その録音、クラウドに上げていい音声ですか——無料AI文字起こしで、最初に決めること(2026年版)
「文字起こし 無料」で検索して、選択肢が多すぎて手が止まった——たぶん、この記事にたどり着いた方の多くがそうだと思います。Notta、CLOVA、Whisper、なんとかAI…どれも「無料でできます」と大きく書いてある。で、結局どれ?
先に、いちばん大事なことを言ってしまいます。最初に決めるのは「どのツールか」じゃありません。「その録音、クラウドに上げていい音声か」です。 ここを飛ばして無料ツールに社外秘の会議を放り込むのが、この分野で一番やってはいけないこと。ツール選びは、その次です。
なぜそこから始めるのか。無料の文字起こしには、はっきり「代償」が3つあるからです。①録音を外部サーバに上げる情報リスク、②無料枠の時間上限、③要約時の"それっぽい嘘"(ハルシネーション)。この3つを、研究員として先に正直に置いておきます。タダより高いものにしないための順番です。
無料枠(対応時間・話者分離の有無・料金)や各サービスの仕様は、リサーチ日(2026年7月)時点の各出典に基づきます。この分野は改定がとても速いので、実際に使う前に必ず各公式の最新表示を確認してください。特に「月◯分」「1回◯分」「無料か有料か」の線引きは変わりやすいです。
まず、録音を「上げていい/ダメ」で二つに割る
道具の話の前に、この一問だけ自分に投げてください。「この音声、外のサーバに上げても困らない?」
答えがNOなら——つまり社外秘、顧客の個人情報、未公開の数字、まだ言えない人事の話が入っているなら——選択肢は最初から絞られます。
端末の中で処理する手段に寄せる。 具体的にはiPhoneのボイスメモ、Pixelのレコーダー、そしてローカルで動かすWhisper。とくにローカルWhisperは音声を外に一切送らないので、いちばん堅い。
標準アプリを使う場合も、クラウド同期やクラウド送信の設定がオンになっていないかは一度確認してください。この端末内ルート以外は、社外秘については候補から外していい。
答えがYESなら——社内の雑談メモ、公開予定のセミナー、自分用の思いつき録音なら——クラウドの無料枠を気楽に使えます。Nottaでも、LINE WORKS AiNoteでも、好きに試せばいい。
順番が逆だと事故ります。「便利そうだから」で無料クラウドツールを選んでから中身を上げるのではなく、中身で先にレーンを決めてから、そのレーンの中でツールを選ぶ。 これだけで、無料文字起こしの一番怖い落とし穴は避けられます。
では、レーンごとに見ていきます。
「上げてもいい音声」でも、まず"もう手元にある無料"を使い倒す
新しいアプリを入れる前に。あなたのスマホとPCには、たぶんもう無料の文字起こしが入っています。ここを使わずに有料へ飛ぶのは、もったいない。
iPhoneユーザーは、標準のボイスメモで十分間に合う場面が多いです。 iPhone 12以降+iOS 18.4以降なら、録音した音声メモを日本語で文字起こしして、テキストをコピーできます(2025年4月のiOS 18.4で日本語に正式対応。
Apple Intelligence対応機種でなくても使えます)(東洋経済オンライン / Apple Support — ボイスメモの文字起こし)。
追加費用ゼロ、音声も基本は端末で扱えます。ちょっとしたメモや1人の録音なら、これで話が終わることも珍しくない。
Pixelユーザーなら、標準のレコーダーが優秀です
Pixel 6以降で日本語の文字起こしに対応し、録音と同時にリアルタイムで文字が出ます(Google Pixel ヘルプ)。
ただし一つ正直に言っておくと、「誰が話したか」を分ける話者分離は、日本語だとまだ当てにしないほうがいい。 Pixel 7以降で話者ラベリング自体はありますが、日本語での話者識別には制約があるという報告が複数あります(Dream Seed)。
声質が近い人が続くと、ラベルはけっこう入れ替わります。
WindowsでOfficeを使うなら、Wordの文字起こし(Transcribe)が使えます——ただしこれは"完全無料"ではありません。 Microsoft 365のサブスク前提です。
ここ、二次メディアが「無料でできる」と書きがちな最大の誤解ポイントなので、はっきりさせておきます。
契約していれば、アップロードした音声を月300分まで、話者を分けて起こせます(Microsoft Support)。
逆に言うと、M365を契約していないなら"無料の選択肢"には入りません。ついでに、無料版のTeamsでは会議のトランスクリプション(保存できる文字起こし)は使えません(ライブ字幕は出ますが保存不可。
M365有料ライセンス+管理者設定が要ります)(Otolio — Teamsで文字起こし)。
その場でPCに向かって話すだけなら、Googleドキュメントの音声入力が完全無料で速い。 「ツール>音声入力」でマイクの発話がリアルタイムに文字になります(Otolio — Googleドキュメント音声入力)。
ただし制約が二つ大きい。録音済みの音声ファイルは読み込めません(その場のマイク入力だけ)。そして話者分離ができません。だから複数人の会議の議事録には向かない。「自分がしゃべってメモ化する」用途に割り切ると強いです。
ちなみにGoogle Meetの文字起こし(保存できるトランスクリプト)は、無料のGoogleアカウントでは使えません。 有料のWorkspace限定です(字幕は幅広いプランで表示できますが、テキスト保存は不可)(Google Meet ヘルプ)。
「Meetで無料で議事録」を期待していた方は、ここで一回線を引き直してください。
無料枠のある専用サービス——"月◯分"より"1回◯分"を見る
標準機能で足りず、ちゃんとした専用サービスの無料枠を使うなら、日本語で名前が挙がるのは主にこの2つです。ただし選ぶときに見るべきは、大きく書いてある「月◯分」じゃありません。「1回で何分いけるか」です。 ここを見落とすと、いざ会議を録ったときに詰みます。
Notta(ノッタ)の無料プランは、月120分まで。でも本当の壁は"1回あたり最大3分"のほうです(アプリの達人 / Notta公式料金)。
月120分と聞くと会議2〜3回いけそうに思えますが、1回3分では30分の打ち合わせは丸ごと起こせません。話者分離が無料でも使えるのは良いところ。
用途は「短い音声メモの即テキスト化」「精度のお試し」に割り切るのが正解で、長い会議の本命にはしないほうがいい。
LINE WORKS AiNote は、旧CLOVA Noteの後継です。 ここ、古い記事のまま「CLOVA Note」で紹介されていることが多いので直しておきます。
CLOVA Noteβは2025年7月31日で終了し、正式版のLINE WORKS AiNoteへ移行しました(PLAUD — LINE WORKS AiNote(旧CLOVA note))。
フリープランは月300分まで、話者分離あり。日本語の会議・打ち合わせ用途では前身の頃から評価が高いです。ただしAI要約やWeb会議の録音は無料枠に含まれない点は押さえておいてください。
Nottaの「1回3分」とAiNoteの「月300分・話者分離あり」を並べると、"上げていい音声"で少し長めの会議を無料で起こすなら、まずAiNoteを試す——というのが今の私の見立てです。
とはいえどちらも仕様は変わりやすいので、使う直前に無料枠の現行値だけは公式で見てください。
いちばん"外に出さない"手=ローカルWhisper(代償は手間)
社外秘レーン(上げちゃダメな音声)の本命が、これです。
OpenAIが公開している無料の音声認識モデル、Whisper。 何がいいかというと、ローカルで動かせば音声を一切外に送らない。 クラウドの学習利用も、アップロード事故も、原理的に起きません。
社外秘の会議を文字にしたいなら、私はまずこれを勧めます。
精度も実力派です。日本語の単語誤り率(WER)は条件が良ければ4.9%前後という数値が引用されます(※二次メディアの引用値でモデル・条件に依存。
参考程度に)(LION AI)。録音済みの音声ファイルをそのまま起こせるので、Googleドキュメントが苦手な"あとから起こす"もカバーできます。
ただし、正直に代償を言います。手間がかかります。 環境構築とコマンド操作の技術ハードルがあり、GPUのないPCだと処理が遅い。「アプリを入れて録音ボタンを押すだけ」の手軽さは、ここにはありません。
とっつきにくければ、faster-whisper(高速・省メモリでCPUでも動く実装)から入ると現実的です(日経xTECH — faster-whisper導入)。
まず試すだけなら、Hugging FaceのWhisperデモやGoogle Colabの無料枠で触ってから、ローカル導入を判断してもいい。
言い換えると、「精度も欲しい、外にも出したくない、でも手間は許容する」人にはWhisperが最強。手間が無理なら、社外秘の音声はそもそもAIに起こさせない、という判断も立派に"あり"です。ここは無理をしない。
文字起こしの"次"=議事録化は、ChatGPT無料で。ただし分業で
「起こして終わり」じゃ議事録になりません。整えて、要約して、決定事項を拾う。この仕上げは、ChatGPTの無料版が得意です。
ただし注意。
ChatGPTの無料版は、音声ファイルを直接文字起こしできません(音声のアップロードから文字起こしは有料機能で、しかも25MB上限=標準的なMP3で25分くらいが限界)(文字起こしさん)。
だから正しい使い方は分業です。先にWhisperや標準アプリでテキストにして、そのテキストをChatGPT無料に貼り、「議事録の形に要約して」と頼む。 ChatGPTは音声処理より、起こし済みテキストの要約・整形でこそ光ります。
この「要約に使うAI」をChatGPTにするかGeminiにするかは、無料AIチャット3強の使い分けで書いたので、迷う人はそちらを。
そして、これが3つ目の代償です。要約AIは、平気で"それっぽい嘘"を混ぜます。 言っていないことを要約に足したり、逆に決定事項をまるっと落としたり。
だから議事録では、固有名詞・数値・決定事項の3つだけは、必ず元のテキストと突き合わせてください。 全文を読み直すのは大変でも、「金額」「日付」「誰が何を決めたか」の3点を照合するだけで、事故の大半は防げます。
あと地味に大事なのが、貼ったテキストが学習に使われない設定になっているかを一度確認しておくこと。社外秘レーンの音声を、要約の段でうっかりクラウドに戻してしまっては本末転倒です。
無料だけで議事録を回す、現実的なフロー
まとめると、無料の道具を組み合わせて議事録を最後まで回すなら、流れはこうです。
まず録る。社外秘なら端末内(iPhone/Pixel)かローカル前提、公開OKならクラウド無料枠でも可。次に起こす。長い会議で外に出せないならローカルWhisper、短いメモやその場入力なら標準アプリ。そして整える。
起こしたテキストをChatGPT無料に貼って議事録形式に要約。最後に、いちばん飛ばしたくない工程——人が確かめる。固有名詞・数値・決定事項を原文照合する。
この最後の一手を省くと、"速いけど間違っている議事録"が量産されます。AIは下ごしらえまで。確定は人。この線だけは、無料でも有料でも動かさないほうがいい、と私は思っています。
念のため、精度について正直な補足を。ここまで挙げたどの手段も、静かな環境で1人が明瞭に話す音声なら、無料でも十分実用域です。逆に、雑音・複数人の声の重なり・専門用語・固有名詞・早口が増えるほど、どれを使っても精度は落ちます。
話者分離も"できる"サービスで万能ではない。だから「無料はダメ」でも「無料で完璧」でもなく、自分の録音環境ではどこまで通用するかを、短い音声で一度試してから本番に使う——これが遠回りに見えて一番確実です。
無料枠も対応機能も、来月にはしれっと変わっている世界です。この研究所では次に、「社外秘を一切クラウドに上げずに、ローカルWhisperだけで会議の議事録を最後まで回せるか」を、手間の実感まで含めて検証してみようと思っています。
結果が気になる方は、フォローして待っていてください。
文字起こしした先の"要約AI"で迷ったら、無料AIチャット3強の使い分けと、無料AIツール完全ガイドも地続きの話なので、そちらも覗いてくれると嬉しいです。
録音を文字にする前に決めるのは、精度でもツールでもなく「この音声、クラウドに上げていいか」です。社外秘なら端末内かローカル、外に出していいならクラウド無料枠で十分。この最初の一線だけは、無料でも有料でも動かさないほうがいい。ここだけ持って帰ってください。
——ひとつだけ、教えてください。あなたが録音を文字起こしに回すとき、「これ、クラウドに上げて大丈夫かな」と手が止まったのは、どんな音声でしたか? 社外秘の会議、顧客との電話、まだ公開前の打ち合わせ——一言で構いません。コメントで教えてもらえると、同じところで「そのまま上げるところだった」とヒヤッとする人の、いい確認ポイントになります。
私はこの研究所で、無料AIを「どこまでタダで戦えて、どこからが“代償”か」を正直に検証し続けています。文字起こしもそのひとつ。役に立ちそうなら、フォローで次の検証が届きます。
