見出し画像

多裂筋の役割について整理してみる— “見えないけど重要”な筋の本質 — 【臨床のヒント #45】

体幹トレーニングというと、

・腹筋を鍛える
・プランクをする

といったイメージを持つ人が多いかもしれません。

しかし臨床で重要なのは、
いわゆる“見える筋肉”だけではありません。

その代表が、多裂筋です。

腰痛や姿勢制御に関わる筋として知られていますが、
実際の役割を深く理解できているでしょうか?

今回は、
多裂筋の役割を臨床視点で整理していきます。


多裂筋とは何か

多裂筋は、脊柱の深層に位置する筋で、

・椎骨から椎骨へと短く連結する
・特に腰椎部で発達している

という特徴があります。

いわゆる

ローカル筋(深層筋)に分類され、

脊柱の安定性に大きく関与します。


よくある誤解

多裂筋というと、

「体幹を安定させる筋」

と一言で説明されることが多いですが、
これだけでは少し不十分です。

なぜなら、

“どう安定させているのか”が重要だからです。

単に固めるのではなく、
より精密な役割を担っています。


役割①:分節的な安定性の確保

多裂筋の最大の特徴は、

“分節レベルでの制御”です。

腹筋群や脊柱起立筋が
大きな動きを担うのに対して、

多裂筋は、

・各椎間の微細な動きを制御する
・過剰なズレや剪断を防ぐ

といった役割を持ちます。

つまり、

「動かないようにする」のではなく
「ズレないように調整する」筋
です。


役割②:フィードフォワード制御

多裂筋は、

動く前から活動する筋としても知られています。

例えば、

腕を挙げる前に
体幹が先に安定する現象。

これは

フィードフォワード制御と呼ばれます。

このとき、

多裂筋や腹横筋が先行して活動することで、
身体のバランスを保っています。

しかし腰痛患者では、

このタイミングが遅れることが報告されています。

つまり、

動き出しの安定性が崩れている状態です。


役割③:固有感覚(位置覚)への関与

多裂筋は筋紡錘が豊富で、

固有感覚(プロプリオセプション)にも関与しています。

・今、どの位置にいるのか
・どのように動いているのか

これらの情報を中枢に伝える役割です。

そのため多裂筋の機能低下は、

・姿勢の崩れ
・動作の不安定性

にもつながります。


腰痛との関係

多裂筋は、
腰痛と深く関わる筋のひとつです。

研究では、

・慢性腰痛患者での萎縮
・左右差の出現
・脂肪変性

などが報告されています。

さらに重要なのは、

痛みが改善しても機能が戻らないことがある
という点です。

つまり、

放っておくと

“使えないまま”になる筋でもあります。


臨床でのよくある問題

多裂筋に関して、臨床でよくあるのが

・腹筋ばかり鍛える
・表層筋のトレーニングに偏る

というケースです。

もちろんこれらも重要ですが、

それだけでは

分節レベルの安定性は改善しません。

結果として、

・再発を繰り返す
・不安定な動作が続く

といった問題が起こります。


アプローチの考え方

多裂筋を考える上で重要なのは、

“鍛える”というより“再教育する”視点です。

ポイントは以下の通りです。

①低負荷での収縮の獲得

まずは、

・過剰な力を入れない
・局所的な収縮を感じる

ことが重要です。

ドローインや軽い収縮練習など、
低負荷から始めます。


②動作との統合

単独で収縮できても、

動きの中で使えなければ意味がありません。

・四つ這い
・ブリッジ
・立位動作

などの中で、

安定性を保ちながら動く練習が必要です。


③日常動作への応用

最終的には、

・歩行
・立ち上がり
・姿勢保持

といった日常動作で使えることが重要です。

つまり、

“使える安定性”にすることがゴールです。


若手理学療法士に伝えたいこと

多裂筋は、

・見えにくい
・触りにくい
・評価しにくい

筋です。

だからこそ、

軽視されがちでもあります。

しかし実際には、

腰痛や姿勢制御の根幹に関わる重要な筋です。

・なぜこの人は不安定なのか
・なぜ再発するのか

こういった疑問を持ったとき、

多裂筋の視点を持つことで
見え方が変わることがあります。


まとめ

多裂筋の役割は、

・分節的な安定性の確保
・フィードフォワード制御
・固有感覚への関与

といった、非常に重要な機能を担っています。

そしてそれは、

単なる「体幹を固める筋」ではなく、

“動きの質を支える筋”とも言えます。

もし今、臨床で

・腰痛が改善しない
・動作が安定しない

といったケースに出会っているなら、

一度多裂筋の視点で見直してみてください。

そこに、改善のヒントがあるかもしれません。

▼こちらの記事もチェック▼

▼メンバーシップはこちら▼

【執筆者 プロフィール】
北爪 直也|理学療法士
▶︎株式会社ACTX(アクトス) 代表取締役
▶︎埼玉県熊谷市を拠点に、訪問リハビリ・整体事業・地域活動など多角的に活動中。
▶︎リットリンクにてSNS等まとめてます↓
https://lit.link/zume

いいなと思ったら応援しよう!