見出し画像

岩手物語 第十六話 神隠し

岩手物語 マガジンはこちら ▼

第十六話 神隠し

ミチザネと別れて帰路に就く。

結局、ミチザネと居るのが楽しくて、何も訊けなかった。
クールなミチザネが必死にラーメンを食べてる姿。
僕は一人で思い出し笑いをしていた。

「は~、ちゃんと聞けなかった、ダメだなぁ。」

家につくと、明かりが消えている。

先日の事を思い出したが、いや、まさか、
昨日の今日でまた……そんな事は無いだろう。

「じいちゃ~ん、居ないのかぁ。」

「生協のヨーグルトアイス買ってきたよ~。」

居間の電気をつけたとき、
暗がりの隣の仏間から風が入ってくる気配がした。

さわさわと、おなかの下が重くなってくる感覚があった。
頭が冷たいのに、ぼ~っとする。

怖いけど、右足からすり足で、そろそろと暗闇の仏間に近づいた。
それまで気にもしてなかった振り子時計の音が、
いつもより大きな音で聞こえてくる。

「じ、じいちゃ~ん。」

板の間を走り、急いで部屋の真ん中に下がっている蛍光灯の紐を引いた。
一瞬、
『ぱちっ』と音を立てると、明かりが左右に揺れて影が激しく動いた。

「はぁ~っ」
誰も居ない。

ガタン!

玄関から大きな音がした。

「ひやっ!」
僕は思わず変な声を出した。

すると、じいちゃんだ。
「なんだ、かえってだのか。」

「なんだ、じいちゃ~ん。」

「なんだはねぇべ。」

僕は、じいちゃんの姿を見てすっかりと安心した。
「じいちゃん、どこに行ってたのさ。」

「なぁ~に、おめ、きくんつぁんとこの娘。
あ、ホレ、光夫さんとこのよぉ。」

「あ~ユミ先輩?」

じいちゃんが農協の帽子を取り、
表情を曇らせ言った……

「帰ってないんだど。」

喉の奥から苦味が込み上げてきた。

僕の中の誰かがざわついた気がした__。


いいなと思ったら応援しよう!