ成功したとは言えない。


■ Oracleの企業文化


Oracleという会社は、非常にOracleらしい。

強い技術資産を持つ。
強い既存顧客基盤を持つ。
サポート収益が強い。
買収で事業を広げる。
レガシー資産を粘り強く収益化する。
そして、必要になれば巨額投資で後から追い上げる。

ただし、この企業文化は美しくない。

Googleのように、検索、データ、AI、チップ、クラウドが自然に接続しているわけではない。
Microsoftのように、Office、Teams、GitHub、Azure、Copilotが仕事の入口を押さえているわけでもない。
Amazonのように、AWSという圧倒的なクラウド基盤から自然にAIインフラへ伸びているわけでもない。

Oracleは、DB、ERP、HCM、SCM、NetSuite、Health、Industry Apps、OCI、AI Data Platformを持っている。
しかし、それらは買収と歴史の積み上げでできた集合体だ。

だから、Oracleの強みは「資産の厚み」。
弱みは「統合ストーリーの遅さ」だ。

今回のAIインフラ投資は、攻めであると同時に、遅れの補填にも見える。

Oracleは、AI時代に取り残されないため、今さら全力でクラウドインフラに張っている。
これは正しいかもしれない。
しかし、遅い。

そして、遅れを取り戻すための代償がCapExだ。


■ Oracleは逃げられない戦いに入った


AIインフラは、一度始めると逃げにくい。

Blackwellで終わりではない。
Rubinが来る。
Feynman、そしてその次の世代も来る。
GPU、ネットワーク、電力、冷却、ストレージ、データセンターを更新し続けなければいけない。

OracleがAIインフラ事業を成長ドライバーにするなら、継続的な投資サイクルから逃げられない。

だからこそ、AIインフラ単体で終わると危ない。

AIインフラは資本集約型だ。
需給が逼迫している間は強い。
しかし供給が増え、競争が激しくなれば、価格とマージンは問われる。

Oracleがこの戦いを正当化するには、AIインフラの上に高マージンなDatabase、Applications、AI Agent、業務ワークフロー、継続課金を乗せる必要がある。

ここができなければ、残るのは重いCapExだ。


■ 5年後のOracleをどう見るか?


5年後のOracleは、3つのシナリオで見るべきだと思う。

・強気シナリオ

OCI AI Infrastructureが高稼働を維持する。
RPOが売上に変わる。
Multicloud DBが絶対額でも大きくなる。
Fusion、NetSuite、Oracle Health、Industry AppsにAI Agentが入り、Cloud Appsが+10%台前半から+15%前後へ再加速する。
Oracle Healthも二桁成長に戻る。
AIインフラ顧客がDatabaseやApplicationsへ広がる。
CapExは重いが、ROICで回収できる。

この場合、Oracleは「GPUクラウドに巻き込まれた老舗IT企業」ではなく、「AI時代に基幹業務AIで復活した企業」として再評価される。

・ベースシナリオ

AIインフラは伸びる。
ただし需給逼迫は落ち着き、成長率は鈍化する。
Multicloud DBは伸びるが、全社を変えるほどの規模にはまだならない。
Cloud Appsは+8〜12%程度。
Oracle Healthは改善するが、Epicを大きく崩すほどではない。
FCFは徐々に戻るが、CapExと更新投資は重い。

この場合、Oracleは悪くない。
ただし、GOOGL、MSFT、AMZNほど綺麗なAI投資ストーリーではない。

・弱気シナリオ

GPU需給が落ち着く。
AI Infrastructureの成長率が低下する。
価格競争が始まる。
Databaseは安定するが高成長ではない。
Cloud Appsは+10%前後のまま。
AI Agentは業務ワークフローを取れず、Microsoft、ServiceNow、Snowflake、Databricks、SAP、Salesforceに入口を奪われる。
残るのは巨額CapExと、三大クラウドとの体力差。

この場合、Oracleは「AI時代に復活した企業」ではなく、「AIインフラ競争に巻き込まれた老舗IT企業」になる。


■ 投資判断

OracleのQ4決算は強いが、投資家として見るべき結論は単純な「良い決算」ではない。

第1段階、AIインフラ需要は証明された。
ここは事実として強い。

第2段階、Multicloud DBは有望。
ただし、まだ絶対額が必要だ。

第3段階、AI Agentによる基幹業務ワークフロー支配は未証明。
ここが本丸だ。

Oracleの未来は、OCIのCPU/GPU売上だけでは決まらない。
Oracle AI Agentが、Fusion、NetSuite、Oracle Health、Industry Appsの中で、企業の基幹業務の実行権を取れるかで決まる。

現時点では、GOOGLやMSFTの方がAI時代の勝ち筋は綺麗に見える。
AMZNもインフラでは圧倒的に強い。

Oracleは、古いDB/ERP資産をAI時代に再接続するため、巨額CapExを背負って賭けに出た会社だ。

だから、私は現時点のOracleを投資対象とは見ない。
サテライトとしても見れない。
単純に監視継続だと思う。

ただし、もし次の数四半期でCloud Appsが再加速し、Multicloud DBの絶対額が見え、Oracle Healthが二桁成長へ戻り、AI Agentの有料利用が数字に出始めるなら、見方は変わる。

その時、Oracleは単なる老舗DB企業ではなくなる。
AI時代の基幹業務AI企業として再評価される可能性がある。

今は、その手前だ。


■ 次回チェックポイント


・Cloud Infrastructure売上のQoQ成長が継続するか
・CPU & GPU revenueの伸びが鈍化しないか
・AI Infrastructure粗利率が保てるか
・RPOが売上・粗利・営業CFへ変換されるか
・CapExとnet cash outlayが会社見通し内に収まるか
・FCF赤字が縮小するか
・Multicloud DBの絶対額が開示されるか
・Cloud Appsが+10%台前半から再加速するか
・Fusion Back-Office、NetSuite、Industry Appsの成長率
・Oracle Healthが本当に二桁成長に戻るか
・AI Agent Studio、token bundle、outcome-based pricingの有料利用実績
・AIインフラ顧客がDatabase / Applicationsへ広がっているか
・希薄化後株式数と追加資金調達
・ServiceNow、Microsoft、Snowflake、Databricks、SAP、Workday、Salesforceとの競争でOracleがどこを取れているか
・Oracleが「GPUクラウド会社」ではなく「基幹業務AI会社」へ進めているか



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