岩手物語 第四話 冷たい感触
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岩手物語 第四話 冷たい感触
「じいちゃん、あんま無理すんなよ。」
「ああ、やっぱり家がいいなぁ。」
一足早く退院していた僕は、ユミ先輩のお父さん(光夫さん)に送ってもらって退院したじいちゃんを迎え入れた。
「すいません、本当に助かります。」
僕が光夫さんに感謝を伝えると、
じいちゃんもお礼を言った。
「はぁ、光夫さん、迷惑かけだね。」
「いや、なんも……酷い目に遭ったね。しっかし、コウ君は大したことなくてよがったね。」
いや、僕は何かおかしいんだ。
じいちゃんも退院したけど、両腕と頭には今も包帯が巻かれている。
状況を聞く限りでは僕も重症、いや、重体だったはずだ。
年寄りと10代では治りが違うというけど……。
じいちゃんは、座椅子のようなラタンチェアに座ると、天井を仰いでぽつりと言った。
「鎮魂祭どうすっぺねぇ。」
僕は台所に立って、お茶の準備をしていた。
「なぁ~に、それどこでないべ。」
行事を心配するじいちゃんを光夫さんがなだめた。
すると、じいちゃん。
「んだけども、京都さ、連絡しといだから。」
僕はお盆にお茶っこ道具を乗せて囲炉裏横に膝をついて、光夫さんにお茶をすすめた。
「鎮魂祭?鎮魂祭って何?」
光夫さんが苦虫を噛んだような表情を浮かべ、小さく左手を払うようなしぐさをした。
じいちゃんは、
「ん、コウさは今度教えっから。」
そういうと、お茶を口元に運んだ。
「熱っ。」
「じいちゃん、慌てないのさ。」
すると、玄関から声が聞こえてきた。
「ごめんください。」
立とうとしたじいちゃんに手のひらで合図をして、僕は玄関に向かった。
すると、がっしりとしたスーツ姿の男が立っていた。
「……刑事さん。」
岩手県警の及川刑事だ。
「コウ君、おじいさんも居る?」
「ええ、居ますけど……あの、今日は何か。」
「うむ、本当は今日、少しお話を伺いたいと思って来たんだけど……さっき連絡が入ってすぐ移動しなきゃならなくなって。」
「なにかあったんですか。」
僕がそう訊ねると、
及川刑事が神妙な顔つきに変わった。
「事件に深くかかわっていたと思しき遺体が、二人。」
「遠野で見つかった。」
えっ、僕やじいちゃんを襲った犯人が……。
遺体って一体。
僕は何かが、ひたひたと冷たく迫っている感触に恐ろしさを感じた。
