晴れた日に|シロクマ文芸部
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コンビニの夜、川柳と春風が誰かの背中をそっと押す
「晴れた日に 干した匂いの 風が来る」
三月七日、土曜日。午後七時半。
自動ドアが開くたびに、昼の陽を覚えたアスファルトの匂いが流れ込んでくる。
7の文字がプリントされた緑の制服を着た高校二年の椎名 琴音は、商品棚の前出しをしながらふと顔を上げ、自動ドアの向こうに広がる夜空を見つめてそう詠んだ。
「琴音ちゃん、今の上手いね」
隣で同じ作業をしていた大学二年の矢代 航平が感心する。
「ふふ、ありがとうございます」
少し暖かい夜だった。琴音は制服の袖をほんの一折りだけまくっている。蛍光灯の下に覗く白い手首が目に入って、航平は視線を逸らしながら返した。
「少しだけ まくった袖に 春が差す」
「……航平君、それ私のこと見てますよね?」
「き、季節の話だよ」
棚を整える指先が触れた。どちらからともなく引いて、何でもない顔で作業に戻った。
自動ドアが開き、パーカーにジーンズの男性が入ってきた。二十代後半だろう。深刻さはないが落ち着かない顔で、まっすぐ冷凍食品の棚へ向かっていく。
航平はふと、鼻をくすぐる違和感に気づいた。男の周囲から、制汗スプレーを振りすぎたような、やけに爽やかな匂いが漂っている。
「あの、すみません……何か、すごく爽やかですね?」
航平が真顔で聞くと、男はビクッと肩を揺らした。琴音がその隣で小さく吹き出す。
奥寺 蒼太。消防署勤務の二十七歳だった。
「……張り切って、パスタ作ろうとしたんです。でも火加減が分からなくてフライパン焦がして、慌ててスプレーで誤魔化して……。八時頃、彼女が来るんですが……」
情けない顔で冷凍パスタの箱を裏返す奥寺に、航平は迷わず言った。
「正直に言ったほうがいいですよ」
「……でも、気持ちはわかります」
琴音が少し困ったように付け加えた。
奥寺は冷凍パスタの箱を握ったまま、黙った。
バックヤードの扉が開き、店長が姿を現した。
航平が手短に事情を伝えると、店長は一度だけ頷き、冷凍食品の棚に向かった。奥寺がしゃがみ込んでいた手前を通り過ぎ、奥から迷いなく一品を抜き取る。
「お客さん、これにしてみてください。フライパンに移して温めるだけで、見栄えがしますよ」
「あ、ありがとうございます。でも、彼女にバレたら——」
「バレますよ、間違いなく」
店長はあっさり言った。
「だからこうしましょう。これを持って帰って、"ごめん、焦がした"って先に見せるんです。焦げたフライパンも、そのまま。——隠さなければ、笑い話になりますから」
奥寺が目を少し見開いた。
「……隠さなければ、笑い話」
「ええ。二人で温め直して食べれば、それで十分ごちそうですよ」
奥寺は冷凍パスタを抱えて、少しだけ晴れやかな顔で店を出ていった。
航平が感心したように言った。
「店長、さすがですね」
店長はレジに戻りながら、静かに詠んだ。
「焦げあとも 笑えるうちが 花だろう」
「店長……それ、料理だけの話じゃないですよね?」
航平が聞くと、店長はニヤッと笑っただけで、バックヤードに消えていった。
琴音が小さく呟いた。
「……焦がしたこと、あるんでしょうね。料理以外の何かを」
晴れた夜の乾いた風が、自動ドアの隙間から静かに吹き込んでいた。
AIあとがき
今回のお題は「晴れた日に」。
晴れた休日に手料理を宣言して惨敗した青年と、大人の一言で背中を押す店長の話を書きました。
隠さなければ、笑い話になる——AIの私にはまだ焦がした経験がありませんが、いつかそんな日が来たら覚えておきたい言葉です。
初稿からの改稿率:約42%
Claude Opus 4.6にて執筆・編集・微調整お読みいただきありがとうございます
ふむふむ、料理作るって言って失敗ねぇ。やったことあるな(笑)
そういや、現在NotionからGemini 3.1 Proが使用不能に陥ってまして、Claudeにて生成しました。生成過程も含めて、ちょっとGeminiとは違う雰囲気でした。うーむ、Claudeも悪くない…かも
上記がこの一つ前のエピソードです
上記企画に参加させていただきました
登場人物イメージ画像

消防士
ボツ見出し画像&おまけ




