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深夜の実験室に降臨した恐怖の悪魔(前編)

はじめに

お空の星はあかるいあかり、そらのあかりだよ!
今回はね、実験室で悪魔と戦ったわたしの戦いの一部始終を紹介するよ。
わたしは必死だったんだけど、笑っちゃうくらいドタバタだったんだから!

加速器実験

サーバー室の一角で、わたしは額に汗していた。
ソファに横たわるの学生の上にまたがり、一心不乱に全身を震わせる。
学生はぐったりしきっていて、もはや置物か、電池切れのロボット状態。

「ちょっと…ちょっと!大変なの!!」



このシーンの秘密は、今日の記事の最後で明らかになる。それくらいわたしが必死だったってこと・・・あ〜っ!誤解したらだめだよ!!

さて、ここからが本題。加速器実験の話だ。

もう10年以上も前のこと。粒子線加速器を使った実験というのは、基本的に夜通し数日間行われることが多い。なぜかというと、加速器がそれくらい人気の装置だからだ。機械を夜間に遊ばせておくのはもったいない。せっかくそこに装置があるのだから、使いたい人がいる限り使い続けるべきなんだ。

大学の小さな加速器だと、自分で運転できることもある。こういう時はオペレータも教員や学生がやる。電圧を10 MV(1000万ボルト)──ピカチュウ100匹分の威力──をかけるのだって、わたしの仕事。

ときどき「ドゴーーーーーン!」と落雷のような音がして装置が停止する。でも、こんな放電は日常茶飯事。自分に落雷しなければ、あとはじわじわ電圧を戻すだけ。とはいえ、高電圧がかかっているところに近づくのは超こわい。

さて、この時わたしは3日連続の徹夜加速器実験に挑む予定だった。深夜も運転するので、教員は仮眠をとるが、睡眠はしない。トラブル対処のため施設に詰める。家に帰ってシャワーを浴びたりはできるけど、すぐに戻ってくる。地獄の3日間だ。

実験準備

加速器から出てくる粒子線をターゲットに正確に当てるには、真空チューブ内を電磁石で精密に導く必要がある。真空も超高真空。もし気体が入っていたら、ビームのエネルギーも数もどんどん減ってしまう。
サンプルを正確な位置にセットし、慎重に真空引きをする。順調に準備は進んだ・・・全てが平和だった。

この実験に関わる学生は2名。

  • 修士の学生:初日と最終日の徹夜を担当

  • 学部の学生:中日の徹夜担当

当番の学生は日中に寝て、夜にフル稼働する計画。夕方、学生がやってきたタイミングで、わたしは一旦家に帰ってシャワーを浴び、ごはんを食べて2時間ほどで戻る。もちろん、その間に少しでも仮眠を取るつもりだ。

実験が始まると、体力の消耗は避けられない。そこで仮眠スペースは重要な存在になる。実験室の片隅には、装置に囲まれた一角に女子専用と書かれたベッドが一つ。男子学生はそこかしこにあるソファで仮眠する仕組みだ。

実験開始

装置のギリギリをせめる実験

この時の実験は、加速器の高電圧をかける部分に10 MV (1000万ボルト)もの電圧を印加する装置のギリギリを攻める実験を前半にやって、後半は7 MV (700万ボルト)を印加するマイルドな実験をやる予定になっていた。スケジュールをざっくり書くとこんな感じ。

わたしの当番、書く必要ある!?

さて・・・前半の実験は装置の性能ギリギリいっぱいを攻めているので、上で紹介した「ドゴーン!!」がしょっちゅう起こる。2〜3時間に1回は装置がダウンして、復旧作業が必要なかなり忙しい実験になった。

初日に付き合ってくれていた修士の学生は、こういった徹夜実験はもう3回目なので、「ドゴーン!!」が起きたらわたしが、びくびくしながらアース棒を持って、樹脂のチューブで1.5m先くらいにある高電圧電源のつまみをくるくる回して加速電圧を復旧させるという姿を、居眠りすることもなく心配そうにみている。

そう、わたしが感電して倒れたりしたら、彼が救急車を呼ばないといけないわけなので、彼も眠るわけにはいかないのだ。

そんなこんなで、わたしとその修士の学生はほとんど仮眠すら取らずに、幾度とない加速器の復旧作業で疲労を重ねながら徹夜で実験を続けて徐々にグロッキーな状態になっていった。

翌朝、修士の学生は学部の学生と交代して自宅に休養を取りに行くことになっていたのだけど、面倒見のいいかれはグロッキーになりながら、わたしの負担を減らすために学部の学生にこのあとに必要な作業などを半日教えて、「ギリギリを攻める実験」が終わり、次のマイルドな実験が軌道にのるまで付き合ってくれた。

いや、わたしとしては、翌日彼は元気に復活して欲しかったので、早く帰ってくれたほうがよかったのだけど、わたしも憔悴しきっていたので、眠たい目をこすりながら彼の親切を甘んじて受けてしまったんだよね・・・。

わたしは学生が2人体制になっている隙にいったん家にかえり、シャワーを浴びて、コンビニでごはんと徹夜用のおやつや飲み物を購入して実験室に戻ってきた。交代時間の正午は大幅に過ぎており、22時近くになっていたように思う。そのタイミングで修士の学生はようやく家に変えることになった。

このあと、このことが悲劇を生むひとつの要因となるとも知らずに・・・。

装置にとってマイルドな実験

でもまあ、ここからは加速器がダウンするような厳しい条件ではないマイルドな実験。基本的にはスイッチを入れて、ビームを照射、時々照射室に入って、サンプルを交換する・・・という単純作業になっていた。だれもがこのまま実験は平和に終わるものだと思っていた。

わたしは実験に必要な体力は持ち合わせていたので、2徹目に突入したけど、元気に作業をこなしていた。ただ、実験はまだ折り返し地点だ。わたしは、ビーム照射の合間をぬって、「女子専用」の仮眠室で時々仮眠をとって体力回復につとめた。

ドゴーン!!」が起こることもなく、学部の学生も加速器の制御盤付近にあるフィードバックメータをぼんやり眺めるくらいの作業だけで時間が流れていき、そして平和に朝を迎えた。

この学部の学生は言いつけを守って前日は昼まで寝ていたので、ちょっと疲れた様子ではあったが、交代の修士の学生がくるまで元気に実験していた。

さて・・・修士の学生が交代のために戻ってくる・・・。



目の下のクマがやばい!!
えっ、わたしもこんな顔をしているのだろうか。
いや、そんなことは今はどうでもいい。
わたしには修士の学生が翌朝まで体力が持つとは思えなかった。
彼は、そんな「土気色」が相応しい顔色をしていたのだ。

学部の学生からの引き継ぎ事項を確認した彼は、ふらふらと実験室の椅子に腰掛けた。そのまま22時くらいまでは頑張って実験に付き合ってくれていたのだが・・・もはや目に精気が宿っていない。

目が覚めていても、研究室旅行に行く時に旅先で使う予定だった土鍋を2つも割ってしまった彼だ。
なにかへっぽこな事件を起こしてしまってからでは遅い。

そこで、わたしは自分の仮眠の時間を彼に2回分与えることにした。

「いいから寝てこい」

ふらふらと修士の学生は、全面ガラスとはいえ、扉があるエアコンのきいたサーバー室の片隅にある仮眠室のソファーベッドに横たわり、動かなくなった。

マイルドな実験を後半に持ってきたのは正解だった。疲れている時に危険な作業がないようにあらかじめかんがえて計画していたわけ。

昨夜と同じく、特に何も事件はおこらず静かに朝を迎えることができるに違いない。わたしはそう信じていた。固く信じていた。彼が寝ていても大丈夫。わたし一人でも十分作業できる実験だ。

万が一「ドゴーン!」が起きたら、その時だけ彼を起こせば良いだろう。

黒い悪魔は実験室でその時を静かに待っていた。

悪魔降臨

時は丑三つ時。わたしもグロッキーになって、視界がときどきぐにゃぐにゃしたりするが、あと半日を切った。がんばるしかない。

耳鳴りがする

どこかで耳鳴りがする。

・・・ちがう、耳鳴りはこんな重低音じゃない。

実験装置を冷やすファンよりも1段間低い音が耳もとで鳴り響いた。

「えっ!」

目の前に飛び込んできた光景に思わずわたしは身を捩って椅子から落ちそうになるのをなんとか踏みとどまった。

大きな黒い塊が目の前を通り過ぎ、実験機器の隙間に消えていったのだ。

なんだろう。寝ぼけて幻聴でもきこえたのかな・・・。

ゴツッ・・・、ゴツ、ゴツッ・・・

いや・・・たしかにサーバーラックの向こうで、固い音がする。
装置の刻む一定のリズムではなく、あきらかに生き物の発している音だった。

恐る恐る近づこうとしたそのとき、ラックの隙間からその悪魔はわたしの顔に向かって飛んできた。

オオスズメバチである。
九州地方のオオスズメバチは半端なくでかい。
大袈裟な表現抜きでわたしには、自分の手のひらの大きさくらいあるようにみえた。

慌ててかがむと頭上をオオスズメバチがすごいスピードで通り抜けていくのが見えた。同時に、睡眠不足で視界がくらむ。

黒い悪魔が消えていった方向から視線をそらさないようにして、チラッと全面ガラス張りのサーバー室に目をやる。修士の学生が気持ちよさそうに眠っている姿がみえた。

この今のわたしの極限状態を知る由も無い。視線を黒い悪魔が飛び去った宙の1点の方向に固定したまま、壁を背にして1歩ずつサーバー室入口の扉に近づき、そしてその扉をそっと開き、開いた隙間から滑り込むように中に入って、元通り扉を閉めた。

ここは壁で仕切られており、安全圏だ。

学生に助けてもらおう。わたしは思った。

「ちょっと、ちょっと!大変なの!ねえねえ!!」

修士の学生はどんなにゆすってもおきない。

おきて、おきてよ!!

夜中にソファの上でぐったりとしている男子学生の上にまたがり、額に汗しながら激しくゆすり続ける。

はっ、と、この姿を客観的にみたらどうだろうかと、考えた。
・・・もし、目撃されるととんでもないウワサが立ちそうた。

しかし、人間こんなに深く眠れるものなんだな・・・



こうなったら




わたしがやってやるです・・・!!

仁義なき戦闘が始まる。

後半に続く

文章力がなくて、臨場感が伝わっているか大変心配だけど、長くなったので、いったんここで切って、続きは後半に書くことにするよ!!


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