一面の曼殊沙華|幸手権現堂秋祭り
私には忘れられない記憶がある。
目を閉じれば、ありありと思い浮かべることができる。
一面の曼殊沙華。燃えるような赤。それは幻想的な風景なのに、あまりにも鮮やかで、本当の記憶とは思えない。
権現堂堤から見た曼殊沙華。
「もう会うのはやめよう。他に好きな人ができたんだ。」
先ほどの彼の言葉を思い出す。
あまりに残酷な言葉だった。
あまりに突然だった。
二人の記念日のためにと買っていた、お揃いのキーホルダーを取り出すどころではなかった。
私の何がいけなかったのだろう。
彼はそんな人だったのか。
後悔と彼を責める気持ちが混じりあう。
二人で見た映画、二人で見上げた空、水族館、遊園地。いつでも思い出すことができる。
それ以外は私には意味がない。
こんな時に、私の脳裏に浮かんだのはなぜかあの一面の曼殊沙華の風景。
燃えるような赤。情熱と身を焼く思いがいつの間にか入れ違ってしまった赤。
彼と一緒に一面の曼殊沙華を見たのだろうか。
いや、そんなはずはない。一緒に行った場所、一緒に見た風景なら、彼の笑顔とともに思い出すはずだ。
今はあの笑顔を思い出すことさえつらいけれど。
それでも、心を占める鮮やかな赤は、私を少しだけ癒してくれるような気がした。
薔薇の花にはトゲがあるが、曼殊沙華には毒があるという。
けれどそれは、薔薇のせいでも、曼殊沙華のせいでもない。
幸せに彩られていたはずの私の恋の終わりは、こんな形。
それは、誰が悪いわけでもない。
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