多次元制御機構よだかを恵比寿で見た~目的地はいらない~
多次元制御機構よだか 単独公演『RADIATE』と打ち上げの雑感です。
・多次元制御機構よだか 単独公演『RADIATE』
2026.03.16(月) 開演19:00 東京・LIQUIDROOM
林直大(Vo, G) サポートメンバー:田淵智也(Ba)、鈴木浩之(Dr)
・打ち上げミニトークイベント「多次元制御機構よだか、乾杯___」
2026.03.16(月)開宴 22:00 Time Out Cafe & Diner
林直大、田淵智也、鈴木浩之(電話出演)

🔹恵比寿リキッドルーム
ライブを見るのは3ヵ月ぶりでした。
ギターボーカルのハヤシング(林直大)は、痩せたのか顔が少しシュッとして、髪の毛もちょっと伸びてパーマのかかり方も変わったようでした。
いつも「やんちゃな学生」みたいな若々しさだと思いますが、今日は「落ち着きのある青年」に見えました。
過去3回見た東京でのワンマンは、下北沢シェルター(キャパ:250)、下北沢シャングリラ(キャパ:600)、渋谷クラブクアトロ(キャパ:800)でした。
今日の恵比寿リキッドルーム(キャパ:1,000)は、これまでとはあきらかに違ったエネルギーをRADIATEしているような、幕開けのようなワンマンでした。
それはキャパシティの大きさのせいだけではありません。
と言うのも、今までのワンマンは、これまで積み重ねたライブの延長上だと感じました。
今回はアップデートされたSE、ギターの弾き語りから始まるアレンジ、曲のつなぎ、新しい顔を見せた初披露の曲など、これまでの範疇からはみ出していて、まるで3次元から5次元に移行したような違った景色が見えました。
最近はEPの表題曲「オデッセイ」がエースでしたが、この日の流れではすっかりレパートリーの1曲として息づいていました。
「2時間散歩をしながらライブの構成を練った」とMCで話していましたが、その意味がよく伝わりました。
「自分が目指す場所はみんながいる場所だとわかった、ありがとう」と総括するハヤシングは、何かを悟った人にすら見えました。
ソールドアウトでしたが、経験値的にゆったりめの「完売御礼」だったと思います。当日券もありました。
お客としては、これぐらいのリキッドルームが理想的。存分に楽しめる空間で、とても良いワンマンでした。
🔹ライブ
・速くなくってもいいよ、君のフルスピードで。
いつもの登場SEは、細やかで揺さぶるドンツクなリズムが強調されるサウンドにリニューアルしていました。
開演BGMとして、くるりの「WORLD'S END SUPERNOVA」、サカナクションの「インナーワールド」、m-floの「come again」といったダンス色の強い楽曲が流れていたので、その延長線上でライブがスタートしたような快感すらありました。
SEに続いて「ハイウェイ・ラピスラズリ」が始まったので不意打ちを食らいました。「システムオールグリーン」以外の曲が、1曲目に演奏されたのを聞いたことがなかったので。
「速くなくってもいいよ、君のフルスピードで。」
このフレーズが、いつもより際だって聞こえました。
「周回遅れの運命を呪いながら(曲名)」というポジションから、次元が移行したようにも受け取れました。新たなよだかを見た気がします。
・恵比寿の街に着く頃
「飛鯨五十二号」では、「愛車の飛鯨五十二号が 恵比寿の街に着く頃」と替え歌をして、楽し気にハンドルを握る素振りに会場が沸きました。
この日、ギターは最近メインで使っている白いレスポールと、以前のメインである赤のテレキャスターを使っていました。
飛鯨で久しぶりにテレキャスを拝み、「あら、元気してた?」という気持ちになりました。
・新曲
ライブで初めて聞いた曲が2曲ありました。新曲の「スターダスト・エウレカ」と、メジャーデビューEP「ODYSSEY」に収録の「稲の妻」。この2曲が、いまだかつてなかった異質さを放っていました。
新曲は「スターダスト・エウレカ」というタイトルコールがありました。
まず、「極めてよだかっぽいネーミングだ。『ハイウェイ・ラピスラズリ』『ミルキーウェイ・トラフィック』のように。」と思いました。
しかし曲調といい展開といい、これまでにはなかった楽曲で、気づけば見知らぬ魅惑の地に連れてこられて、笑いながら踊っていたのでした。
「天國」もそうですが、派手なブラスが入ると、なんとはなしに任侠映画のようなたくましさを感じます。
後の打ち上げイベントで、鈴木浩之が「ラテンっぽいノリもある」と話していました。ベースのスラップも激しくて、確かに陽のリズム。
昭和歌謡のような、生放送の生バンド演奏みたいなゴージャスさと華やかさも感じました。好きなタイプの楽曲です。
3人が必死に演奏していたのも印象的。難しそう、やりがいがありそう。
続けて疲労感も見せずに「時空怪盗」を演奏する3人に「うわあ、元気だなぁ」と、感動とも感心ともつかない気持ちが沸いて、ステージに吸い込まれました。
何の曲に繋がるか全く予測ができないSEが流れ、「稲の妻」に突入したので、「ああ、やられた」という予定不調和の快感を覚えました。
変則的なワルツみたいなリズムが心地良くて、こちらも従来のラインナップになかったユニークな1曲。
・孤独感
しめやかなギターから、「スピン」のイントロSEに繋がりました。新しい演出。
この曲をこんなに広い会場で聞くのは初めてです。広いステージで、ピンスポットを浴びて静かに歌うハヤシング。孤独が際立ちます。
200人規模の小さいライブハウスで聞く没入感も好きですが、遠目からポツンとした孤独感を味わうのも良いなぁと浸りました。大好きな1曲、
・あらすじ
「あらすじ」を聞いたのは3回目だと思います。この日やった曲で、唯一音源化されていません。
前に聞いた時と、雰囲気が変わったと感じました。同期のピアノが目立つアレンジになっていたせいかもしれません。そこはかとなく、くるりを思い起こすようなエモーショナルな響きを感じました。ある瞬間、田淵智也が佐藤征史(くるり/Ba)に重なって見えたぐらいに。
・ミラーボール
「ミルキーウェイ・トラフィック」からの後半戦は、慣れ親しんだ展開でした。
私はミラーボールにほど近い段上からステージを眺めていました。「天國」で、嬉しそうにミラーボールを指さすハヤシングと、見上げたミラーボールと、キラキラした会場の空気。その全部の調和が美しくて、丸ごとパッケージングして心に収めました。
・背面弾き
アンコール待ちで手拍子をしている時に、ほろ酔いのおじさまが「アンコール!」とコールをし始めました。「アンコール」コール、最近聞かないなと思って、懐かしくて私も久しぶりに声に出してみました。
アンコール定番の「夜間飛行」(本日2回目)では、ヒートアップした田淵が背面弾きをするシーンがありました。客席に大きな歓声が沸きます。
それを見たハヤシングが、ムッとした顔で負けん気を発揮しました。「オレだってできるし!」という心の声が聞こえてきそうでした。
対抗心で見事なギターの背面弾きを披露し、満足気なハヤシングのドヤ顔が、なんというか良かったなぁ。
そんなハヤシングを見てニコニコする田淵は、完全に面倒見の良いお兄さんの顔でした。ふふふ。
🔹セットリスト
ナタリーより。
01. ハイウェイ・ラピスラズリ
02. システムオールグリーン
03. ヒーロー
04. 飛鯨五十二号
05. INTERNET LIVING DEAD
06. 蛞蝓
07. スターダスト・エウレカ
08. 時空怪盗
09. 稲の妻
10. スピン
11. あらすじ
12. ミルキーウェイ・トラフィック
13. 夜間飛行
14. 天國
15. 曲名
16. オデッセイ
17. 或星
<アンコール>
18. 夜間飛行
🔹打ち上げ

「多次元制御機構よだか、乾杯___」
これまでのワンマンライブ(下北沢シャングリラ、渋谷クアトロ)と同様に、今回も打ち上げがありました。
リキッドルーム2Fに併設の「Time Out Cafe & Diner」にて。キャパが小さいから倍率が高めだったようで、ハヤシングがSNSでお詫びをしていました。
私はよだかのチケットはいつも当たるのです。(でも田淵智也のイベントは外れてばかりで悲しいです。神様助けて下さい。)
会場入りしたら、ライブの開演待ちと同じ選曲でBGMが流れていました。くるりとかメレンゲとかゆらゆら帝国とか。アナログレコードみたいな音がめちゃくちゃ気持ち良かったです。さすがリキッドルーム併設。
リキッドには20年前から世話になっていますが(新宿時代も含めるともっと)、このエリアに入るのは初めてでワクワクしました。
・浩之のテレフォンショッキング
浩之さんは病み上がりのライブだったそうで、打ち上げは欠席でした。
言われてみれば、いつもより表情が固かったかもしれません。新曲や「稲の妻」をやり慣れないせいもあるのかな、と察していました。
ただ、ライブ中にハイテンションの田淵が突進して来る場面では、素で楽し気に笑っていたから、いつもの浩之さんだなとも思いました。
田淵にアタックされる人(ハヤシング、斎藤宏介、鈴木貴雄、新井弘毅など)はみんな微笑みを浮かべますが、「素で楽しそう選手権」の王者は今のところ浩之さんです。
田淵の采配で、浩之さんが電話出演してくれました。
「【田淵】今、大丈夫ですか?」とごく普通の会話から入ったためか、途中で「【浩之】これお客さんに聞こえてないよね?」とチェックが入りました。筒抜けだと聞かされて、「うそ、やだぁ」とオネエ風味の浩之さんが新鮮で笑いました。
「【浩之】LINE電話のタイムラグが気になるから、携帯にかけ直して欲しい。じゃあ番号言うね」というボケもありました。
思わず「今日の浩之、ちょっと大胆」と、レトロな名言が脳裏に浮かぶほどのサービス。(とんねるず「仮面ノリダー」。古っ。)
初披露の新曲や「稲の妻」が楽しかったこと、ハヤシングが作った打ち込みはプレイしやすいという話も聞けました。現場参加の時よりも、饒舌な浩之さんを堪能しました。
・サビは低くても良い
「人気曲『夜間飛行』のサビは意外と低い」という話題がありました。
UNISON SQUARE GARDENのヒット曲「オリオンをなぞる」や「シュガーソングとビターステップ」もそう。
リスナーとして、「サビが高いから好き」「サビが高いからヒットしているのだ」という観点から眺めたことがなく、気に留めたことすらなかったので、言われてみればそうだな、という気づきがありました。
・スターダスト・エウレカ
提供を想定して作った、自分で歌う前提ではなかった、と初めての創作方法だったことを明かしていました。
新しい扉が開けたような印象を受けたのは、サウンド面だけからではなかったのだな、と思いました。
後日、テレビアニメのタイアップだと発表されました。「あの楽曲の雰囲気はアニメーションに合うのだろうか?」と一瞬よぎりましたが、アニメの種類によるので、見てみないとわかりません。
「また殺されてしまったのですね、探偵様」というミステリーアニメ。公開された動画を見ました。
うん、とっても合う。曲から任侠映画を連想したぐらいなので、謎めいた殺人ものの映像が見事に合致しています。
・「曲名」を特別な曲にしたくない
ハヤシングは「『曲名』を特別な曲にしたくない」と話していました。
解散した前のバンドのことやソロでのリスタートの決意が、生々しさと軽やかさをもって表現された曲。
「今日が最後なんて嫌だ!って思えたなら 命はいつでも僕に微笑みかける、そんな簡単なこと もう二度と忘れない。」というフレーズに揺さぶられるリスナーも多いと思います。
「『曲名』を特別な曲にしたくない」という理由として、小林秀雄がモーツァルトを批評した書籍を引き合いに出して説明していました。
モーツァルトにとって目的地は問題ではなかったそうです。どこに到達するかではなく、歩むことそのものが目的であり、表現であったと。(うろ覚え、こんな感じのニュアンス。)
特別な曲を作る!と力んで創作をするのではなく、ただ今を精いっぱい生きるプロセスそのものに意識を向けたい、結果的に良い作品が生まれる、そこを目指したい、ということかなと受け取りました。ハヤシングらしいと思いました。
そして、私が「曲名」で心を奪われてやまない一節で、すでにそのことを言い当てていた気がしています。
「今いる場所がもう そうとも知らずに
桃源郷を目指す事 人は青春と呼ぶのさ」
追い求める桃源郷は、実は今この瞬間、必死に生きているプロセスに既に存在している、というパラドックス。
目指すのではなく、在り方そのものを大事にする考え方は、5次元的(未来と今は同じ世界線)な思考で面白いなぁと思います。
・ポジショントーク
ライブはいつもより大人びて見えましたが、アルコールが入るとお馴染みのハヤシングでした。酔いが回ってくると、髪の毛をワシャワシャする癖も変わらずです。
前回は言葉が出てこなくなるほどベロンベロンでしたが、今回は「ビール」とおかわりをねだったところで、袖に待機していた本間社長が優しいまなざしできっぱりと首を横に振っていました。その姿はさながらお母さん(社長は男性ですが)で、愛情を感じました。
田淵はビールで乾杯していたけど、トイレに立つこともなく過去イチ飲んでいなさそうでした。速口に拍車がかかっていました。
ハヤシングにボールを投げて感想を引き出し、自らも意見を発し、良きタイミングで浩之さんに電話するなどのマルチタスクを粛々とこなし、MC田淵智也の本領を発揮していました。
酔いが回ったハヤシングがスローなので、余計に田淵が早送りに見えて、なんか曲芸師みたいだと思いました。生き急いでいる人みたい。
ハヤシングへのアドバイスとして、「ポジショントークだけど」と前置きして経験談を語るシーンもありました。
田淵はポジショントークという言葉をよく使っている気がします。リスナーへの誠実さと、エクスキューズの意味合いでしょうか。
ハヤシングが奔放な発言をした時も、業界の先輩としてのポジショントークと親心で、やんわりと諭していました。
私の意見は違って、ハヤシングのやりたいようにやっていいんじゃない?と思いました。世間でいうところの正解の目的地を目指したいわけではないのなら、なおさら。(社長を困らせない程度に。)
1時間はあっという間で、社長から巻きが入りました。
MC田淵は客席に「帰りに林くんに言いたいことがあれば一言ずつ」と締めたので、「Youにそんな権限が?」と不思議に思いましたが、しごできMCの過剰サービスだったと思われます。(本当に時間がないので社長に却下されました。)
打ち上げは、酔いどれハヤシングの「多次元制御機構よだか、終電…!」(片腕を天に突き上げるポーズで)という笑いを誘うご機嫌な台詞で締まりました。
終電には間に合いましたが、ご飯を食べる時間がなくてペコペコだったから、すき家で納豆定食を食べて帰りました。
🔹セルフライナーノーツ

グッズを購入したら、当日購入者限定の「ODYSSEY」セルフライナーノーツをもらいました。特典があることを知らなかったので嬉しかったです。
私はグッズの列に並ぶのが苦手なので、混んでいたら後日に見送ろうとしていたのですが、打ち上げまで時間を持て余していたところ、列が途切れて購入機会に恵まれました。
購入者限定なので詳細は控えますが、ライナーノーツと言う名の文学(短編小説)でした。ハヤシング本人も「良い怪文(?)」と自負している通り。
昨日限定のオデッセイのセルフライナーノーツ、我ながら良い怪文(?)が書けたと思う。噛み締めて下さいね……
— ハヤシング@多次元制御機構よだか (@hys_is_dead_) March 17, 2026
打ち上げでの話を思い出しました。
メジャーデビューの際、レーベルの偉い人たちに「多次元制御機構よだか=タイムマシンだからといってSFではない」と意思表示したそうです。
SFではなく文学である、と。
私が初めて「多次元制御機構よだか」という名前を聞いた時に、真っ先に連想したのは宮沢賢治の「よだかの星」でした。宮沢賢治が好きなのかとばかり。
しかし、以前に雑誌のインタビューで「名前を付けた時は、宮沢賢治を読んだことがなかった。後に『よだかの星』を読んで、自分のプロジェクトと内容がドンピシャで運命を感じた」と知り、大変驚きました。
そんなこと、ある?
そりゃ、運命を感じずにはいられないだろう。
文学だなぁ。
「多次元制御機構よだか、運命…!」
なんて言いたくなってしまう巡り合わせではないでしょうか。
・EP「オデッセイ」の感想。
・前回ワンマンライブの感想。
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