#8- 【おしえて!知りたい!途上国とSDGs】より「目標5 ジェンダー平等を実現しよう──すべての女性が能力を発揮できる社会に」
こんにちは!
アジアを研究する者たちのサードプレイス…「アジ研サードプレイス」です🙌
このPodcastは、千葉県に所在する、とある研究機関に勤める研究者・ないとうさんと研究マネジメント職・ユリユリが、おすすめ論文・記事をピックアップしながらゆるくおしゃべりする私的Podcastです。
このたび、牧野百恵さんのご著書『ジェンダー格差――実証経済学は何を語るか――』(中央公論新社、2023年)が、第46回「サントリー学芸賞〔政治・経済部門〕」を受賞されたとのこと!(関連リンク:研究所web)
主に南アジアの家計データを用いた、ジェンダー差別的な慣習や女性の労働参加に関する実証分析を専門とする牧野さん。
本書『ジェンダー格差』では、経済学のトップジャーナルに掲載されてきた論文を紐解きながら、女性にまつわるライフイベント(結婚、出産、教育、就業など)に関連した実証研究を紹介していきます。
私たちの、ジェンダーに対する”思い込み”を科学的に検討していくこともできる、痛快な本でもあります。
さらに、こちらの『ジェンダー格差』が出版されたのは2023年8月のことでしたが、その後10月には、クラウディア・ゴールディン(ハーバード大学教授)がノーベル経済学賞を受賞。ゴールディン教授の受賞については、歴史的なデータを分析し、男女間の賃金格差が生じる要因を解明したことが評価された、とメディアでは報じられています。本書『ジェンダー格差』の中では、そうしたゴールディン教授の研究も紹介していたこともあり、まさに絶妙なタイミングで本が世に出たことに。
本の内容も、牧野さんが受賞されたことも本当に素晴らしいことなのですが、今まさに、社会の中で、様々な側面でジェンダーというものが注目を集めていることの現れでもある、と感じます。
ただし、ジェンダーという言葉は、良くも悪くもインパクトが強く、様々な議論を巻き起こしがち。本書のように、経済学的なアプローチの中でジェンダーというものを捉え直すことの重要性を改めて実感します。
と言いつつも、「ジェンダー」というキーワードからして、手に取るのをちょっと敬遠してしまうかも…とか、いやいや実証経済学ってなんだか難しそう。数字がいっぱい出てきそう…となってしまう方に、この本を読む前のウォーミングアップとして、以下の記事をオススメさせていただきます!
SDGsの5つ目に掲げられている「ジェンダー平等を実現しよう」という目標。世界中で、歴史的に見ても、現在の状況を見ても、この目標を達成することの重要性・必要性は大前提としてありつつも、牧野さんは、あえて私たちに問いかけます。ジェンダー平等が実現すると、本当により豊かな状態や貧困削減につながるのでしょうか、と。
本記事で牧野さんは、政治分野、経済分野のそれぞれについて、実際の研究成果を交えて考えるべきポイントを解説しています。例えば経済の分野では、(女性の労働参加が進むことで経済成長につながるかどうかまでは分からないけれども、)女性が労働参加すると女性自身のエンパワメント(自分の人生を自分で決められるような力を身につけること)につながることは分かっている、と牧野さんは説きます。さらに、女性の自己決定権が上昇すれば、幸福度が高まることも証明されています。
では、どうすれば女性の労働参加は進むのか。今、日本社会では配偶者控除の制度が急速に注目を集めており、2021年6月には改正育児・介護休業法が成立したことによって、風土変革は必要ですが、制度上は男性が育児により積極的に参加できるように整えられました。
しかし、他方で、研究職など専門職のケースにおいては、育児休暇をとった男性たちが、実際には育児を行う代わりに自身の仕事を進めたために、女性の昇進に不利なケースを与えたという研究結果も出ています。
「女性が社会の中でより活躍するために」という目的で取り入れられた政策が、果たして本当にジェンダー平等の達成に貢献しているのか。
様々な意見や議論がありますが、ここでジェンダーという言葉で一括りにしてしまうのではなく、一歩立ち止まって考えてみること。実証経済学の分野で証明されてきた研究成果を見ると、普段私たちが、いかに思い込みにとらわれているかが、身につまされるように実感できます。
さて、牧野さんのIDEスクエアの記事を読んで、もう一歩踏み出してみよう!と思った方、ぜひ『ジェンダー格差――実証経済学は何を語るか――』(中央公論新社、2023年)をご覧ください。こちらの本、本当に、読みやすいですし、目からウロコが落ちまくります。また本書は、ジェンダーに限らず、経済学の考え方を学べる本でもあります。これから経済学を学ぶ全ての人に読んでほしい。「新書は苦手派」のユリユリでも「読みやすすぎて泣けてくる(?)」という名著です!
さらに、SDGsの全17の項目を、研究者らがそれぞれの専門分野から紐解いていく骨太コラム「おしえて!知りたい!途上国とSDGs」もあわせてどうぞ。このコラムを読めば、途上国の視点に立ちつつSDGsの各項目への理解を深められる、という構成になっています!中高生向けの教材としても◎
ご意見、ご感想はajiken.wakaba@gmail.comまでお気軽にどうぞ。
それではまた次回お会いしましょう、خدا حافظ۔ (khodā hafez)!👋
