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岩手物語 第七話 琥珀のなかの梅

岩手物語 第七話 琥珀のなかの梅

黒光りする板の間に囲炉裏があって、
僕はミチザネと差し向かいに座っていた。

じいちゃんは、

「ちょっと相手しててくれ。」

と言って蔵に向かった。

「ミチザネ、ヌエって?」

ミチザネは目を閉じて正座をしたままだ。
僕は「ふう」とため息をついた。

「ミチザネ、今、お茶入れてくるから。」

それにしても転校生と、じいちゃんの接点が全く想像できない。

(お茶菓子って、田村の梅でいいかな)

「はい、お茶、お持ちしましたよ。」

ミチザネがゆっくり眼を開いた。
一緒に出したお茶菓子に、『ぴくり』とした気がした。

「あ、京都出身だっけ、食べてみなよ。」

「う、ん、」

竹でできた楊枝で、紫蘇にくるまれたお菓子を口に運んだ。
ミチザネの目が細くなった。

「わははっ、甘酸っぱいだろ。」

「……ひとつ、いいか。」

「なんだ、気に入ったかい?」

「……いや、」
そういうと、ミチザネが茶箪笥の上にある写真に目をやった。
そこにあるのは亡き父母の写真。

「あ~、父ちゃんと母ちゃん。」

僕の両親は東日本大震災後の津波にのまれた。

僕が2歳の時だった。

ミチザネは、察したようだった。
「……いや、すまない。」

玄関からじいちゃんが、床を鳴らして歩いてきた。
囲炉裏の前にどかりと座った。

「これがあ。(これで合ってますか。)」

そうして、持ってきた古めかしい小さな桐の箱を開けた。

僕は身を乗り出して覗いた。


……琥珀?

その美しい琥珀は、中に花びらが閉じ込められていた。

なんの花びらだろう、桜、それとも……梅かな。

神秘的な光をたたえた、勾玉の形をした琥珀だ。

ミチザネは、その琥珀を受け取ると口を開いた。

「次に引き継ぐ……彼にお役目のことは?」

じいちゃんは少しだけ黙った。

「コウ、俺さもお茶くれねが。」

お茶を入れに立ち上がろうとすると、
じいちゃんは、ため息をついた。

「いや、おめえもこさ居ろ。」

「なに?」

半分立ち上がっていた僕をつかんで、
じいちゃんが言った。

「鵺(ぬえ)の話ば聞いとけ。」


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