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②英国司法省面会交流等離別後の子の養育に関する裁判の評価報告書に関する文献レビュー(Domestic abuse and private law children casesA literature review2020)【抜粋】

②は、英国司法省面会交流等離別後の子の養育に関する裁判の評価報告書に関する文献レビュー(Domestic abuse and private law children cases
A literature review 2020
)の部分訳です(クリックすると英文に飛びます)。第4~6章(長谷川京子訳)部分を公開します。本文中の付録などの言及にかんしては、おおもとの英文を見てください。第1~3章の①はこちらです。

第4~6章の冒頭にまとめをつけておきます。

「第4章 ドメスティックアビューズ(DA)の形態と発生率」

英国では、DVを現在はドメスティック・アビューズDAと呼んでいる。「バイオレンス」という用語では身体的暴力を思い浮かべてしまうが、実態は威圧的・支配的行動と呼ばれるものを含め、もっとシステマティックな力で組み立てられていて、被害者を支配し、意思決定や判断や健康な感情を奪うものである。こうした実態を全体としてあらわすために、呼び名が改められた。
第4章では、そうしたDAがどのように被害者にむけられるか、それが、子の処遇やコンタクト事件(日本でいう子の監護の事件)でいかに高い割合を占めているか、DAにさらされることで子どもにどれほどの影響があるかを数多くの信頼できる調査や統計から明らかにしている。

「第5章 DA下の子育て」

DAがある家庭では、子どもはどう育てられるのか。パートナーを虐待するDA加害者は、時に面会や親権をめぐり、子どもに関わることに熱意を表すが、自身はどんな子育てをするのだろうか。また、子育てに関してDAはどんな被害をもたらし、その結果被害者の育児はどうなるだろうか。育児というのは高度にデリケートでタフさを要する営みであるが、別居前、別居後にそれぞれ、DA被害と被害者の状況、育児がどんなものになるかを、実証的な調査から明らかにしている。

「第6章 DA加害者とのコンタクトに関する親と子どもの体験」

DA加害者とのコンタクトは何をもたらすのだろう。加害者である別居親とのコンタクトに対し、同居親である母親は初めから反対するものか、加害者とのコンタクトで母親が受ける再被害はどれくらいなのか、コンタクトで傷つく子どものケアはどんなものだろうか。加害親とのコンタクトは子どもにとってどんな体験なのか、加害親は変わるのか、コンタクトで子どもが経験する精神的虐待とは具体的にどんなものか、虐待にさらされた子どもの回復はどうなるのだろうか。そして、こうしたコンタクトについて、子ども自身はどう考えているのだろうか。膨大な調査から明らかにしている。

以下が翻訳です。

4. DAの形態と発生率
4.1イントロダクション

 レビューされた調査は、DAが一般の人々の間に広く流布していることを報告している。それは子どものいる家族の方で多いし、家庭裁判所の私法上の子の手続においては、不均衡なほど高い割合を占めている。DAを経験した子どもや親への影響とその経験を理解するために、この章ではDAとはどういうものかと離別の前後でそれがどの程度起こっているかを検討する。

 4.2 DAとはどういうものか?

 最近まで「ドメスティック・バイオレンスDV」という言葉が、今は「ドメステッィク・アビューズDA」と呼ばれるものに用いられるようになってきて、一般に、成人の親密な関係で身体的暴力をふるうことを含むと考えられてきた。近年、DAは心理的、情緒的、経済的虐待を含む、より新しくは威圧的で支配的な虐待を含むと理解されるようになり、これらの異なる態様の虐待は米国では1970年代と1980年代以来、被害者・サバイバーとともに活動する人々によって考えられてきていた(Stark,2007)。Duluthの「力と支配の車輪」は、多様な虐待を表している(付録B参照)。2012年に政府共通のDAの定義に、威圧的で支配的な言動が取り入れられ、2014年に実務指針12Jがその政府共通の定義を反映したものに改正された。2016年には威圧的で支配的な言動の犯罪がイングランドとウェールズにおいて、2015年重罪法に取り入れられた。

 実務指針12Jで「威圧的言動coercive behaviour」は、「暴行、脅迫、侮辱、威嚇その他の虐待の行動もしくは行動のパターンで、被害者を害し、罰し、怖がらせるために行われるもの」と説明されている(実務指針12Jのパラグラフ3 以下パラ3のように表示)。

 「支配的言動controlling behaviour」は「人を支援源から隔離し、彼らから自立、抵抗と避難、そして日常行動を律するのに必要な手段を奪うことによって、従属させ、依存させるように仕向ける行為とその行動のパターン」と説明される(パラ3)。 

威圧的支配は、広範な戦略と結びついていると考えられている。それぞれの加害者は、身体暴力、威嚇、孤立と支配の一部もしくは全部を用い、「言動の持続的なパターン」の組み合わせからなる(Coy,Perks, Scott, and Tweedale, 2012, p22)。身体暴力は、いつもあるとは限らないが、威圧的支配の加害者が ほかの支配の方法を補強するために用いられる。そうすれば虐待者は頻繁に身体暴力に訴えなくて済むからである。一部の虐待者は深刻な暴力を加え、他の者は軽度の暴力を頻繁に用いるかも知れないが、累積することで被害者には特に破壊的な影響をもたらす (McLeod, 2018; Myhill, 2017; Stark, 2007)。虐待者は、被害者を脅迫、監視、馬鹿にするなどして威嚇する (Home Office, 2015; Stark, 2007; Women’s Aid, 2016)。監視による威嚇はストーキング、電話の盗聴、被害者のメールやテキストメッセージを読む、ソーシャルメディア上の通信をモニタリングする、その友人を問いただすことを含む。多くの加害者が「嫉妬にかられた監視」だとして、被害者の動きや頻繁に不貞の言いがかりのもとに監視を行う(Coy et al., 2012)。虐待者は被害者を馬鹿にし、侮辱し、恥をかかせる。例えば、被害者をこき使い、貶めたり、被害者の人間性を奪うようなルールや行為を強制し、彼らに話すことを禁じて、被害者の面目を失わせ、辱め、屈辱を味わわせたりする(Home Office, 2015; McLeod, 2018; Stark, 2007)。威圧的に支配する虐待者は、被害者を「自分の方が気が狂ってしまったのではないか」と思わせてしまうこともある (「ガスライティングgaslighting」として知られている)。

身体的な暴力はそれほどでもなかった。精神的な虐待がよりひどかった。彼は、私の心をずっと操作して、何もかもを捩じまげて、私に自分の気が狂っていくと感じさせた。・・・確かに私がそれをやった、あなたがやったのではなく、と私は考えた。でも私は、それをやった。でも、彼は、…私をそんな風に考えさせて、そうやって私をコントロールできていた(Fam 37) (Thiara and Humphreys, 2017, p140) 。

 隔離とは、「(DAを)打ち明けさせず、依存させ、独占的な所有県があると表明し、彼らのスキルや資源を独占し、彼らが助けや支援を得ないようにするために」用いられる。例えば、女性が働くことを阻止するために、交通機関やコミュニケーションの手段を用いることを否定したり、家族や友人に電話したり訪問することを禁じたり、警察を読んだり医療やその他支援にアクセスしたりしないようにする。(Stark, 2007, p262).

 虐待者の戦略の中心にあるのは支配(コントロール)である。「虐待者に従うよう女性を直接仕込むための一連の戦略」は彼らの生活を細かく管理し、抵抗したり逃げたりさせないことである(Stark, 2007, p271)。コントロールは、日々、女性が何を着て、どう家事をするか、テレビで何を観るか、という詳細を統制すること、そして、食べ物、睡眠、お金やその他の資源を奪ったり、アクセスを制限することを含む。これにより、被害者は、高過ぎるうえ常に変わる期待に応えられなければ、自身や子どもの安全を心配しなければならないという状態に常に置かれてしまう。それは「卵の殻の上を歩く」ようなことと比喩されている。 (Coy et al., 2012)。

 このような戦略の組み合せで、被害者は罠に嵌められる経験をする。その罠からは、女性の日常生活や子育ての実践の中に虐待が組み込まれた、「ジェンダーに根差す虐待的な家族の秩序」が立ち上がる (Morris, 2009)。虐待の威圧的・支配的な戦略は継続的・累積的な影響を持つため、身体的暴力の合間に「通常の」家庭生活を想定することは現実的ではなく、被害者に自律的な活動や意思決定の余地はほとんどもしくは全くない(Hunter, 2006; Stark, 2007)。

 女性も男性もDAの加害者になりうるし、被害者/サバイバーにもなり得る。しかし、多くの調査と統計的エビデンスは、男性から親密な女性に対する加害が、より発生率が高く、持続性があり、深刻で、暴力の影響が大きいことを明らかにしている(Hester, 2013; Holt, Buckley and Whelan, 2008; Myhill, 2017; Office for National Statistics (ONS), 2018; Stanley, 2011)。公的統計は女性と男性に対するDAの規模を過小に見積もっているが(ONS, 2018), いくつかの関連するパターンが現れている。2018年3月に終了する年度において、DA被告事件の被告人の92%が男性で、被害者の83%が女性であった(ONS, 2018)。同年度中のDA相談電話のおよそ95%は女性によるものであった(ONS, 2018)。

 男性の被害者が多いと報告しているイングランド・ウェールズ犯罪調査(CSEW)などの人口調査では、行為による影響や意図、さらに威圧的な支配を測定せず、行為自体を測定する「葛藤戦術尺度」のバリエーションが使用される傾向がある(Myhill, 2017)。「調査は威圧的支配的言動を取り入れたら、男性と女性の被害者の経験の差異はもっとかけ離れたものになることを示唆している」 (ONS, 2018, p8)。犯罪概観(The CSEW)も、被害者が「叩き返したり、仕返しをした事案で、もともとの加害者を被害者としてカウントしている可能性がある。DAの深刻さと影響において、ジェンダーによる質的差異もある。女性は、より強度の恐れ、精神保健と情緒的な問題を経験しやすく、繰り返し被害を受け続け、威圧的支配的言動に従わされやすく、彼らは男性のDA被害者よりも、はるかに性的暴行を受けたり、重大な傷害を負ったり、殺害されがちである (Hester, 2013; Holt et al., 2008; Myhill, 2017; ONS, 2018; RadforDAnd Hester, 2006; Stanley, 2011)。

 家庭における殺人被害者の大部分は女性である (Holt et al., 2008; ONS, 2018)。イングランドとウェールズでは、毎週平均2人の女性が現在もしくは元のパートナーに殺害されており、その数は近年ほとんど変わっていない(House of Commons Home Affairs Committee, 2018)。威圧的支配は、女性殺害の最強の指標の一つである(McLeod, 2018; Smith, 2018). 女性は、別離の時以後、より重大な、親密パートナーの危険にさらされる、別離は親密な関係で女性の殺害を引き起こすキーイベントの一つである(Brownridge, 2006; Harne, 2011; Thiara and Harrison, 2016)。

 

4.3 DAの発生率

「DAはわが国で最も広くいきわたり、最も危険な犯罪である。…2017年3月末に、イングランドとウェールズで200万人近くものDA被害者がいた(House od Commons Home Affairs Committee,2018,p6)。WHOは欧州の女性の25%が身体的もしくは性的暴力を親密な関係のもとで受けていると見積もっている(Callaghan anDAlexander,2015)。威圧的支配の広がりに関する適切なデータは限られている。SafeLivesは、DAのUKにおける事件に関する最大のデータセットを収集しており、それによると、DA被害者の82%が加害者からの「嫉妬と支配的言動」を報告している(Mcleod,2018)。

 一般に、パートナーと別れれば虐待は終わると考えられている。しかし、幅広い方法論と母集団を対象とした数多くの統計や調査研究[1]は、DAは別居時および別居後に始まり、その後継続し、深刻度が増すことを明らかにしている(Brownridge, 2006; Buchanan, Hunt, Bretherton and Bream, 2001; Harne, 2011; Holt et al, 2008; Morrison, 2015; Thiara and Harrison, 2016; Women's Aid, 2016)。 最近の調査では、DAを受けた女性サバイバーの90%以上が、別居後に虐待を経験していることが明らかにとなった(All-Party Parliamentary Group on Domestic Violence (APPG on DV), 2016)。 交際中の加害者による威圧的・支配的な行動は、離別後のDAの主な予測因子となっている(Brownridge, 2006; Harne, 2011; Macleod, 2018; Morrison, 2015)。

 レビューされた研究結果と推定値によると、私法上の子の事件におけるDA主張の割合は、一般の人々におけるよりもかなり高く、調査結果と推定値の範囲は、49%から62%となっている。大半の事案では、加害者とされたり証明されたのは父親であった(Cafcass 及び Women's Aid, 2017; Harding and Newnham, 2015)。 表4.1は、子の処遇/コンタクト事件のサンプルでのDA主張と認定(入手可能なデータによる)に関して、英国の事件記録の分析から得られた定量的な知見と、質的研究から得られた推定値を示したものである。 

 4.4 子どもたちのDAの経験

 DAのもとで生きる子どもの経験とその影響については、1970年代の早くから、多くの臨床的・研究的知見や文献が蓄積されてきた。しかし、裁判所、専門家、政策立案者がこれらの経験と影響についてある程度認識するようになったのはここ20年のことである(Barnett, 2014)。DAが子どもに有害であることは、今は法律や実務指針12Jで認められている。児童法1989年法第31節(9)は次のように定める: “害とは、虐待、または健康や発達を損ねること、例えば、他の人に対する虐待を見たり聞いたりすることによる損傷を意味する。” この条項は、児童法1989年法の31節(9)に、養子と子ども2002年法の120節によって挿入され、2005年1月31日に施行された。それは、英国政府の2000年に始まった「コンタクトを機能させる」協議のなかで、DAに対してよりしっかりした安全確保手段を求めるものと、コンタクト実現により強い執行を求めるものとの間の、妥協を体現していた(Lord Chancellor’s Advisory Board on Family Law: Children Act Sub-Committee, 2002; DCA, DfES and DTI, 2004)。

 実務指針PD12Jのパラ4は以下の通り規定している:

子どもがDAを受けているか、両親の一方が他方に暴力を振るっているのを目撃しているか、DAが行われている家庭に住んでいるにかかわらず(子どもが幼すぎて行為を認識できない場合であっても)、DAは、子どもにとって有害であり、かつ/あるいは子どもを危険にさらす。DAが行われている家庭に暮らす子どもたちは、身体的、心理的、精神的に直接的被害を受けることがある。また、DAによって両親のどちらかまたは両方の育児能力が損なわれている場合には、間接的にも被害を受ける。

 DAの子どもの経験に関する文献は、心理社会学的研究、児童保護や健康記録の研究、実務家や専門家を対象とした研究、臨床研究、回顧的・縦断的研究、親や子どもの証言など、膨大な情報源に基づいている。以下の議論は、2008年以降に発表されたDAにおける子どもの経験に関する最大の文献レビューを引用している。この最大の文献とは、Callaghan and Alexander (2015)、Harne (2011)、Holt et al (2008)、McLeod (2018)、Stanley (2011)、Smith (2018)、および元の実証研究についてレビューを行ったものである。特に明記がない限り、これらの研究はイングランドとウェールズで実施されたものである。

 この文献によると、子どもたちは様々な形で相互に連鎖し、併存する形でDAに直接関わり、その影響を受けているため、DAの「目撃者」やDAに「さらされた」と表現するよりも、DAを「経験した」と表現し、子ども自身が被害者であると表現するのが最も適切であるとされている。(Callaghan, Alexander, Sixsmith and Fellin, 2018; McLeod, 2018; Smith, 2018; Stanley, 2011)

 米国の心理学者であるHoldenは、身体的または言語的なDAにさらされている子どもたちを10のカテゴリーに分類しているが、彼は「子どもたちは複数のカテゴリーにわたる暴露を経験している可能性が高い」と述べている。(2003年、p154)これらのカテゴリーは、出生前の虐待への暴露、母親への虐待への介入、虐待を受けること、あるいは虐待への参加、虐待の目撃や虐待を耳にすること、虐待やその直後の結果の観察や経験、暴行についての聴取など多岐にわたる。

多くの研究が、DAのもとでは、身体的、性的虐待を含む子ども虐待が高率に起こること、そしてDAと子ども虐待は別個のカテゴリーではとらえられないことを明らかにしている(Callaghan et al., 2018; Radford And Hester, 2006; Radford et al., 2011; Harne, 2011; Holt et al., 2008; Stanley, 2011)。 DAを経験した子どもたちは、DAの加害者から直接の身体的暴力や傷害を受けるリスクがより大きく、殺害されるリスクもより大きい (Callaghan et al., 2018; Coy et al., 2012; Coy, Scott, Tweedale and Perks, 2015; Harne, 2011; Holt et al., 2008; McLeod, 2018; Mullender, 2004; Rose and Barnes, 2008)。イングランドにおける深刻な子ども殺害レビューを概観すると、高度なDAが2/3の割合で認められた(Brandon et al., 2009; see also Rose and Barnes, 2008)。

 また子どもたちは暴力に巻き込まれたり、それを止めようと割って入って傷つけられる (Mullender, 2004; Radford And Hester, 2006; Smith, 2018; Stanley, 2011)。子どもたちは、加害者の母親に対する虐待の戦略として、彼女を苦しめたり彼女の言動を支配する目的で傷つけられもする(Harne, 2011; Holt et al., 2008; Radford And Hester, 2006)。子どもの情緒的虐待は、計画的にペットを傷つけたり、子どもの持ち物を壊したり、貶したり、あだ名で呼んだり、怖がらせたり脅したり、無視したりすることを含む(Harne, 2011)。

 Harne (2011) とSmith (2018)による注目に値する調査レビューは、子どもたちが決まって家の中のDAを目撃したりその他の方法で知ること、そしてこれが少なくとも直接身体的に虐待されるのと同じくらい有害であるということである。Callaghanら (2018)によってインタビューされた子どもたちは、家での身体的暴力とコントロールと虐待のパターンにも、母親や彼ら自身やきょうだいたちへのその支配と虐待の影響にも気が付いていた。

オリバー:ママが友達と出かけたがっていたのに、彼はママが出かけるのを嫌がっていたからだと思います......そして、物を投げつけたり、「お前は出かけるな......手伝う必要がある」と言ったり、よくわからないけど「掃除や食事を作るのを手伝え」と言ったりしました。(同上、p1560)
 

研究は、虐待のある家の子の75-95%が虐待を直接見聞きすると明らかにしている。(Hughes, 1992, a US study; McLeod, 2018; Morrison, 2009; Radford And Hester, 2006; Stanley, 2011). たとえその場にいなくても、子どもたちは暴力があったこと、「パートナー間の関係、コミュニケーションとふるまいをゆがめていること」に気づく(Sturge and Glaser, 2000, p619; see also Holt et al., 2008; Mullender, 2004). Callaghan と Alexanderは、子どもたちが支配のダイナミクスや巧妙な支配言動に対して世慣れた理解をすることを発見した (2015)。 

子どもたちは威圧的で支配的な加害者による母への虐待に、母をたたいたり侮辱したり監視するよう躾けられて巻き込まれることがある(Callaghan et al., 2018; Coy et al., 2012; Harne, 2011; McLeod, 2018; Morris, 2009; Mullender, 2004; Radford And Hester, 2006; Thiara and Gill, 2012)。子どもたちはまた、母親を継続的に貶し侮辱することを観察している。

彼はただ手で彼女を叩き、彼女に向かって怒鳴り、悪態をつきました。酷いことばかり言って、彼女を本当に傷つけて泣かせ、母は何もできませんでした。私は警察を呼びました。(Mullender et al., 2002, p183 in Harne, 2011 p27)

 DA、特に威圧的で支配的な言動のある家の子どもたちが、持続的に不安を経験している可能性があるとする研究もある (Callaghan et al., 2018; McLeod, 2018; Radford And Hester, 2006)。子どもたちの恐怖心は虐待のない家庭で過ごすようになった後もしつこく続く (Sturge and Glaser, 2000, p620)。UKとアイルランドの調査は、「暴力の予感の広がりは彼らの生活を予見できない緊張で満たす」ことを強調した。これを子どもたちは「卵の殻の上を歩く」ようだと説明した (Stanley, 2011, p30)。

 「全住民の中で最も苦悩しているかもしれない」(Harrison, 2008, p386)とされるDAを経験した子どもたちが抱える身体、心理、行動、発育、情緒にわたる問題や障害、トラウマについては膨大な数の研究が行われている。例えば、Holtら(2008)は、このテーマに関する文献調査で1,000以上の論文があることを確認した。このような研究をすべてレビューすることは現実的に不可能であるため、以下の議論はこれらの研究の文献レビューに基づいて展開されてる。虐待が子どもに与える影響は、子どもの年齢によって異なる。Harne(2011)、Holtら(2008)、McLeod(2018)、Stanley(2011)がレビューを行った調査研究によると、乳幼児については、睡眠や食習慣の悪さ、言語やトイレトレーニングの遅れ、成長の遅れ、過度に叫んでイライラしたり、不自然に静かだったりすることにより苦痛を示すことがある。恐怖と不安は就学前の子どもに最もよく見られる影響であり、攻撃的な行動、かんしゃく、睡眠障害、おねしょ、悪夢、不安、まとわりつき、言葉の遅れ、食習慣の乱れ、心的外傷後ストレス症状などによって表れる。学童期の子どもたちは、集中力の低下、注意欠陥多動性障害(ADHD)、胃痛や頭痛、達成感の問題などを抱えることがある。また、学童期の子どもたちは、いじめや攻撃的な行動をとる危険性、逆にいじめられる危険性がある。思春期の子どもたちは、怒りっぽく攻撃的になったり、自尊心が低下したり、自傷行為をしたり、うつや自殺願望を持ったりすることがある。また、DAの経験は、アルコールや薬物への依存、不登校や退学など、青年期の非行と関連している。

 研究文献によれば、DAの影響は成人後に持ち越され、うつを含む精神保健上の障害、低い自己評価、肥満のような身体的健康、摂食障害、反社会的、犯罪や暴力的言動、アルコールと物質濫用、彼ら自身の親密関係や友人関係における対人関係の障害につながる(Callaghan et al., 2018; Holt, et al., 2008; Radford And Hester, 2006; Smith, 2018; Stanley, 2011).

 臨床心理士や研究者の中には、DAにさらされた子どもは、大人になってからもDAの被害者や加害者になる可能性が高いと主張する人もおり、これは「暴力の世代間連鎖」と呼ばれている(これらの研究の参考文献や批判的な議論については、Wagner, Jones, Tsaroucha and Cumbers, 2019を参照)。しかし、その後の研究では、この理論はこの問題に関する意見の一致がなく、DAを部分的に単純化して説明するものであり、子どもや大人へのサービス提供に悪影響を及ぼす可能性があるため、子どもにとって役に立たないことが強調されている。(Busby, Holman and Walker, 2008; Wagner et al, 2019)

 威圧的な支配のもとで生活する子どもの経験や、その影響に関する研究が行われるようになったのは、ごく最近のことである。家族間の交流に織り込まれた家庭内の脅迫、威嚇、支配の雰囲気は、子どもにとって逃れることが難しく、子どもの生活は恐怖と暴力の予感に支配される(Harne, 2011; Stanley, 2011)。 父親が母親を威圧的に支配している家庭の子どもたちは、母親が絶え間ない虐待にさらされ、家庭内で時間や移動の支配、経済的・物理的な剥奪、社会的な孤立に苦しんでいる様子にさらされることにより、自らも(虐待に)捕らわれたという経験をする可能性がある(Dunstan, Bellamy and Evans, 2012, a Australian study; Holt et al, 2008; Katz, 2016; Smith, 2018)。Katz(2016)がインタビューした子どもたちは、親からの関心が限定的で、遊びの機会が制限され、父親から愛情を押し付けられることで影響を受けていた。また、パーティーや課外活動への参加が妨げられたり、祖父母やより広い範囲の家族や友人と会うことができず、孤立感を味わった。威圧的な支配を受けながら生活することは、大人の虐待被害者やサバイバーと同様に、子どもにも累積的な影響を与え、母親が受けた身体的暴力と同じくらい、あるいはそれ以上に、子どもの情緒的・行動的な問題の原因となる可能性がある。(Callaghan et al, 2018; Katz, 2016; McLeod, 2018) Callaghanら(2018)の研究に参加した子どもたちは、日常的なDAに対処する方法として、自分の言動を常に「先に考え」なければならなかったため、自分の行動を制約することを学んだと述べている。DAの影響に対してより本質的な回復力を持っている子どもも一部いる可能性もあるが、思いやりのある大人、特に非虐待親との支援関係は、子どもにとって重要な保護要因であることが明らかになっている。そのため、DAの被害者・サバイバーである同居の親を支援することは、子ども自身が生き延びるために非常に重要である(Radford And Hester, 2006; Stanley, 2011)。

 5. DAの状況での子育て

 本章では、DA加害者の養育行動に関する文献を検討し、併せてDAの被害者/サバイバーである親の経験についての調査を検討する。研究は、威圧的支配的虐待と養育上の問題―被害親と加害親双方の養育能力を減少させる―に強いつながりがあることを明らかにしている (Dunstan et al., 2012; Holt et al. 2008).

 5.1 虐待親の養育実践はいかなるものか?

 DVは、子育てにおいて非常に深刻で重大な失敗を伴うものだ。それは子どもの養育者を保護できないという失敗であり、子どもを精神的に(場合によっては肉体的にも-その場合、児童虐待のあらゆる定義に合致する)保護できないという失敗である。 (Sturge and Glaser, 2000, p 624)

 DAを行う母親の子育てを調査した研究は確認されなかった。DAを行う父親の育児実践を調査した研究は、数は限られているものの確認することができた。米国の研究が2件(Bancroft et al., 2012; Holden and Ritchie, 1991)、アイルランドの研究が1件(Holt, 2013)、英国の研究が2件 (Harne, 2011; Radford, Sayer and AMICA, 1999)である。これらの研究結果では、Harne (2011) が他の研究よりも父親の育児の度合いが高いこと以外には、大きな違いはなかった。これらの文献から、以下のような知見が得られた:

l  加害者の養育スタイルは予測可能性がなく、日によって変わる.
l  多くの加害者は、狭量で、権威的な養育スタイルをとり、柔軟性がなく融通が利かず、大変支配的で子どもに服従を要求し、指示を言いつける。
l  虐待をしている父親は、一般的に子どもや家庭のケアに関与しておらず、非虐待の父親に比べて関与度が低い。しかし、Harne (2011)の研究は、一部の虐待的父親が他の研究で見られたよりも多くの育児を引き受けていることを発見した。
l  暴力的な父親による直接育児は、特に父親が一人で育児をしている場合、子どもが致命的な被害を受ける危険性がある状況であった。
l  虐待する父親は、睡眠、運動、会話や遊びを奪ったり、不適切な行動を意図的に促したりすることで、幼い子どもの基本的な身体的・精神的福祉のニーズを無視し、怠っていた。
l  虐待する父親は、自分のニーズを子どもに満たしてもらう権利があるという意識を持ち、自分はそれに報いることはないが、子どもが自分を思いやり、自分のニーズに応えてくれることを期待していた。これは彼らが子どもを「感情的所有物」と見なしている事を反映している。
l  暴力的な父親は、子どもに対して怒りや苛立ちを感じたり、過剰に罰したりする傾向が強く、幼い子どもがどのように行動すべきかについて不合理な期待を持ち、子どもが母親から注目されることに憤りを感じていた。
l  子どもと親密な関係を築けていない加害者の父親は、自身の虐待行為が子どもに対する愛情表現の妨げになっていることを認めず、母親や子ども自身を責める傾向があり、子どもが虐待の影響を受けている可能性を認めない一般的な傾向が見られた。
l  加害者の中には、子どもを侮辱したり屈辱を与えたり、学校の作品やレポート、おもちゃを破壊したり、ペットに危害を加えたり、子どもを家に閉じ込めたり、母親と話すことを許さなかったり、友人が電話をかけたり家に来たりすることを許さなかったりするなどの子どもに対する残酷な精神的虐待行為を楽しんでいる者もいた。

 Holt(2015)は、自分の行動が子どもにどのような影響を与えているかを洞察している父親もいるが、彼らが必ずしもその行動を変えようとする意思や必要性を感じているとは限らないことを明らかにした。例えば、子どもの前で元パートナーにナイフを突きつけて人質に取った罪で服役中だった父親は、服役中に行われたインタビューにおいて自分を「良い」親だと表現していた。

 DAの加害者である父親へのインタビューを行ったイングランドとウェールズでの最初で最大の研究はHarne (2011)によるものだったが、彼はその中で、暴力を振るった父親の父親としての自己認識と彼らの子育ての実践について調査を行なっている。対象となった父親は全員、継続的なDAの経験があり、DA加害者プログラム(DAPPs)に参加していた。ほとんどの父親は、別居する前は子どもの主な養育者ではなかったが、その関与の度合いは先行研究で示されたものよりも大きかった。父親の中には、母親がフルタイムまたはパートタイムで働いている間、幼い子どもを含む子どもの世話をしていた人もいた。 

調査に参加した父親は、「相互の暴力」を主張したり「本当の」暴力を振るっていないという主張によって、自分の暴力を部分的に否定したり、矮小化する傾向があった。 

私は彼女を叩いた(hit)ことがある。殴ったり(punch)はしていません-私は暴力的なタイプではない。彼女を押したり、声を荒げたりして、首を絞めようとしたこともある…物を投げたり、電話や写真を壊したりーコップを壊したり-赤ちゃんのコップを壊したり-信じられないかもしれませんが、リモコンを壊したりもしました。(Matt)(同書、p132 )

 「相互に暴力を振るっていた」という主張は、母親が重傷を負うような暴力を子どもが目撃した、あるいはその暴力に夢中になったと言う父親自身の記述としばしば矛盾していた。さらに父親たちは、自分は「気が短い」のでパートナーや子どもが自分の思い通りにならないことで「挑発」されたと説明することで、自分たちの暴力や子どもへの影響を正当化する傾向があった。父親の中には、子どもが自分をイライラさせたり、自分が期待する振る舞いをしないことで、子どもがそのような行動を引き起こしたと主張して、幼い子どもへの暴力を正当化する人もいた。

 9人の父親が、子どもに対して激しい身体的暴力を振るったことがあると認めた。例えば、「Jim」は、「ベッドに入るのを拒否したときに『強く』叩いた」という理由で、障害のある子どもに対する暴行で有罪判決を受けていた(同書、p141)。また、15人の父親が、物を壊したり投げたり、怒鳴ったり悪態をついたり、母親を傷つけると脅したり、ペットを脅したり、子どもを施設に入れると脅したり、子どもに食事を強要したり、子どもの持ち物を壊したりするなどして、子どもを威嚇したり脅したことがあると認めている。父親の中には、子どもを怖がらせてコントロールする目的で、意図的に子どもに残酷に接したと認める人もいた。例えば、「Phil」はこう言っている

最終的には同じ部屋にいるだけで十分でした-それだけで精神的な虐待になっていました。彼らは私のことを心底恐れていた-私はただ彼らをちらりと見さえすればよかった...正直言って、私はとても残酷でした-食事の時、私はそこに座って、彼らが本当に嫌いなものを食べさせました。よく泣いていました。私は彼らを完璧以上にしたかったのです。私と同じようにしたかったのです。(同書、p141)

 父親のコンタクトに対する考え方は、子どもを法的に所有しているという彼らの感覚を表している-「俺と子どもの間には誰も入ってこない。なぜなら彼らは私のものだからだ」(Rob)(同書、 p141)などだ。「Pete」は、子どもに「会わない」ことを選ぶのは父親の権利だと強調し、「父親は自分の子どもに会いたくないと決めることができる。一方で、子どもが父親に会うのも権利だと思う。また、父親が子どもに会う権利もあると思う」(同書、p144)と述べている。父親の子どもへの愛情が、自分の責任かもしれない暴力や虐待を帳消しにし、子どもとのコンタクトを正当化すると考える父親もいた。また、子どもが自分とのコンタクトを嫌がるのは、自分の行動の結果だと認識するのではなく、母親の不当な影響力が原因だと説明する父親もいた。母親への暴力が子どもたちに影響を与える可能性があることや、父親としての自分のありように関係があることを認める父親はほとんどいなかったが、最終的にはほとんどの父親が、子どもたちがそのことを認識していることを認めるようになった。

 インタビューを受けた母親たちは、父親が一人で幼い子どもたちの世話をしているときに、身体的虐待、脅迫、そして「残酷で、しばしば不当な屈辱を与え、幼い子どもたちを極度に支配する」ことを報告している。(同書、p140)また、母親たちは、家にいるときに子どもたちが直接脅迫されたり、精神的に虐待されたりしたことも記述している。

子どもたちはみんな精神的に参っており、非常に内向的で、神経質で、学校でもうまくいっていませんでした。彼は子どもたちが何もしていないのに怒鳴りつけるんです-夜中に起きてトイレに行くのも怖がっていました-おねしょもしていましたが、だんだん殴るようになっていきました-私が家を去るおよそ6ヶ月前、彼は私の一番下の娘を殴りました-娘は8歳で、その娘が寝ないといって彼は殴ったんです。(Margaret)(同書、p141-142)

 Harne (2011, p142)は、「父親たちの証言は、子どもの世話をするようになったことで気遣いや子どもを育む態度が養われるどころか、世話をしている幼い子どもを傷つける機会が増えたことを示している」と結論づけている。

 5.2 DAがある状況での母親の育児の経験

 DAの被害者・サバイバーの父親の育児経験を調査した研究は確認することができなかった。しかし、DAの被害者・サバイバーの母親の経験を調査した研究は幅広く行われている。この調査は、DAの中心的な様相は、母親の育児と母子関係への攻撃であること、そして虐待が女性の子どもの面倒を見る能力を傷つけうることを明らかにした(Callaghan and Alexander, 2015; Coy et al., 2012, 2015; Holt et al., 2008; Katz, 2016; McLeod, 2018; Morris, 2009; Radford And Hester, 2006; Stanley, 2011; Thiara and Gill, 2012)。継続的な虐待は、母親と子どもとの関係に影響を与え、子育ての能力や母子間の愛着の質にマイナスの影響を与える。(Holt et al.2008)

 5.2.1 別居前の母親の育児

 妊娠中に虐待が始まったり、エスカレートしたりすることがあり、それ自体が母親と子どもの両方に対する攻撃であるとする研究もある。(Callaghan and Alexander, 2015; Coy et al., 2015; Radford And Hester, 2006; Thiara and Gill, 2012).

 身体的暴力は、短期間あるいは長期間にわたって子どもの世話ができなくなるほど女性を傷つける可能性がある. しかし、DAの心理的、精神的、情緒的影響は、女性の養育能力をはるかに強力に傷つける可能性がある。DAは、うつ病、不安神経症、自殺行為、自傷行為、PTSD、薬物・アルコールの乱用を含む多くの健康問題の原因となる(House of Common Home Affairs Committee, 2018; Stanley, 2011)。 威圧的・支配的虐待の影響は特に無力化を招くもので、克服するのに何年もかかることがある(Radford And Hester, 2006; Smith, 2018)。Nevala’s (2017) のEU加盟国(当時28カ国)の42,000人の女性(母親に限らない)へのインタビューを含む、威圧的な支配の発生率と結果に関する研究では、「威圧的・支配的暴力は、威圧的支配を伴わない親密パートナーからの身体的暴力と比較して、被害者へのより深刻な影響と関連している」ことが明らかになった(同書、p1813)。威圧的支配の包括的で陰湿な性質は、Coyら(2012)がインタビューした母親たちによって、身体的な暴力よりも恐ろしく、無力化するものとして経験されている。威圧的支配を受けた女性は、品位を落とされ、無力感や自尊心の喪失を経験し、自分の選択や決定をする能力に対する自信を失うことがある(Katz, 2016)。家事や育児に無理な基準を設けることは、母親が自分の能力に自信を失う一因となる可能性がある (Radford And Hester, 2006)。

 このような経験や影響は、Thiara とGill (2012)がインタビューしたある母親の話に現れている(2012):

ただ、外に出たくない、人に会いたくないと思っていました。私はとてもストレスを感じていて感情的にはどこにもしっかりと存在していないような状態でした。体重はどんどん減っていき、拒食症だと言われてショックを受けました。人生を楽しめなくなってしまいました。食欲もなく、眠ることもできませんでした。私の健康状態はどんどん悪くなっていきました。(SA11) (同書、p38)

 DAの被害者・サバイバーへのこれらの影響は、彼女らの子育てに重大な影響を与える。Stanley (2011) の文献調査によって「母親の心理状態が育児の鍵を握っており、DVの経験によって落ち込んだり、トラウマになったりした女性は、子育てがより非効率になると報告されている。(これらの研究は)DVを経験した母親の子育てが必ず損なわれるわけではないが、妊娠うつやその他の困難な状況がある場合には、そうなる可能性が高いことを示唆している」(同書、p46)ことが明らかになった。さらに女性は、ストレス、睡眠障害、疲労感、精神的疲労感に苦しむことがあり、これらは単独で、あるいはうつ病や孤立感などの他の問題と重なることで、子どもに対する基本的な子育てだけでなく、子どもに向き合う精神的余裕に影響を与えることがある。(McLeod, 2018; Radford And Hester, 2006; Stanley, 2011; Thiara and Gill, 2012)

 加害者の主な攻撃対象の一つは母子関係である。文献は、加害者が意図的に母子関係を弱体化し、歪め、混乱させ、子どもを母親に反発させて、家族内で母親を孤立させるよう自分との同盟関係に子どもを感情的に引き込むことで、家族内での権力と支配を獲得することを明らかにした。(Coy et al., 2012; Katz, 2016; McLeod, 2018; Radford And Hester, 2006; Stanley, 2011; Sturge and Glaser, 2000; Thiara and Gill, 2012; Thiara and Humphreys, 2017) これらの研究では、子どもの前で女性を卑しめたり、軽視したり、批判したり、侮辱したり、子どもが母親の虐待に加担することを促したり、子どもに高価なプレゼント与えたり外出するなどの戦術が、女性の子どもに対する権威とコントロールを育む能力に悪影響を与えると報告されている。(Holt et al.2008)『私の小さな息子は、ずっと拒絶されている女性を尊敬しなくてはいけないの。息子はこの間、私のことを弱い女だと言いました。』(Coy et al., 2012, p26)

Radford And Hester (2006) がインタビューした母親は、自分の息子が父親に煽られて暴力を振るうように仕向けられたと述べている

 彼(父親)は子どもたちに私を蹴ったり殴ったりさせました。子どもたちは彼をとても怖がっていたので従いました。息子は私を蹴ったり、顔を殴ったりしましたが、その時父親は強さが足りないと言い、息子に靴を履かせてもっと強くやらせたのです。「Hilary」(同書、p43)

 拡大家族でDAを受けながら生活している女性は、敬意を欠いた扱いを受けていた。あるトルコ人の母親は、家族のためにすべての家事と料理をした後、夫と息子を含む他の家族とは別に、ガレージで自分の料理を作って食べなければならなかったと説明している。(Radford And Hester, 2006)

 女性は貶められたり屈辱を受けたりしたことを内在化し、自尊心の低下や自信のなさ、親としての失敗感に苦しむことになる。(Stanley, 2011; Thiara and Humphreys, 2017)RadfordとHester(2006)の6つの調査研究に参加した母親の多くは、自分の子育てに自信を失い、精神的に消耗して気持ちが通じ合わないと感じ、子どもに与えるものがほとんどないと感じていた。子育てへの自信に最も大きな影響を与えたのは、「特に、女性が子育てを後押しするための助けやサポートをその関係外に得られない状況で…父親が母親と子どもの関係を意図的に攻撃すること」であった。(同書、p28)

 虐待者は、母親が子どもと一緒に時間を過ごしたり、子どもに気を配ったりすることを妨げることもある。(Katz, 2016; Radford And Hester, 2006; Thiara and Humphreys, 2017)『ママが私に注意を向けているときに、パパがママに自分のところに来るように言うので、ママが私を一人で遊ばせてパパのところに行かなくてはならないことが何度もあった。』(Shannon、10歳)(Katz, 2016, p52)

 Thiara and Gill (2012) がインタビューした南アジアの女性たちは、拡大家族の共謀のもと、子どもと過ごす時間が全く許されないか、許されたとしてもほとんどなかったと報告している。

 私は自分の娘を迎えに行くことさえも許されませんでした。私の義理の家族が家にいるときは娘を抱くことも許されず、一日中台所で働かされていました。おむつを替えるときだけ、私を呼ぶのです。おむつを替えたら義理の母が私から娘を奪い、私は台所に送られました。(SA16) (同書、p33)

 Buchanan(2014)は、DAの状況下で乳幼児を育てる母親の経験を研究した。絶え間ない虐待は、「母親と乳児の関係に対する圧力が暴力がぼっ発する場面に限らず、継続的なものである」ことを意味していた(同書、p44)。「Sally」は、パートナーが彼女の子育てを否定したやり方について『彼は、私が最悪の母親であり、Zackをダメにしている、息苦しくさせていると言いました』(同書、p42)と説明している。14人の女性は、パートナーのサポート不足、批判、隔離、完璧な家事や育児を期待されることなどに一人で対処しようとした結果、疲労を経験した。パートナーが赤ちゃんに危害を加えるのではないかと心配し、予測不可能な暴発に直面した際、赤ちゃんを守るために努力したことを語った女性もいた。彼女たちは乳児の物理的なニーズには気を配りつつも、パートナーを常になだめる必要があったため、乳児と心を通わせ、育児を楽しむ時間はほとんどなかった。このことは、母親が乳幼児と関係を築く能力に影響を与え、それが孤立によってさらに悪化する可能性がある。同様に、Radford And Hester(2006)がインタビューしたある母親は、(赤ちゃんの父親によって)『生後4週間で母乳を与えるのをやめさせられた...母乳育児で私が赤ちゃんに全ての注意を向けていたことに嫉妬していた』(Susan)と説明した。(同書、p31)

 特に「強制的に虐待を目撃させることが加害者の支配行動の根幹をなす部分である場合」には、母親が子どもを虐待の目撃や体験から守る方法を見つけることは困難であった。 (Radford And Hester, 2006, p43) しかし困難ではあるが、母親は、加害者の気分を監視したり、加害者を動揺させないような行動をとったり、加害者を悪化させないように子どもを行儀よくさせたり、子どもを別の部屋や家から離れた場所にいるように確保するなどのさまざまな方法で子どもが虐待を体験しないように守ろうとする。(Holt et al., 2008; Lapierre, 2010; McLeod, 2018)

 Thiara and Humphreys (2017)は、DAが母親に与える影響の重要な側面として、別居後の加害者の「不在の存在」を強調している。これは、女性が自信や子育てのスキルを失い、子どもとの関係が損なわれることが「すべて密接に関連しており、女性にとって別居前後の連続性の一部を形成している」(同書、p141)ことを意味し、このようにして、加害者は別居後も女性と子どもの生活の中に存在する。このような弱体化戦略が母親と子どもの関係に与える悪影響が、別居後にも継続する可能性があることをThiara and Humphreys (2017)がインタビューした母親は明確に述べている。

 彼はとても嫉妬していて、とてもとても嫉妬していて...彼はいつも私たちの間に入ってこようとしていました。...彼が食事をしたければ、彼に最初にご飯が配膳されなくてはならなかったので、大変でした。彼女(娘)にも影響を与えました...彼女は私が全く尊敬されていないことにもちろん気づきました。そして彼女自身も私を尊敬しないようになりました。私が(夫との)関係を解消したときにも娘は相変わらず私に対して敬う気持ちを全く持っていませんでした。 (Fam21)(同書、p141)

 英国在住の南アジア系女性は、孤立していたり、通常の育児活動を行うことを邪魔されたりすることで、別居後に自信やスキルを持つことができなかった

 私たちは以前、タワーブロックと呼ばれる高層の公営アパートの最上階に住んでいました。私は家を出ることも、子どもを連れ出すこともできませんでした。私の息子は4歳でしたが、一度も外に連れ出したことがありませんでした。子どもの世話について何も知らなかったのです。同年齢の子どもの集まりに息子を連れて行くのも邪魔されました。避難所に来たとき、私は何も知りませんでした。子どもたちと一緒に道路を渡る方法も知らなかった。自信がありませんでした。(Fam31)(同書、p141 )

 レビューした文献では、DAの状況下で生きる子どもにとって、非虐待親との関係こそが、最も効果的な保護支援の源泉であると強調されている。そのため別居前から別居後にかけて、非虐待親の子育ての役割を支援することが、母子を保護する最も効果的な方法であることが多い。(McLeod, 2018)

 5.2.2 別居後のマザーリング(母親の育児)

 虐待を行うパートナーとの別居後、母親が生活を立て直し、身体的、精神的、精神的な健康、自信、子育て能力を回復し、子どもの回復を支えることを可能にする最も重要な鍵は、さらなる虐待を受けないことである。 (Harrison, 2008; Holt et al., 2008) 継続的な虐待はその回復を大幅に妨げる。(Davies, Ford-Gilboe and Hammerton, 2009, カナダの研究)

 数多くの研究により、何年も続く可能性のある別居後の虐待の典型的な形態が明らかにされている。その典型的な形態は「ドゥルースの別居後の車輪(Duluth Post-Separation Wheel)」で表されている。(付録C参照)以下にその例を挙げる:

 - 身体的暴力と性的暴行(多くの場合、子どもが目撃している)
- 暴力の脅し
- 言葉の暴力
- 物品の損傷や破壊
- ストーカー行為、過剰な電話、メール、テキストメッセージなどによる嫌がらせ
- 女性の自宅への侵入
- 警察やソーシャルサービス、女性の勤務先などに悪意のある申し立てをする
- 子どもを誘拐すると脅したり、実際に誘拐する行為
- 経済的虐待
(Cafcass and Women's Aid, 2017; Coy et al., 2012; Harne, 2011; Harrison, 2008; ONS,2018; Women's Aid, 2016)

 Coyら(2012)が面談をした女性は全員、別居後の虐待を経験していた。最も多いのはハラスメントだが、身体的・性的な攻撃や脅迫も経験しており、それらは長年にわたって継続することもあった。

 彼は嫌がらせやストーカー行為をずっと続けていて、私は悪夢のような日々を送っています。今年の初めには私の娘にも同じことをしようとしました。私への行為は5、6年に渡って続いています。3年ほど前に警察に助けを求めましたが、脅迫には当たらないから何もできないと言われました。彼は法律を熟知しているのです。脅迫ではないのですが本当にひどいものです。当初、彼はストーカーのように付きまとい、延々と電話をかけてきたり、私の前にたびたび姿を現して邪魔をしたり、私の行く手を阻んだり、肉体関係には至らないまでもその寸前ギリギリのことをしようとしたり...彼は警察とソーシャルサービスを何度も私の家に送り込みました。彼は何度も私の家に警察やソーシャルサービスを送り込んできました。彼は私の家に来ることを許されていないので、それは彼の代行人により嫌がらせを受けるようなものです。(Erika)(同書、p28)

 虐待者への継続的な恐怖と脆弱性は、女性の精神的能力を枯渇させ、子どもに対するエネルギーを低下させ、女性が子育て能力を取り戻すことに影響を与える要因であることが多くの文献で明らかにされた。(Coy et al、2015年、Holt、2017年、Thiara and Gill、2012年、Thiara and Humphreys、2017年)

 娘のためにも、私はポジティブでいなければなりません。私が何かに怯えたり、心配したりしている姿を娘に見せたり、そう思わせることすらあってはならないと思っています。娘にも大きな影響がありますからね。娘は安全で危険がないと感じる必要がありますし、今はそう感じています。なぜなら、彼女は以前に起こったすべてのことから離れているからです。先日、彼があなたを探しに来るかもしれないという恐怖を克服したのか、とある人に聞かれました。私は「いいえ、まだ恐怖は残っています」と答えました。そして、それはとても長い間続くと思います。(AC6) (Thiara and Gill, 2012 p144)

 父親によって子どもが誘拐されることへの恐怖は、研究文献でよく報告されている。(Aris and Harrison, 2007; Coy et al., 2012; Harrison, 2008; Thiara and Gill, 2012; Thiara and Harrison, 2016) 誘拐の脅しは、加害者が他国に家族や社会的つながりを持っている可能性が高いため、多くの黒人・アジア人・少数民族の女性にとって重要な問題だった。(Thiara and Gill, 2012; Thiara and Harrison, 2016)

 女性は、交際中に子どもを虐待にさらしたり、家族を「解体」させ、引っ越しを余儀なくさせたり、父親との再会に抵抗したり、子どもを父親とコンタクトさせたりするなどの理由で、自分を責めたり、子どもから責められたりすることがあった。(Coy et al., 2012; Holt, 2017, アイルランドの研究; Thiara and Gill, 2012)

 娘は病気なので学校に行けません。彼女は熱があるんです。彼女はずっと病気です。彼女は青ざめていて元気がないように見えます。彼女は顔が赤くなっています。お風呂に入るのも服を着るのも嫌がっています。私が髪をとかしてあげるのを嫌がる。そして私を本当に嫌うんです。彼女は「なぜ私を連れて行ったの?私は行きたくなかったのよ。私は行きたくないって言ったでしょ」って言うんです。(SA13) (Thiara and Gill, 2012, p72)

 また、子どもたちは、コンタクトから戻ると、怒り、攻撃的、反抗的になることがあり、女性にとって対処が非常に困難になることがある。

 泊りがけで帰ってくる彼女は、本当に変わっていて、私の知っている彼女とは違います。反抗的で、攻撃的になることもありますし、無視したり、無礼な態度をとったりします。怒りっぽくて、落ち着くまでに何時間もかかります。(SA4) (同書、p71)

 Thiara and Gill (2012) は、DA下における南アジアとアフリカ系カリブ人の女性の子どもとのコンタクト経験を調査した。インタビューを受けた71人の女性は、避難所に住んでいる人、元パートナーが自分の住んでいる場所を知らない人、元パートナーが服役中の人を除いて、全員が長年にわたって別居後の虐待を経験していた。アフリカ系カリブ人の女性の中には、別居後数ヶ月から数年にわたって別居後の極度の暴力に耐えている人もいた。これらの暴力は子どもに目撃されていた。

 調査に参加した南アジアの女性の場合、拡大家族や家族以外の人からの暴力を受けることがあった。ある法廷弁護士はこう報告する

 ...それは彼と彼の家族に限ったことではなく、他の人たちも、時には匿名で、嫌がらせや虐待を引き受けています。多くの人が彼らの目から見てあるべき正しい家や父親の家族に子どもたちを帰すために、支援を引き受けているのです。その意味では、より集中的に行われます。また、恥や名誉の問題意識を共有しているため、コミュニティの中には、暴力的、攻撃的、脅迫的、嫌がらせを行なったり、子どもを誘拐すると脅したりするなどの方法で母親を罰することに進んで参加する人もいます。(B4) (同書、p138)

 南アジアの子どもたちにとって、家を出ることは、貧困や地位の喪失を意味する。Thiara and Gill’s (2012) の調査に参加した母親の子どもたちの中には、父親に高価なプレゼントを買ってもらったりして失ったものを見せつけられたことで、自分の置かれた状況について母親に責任があると考えるようになった子どももいた。 

Thiara and Humphreys (2017)は、過去のトラウマ、自尊心の喪失、母子関係の弱体化が現在の関係に影を落とし続け、子どもとのコンタクトの取り決めを通じた継続的な嫌がらせによって加害者が存在し続けることでその状況が悪化することについて調査を行った。彼らは、別居後の母子関係の問題を理解するための枠組みとして「不在の存在」という概念を用いたが、この概念は、DAの加害者が、虐待の遺産として、あるいは継続的なコンタクトや虐待を通して、いかに「存在」し続けているかを示すものだ。貧困に対処し、生活を立て直さなければならず、加害者によって損なわれた子どもに対する権威を再び確立しなければならないことは、女性にとって大きな課題であり、子ども自身にも母子関係のあり方にも影響を与える。「家を出たときの私はボロボロでした。本当にボロボロで、(他のDAの被害者が元の関係に)戻ってしまうことを理解できると思うこともあります。だって何が起こるか想定できるからです。私は家を出て、家も仕事も失い、彼のせいで莫大な借金を抱え、『神様、私はどうしたらいいの?』と思いました。」(Fam37)(同書、p141)

 同様に、Holt(2017)のアイルランドでの研究では、過去の虐待と継続的な虐待が女性の子育てと子どもとの関係に及ぼす複合的な影響を調査している。DAに長期的にさらされ、その後も継続的に虐待を受けていると、女性の子育て能力やその結果としての母子関係に影響を与え、Holt(2017)が指摘する「別居後の母親育児のパラドックス」-「にっちもさっちもいかない」というような感覚-という状況につながる。(同書、p2059)かなりの数の母親にとって、何が起こるかわからないという恐怖は現実となり、別居後の生活は、同居という側面以外はすべて別居前の生活を反映しており、子育てに関する自信にマイナスの影響を与えていた。

 自分が正しいことをしているのかどうかが分からないんです。-彼と別れたことは正しかったのか?子どもたちは彼と一緒にいたほうが良かったのではないか?今の方が良い状況なのか?子どもたちは彼がいないほうがいいのか?-ずっと自分自身に問い続け、毎回違う答えが出て来ます。果たして答えを知ることができるのか、それとももう遅すぎるのかも、と考えてしまいます。時々、私はこの世で最も出来の悪い母親だと思うことがあります。(Claire、母親)(同書、p2060)

 Holtの調査に参加した母親たちは、関係が終わったことや、精神的・経済的な自立ができなかったことについて失敗したという感覚を持っていると報告している。自尊心が低く、母親としての能力に自信が持てないため、自分の判断や決断、子育ての能力に疑問を感じるようになる。うつ病を患い、生き延びるために精神科に頼ったり、対処法としてアルコールに頼ったりする女性もいた。また、恐怖で不眠になったり、身体的・精神的疾患を患ったと述べる女性もいた

 気分が落ち込むと、私は塞ぎ込み、心を閉ざしてしまいます。彼はいつも私を悪い方向に向かわせるようです。そうすると、何が悪かったんだろうと思って、自分を責めるようになる。そうしてまた悪循環に陥ってしまうのです。(Claire、母親)(同書、p2058)

 Holt(2017)は、児童福祉の実践者は、別居後の父親のレトリックではなく現実に目を向けることで、虐待する男性が母子関係に落とし続けている「影」を認識する必要があり、「父親が不在であっても、父親による継続的な虐待は、彼女の子育て能力と母子関係を脅かし続ける可能性がある」と結論づけている。(同書、p2062)

6.  DA加害者とのコンタクトに関する親と子どもの体験

6.1 イントロダクション

 DAを行う母親と子どもの別居後のコンタクトに関する父親の経験について調査した研究は確認されなかった。一方で、DAを行う父親との別居後に子どもと母親がその父親とコンタクトすることについて、彼らの経験やその影響や結果を調査した研究は豊富に存在する。これは全く驚くべきことではない。なぜなら、私法上の子どものケースの大多数(約90%)では、母親が子どもと居住する親であり、父親が子どもと一緒に過ごすためまたはコンタクト命令を得るため申請者となるパターンが標準的であり、一般的な別居後生活の取決めを反映しているからだ(Aris and Harrison, 2007; Coy et al, 2012; Harding and Newnham, 2015; Harwood, 2019; Hunt and Macleod, 2008; Macdonald, 2017; Perry and Rainey, 2007; Trinder, Hunt, Macleod, Pearce and Woodward, 2013)。同様に、今回の調査は、ほとんどのケースで父親がDAの加害者の疑いがあるか、あるいは既に証明された加害者であることを示していた。

 6.2 母親の経験-DAを行う父親との別居後に行われた子どもと父親のコンタクトについて

 今回レビューした研究によると、大多数の女性は、たとえ夫婦関係において暴力や虐待を経験した人であっても、別居後の子どもと父親のコンタクトを支持し、コンタクトが実現するように多大な努力をしていることが明らかになった (Coy et al., 2012; Fortin, Hunt and Scanlan, 2012; Harne, 2011; Holt, 2017; Morrison, 2015; Radford And Hester, 2006; Thiara and Gill, 2012)。 ほとんどの女性は、別居後の子どもと父親のコンタクトのために非公式に交渉し、コンタクトを実現しようと努力する(Coy et al., 2012; Morrison, 2015; Thiara and Gill, 2012)。しかし、多くの女性にとってそれは結局自分の安全を犠牲にすることであり、虐待の継続、再開、エスカレートにつながり、その結果としてコンタクトの取り決めが破綻することがわかった (Coy et al., 2012; Thiara and Gill, 2012)。Holt(2017)のアイルランドでの研究では、少なくとも当初は大多数の母親が父子のコンタクトを継続することに明確な価値を見出し、その実現に積極的に関与していたが、自分と子どもの安全を守るためにコンタクトを管理することを余儀なくされていた。調査に参加した母親たちにとって、子どもたちと虐待的な父親との関係を促進するために費やした精神的、身体的な労力が、特に苦痛で困難なものであった。3分の2以上の母親にとって、コンタクトが虐待の継続という結果につながるものであった。

 彼と別れて「正しいこと」をすれば、私の子どもたちが見てきた悪い出来事を改善できると思ったのです。でも、まるで上手くいかなかったグラウンドホッグデイ(訳註:Groundhog Dayは2月2日に行われるグラウンドホッグ(ウッドチャックとも言われる。リスの一種)を使った春の訪れを祝い天気を予想する行事)のようです。私は何も変えることができないのです...。映画を止めて、脚本を変えて、すべてを消し去ることはできません、結局全て同じままなのです。彼の元から去れば何かが変わると思っていましたが、そうではありませんでした。唯一の違いは、私たちが一緒に住んでいないということだけです。(Marian、母親)(同上、p2061)

 子どもとのコンタクトは、継続的な、より深刻な虐待が行われうる重要な場であることが多くの研究で強調されている(Brownridge, 2006; Harne, 2011; Harrison, 2008; Holt, 2017; Macdonald, 2015; McLeod, 2018; Morrison, 2015; ONS, 2018; Radford And Hester, 2006; Radford et al.)。最悪の場合、子どもとのコンタクトは父親が母親を殺害する現場となることもある(Women's Aid, 2016)。暴力は、母親がコンタクトの際の「引き渡し」のときや、非常に幼い子どもと父親の監督付コンタクトで、父親と直接対面すたときに最も起こりやすいことがわかった(McLeod, 2018。)Radford And Hester (2006) のコンタクト研究では94%の女性が、AMICAの研究では92%の女性が、コンタクトの手配の結果として虐待を受けていたが、これは父親がコンタクトを利用して母親と子どもの居場所を突き止めるか、母親がコンタクトを監督したり、子どもをコンタクトに送迎したことで起こっていた。Coyら(2012)のインタビューを受けたほとんどの女性が身の危険を感じ、引き渡しの際に家族や友人に頼っていた。

 彼は私の子どもを友達の家に迎えに行っていたのですが、彼が迎えに行くたびに友達はこれ以上関わりたくないと言いました。彼の言動のせいです…私は完全に身の危険を感じていました。彼は本当に不安定で何をするかわからないので、子どもにとっても安全だとは思えませんでした。(Helen)(同書、p29)

 Thiara and Gill(2012)がインタビューした南アジアとアフリカ系カリブ人の女性たちは、家族の恥にならないように、あるいは黒人や南アジアの男性の名誉を傷つけないために父親や家族から非公式なコンタクトに同意し、裁判を避けるように多くの圧力を受けたと報告しており、その結果、女性の安全が犠牲になっていた。インタビューの時点で非公式なコンタクトがうまくいっていたと思われるケースはわずか3件で、多くの女性が身体的な暴力や虐待に耐えていた。南アジアの女性にとって、別居後のコンタクトは、「以前に虐待に関与していた可能性のある拡大家族のメンバーと再会する可能性がある」ため、特にリスクが高くなる(Stanley, 2011, p21)。

 また、子どもとのコンタクトは、その後家まで尾行したり、子どもから居場所についての情報を引き出したりするなどして、虐待から逃れた母親や子どもを父親が追跡するために利用されることもある(Harne, 2011; Harrison, 2008; Radford And Hester, 2006; Stanley, 2011; Thiara and Harrison, 2016)。

 彼(夫)は子どもたちを連れまわしていました。ケイは4歳でしたが、夫は避難所があると睨んだエリアにケイたちを連れて行ったのです。そこでケイが(自分の住んでいる通りだと)認識して、避難所の場所を指し示してしまったのです。このようなことが2回ありました...2回とも、彼は私を通りに引きずりだして家に連れて帰ろうとしました。....私は4、5回は避難所に戻ったと思います。(Alyson)(Radford And Hester, 2006, p92)

 母親たちはまた、父親が権力や支配力を取り戻し、自分たちの生活に再び入ってこようとする手段としてのコンタクトを経験している。

 加害者の中には、関係が終わったということを理解し、純粋に子どもへの関心を保持する人もいます。(一方で)加害者の中には、関係を取り戻すためのメカニズムとして使う人もいますし、被害者の自信や自尊心を損なうために利用する人もいますし、被害者に囚われているという思いをさせるために使う人もいますし、親としての立場を貶めることでさらに「やり込める」ために使う人もいます。(法廷弁護士) (Coy et al., 2012, p34)

 さらに、コンタクトは5章で扱った別居前の加害者の戦術と似たような方法で、母親を弱体化させる場として利用されることもある。これには、子どもの前で、あるいは子どもに向かって母親を批判したり貶めたりすること、子どもが母親に侮蔑的な行動をとるように仕向けること、母親に対する口汚いメッセージを子どもを通じて伝えること、コンタクトを利用して子どもに高価なプレゼントを買って「買収」することなどが含まれる(Coy et al., 2012; Holt, 2017; Holt et al., 2008; Radford And Hester, 2006; Thiara and Gill, 2012; Thiara and Harrison, 2016; Thiara and Humphreys, 2017)。

 

また母親は、父親とのコンタクトによる子どもへの悪影響や、父親の一貫性のない、信頼の置けないコンタクトによって混乱する子どもに1人で対処せざるを得ない状況に置かれることがある (Coy et al., 2012; McLeod, 2018; Thiara and Gill, 2012; Thiara and Harrison, 2016)。加害者は定期的にコンタクトの取り決めを変更したり、取り決めや命令があってもコンタクトに参加しなかったりするなどの方法で、コンタクトを女性をコントロールするために使うことができる。このことは、常にコンタクトの変更を待ち、加害者がいつ「現れる」かわからない状態にある家族に不安を募らせた(McLeod, 2018)。

 

6.3虐待的な親との別居後のコンタクトによる子どもの経験、リスク、結果

 レビューされた研究によると、DAを行う親と子どもが継続して関わることは、子どもに対する身体的、性的、精神的虐待、ネグレクト、子どもに対する支配的ないじめの関係の維持、子どもの誘拐、「板挟みで身動きができない状態」の子どもを傷つけること、母親への虐待の目撃、母親への虐待に協力させられること、そして最悪の場合、子どもが殺害されるリスクがあることが明らかになった(Callaghan et al, 2018; Harne, 2011; Holt, 2015; Holt et al., 2008; Morrison, 2015; Mullender, 2004; Radford And Hester, 2006; Saunders, 2004; Stanley, 2011; Sturge and Glaser, 2000; Thiara and Gill, 2012; Women's Aid, 2016)。虐待的な父親とのコンタクト中に子どもが殺害されるリスクは、深刻なケースレビューの研究によって強調されている。(Brandon et al.2009; Saunders, 2004; Women's Aid, 2016)このようなケースでは、子どもの殺害は、父親の復讐として、あるいは父親が権力と支配を主張する極端な例であると認識されている(Harne, 2011)。Thiara and Gill (2012) がインタビューしたある母親は、次のように報告している:

 私は息子に「お父さんが、君がおねしょをしていると言っていたよ。君はおねしょをしないよね」と言いました。すると息子は「してない」と言いました。その後しばらくして息子は「ママ、ほんとは僕、おねしょするんだ」と言いました。そして「おねしょをして、<名前>を呼ばれてからかわれるのが怖いから眠らないようにしているの」と言ったのです....もうゾッとしました。彼の話を聞いて、帰宅した時には涙があふれていました。以前、彼の父親が私に向かってきて、怒鳴りながら私を押したことがあったのですが、(息子は)「大したことじゃないよ、ママ。パパはもっとひどいことを僕に言うよ」と言いました。それをきっかけに (息子)は父親に殴られたことや、(新しいパートナー)と父親がいつもそんな風に言い争っていることを話し始めました。(AC7) (同書、p71)

子どもたちは、おむつを替えてもらえなかったり、お菓子しか食べさせてもらえなかったり、長時間一人でテレビを見させられたりと、コンタクトの際に基本的なニーズをみたさない深刻なネグレクトを受けることがある(Coy et al., 2012; Harrison, 2008; Thiara and Gill, 2012; Thiara and Harrison, 2016)。

 Harne(2011)がインタビューした母親の証言によると、子どもとの定期的なコンタクトは、暴力的な父親の子育てを改善する助けにはならず、子どもが長期にわたって虐待を経験し続ける状況を作り出していることを示していた。母親たちは、赤ちゃんがおむつを替えてもらえず排泄物のついた汚れた服を着て返されたり、子どもが何時間もテレビの前に座らされたりしていたと説明している。「Tina」は、7歳の娘への継続的な精神的虐待の影響について次のように語った。 

コンタクトから帰ってくると、娘たちはとても静かで、何も話しません。数日後に、もし子どもたちが刑務所に行かないならママが刑務所に行くって言われた、と言うようになりました。コンタクトを続けることがわかってからは、ジェーン(上の子)が「朝起きた後、どうするべき?ベッドにじっとしているべき?」と聞いてきました。私は「パパに聞いてみたら」と言ったのですが、彼女は「とっても怖くて、怖すぎて聞けない」と言いました。彼は子どもたちをぶったりはしません-彼は支配することに夢中なのです-彼は一言も言葉を発する必要がありません-ただチラッと見るか、または声のトーンで十分なのです-彼は子どもたちが怯えていることを知っています-ジェーンはいつも泣いていて、自分自身を傷つけているのです。体をこすりすぎて痛がり、眠れません。私は11時か12時まで起きていて、彼女が眠らないので本を読んであげています。(Tina)(同書、pp146-147)

 Harne(2011)がインタビューした父親たちの証言によると、幼い子どもの場合、最初のコンタクトは制限されたもので祖父母などによる非公式な監視下に置かれることが多かった。宿泊を含む、監視が伴わないコンタクトの段階に進むと、子どもたちにとって深刻なリスクが生じた。例えば、「Tom」は、子どもたちが常にしつこく注意をひこうとするので、父親は子どもたちを(暴力的な威圧で)脅していたと説明した。また、宿泊形式のコンタクトが始まったばかりだというのに、子どもたちが早起きして自分に要求をしてくると、「我慢できなくなり」、「同じパターンの虐待が戻ってくる」のを感じたと述べている(同書、p146)。

 また、コンタクトによって加害者が女性や子どもを追跡するようになり、母子が何度も家を移動するという事態につながる。これは、子どもの教育に支障をきたすだけでなく、友人、家族、ペット、財産を何度も失うことを意味する(Harne, 2011; Morrison, 2016; Mullender, 2004; Stanley, 2011)。Radfordら(2011)がインタビューした2人の子どもは、暴力的な父親から逃れるために、引越しを8回、転校を7回余儀なくされていた。彼らがインタビューした子どもたちは、恐怖から解放された「普通の」子ども時代を過ごしたいと語っていた。

 監督つきまたは支援つきコンタクトをコンタクトセンターで行った場合でも、祖父母が非公式にコンタクトを監督した場合であっても、子どもたちはコンタクト中に母親に対する身体的・心理的・性的虐待や威圧的な支配にさらされる可能性がある(Harne, 2011; Holt, 2015; Holt et al., 2008; Morrison, 2015; Radford And Hester, 2006; Stanley, 2011)。南アジアやアフリカ系カリブ人の女性の場合、こうした虐待は、拡大家族のメンバーによって、またはその中で行われる可能性がある(Thiara and Gill, 2012)。あるアフリカ系カリブ人の母親は次のように報告していた:

 私が彼の父親の家に預けるという段取りだったのですが、それでも預ける時に私の手から携帯電話を奪い取ろうとし、さらに指を折り曲げるという暴力行為が発生しました。それで、私は警察に電話して、事件を通報しました。(AC8) (同書, p141)

 DAを行う父親とのコンタクトによって子どもたちが経験する精神的虐待の一般的な形態は、子どもたちを使って母親を誹謗中傷し、弱体化させるというものだ。その方法は、子どもたちに母親の生活について質問したり、母親に関する否定的なコメントをしたり、子どもたちがいるときに母親を侮辱したり誹謗中傷したり、子どもたちに虐待的または微妙に脅迫的なメッセージを伝えるように頼んだり、子どもたちを操ったり買収したりして、母親を「スパイ」させて情報を提供させる、などである (Coy et al, 2012; Harne, 2011; McLeod, 2018; Radford And Hester, 2006; Stanley, 2011; Thiara and Gill, 2012; Thiara and Harrison, 2016)。Harne(2011)がインタビューした父親の中には、子どもを通して母親を脅したり、仕返しのためにコンタクト時に子どもの前でわざと母親を侮辱したと述べている人もいる。Morrison(2015)がインタビューした母親は次のように報告している:

 彼はLisa(娘)に嫌なことをたくさん言いました。例えばLisaを連れて行った時に「ママはお前を迎えに来ないよ、ママは他の大勢の男と一緒にいるんだから」と言いました。もちろんそんなことはなくて、私はここ(避難所)に戻ってきたのですが、彼は娘に嫌なことばかり言って、娘が私に電話してくれと頼んだのに電話をさせてくれませんでした。(Jane) (同上、p280)

 これは、両親の別居後初めての宿泊を伴うコンタクトの際に起こったことで、子どもは母親が戻ってくるかどうかわからないまま一晩を過ごさなければならなかった。

 Thiara and Gill (2012)がインタビューした英国在住の南アジアの女性たちは、父親が子どもを「味方につける」ために子どもにたくさんのプレゼントを買い与えることで「買収」したり、或いは母親を「からかい」、侮辱するために子どもを利用するため、非公式なコンタクトを利用することを報告している。

 彼は、「お母さんは君を学校に連れて行ったら、どこに行くの?」などと(子どもに聞きます)「仕事に行く」と(子どもが答えると)「違うよ。お母さんは自分のボーイフレンドたちに会いに行くんだ」と言います。私は、なぜ彼らにそんなことを言うのか、私とあなたの間の問題は私とあなたの間の問題であって、子どもを巻き込むな、と言いました。そしたら彼は大声を出し始めました。(SA2) (同書、p83)

 間接的なコンタクトは、例えば手紙やメール、テキストメッセージで母親を見下すなどして母親の力を削ぐために使われたり、行動や活動をチェックするために使われたりすることもある(Coy et al., 2012; Sturge and Glaser, 2000; Thiara and Gill, 2012)。Thiara と Gill(2012)がインタビューした女性たちは、男性がコンタクト中に子どもを操作するのを監視することは難しいと考えていた。最後のヒアリングが終わっている場合は特に困難である。再度裁判を起こす力のある女性はほとんどおらず、多くが虐待を我慢することを選んだ。

 父親に一貫性がなかったり、頼りなかったり、またはコンタクトの場に現れなかったりすると、子どもたちは混乱や苦痛、失望感を味わうことになる(Holt, 2015; Thiara and Gill, 2012; Thiara and Harrison, 2016)。複数の研究が、父親が裁判所を通して熱心にコンタクトを求めるが(実際には)コンタクトに現れなかったり、取り決めを守らなかったりするので、結果として母親が1人で子どもへの影響に対応しなくてはならないと強調している (Coy et al., 2012; Thiara and Harrison, 2016)。「彼は2週間も子どもたちに会っていません。彼は週に一度、子どもたちに会うことが許されています。彼が子ども達に会っていないのは、彼が会わないことを選んだからです。」(Erika)(Coy et al., 2012 70p)。Harne(2011)は裁判所にコンタクトを申請中の父親やより多くのコンタクトを求めていた父親にインタビューをしているが、そのインタビューは、彼らが実際のコンタクトの際に子どもと一緒にどう過ごすかということはあまり考えていないことを示している。Thiara と Gill(2012)がインタビューしたアフリカ系カリブ人の女性たちは、コンタクトの問題を自分たちで処理し、非公式なルートをたどる傾向があった。このような状況では、男性が合意した取り決めを守ることはほとんどなく、自分の都合のよい時に来たり去ったりし、女性が自分の訪問に合わせてくれることを期待し、まったく来ないことも多く、その結果女性が子どもの失望に1人で対応しなくてはならなくなる。そのため男性と子どもの関係は、一般的に「あったりなかったり」と表現される。

 Morrison(2015)は、継続的なDAが両親の関係に悪影響を及ぼし、親同士のコミュニケーションが完全に欠如することを明らかにした。ハラスメントを避けるために電話番号を変更しなければならない女性もいれば、電話番号を女性に教えることを拒む父親もいた。子どもたちはコンタクトの調整のために親同士の仲介役や伝言役となるが、これによって父親から母親への脅迫にまで及ぶこともある。このように、「DAが両親の関係へ与える影響は、『(別居して)これで終わり』ではなくコンタクトを通して継続し、子どもたちは、親の継続的対立や虐待にさらされやすい状態に置かれ」、両親の関係の力学のなかでうまく立ち回らなければならない(同書、p283)。

 Cafcass and Women's Aid (2017)、Harne (2011)、Harrison (2008)、Holt (2018)、Radford And Hester (2006)、Stanley (2011)、Thiara and Harrison (2016)らによる研究は、別居後のコンタクトが継続的DAの場となっている場合、子どもへの影響やその結果が最悪であることを明らかにした。子どもたちは、攻撃性、引きこもり、不適切な性行動、PTSD症状、自殺行為、発語の遅れ、失禁、悪夢、脱毛や皮膚障害などの身体的症状を示すことがある。

 私が診ている子どもたちのほとんどは、障害に至っているかどうかにかかわらず、トラウマ後の症状やその兆候を有していると思います。子ども達が回復している間や、症状が強く出ている間にコンタクトが行われることは、とにかく事態を悪くすると思います。安全ではない父親とのコンタクトがどうして子どもの症状を改善するのか、私が治療しているトラウマ後の症状をどう緩和するのか、私にはまったく、さっぱりわかりません。コンタクトは(子ども達の状態を)悪化させます。(DV4) (Thiara and Gill, 2012, p73)

 Sturge and Glaser (2000) は、子どもと暴力的な親とのコンタクトを続けることのリスクを概観し、「コンタクトを通じて、あるいはその結果として、子どもの発達上のニーズを満たせない、または発達上のニーズを損ねる、さらには精神的な虐待や被害すら引き起こすこと」だと説明している(同書、p617)。Callaghanら(2018)とCoyら(2012)の研究は、子どもたちのDAの記憶と彼らが経験した恐怖は、別居後も長く続く可能性があると指摘する。

 しかし子どもたちは、より安全な環境にいれば、DAの影響から回復することができる。とはいえ虐待を行う親との継続的なコンタクトは、子どもたちが回復し、その回復を維持する力を妨げる(Katz, 2016)。Humphreys(2006)の文献レビューでは、コンタクトの結果として、別居後も継続的な虐待にさらされていない子どもは、はるかに強い回復パターンを示すことがわかった。

 6.4 DAを行う親との別居後のコンタクトに関する子どもの見解

 DAの加害者である父親との別居後のコンタクトに関する子どもの見解について文献を調査・検討した研究が、英国で12件、アイルランドで1件確認された(ただし、DAを行う母親とのコンタクトに関する子どもの見解を調査したものは確認されなかった。)(Aris and Harrison, 2007; Cafcass and Women's Aid, 2017; Callaghan et al, 2018; Fortin et al., 2012; Harne, 2011; Holt, 2015 (an Irish study); Morrison, 2009, 2016; Radford et al., 2011; Stanley, 2011; Thiara and Gill, 2012; Thiara and Harrison, 2016; Trinder et al., 2013)。このうち複数の研究で、父親とのコンタクトについて子ども達が葛藤を抱え、非常に多様で複雑で相反する感情や見解を持っていることが明らかになった(Aris and Harrison, 2007; Harne, 2011; Morrison, 2009, 2016; Radford et al., 2011; Stanley, 2011; Thiara and Gill, 2012; Thiara and Harrison, 2016; Trinder et al., 2013)。子どもたちの感情は、父親に会えて嬉しい、というものから、会えなくて寂しい、コンタクトはまぁ良い、複雑な感情を抱いている、恐怖や恐れを経験する、まで幅広いものだった。父親が虐待をやめてくれれば好きだし会いたい、という相反する感情を持つ子どももいた(Radford et al.2011)。継続的なコンタクトを望んでいた子どもであっても、父親から母親の情報を聞き出すようにプレッシャーをかけられると負担に感じていた(Harne, 2011)。 

父親を恐れている子ども、また、父親との間に愛情の絆がなかったり、コンタクトの質が低かったり、週末のコンタクトで父親にすぐに「うんざり」されてしまう子ども達からの、コンタクトに対する否定的な意見も報告されている(HARNE, 2011; MORRISON, 2009; Thiara and Gill, 2012)。Thiara とGill(2012)の調査に参加した半数以上の子どもたちは、未だに父親の怒りを恐れ、恐怖を感じていると述べており、コンタクトに強く反対していた。CafcassとWomen's Aid(2017)の調査では、インタビューを受けた子どもたちの中の一部はコンタクトについて強い意見を持っており、特に高年齢の子どもは自分や家族の誰かに身体的な暴力を振るったことのある親とのコンタクトを望まない傾向があった。 

Morrison(2009)がインタビューした子どもたちが報告した最も強い感情は「恐怖」であり、それが父親に対する感情の大部分を占めていた。ある子どもは、自分が安心して父親と接するために必要な条件を「監視カメラや警備員がいるところ。何が起きているかを誰かが見ていられる場所、例えば水泳に行くとか、監視員がいて、何が起きているかを見られる場所(男の子、9歳)(同書 2p)」と述べている。これらの子どもたちは、父親とのコンタクトの前に不安を感じ、コンタクトの前夜には眠れず、「お腹の痛み」や「頭痛」を経験すると述べていた。インタビューを受けた子どもたちは全員、コンタクトが母親や自分へのさらなる虐待のきっかけになるのではないかと懸念し、母親と一緒に暮らしたり、虐待を機関に通報したことを父親が怒るのではないか、という不安と罪悪感を抱いていた。例えば「面会とかはあまり楽しみではありません、なぜなら...口が滑って言うべきでない事を言ってしまいそうで怖いからです(少女、13歳)」という証言もある。Morrison(2009)がインタビューした、父親と会わない事を喜んでいた子どもたちでさえも、父親に対する悲しみや喪失感を表明している。しかし、これらの喪失感は、彼らの実際の父親との経験というよりも、父親は「こうあるべき」「こうあるはず」という理想的な概念に関係しているように見える。

 Morrison(2016)が最近の研究のためにインタビューした多くの子どもたちにとって、DAは中心的な懸念事項であり、一部の子どもたちは苦痛を感じる父親とのコンタクトを望まない理由を説明している。コンタクトが裁判所の命令によるものであり、彼らが望んだものではなく強制されたものであることで苦痛が増大している場合もあれば、父親が「不機嫌なとき」でなければコンタクトを望むという子どももいた。

 レビューした調査研究によると、ほぼすべての子どもにとっての(たとえ父親との関係を望んでいる子どもであっても)優先事項は、自分自身や母親、その他の家族にとっての安全であることが明らかになっている(Harne, 2011; Morrison, 2009; Radford et al. )。Thiara and Gill (2012)のインタビューで父親の行動が真に変わったと報告した子どもたちは、父親に会うことにとても前向きな気持ちを持っていた。

 DAの加害者である父親とのコンタクトの質も、子どもたちにとって非常に重要である。一貫性がなく頼りにならない、又はコンタクト時に一緒に過ごす時間が少ない、積極的に関わらないなど、父親のコミットメントや自分への真摯な関心の欠如を子どもたちが感じた場合、子どもたちはコンタクトをやりがいのない、報われない経験であると感じていた(Fortin et al., 2012; Harne, 2011; Holt, 2015)。例えば以下のような記述がある:「時々、彼(父親)は言い訳をして、私たちに会おうとしないの。...だから、私たちはただずっと待っているの。」(Cathy、9歳)(Holt, 2015, p216)父子関係の質は、Holtがインタビューした子どもや若者の全員ではないにしても、ほとんどの子どもや若者にとってコンタクト体験に影響を与える決定力となっていた(同書)。Holt(2018)の後の研究でも同様に、子どもたちは単なる父親の存在だけでは十分ではないと報告している。

 私たちが彼(父親)の家に行ってもあまり努力をしないんです......何の計画もなく、彼が何をしたいのかもわからないことがよくあります。彼は携帯電話で仕事をしていると言っていますが、常にメールをしていたり、携帯電話を見ていたり、携帯電話が顔に張り付いています。他の2人(弟と妹)が飽きて蹴飛ばしたりすると、彼が怒る。毎回同じで、何が起こるか予測できます。(Emily)(同書、pp466-467)8

 Callaghanら(2018)は、威圧的・支配的な虐待を行った父親とのコンタクトに対する子どもの見解と認識を探る英国初の研究を行った。この研究では、研究に参加した子どもや若者が、父親が支配力を行使しようとしていることを強く認識しており、別居後のコンタクトの一部は、混乱させ、支配し、操作しようとする意図的な試みであると説明している。「Alison」は、虐待的支配が彼女自身と家族の生活に与えた影響を以下のように明らかにした。 

彼(父親)は3年間過ごした後、裁判所に行って、私たち子どもと会えるように(裁判所に)してもらったんだけど、ママをずっと困らせていて、最初は「木曜日の放課後に2、3時間だけ」と言ってたから日曜日の夕食をおばあちゃんのところに行けていたんだけど、彼が(コンタクトの日程を)日曜日の1日中に変えたから今ではほとんどおばあちゃんに会えなくなってしまったの。彼が土曜日は忙しいからって。ママは「ダメ」って言ったんだけど、彼がまた裁判するから仕方なくそうしてるの。(Alison)(同書、p1562)

 「Jess」は、父親が母親の情報を得ようとすることを理解し、それにどのように抵抗したかを説明している。

 この1年ほどでこう考えるようになりました。「お母さんのことを聞いてくるなら電話には出ない。私に質問をしてくるなら電話には出ない。もし『ジェス、元気にしているかい?』と言ってくるなら電話に出る。そして、お金をくれるというのなら電話に出るよ。」(同上、p1569)

 Fortinら(2012)は、両親の別居後、別居親とコンタクトした子どもの時の経験について若年層の意見を調査した。回答者が別居中の親とのコンタクトの経験を肯定的に評価する可能性を高めた要因は以下のもので、これらの多くは互いに関連していた:

Ø  両親が、意思決定やコンタクトの取り決めに子どもを参加させていた。
Ø  離婚後の両親間の対立がほとんど、あるいは全くなかった。
Ø  DVや、別居親が提供するケアについての深刻な懸念がなかった。
Ø  別居前から子どもが別居親と良好な関係を築いていた。
Ø  別居親が、子どもとのコンタクトを子ども中心の楽しいものにしようと努力し、子どものための時間を作り、子どもへのコミットメントを示した。
Ø  同居親が、子どもと別居親との関係を促進した。
Ø  両親はコンタクト方法について柔軟に対応し、子どもの成長に合わせて対応する準備をしていた。

 研究者たちは、別居親が子どもに継続的かつ積極的に関わるための条件は、両親の別居前に既に定められていたことを明らかにした。別居前に非常に親密な親子関係を築いていた人は、コンタクトの経験を肯定的に報告する傾向があった。DⅤがあったり、別居親による子どもの世話に深刻な懸念がある場合には、コンタクトが肯定的に評価されない傾向があった。回答者の中には、暴力、過度の飲酒、異常な行動などの懸念から、別居親と一緒にいても安心できないと答えた人も多かった。DⅤや自分自身への虐待、深刻な福祉上の懸念があった回答者のコンタクト体験は一般的に非常に悪く、ほとんどすべてのケースで回答者自身がコンタクトを終了するか一時停止することを選択した。

 同居親がコンタクトを妨げる、または子どもと別居親との関係を悪化させようとしたと報告する回答者は極めて稀であった。同居親が正当な理由なくそのような行為をしたという回答は、さらに稀であった。親自身がDAを受けていたり、子ども自身がコンタクトに反対している場合であっても、同居親は一貫して子どもと別居親との関係を促進しようとしていた。回答者の62%は、コンタクトが全く行われない、或いは定期的に行われない責任は別居親にあるとしており、その主な理由は、別居親が子どもに対するコミットメントを欠いていたためであるとしている。虐待的な親子関係など絶対にコンタクトを行ってはならない状況があること、子どもの意思に反してコンタクトの継続を強制してはならないこと、コンタクトしない方が悪いコンタクトよりも良いことについては、圧倒的な同意が得られた。


[1] 全国的な世帯調査、犯罪調査、アンケート調査、子どもや若者を対象とした混合研究法などがある。(訳註:脚注番号はオリジナル文書の脚注番号)[2] これらの研究のサンプルサイズと方法については、付録Aを参照のこと。8 Holt(2015, 2018)による研究調査は両方ともアイルランドで実施された。

③英国司法省面会交流等離別後の子の養育に関する裁判の評価報告書に関する文献レビュー(Domestic abuse and private law children casesA literature review2020)【抜粋】に続きます。


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