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AIとGPUが日本経済を救う?──電力の現実から目を逸らす『金属幻想』

武智倫太郎(週刊バブルウォッチ編集長)

GPU爆売れでAI相場復活?──期待だけが先行する『金属信仰経済』

『GPUが売れている。NVIDIAの時価総額がAppleを超えた。AI半導体は新たな基軸通貨だ』

──日本経済新聞の見出しが聞こえてきそうだ。

そして当然のように、続く一文はこうなる。

『この流れに乗り遅れてはならない。SBGの株価は12,000円を目指す』

なるほど。素晴らしい。GPUが売れ、AIが学び、株価が上がる──まるで電気も資源も有限でない国に住んでいるかのような話だ。

現実:電力なきGPUは、ただの『重たいオブジェ』

だが現実は、いつも皮肉に満ちている。GPUとは、膨大な電力を注ぎ込み、エネルギーを浪費してようやく『人工知能の脳』として機能する『素材』に過ぎない。

製造には、高純度のシリコン、レアメタル、セラミック、銅、金などが用いられ、GPU1個あたりの製造には数百kWhの電力が必要とされる。

そして使用時には、AIを支えるデータセンター全体で、大型発電所1基分に匹敵する電力を日々消費している。『スターゲート構想』などで語られる『1カ所あたり5GW』という数字は、あまりに無邪気だ。

これは、UAEが10年かけて建設したバラカ原発4基全体の総出力(約5.6GW)に匹敵する規模であり、福島第一原発の全6基の総出力(約4.7GW)をも上回る水準である。

要するに、電気がなければ、GPUはただの高価な『焼き物』に過ぎない。

日経的楽観の罪:『電気代』のない予測モデル

AIとGPUの未来を語るとき、なぜ日経系アナリストのレポートからは、電力供給量や電力コストといった根源的な制約条件が、まるごと欠落しているのだろうか?

以下のような『黙示的前提』が平然と語られている:

・電気代ゼロでGPUが無限に稼働する世界?
・原発も火力も建てずに、電力は自然に湧いてくる?
・ロボット1台が300kW消費しても大丈夫? しかも100億台単位で?

この手の楽観論は、インフラも資源も時間も、すべて『無視できる変数』として処理している点において、もはや科学ではなく『カルト信仰』に近い。

実際、シンギュラリティ派の旗手、ピーター・ディアマンディスはこう語っている。

『2040年までに、世界には100億台のヒューマノイドが存在し、1体あたりの“労働コスト”は1日たったの10ドルになるだろう』

だが、その1体が300kW食うなら、世界は毎日『電力崩壊』するだろう。エネルギー制約なきロボット経済は、現実逃避の産物にすぎない。

日経が大好きな『日本復活ストーリー』に、水力発電所や送電ロス、発電燃料費といった『泥臭い現実』はどうやら登場しないようだ。

株価12,000円の空気弁:分析なき予測、責任なき煽り

SBGの株価が12,000円に上がる根拠はNAV? Armの将来性? AIの覇権? 
それらはすべて、電気があることが前提の空想経済だ。

そして、その空想を一心不乱に拡声器で広めるのが、『営業アナリスト』と『後追い格付け機関』、そして日経的経済楽観主義者たちである。

真の未来予測とは『電卓』より『電力量計』を使うことだ

AI時代に必要なのは、『演算能力』よりも『発電能力』だ。
予測に必要なのは株価チャートよりも電力の需給バランス表である。

電力が尽きれば、GPUもロボットも、AIもSBGも、ただのスクラップになる。

それでも、12,000円を信じたい読者は日経を。
現実を知りたい読者は、週刊バブルウォッチを。

『株価が下がっても潰れない』は、SBGには通用しない

ソフトバンク時代はITバブル崩壊後の1/100の大暴落でも耐えた。だが現在のSBGは、いままさに『あと一歩』で崩れる

2000年、ソフトバンク株式会社(現:SBG)は、ITバブルの絶頂期に株価20万円を記録し、その後2000年代前半には2,000円台まで暴落。実に1/100以下という急落だった。

しかし、それでもソフトバンクは倒れなかった。寧ろ、ヤフーBBやボーダフォン日本法人の買収といった大胆な攻勢に転じ、復活を果たした。

だが2025年現在、ソフトバンクグループ(SBG)の株価はわずか数十%下落するだけで『破綻リスク』が現実化すると、私は警告している。

この点は日本のメディアではあまり報じられていないが、海外の質の高い金融紙(クオリティペーパー)では、すでに半ば常識とされている。

株価が『30%下がるだけ』で、SBGはレッドゾーンに突入する

現在のSBG株価は約7,700円。これが30%下落して5,400円程度になるだけで、SBGが抱える巨額の担保付き融資に対し、マージンコール(追加担保の要求)が発動する可能性が極めて高くなる。

実際、2020年のコロナ・ショックや2022年のハイテク株暴落時には、SBGの信用リスクが市場で急激に意識され始めた。特に2020年には、SBGが保有するアリババ株やSVF資産の時価が急落し、孫正義氏自身が保有するSBG株を大量に追加担保として差し入れる事態となった。

その担保価値はSBGの株価と強く連動しており、評価損の拡大が、そのまま資金繰り危機に直結する構造である。

SBGは普通の会社とは違う

一般企業であれば、株価が1,000円から500円に下がっても、資金繰りに即座に影響は出ない。株価はあくまで市場の評価であり、銀行からの借入は企業の営業キャッシュフローや固定資産を基準に審査されるからだ。

だがSBGの場合、事情は真逆だ。
借入金の多くが、SBG株式などの時価資産を担保としたレバレッジファイナンスで成り立っている。
そのため、株価が30〜40%下落するだけで、LTV(Loan to Value:貸出額に対する担保価値の比率)が急低下し、強制返済や担保株式の売却(ロスカット)が現実化する。

つまり、SBGにとって株価は『企業の顔』ではなく『命綱』なのだ。

ソフトバンク時代はなぜ持ちこたえたのか?

2000年〜2002年にかけて、ソフトバンク株式会社の株価は20万円から2,000円台へと暴落した。だが当時のソフトバンクは、本業から生み出す営業キャッシュフローに軸足を置いた構造であり、借入金の担保に自社株や投資先株を過度に依存していなかった。

一方、現在のSBGはまったく異なる。
自己資本と巨額の借入をテコに、未上場スタートアップに投資するというファンド型モデルを採っており、その資産評価の多くが未実現の含み益(=紙の利益)で構成されている。

株価が下がれば、この『含み益』は一瞬で消え、評価の基盤そのものが崩壊する。つまり、ソフトバンク時代は『実体』が支えていたが、SBGはいま『時価』でかろうじて支えられているに過ぎない。

株価7,700円が5,000円を割れば、『レッドゾーン』に入る

複数のアナリストや信用調査機関の分析によれば、SBGが現在のLTVを維持できる限界は株価5,000円付近だとされている。つまり、株価があと30〜40%下がるだけで、SBGは『破綻条件』に近づくことになる。

『株価が1/10になったら心配すべき』だと思っている読者もいるかも知れないが、SBGはすでに『3割下がるだけで倒れる会社』になっている。

株価が担保であり、信用の裏付けであり、社債市場での命綱である。
AI関連資産(たとえばArm)の評価が崩れれば、SBG全体が連鎖的に崩壊する可能性は極めて高い。

結論:SBGは『時価経済のピラミッド』

SBGは、株価が高い間は巨大な資金を呼び込める『時価経済のピラミッド』だ。だが、その根幹を支えている『株価』が3割下がるだけで、構造全体が崩れ落ちるリスクをはらんでいる。

ITバブル崩壊時に『株価が1/100』になっても耐えたソフトバンクとは違い、現在のSBGは、『株価が1/2になる前に終わるかもしれない会社』なのだ。

それがSBGという企業の宿命であり、そして、この『構造依存型バブル経済』の危うさそのものである。

孫正義の株担保融資とマージンコールリスク:2025年5月最新分析へ続く

武智倫太郎

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