岩手物語 第十六話 神隠し
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第十六話 神隠し
ミチザネと別れて帰路に就く。
結局、ミチザネと居るのが楽しくて、何も訊けなかった。
クールなミチザネが必死にラーメンを食べてる姿。
僕は一人で思い出し笑いをしていた。
「は~、ちゃんと聞けなかった、ダメだなぁ。」
家につくと、明かりが消えている。
先日の事を思い出したが、いや、まさか、
昨日の今日でまた……そんな事は無いだろう。
「じいちゃ~ん、居ないのかぁ。」
「生協のヨーグルトアイス買ってきたよ~。」
居間の電気をつけたとき、
暗がりの隣の仏間から風が入ってくる気配がした。
さわさわと、おなかの下が重くなってくる感覚があった。
頭が冷たいのに、ぼ~っとする。
怖いけど、右足からすり足で、そろそろと暗闇の仏間に近づいた。
それまで気にもしてなかった振り子時計の音が、
いつもより大きな音で聞こえてくる。
「じ、じいちゃ~ん。」
板の間を走り、急いで部屋の真ん中に下がっている蛍光灯の紐を引いた。
一瞬、
『ぱちっ』と音を立てると、明かりが左右に揺れて影が激しく動いた。
「はぁ~っ」
誰も居ない。
ガタン!
玄関から大きな音がした。
「ひやっ!」
僕は思わず変な声を出した。
すると、じいちゃんだ。
「なんだ、かえってだのか。」
「なんだ、じいちゃ~ん。」
「なんだはねぇべ。」
僕は、じいちゃんの姿を見てすっかりと安心した。
「じいちゃん、どこに行ってたのさ。」
「なぁ~に、おめ、きくんつぁんとこの娘。
あ、ホレ、光夫さんとこのよぉ。」
「あ~ユミ先輩?」
じいちゃんが農協の帽子を取り、
表情を曇らせ言った……
「帰ってないんだど。」
喉の奥から苦味が込み上げてきた。
僕の中の誰かがざわついた気がした__。
