深度|風まかせ文芸部
想いの深さを測る。
この技術が実用化されて、十年になる。
DNA鑑定技術の応用だ。
髪の毛、爪、口をつけたペットボトルなどから測定できる。
浅い気持ちは水色。深い想いは濃紺。
最近発売された簡易端末は大ヒットとなった。
専用の機械に手をかざすと、青のグラデーションが表示される。
恋人たちは、互いの青を見せ合う。
——言葉より確かな証明として。
「愛してる?」
私は測定士だ。専用の測定機を使って、毎日、何十人もの青を見る。
今日の依頼者は女性。
私は手順通り、機械のキャリブレーションを兼ねて、本人確認を実施した。
女性は、夫の浮気を疑っている、夫の青を測ってほしいと髪の毛を持参していた。
モニターに表示されたのは薄い水色。
「ほら、やっぱり」
女性の声が震えた。
私は測定の深度を深めていった。
水色の底には、誰よりも濃い青が沈んでいた。
表面には見えない、いちばん深いところに、それはあった。
「奥さん、ここを、見てください」
女性は、しばらく言葉を失っていた。
濃紺は、海の底のように静かだった。
「…どうして」
女性の声には安堵とともに微かに新たな不安がにじんでいた。
それは、私に聞かれても、わからない。
深い青ほど、表面には浮かんでこない。
女性が帰ったあと、私は二人の画像を確認した。
女性自身の画像は、底まで透明に近いブルーだった。
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