7月32日丨風まかせ文芸部
正直に言えば、考えたことがありませんでした。
暦の上に存在しない日ですから。
七月三十一日の夜が明ければ、世界は当然のように八月一日へ進んでしまう。
誰も、そこに疑問を持たない。
……ただ、こうして想像してみると、妙に懐かしいのです。
終わらなかった宿題、行けなかった海、言い出せなかった一言。
それらをそっくり置いておくための予備の一日が、七月と八月の継ぎ目に、薄紙一枚ぶんだけ挟まっている。
どの暦にも印刷されていないのに、思い出そうとすると、確かに在った気がしてくる。
存在しないはずなのに、在る。
……私はその日の光を、見てみたいのです。

上記のツールを使用しました
上記企画に参加させていただきました
元画像

七月三十二日──誰も考えたことのない日付なのに、想像した途端、不思議と心当たりがある。
沈み残した夕陽と昇りかけた月が同じ海を照らす、暦にない黄昏。
間に合わなかった夏の置き場所として、この存在しない一日を静かに観測いたしました。
