観光でも移住でもない、関わりのデザイン——海士町「あまのわツアー」で見たこと
DAO、NFT、関係人口。
言葉は知っていた。でも、地域で実際にどう動いているのかは見たことがなかった。
島根県の海士町で「あまのわツアー」というものがあると聞いて、行ってみた。
三原市から始まった話
きっかけは三原市だった。
三原市の友人から「三原と海士町が経産省の補助金でWeb3をやるらしい」と聞いた。三原市とはSDGsの仕事で関係ができて以来、時々連絡を取っている。
正直、ピンとこなかった。
なぜ三原がDAOなのか。担当者に聞いても、目的がまだ抽象的で、構想が先行している感じがした。
DAOという言葉自体、少し前に流行って、今は下火になっている。前澤友作さんのMAZDAOも話題になったが、結局は株式会社化された。ブームで終わるのか、本当に使えるのか、判断がつかなかった。
「海士町も一緒にやっている」と聞いて、少し見え方が変わった。
海士町の名前は知っていた
2014年ごろ、部下が海士町に研修に行った。
帰ってきて「隠岐牛のカレーがうまかった」と言っていた。サザエカレーの話もしていた気がする。その時は「特産品で頑張っている島」くらいの印象だった。
今回は違う。DAO、NFT、関係人口。観光でも移住でもない切り口で何かをやっている。
ちょうど自分も、NFTを使った地域づくりについて企業から相談を受けていた。見に行く理由ができた。
境線は1時間に1本
米子鬼太郎空港から境線に乗る。
時刻表を見て驚いた。1時間に1本しかない。空港アクセス線とは思えない静けさ。駅は無人。ローカル線そのものだった。

交通系ICカードは使える。切符を買わなくても乗れる。待合スペースもある。ただ、本数が少ないので乗り遅れると1時間待つことになる。
境港からフェリーへ
境港駅からフェリーターミナルまでは歩ける。
もうひとつの出発地、七類港は駅から遠い。車がないと厳しい。電車で来るなら境港一択だと思っていい。
隠岐汽船のチケットは交通系ICで買えないが、クレジットカードは使える。ここまでは現金なしでも困らなかった。
ただし、島内は現金が必要になる。コンビニATMもない。乗る前に必ず現金を下ろしておくこと。
切符はすぐ出せる場所に
境港のターミナルは2階からボーディングブリッジで乗船する。
このとき切符の提示を求められる。自分はICカード感覚でカバンの奥にしまっていて、出すのに手間取った。すぐ出せる場所に持っておいた方がいい。

乗ったのは一番安い2等船室。スペースは十分、船酔いもなかった。
船内は現金のみ。自販機も売店も現金対応。クレジットカードもICも使えない。小銭と千円札を用意しておくと安心。

菱浦港に着く
海士町は島根県隠岐諸島の中ノ島にある。人口は約2,300人。
消滅可能性都市と言われたこともあるが、地域活性化の事例としてよく名前が出る。
菱浦港のターミナル「キンニャモニャセンター」は比較的新しい。観光案内も売店も入っていて、港としては整っている。

島前高校の話は避けて通れない
海士町を語るときに必ず出てくるのが「島前高校」と、その魅力化プロジェクト。
統廃合の危機にあった高校を、地域と一体になって再生させた。教育と地域の関係を見直す取り組みとして、全国から注目された。
「外から人を呼び込む」ではなく「地域の中で人を育てる」。スローガンではなく、制度として動いていた。
隠岐國学習センターという存在
島前高校を支えているのが「隠岐國学習センター(OEC)」。
教科学習の支援だけでなく、探究型の学び、地域と連携したプロジェクトが日常的に行われている。塾でも予備校でもない、地域と教育をつなぐハブのような場所。

単なる「高校の魅力化」ではなく、地域の自律性を高める仕組みとして機能している。誰が主語になるのか。その問いは、DAOの話とどこかで重なる。
面談で落とされることもある
あまのわツアーには、事前にGoogle Meetで面談があった。
DAOや関係人口について聞きたいことがあったので、いくつか質問した。結果的に参加できたが、後で聞いたところ、この面談で断られる人もいるらしい。
観光ツアーではない。視察でもない。来る人を選んでいる。
風と土とという会社
ツアーで印象に残ったのは、「風と土と」という会社の人との会話だった。
海士町は行政主導の取り組みが目立つ。外から見ていてもそう感じていた。だが、風と土とは違った。
島の民間企業として、しっかり事業をつくり、収益を上げている。補助金に頼らず、自分たちで回している。
[写真: 風と土との人、または対話の様子]
風と土とが運営する「SHIMA-NAGASHI」という研修プログラムについては、別の記事で書いた。
関連記事: 海士町で"民間"に出会った日——SHIMA-NAGASHIという研修
DAOは何のためにあるのか
海士町のDAOは、関係人口を制度として活かすための仕組みだった。
海士町には、短期滞在者、島前高校の卒業生、元住民、来島経験者など、すでに関係人口が存在している。IターンもUターンも増えている。ただ、家の問題など物理的な制約があり、人口そのものを大きく増やすのは難しい。
だから、定住だけでなく「関わり続ける人」をどう位置づけるかが重要になる。DAOとNFTは、そのための道具だった。

NFTは「ポイ活みたいなもの」だと思っていた。だが海士町では、関与の証として使われていた。技術ではなく、関わり方を制度に落とし込む手段。
三原市との違い
三原市は「DAOを導入する」という話だった。
海士町は「DAOを何のために使うか」が決まっていた。
目的があって、手段がある。順番が逆だと、構想だけが先行する。他の地域や企業からも相談を受けるが、「詳しい人が来ればうまくいく」という空気を感じることがある。DAOは導入するものではなく、設計して育てていくものだ。
24年、霞が関にいた
元公務員として、行政主導の地域振興をいくつも見てきた。
補助金で始まり、補助金が切れると終わる。そういう事業を何度も見た。
海士町が違うのは、行政だけでなく民間が動いていること。風と土とのような会社が、自分たちで事業をつくっている。DAOやNFTは、その関係性を制度にするための道具に過ぎない。
道具を入れれば変わるわけではない。誰が、何のために、どう使うか。それが決まっていなければ機能しない。

アンバサダーになった
ツアーの後、海士町のオフィシャルアンバサダーに登録した。
特別な役割を背負うわけではない。少し外側から、関わり続けるための選択だった。

DAO、NFT、関係人口。どれも仕組みに過ぎない。それをどう使うか、どう関わるか。
自分がどの立場で、何に関わろうとしているのか。それを明確にすることが、最初の一歩なのだと思う。

海士町の記事はマガジンにまとめています。
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