「はじめて狂言」鑑賞してきた:伝統芸能の素晴らしさを実感した日
2,500円で「日本の伝統」を買ってみた
7月4日(土)、新潟市民芸術文化会館(りゅーとぴあ)の能楽堂へ行ってきました。
お目当ては大蔵彌右衛門家の「初めて狂言」公演。
驚いたのがそのお値段。
なんと全席指定で2,500円!
「え、映画をちょっといい席で観るより安くない?」
と、見つけた途端に購入ボタンを押していました。
実は2年前にも、新潟県民会館で中村獅童さんの一座による「松竹歌舞伎特別公演」を5,000円で観て感動した経験がありまして。
アーティストのライブよりはるかに安いですよね。
「地方で見る日本の伝統文化、コスパ最強説」
が私の中で浮上していたのです。
現役時代は仕事にかまけて一度も観たことがなかった伝統芸能。
能楽堂に一歩足を踏み入れると、独特の厳かな空気が漂っています。

客席は小学生からお年寄りまで超満員…。
とまではいかないものの(笑)、これから始まる未知の世界へのワクワク感で満ちていました。
元・社会科教師、プロの解説に「にわか知識」を大反省する
幕が開くと、大蔵彌太郎さんが登場し、初心者向けに優しく解説を始めてくれました。
「狂言には大蔵流と和泉流の二つの流派がありまして……昔は『猿楽(さるがく)』と呼ばれていましたが、明治維新後に幕府の保護を失い、明治政府の有力者や貴族階級(華族)が文化保護のために立ち上がり「能楽社」を設立して、「能楽」と呼ばれるようになりました。国際的な交流が増える中で、「猿」という文字は避けられました。
…はい、ここで最初の衝撃。
私、これでも元・社会科の教員でございます。
教科書通り「猿楽が能・狂言の源流」とは知っていましたが、「明治時代に大人の事情(文化保護)で名前を変えた」のが正しい解釈だったとは!
これまで子どもたちに、いかに雑で上滑りした知識をドヤ顔で教えていたか…。
本物のプロに聞かないとダメですね。
当時の教え子諸君、本当にすまん。
さらに、狂言の基本的な所作のレクチャーがこれまた面白い!
常に膝を曲げて立つ: これが基本姿勢。
左足から出て、右足から下がる: 逆に右足から出たり左足から下がったりすると、右手が刀の柄にかかる「戦いのポーズ」になってしまう。お殿様や天皇陛下の前でそんな無礼は働けないための知恵。
すり足で動く: 独特のすり足。
そして、マイクがない時代に遠くまで感情を伝えるための「喜怒哀楽」の表現がツボでした。
【笑い方】 「はーははははは!」(最初は大きく、後は細かく刻む。会場全員で練習しました。)
【泣き方】 「えーっへっへっへっへ」と手を顔の前に。でも絶対に顔には触れない。なぜなら、お殿様からいただいた高価な衣装に汗をつけないため!
【喜び】 「よーっ!」とパンと手を叩く。
【怒り】 「オーッ!」と足を踏み鳴らす。
一つひとつの動きにすべて、合理的かつ切実な理由があることに大感動です。
黒歴史発掘:国語教材『附子(ぶす)』の思い出
今回の最初の演目は、あの有名な『附子(ぶす)』。
実はこれ、私にとって最大の黒歴史を呼び覚ます演目でした。
教員になって3年目、初めて小学6年生の担任を持った時のこと。
国語の教科書に『附子』が載っていたんです。
当時の私は狂言のなんたるかをまったく知らず、授業では教科書を普通のトーンで淡々と音読させていました。
ところが、教材用の公式カセットテープを再生した瞬間、教室に激震が走ります。
「このあたりのものでござる〜!」
ものすごい抑揚と、大げさなセリフ回し。
「え、何これ、セリフの言い回しだけで笑ってしまう!!」
と、私自身が一番ショックを受けました。
あの時初めて知ったのです。
「狂言とは、室町時代から(もっと前からも)続くガチのコントである。」
ということを。
そして、狂言というものの面白さも。
当時の私は、社会科でも、写真だけで「能・狂言」をさも知っているかのように教えていました。
小学校の室町時代の学習は文化の学習が多く、若い私は、その面白さがまったく理解できていませんでした。
ですから、全く面白く教えられず、さらっと読んで終わりにしていたんです。
恥ずかしい限りです……。
でも、年を重ねた今、室町時代はめちゃくちゃ面白い時代だと分かってますし、世阿弥が流された佐渡に勤務したおかげで佐渡の能の歴史なども知っています。
今なら、私の頭の中には「文化を理解する地盤」ができています。
大人の学び直し、最高に楽しい。
ドリフの源流と、12歳の超新星
続いての演目は『以呂波(袴狂言)』
なんと演じる舟生弾さんは、2014年生まれの12歳!
師匠の真似(大向返し)をし続ける弟子に師匠がキレる、という王道のコメディなのですが、この若さで伝統を背負って舞台に立つ姿に、親戚のおじさん目線で胸が熱くなりました。
そして休憩を挟んでの最後は、狂言『伯母ヶ酒(おばがさけ)』
これがもう、演者お二人の動きが大げさで、理屈抜きに笑えるんです。
観ながら思わず、「これ、ドリフターズとかコント55号で見たやつだ!」と膝を打ちました。
ドリフが元祖なのではなく、何百年も前から日本人が愛してきた「笑いのDNA」が、形を変えて今のテレビコントに繋がっているんですね。
奈良・平安時代から脈々と続く笑いのバトンを受け取ったような、壮大な感動を覚えました。
気がつけば、推し活の沼へ
すっかり狂言の魅力に取り憑かれてしまった私。
「もう一回観たい!」
と、休憩時間に入場口でもらった公演情報(ちらし)を見ていると、なんと来週、長岡リリックホールにあの野村萬斎さんが来ることが判明!
萬斎さんは「和泉流」なので、今回観た「大蔵流」とはまた違った見どころがあるはず。
「これは、鉄は熱いうちに打て、狂言は興味があるうちに観ろってことだな!?」
ということで、家に帰ってすぐにチケットを注文してしまいました。
現役時代だったら、休みの日はただ泥のように眠るだけで、こんな風にフットワーク軽く出かける心の余裕なんてありませんでした。
退職して、自分の時間で教養と「推し」を深められる今、本当にありがたくて幸せなことだと噛み締めています。
さあ、来週は長岡で、萬斎さんの「はーははははは!」を浴びてきます!
おまけ
出演者の皆様です。
趣味欄がとても身近で親しみがもてます。
特に彌太郎さん。「アニメ、特撮」だって!

観劇中は撮影禁止ですが、最後に皆さんでポーズを取ってくれました。撮影OKでした。(私の席は目の前に「柱」…。)

見送りもしてくれました。握手してもらいました。

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