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国が相続土地を最大9割引きで売る時代へ。これは「負動産」が社会問題になったサインです

みなさんは「土地を持っている=財産」という感覚、まだありますか?
そういえば「土地神話」って言葉もありましたね。

少し前まで、土地は確かにそういうものでした。
親が「土地だけは残しておく」と口癖のように言っていた、という話を聞くのも珍しくありません。
でも最近、その感覚が静かにひっくり返りつつあります。

今日は、2026年6月に財務省が発表した「相続土地の大幅値下げ売却」というニュースを入り口に、これが空き家や不動産に関わる人たちにとって何を意味するのか、整理してみたいと思います。

国が、9割引きで土地を売り出す

まず何があったのかをざっくりお伝えします。

2026年6月17日、財政制度等審議会の国有財産分科会で、財務省がこんな方針を示しました。

「国が相続人から引き取った土地について、買い手がつかない場合、価格を段階的に下げ、最終的に評価額の93%引きまで値下げして民間に売る」

93%引きというのは、評価額100万円の土地なら最終的に7万円で売り出す、ということです。

これ、かなりインパクトのある数字です。
この数字だけが独り歩きした記事なんかも出てましたね…。

仕組みをもう少し説明すると、まず評価額から3割引きでスタートします。それでも買い手がつかなければ、3か月ごとに1割ずつ下げていく。
最終的に93%引きまで下がる可能性があります。

また、測量や地下埋設物の調査をせずに売る「現状有姿売買」(ざっくりいうと、「調べないまま、見たままの状態で売る方法」です)を採用することで、売買のスピードを上げようとしています。

ただここ、誤解している人が多いのが、対象になるのは「一般の人が持つすべての土地」ではありません。

2023年4月に始まった「相続土地国庫帰属制度」によって、すでに国に引き取られた土地が対象です。
この制度は、相続した土地をどうしても管理できない場合に、一定の条件を満たせば国に引き取ってもらえる仕組みです。


制度が始まってから2年ちょっと。
2026年5月末時点で、申請件数は5,545件、そのうち国への帰属が認められたのは2,762件にのぼります。

ところが、国がこれらを民間に売り出しても、一般競争入札での売却実績はゼロ。
国に移っても、やはり誰も買わなかった。
国が保有し続ければ草刈りや管理コストがかかるため、安くしてでも民間に引き取ってもらう方向に動き始めた、というのが今回の背景です。

でも、自分には関係ない話でしょ?

こう思った方、実はそうじゃないかもしれません。

「国有地が安く売られる」というのは確かに一つの事実です。
でも今回のニュースが本当に教えてくれているのは、そことは少し違う話です。

それは、「相続した土地は、必ずしも資産ではない」という現実が、もはや政府レベルで認めざるを得ないほど広がっているということです。

国ですら買い手がつかない土地があるのに、個人が持ち続けたら何が起きるでしょうか。
固定資産税はかかり続ける。
管理に行けない。
解体するにも費用がいる。
売ろうとしたら測量が必要で費用がかかる。
そのうち草木が伸び、外壁が傷み、近隣から苦情が来る。

たとえば、遠方にある実家の土地なら管理に行くだけで交通費と時間がかかります。
古い家が建っていれば解体費用が数百万かかることもある。
道路が狭い土地は再建築が難しくて売値がつきにくい。
境界が不明な土地は測量からやり直しになる。山林や農地は買い手がそもそも少ない。

「なんとかしなきゃ」と思いながら、何年も放置される。これが現場でよく見る実態です。

この動きで、市場はどう変わるのか

さて、ここからは少し視野を広げて、「この制度変化が何を意味するのか」を事業の目線で考えてみます。

少し別の角度から見ると、国が管理して売るというプロセスには、意外なメリットもあります。

個人が「もう管理できない」と焦って手放す場合、買い手を選ぶ余裕がないことがあります。
結果として、何に使われるかわからないまま安値で売られてしまうケースも、現場では起きています。
気がつけば外国資本がほとんど買っていたなんてことも…。

ところが国が窓口になると、売却の手続きや買主の確認がある程度公式なプロセスを通ります。

農地法や国土利用計画法など既存の規制はありつつも、放置された土地が無秩序に流通するよりは、地域や安全保障の観点から秩序が保たれやすい、という見方もできます。

「国が安く売る=デメリット」だけではなく、「誰に・どう渡るかが見えやすくなる」という側面もある。そこは評価していいと思っています

また、国が93%引きで土地を売り出すとなると、土地の価格設定の「基準」が変わってきます。
「売れない土地には、それだけのリスクが乗っている」という事実が可視化されることで、取引の現場でも価格交渉の材料が変わっていく可能性があります。

次に、現状有姿売買が公式に採用されることで、売買のハードルが変わります。
調査費用を買主が負担する代わりに安く買える、という構図は、動ける事業者にとっては参入しやすくなる動きとも読めます。

そして一番大きいのは、「相続土地や実家をどうするか」という相談需要が、これから確実に増えるということです。
ニュースが広まれば、「うちの実家の土地も、こうなったらどうしよう」と考える人が出てきます。

今のうちに何を準備するか

では、具体的に何をすれば良いでしょうか。立場ごとに整理します。

所有者の方へ

まず「実家や相続予定の土地がどういう状態か」を確認しておくことです。名義は誰になっているか、境界は明確か、固定資産税の額はいくらか、建物の状態はどうか。
これだけでも把握しておくと、いざというときに判断しやすくなります。

家族でまだ話し合っていないなら、「もし親が施設に入ったら」「相続が発生したら」という話を早めにしておくことをおすすめします。
タイミングを逃すと、合意形成がどんどん難しくなります。「縁起でもない」と思わず、元気なうちにこそ話せることがあります。

事業者の方へ

「相続土地の相談に対して、自社はどう応えられるか」を一度整理してみることが有効です。
何ができて、何はできないか。
できない部分は誰と連携するか。
相談を受けたときに「うちでは対応できません」で終わらず、「こういう流れで一緒に考えられます」と言えるかどうかが、これからの信頼の差になってくると思います。

また、今回の国庫帰属制度や財務省の動きを、自分の業種の文脈で読み直してみてください。
「関係ない話」に見えても、一歩引いて見ると接点が見えてくることがあります。

というわけで

今回の財務省の発表は、単に「国が安売りを始めた」というニュースではありません。
「使われない土地をどうやって社会に戻すか」という問いに、国が本格的に向き合い始めたサインだとぼくは思っています。

所有者の方は、「まだ大丈夫」と思っているうちに、一度状況を確認してみてください。
事業者の方は、このニュースを「自分の業種にどう接点があるか」という視点で読み直してみてください。

動き出すタイミングは、少し早いくらいがちょうどいい。それが、現場を見てきたぼくの実感です。

▼最後までお読みいただきありがとうございました。
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