ご飯を作るのも食べるのも疲れた日。作業療法士が肯定する「頑張らない食卓」の正解
今日も一日、外の世界でたくさんのエネルギーを使って、本当にお疲れ様でした。
作業療法士のアキトです。
「家に帰ってきたけれど、もうご飯を作る気力が1ミリも残っていない」 「お腹は空いているはずなのに、いざ食べようとすると疲れてしまって喉を通らない」
そんなふうに、食事に対して強い疲労感やストレスを抱えてしまうことはありませんか?
「料理が面倒くさい」という悩みはよく聞きますが、「食べること(食事という行為)」そのものに疲れ果ててしまうことがよくあります。
今日は、作業療法士の視点から、食欲がない日やご飯作りが限界な日の「頑張らない食卓の正解」についてお話ししますね。
1. 「食事は楽しく」という思い込みを手放す
テレビやSNSを見ていると、「家族で楽しく食卓を囲む」「美味しいものを笑顔で味わう」のが正解で、素晴らしいことだとされていますよね。
でも、HSPの方にとって、食事は「味覚・嗅覚・視覚・触覚(舌触り)」という膨大な感覚刺激をいっぺんに受け取る、とても情報量の多い時間です。
そのうえ「美味しいね」と会話まで求められると、もう脳はキャパオーバーになってしまいます。
「楽しく食べなきゃいけない」と思い込んでいると、笑顔を作れない自分に罪悪感を抱いてしまいます。
でも、疲れ切っている時は、「無表情のまま、ただエネルギーを体に入れるだけの時間(無の食事)」があって大正解なんです。
「今日は楽しむのはお休み。ただのエネルギー補給!」と割り切って、テレビも消して、自分のペースで静かに口を動かすだけの時間を許してあげてくださいね。
2. 栄養よりも「ホッとする食感」を優先する
「ストレスで食欲がない。でも何か食べなきゃ…」という時、つい「野菜を摂らなきゃ」「栄養バランスの良いものを」と考えてしまいませんか?
作業療法の現場では、食欲が落ちている時、栄養素よりも「口腔感覚(口の中の感覚)」へのアプローチを大切にします。
人は「噛む」という一定のリズム運動(固有受容覚への刺激)を行うことで、脳内に「セロトニン(幸せホルモン)」を分泌させ、自律神経を落ち着かせるメカニズムを持っています。
だから、食欲がない時は、栄養はいったん横に置いておいて、「あなたが噛んでいてホッとする食感のもの」を最優先に選んでください。
サクサク、カリカリしたスナック菓子
もちもちとしたグミやパン
パリッとしたおせんべい
「お菓子をご飯代わりにするなんて」と自分を責めなくて大丈夫です。
「今は口の感覚を使って、幸せホルモンをたくさん出して心を整えている立派なリハビリなんだ」と、堂々と味わってくださいね。
3. 噛むのすら疲れた日のお守り「サバイバル食」
一方で、「もう噛むことすら疲れた」「飲み込む(嚥下:えんげ)のもしんどい」という、エネルギーが底をついた日もありますよね。
リハビリの視点から見ても、咀嚼(噛む)して嚥下(飲み込む)する動作は、顔や喉の筋肉をしっかり使うため、意外と体力を消耗します。
そんな限界の日に備えて、家の中に「サバイバル食」をストックしておくことを強くおすすめします。
ゼリー飲料(ウィダーインゼリーなど)
お湯を注ぐだけの温かいポタージュスープ
口の中で溶けるおぼろ豆腐やプリン
これらは、噛む力も飲み込む力も極限まで省エネできる、最強のレスキューアイテムです。
「今日はもうダメだ」と思ったら、ベッドの横でゼリー飲料をちゅーっと吸うだけで100点満点です。温かいスープなら、内臓からじんわりと温まり、こわばった心も少しほぐれますよ。
4. 逆に「暴飲暴食」してしまう時の注意点と寄り添い方
食欲がなくなるのとは反対に、ストレスが爆発して「ポテトチップスや甘いものを、吐きそうになるまで詰め込んでしまう(暴飲暴食)」という方もいると思います。
そして食べた後に、激しい自己嫌悪に陥って泣きたくなりますよね。
でも、これもあなたが「だらしないから」ではありません。
強いストレスを感じた脳が、手っ取り早く強烈な刺激(濃い味、お腹がパンパンになる苦しい感覚)を外部から取り入れることで、心の痛みを麻痺させようとしている「防衛反応(感覚探求)」なのです。
だから、「またやっちゃった」と自分を責めないでください。
ただ、胃腸を壊してしまうとさらに心も落ち込んでしまうので、暴飲暴食のスイッチが入りそうになったら、「別の強い感覚」に少しだけすり替える練習をしてみましょう。
氷をガリガリと強く噛み砕く
強烈なミントのガムを噛む
炭酸水を飲む
口への強い刺激で脳をごまかすことができれば、過食の波を少しだけ穏やかにやり過ごせるかもしれません。
まとめ:あなたの食卓は、もっと自由でいい
食事を「楽しむ」ことをお休みして、ただの「補給」にする日を作る
栄養より、噛んでいて落ち着く「食感(サクサク・もちもち)」を優先する
限界の日は、ゼリーやスープなどの「サバイバル食」で省エネする
暴飲暴食は脳のSOS。氷や炭酸などの刺激ですり替えてみる
「ちゃんと作って、ちゃんと食べなきゃ」という呪縛から、どうか自分を解放してあげてください。
あなたが今日、どんな形であれ、自分の体に少しでもエネルギーを入れられたのなら、それは大成功です。
「今日はゼリー1個飲めたから花丸!」 そんなふうに、うんとハードルを下げて、自分をたくさん褒めてあげてくださいね。
🍀 作業療法士のアキトから、大切なお願い
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。 最後に一つだけ、医療従事者として大切なお願いです。
もし今、あなたが以下のような状態にあるなら、どうか一人で抱え込まないでください。
・今まで「当たり前にできていたこと」が急にできなくなった
・夜、どうしても眠れない日が続いている
・理由もなく涙が出てきたり、消えてしまいたいと思ったりする
これらは決して、あなたの「怠け」や「心が弱いせい」ではありません。心のエネルギーが限界まで使い果たされてしまったサインです。
「これくらいで病院に行ってもいいのかな」と遠慮せず、どうか早めに心療内科や精神科などの医療機関を受診してくださいね。専門家を頼ることは、自分を大切にするためのとても立派な一歩です。どうか、私たち医療従事者を『自分を守るための味方』として頼ってください。いつでもサポートする準備をして、お待ちしています。
【免責事項】 本記事は、筆者(作業療法士)の経験と知識に基づく一般的なアドバイスを提供するものであり、医療行為や治療を目的としたものではありません。食欲不振や過食が長期間続く場合、体重の急激な増減がある場合などは、摂食障害などの可能性もあるため、無理をせず心療内科や内科などの専門の医療機関にご相談ください。本記事の利用により生じたいかなるトラブルや損害についても、筆者は一切の責任を負いかねます。
