夏の今だから思うこと。「安全」という目に見えないおもてなし
大好きな天草の海が、これからも安心して楽しめる場所であり続けてほしい。そんな思いから、この文章を書いてみることにしました。
まず先にお伝えしておくと、私は、アウトドアガイドではありません 。でもだからこそ、専門家としてではなく、ひとりの消費者として。ツアーを企画する立場として。そして何より、この地域で暮らす住民のひとりとして、今、考えてみたいことがあります。
それは、私たちが大好きなこの地域の自然を、これからもずっと好きでいられるために。 そして、ここを訪れた人が安心して楽しみ、「また帰ってきたい」と思える場所であり続けるために、とても大切な、「安全」の話です。
「安全」の見方が変わった、いくつかのきっかけ
以前の私は、「安全」は誰かが当たり前につくってくれているものだと思っていました。でも、この数年でその認識は少しずつ、変わってきました。
最初のきっかけは、2021年のNEAL(自然体験活動指導者)研修でした。
そこで学んだのは、自然をただ楽しむだけでなく「自然とどう向き合うか」という視点です。自然は管理されたテーマパークではなく、常に変化し続ける存在です。「変化を予見すること」こそが、体験の土台なのだと知りました。


その後、ネイチャーゲームで五感を使って自然を感じることを学び、さらに「天草うみの学校」でのPADIスノーケル・ガイド研修が、私の意識を決定づけました。
子どもの頃から、すぐそばに磯がある環境で育ち、海で遊ぶことは私にとって日常でした。だからこそ、シュノーケリングも「誰でも気軽に楽しめる海遊び」だと思っていたのです。
でも、講習を受けて初めて、その「気軽さ」がガイドの見えない努力や判断、そして膨大なリスクマネジメントに支えられていることを知りました。
今日の風向きは?
潮の流れは?
うねりはどこから入ってくるのか?
参加者の皆さんの体力や、器材の状態は万全か?
もしもの時、誰がどう救助し、搬送するのか?
数時間の体験の裏側には、想像もつかないほど多くの「判断」と「準備」が隠されていました。
安全とは「装備」ではなく「姿勢」のこと
最近では、出張グラバイスクールとして行われた、阿蘇でのサイクリングガイド養成講習会(リスクマネジメント編)にも参加しました。そこでも、単なる走行技術ではなく、利用者の体験全体をどう設計し、地域全体で安全を支えていくかという考え方に触れました。 こうして振り返ると、すべての学びは、一本の線でつながっています。
これらの経験を通じて気づいたのは、「安全」とは、ライフジャケットを着ることや保険に入ることだけではない、ということでした。
「今日はやめておこう」と判断できる基準を、自分の中に持っているか。
万が一の事態を、どこまで具体的に想定できているか。
そして何より、そのことを仲間と対話し、学び続けているか。
大切にしたい「安全」の本質は、そんな学び続ける姿勢そのものにあると感じています。
選ぶ側(利用者)にもできること
最近、インタープリテーションの取り組みを通じて知り合った那須のアウトドア事業者ネットワーク「BERGTOAD」の皆さんの記事を読みながら、改めて「安全は文化なのだ」と感じました。
ガイド一人ひとりの技術だけではなく、人材育成や事業者同士が学び合う仕組みづくりなど、「地域全体で安全を育てていく」という視点に触れ、地域の事業者の皆さんとの対話を通じて私自身が感じてきたことを、改めて言葉として整理してもらえたような気がしたのです。
一方で、そうした考え方は、決して那須だけのものではありません。天草にも、日々現場で学び、実践を積み重ねているプロフェッショナルがいます。
例えば、シーカヤックの 「unplugged(アンプラグド)」 さんや、ガイド養成や野外教育を通して「安全文化」を育てようとしている「WAVE ACT(ウェーブアクト)」さん。「STAND UP SEA SUP 天草」さん、安全なSUP文化を広めている 天草SUP協会 さんなどのように。
彼らに共通しているのは、資格という肩書き以上に、「もっと良い地域にしたい」「もっと安心して楽しんでもらいたい」という願いを持って、現場に臨んでいることです。
もし、皆さんがアクティビティを選ぶときがあれば、ほんの少しだけ想像してみてください。 「この人は、どんな思いでこの海を案内しているのだろう」と。 その想像力が、地域全体の安全の質を高める一歩になるかもしれません。
誇りを持って「好き」と言える未来へ
「安全」は、事故を起こさないためだけのものではありません。
この地域を好きになってもらうための土台であり、私たち自身が、この地域を誇りに思い続けるための土台でもあります。

愛する天草が、訪れた人にとっても、暮らす人にとっても、大切にしたい場所であり続けるために。
皆さんは、自然と向き合うとき、何を一番大切にしていますか。
