見出し画像

「SNSお願いね」で辞めていく保育士の話

保育園のInstagram運用が離職につながることがある理由

最近、保育園でもInstagramで発信をする園が増えてきました。

採用のため。園の魅力を伝えるため。
保護者への情報発信のため。

SNSは、うまく使えばとても有効なツールです。

ただ、保育業界の現場の声や、現役保育士のSNS、そして保育業界のSNS
コンサルタントの事例などを調べていくと、ある共通点が見えてきます。

それは

「SNS担当になってから仕事が増えた」

という声です。

そして中には

それが大きな負担となり、
転職を考えるきっかけになってしまう保育士がいる

という話もあります。

今日は、
保育業界で実際に起きている保育園のSNS運用の実態について
書いてみたいと思います。




保育園のInstagram運用には、4つのパターンがある

保育園のInstagram運用を見ていくと、実態はだいたい4つのパターン
分かれます。

① 若手への依頼パターン (もっとも多く見られる運用)

まずこれは、
おそらく今の保育業界で一番多く見られる運用パターンです。

園長や理事長など経営層が「若手はインスタ得意そうだよね」という理由で、20代の若手保育士数名に「SNS係お願いね」と任せるケースです。

一見すると自然な流れに見えます。
ただ、ここには少し注意が必要な点があります。

個人のInstagramと、園の公式Instagramは

まったく別の役割を持つもの

だからです。

photo by photoAC

例えば

  • 園児の顔出しの可否

  • 保護者からの見え方

  • 園のブランドイメージ

  • 炎上リスク

など、かなり慎重な判断が必要になります。
つまりこれはPR業務+リスク管理業務でもあります。

そして、もう一つここで想像して欲しい現実があります。

それは、リール1本を作るのにかかる時間です。

個人の趣味アカウントであれば、
慣れれば30分〜1時間で作れるかもしれません。
しかし保育園の公式アカウントとして
保育士がリールを1本作成する場合、
撮影、編集、投稿まで最低でも3時間〜半日かかることも
珍しくありません。

なぜ、たかが数十秒の動画にそこまで時間がかかるのでしょうか。
それは「個人の趣味」と「保育園の公式」では、
クリアすべきハードルがまったく違うからです。

ここでは本来の目的である閲覧数やリーチ数を伸ばし、
園をもっと知って
もらうためのSNS運用という前提でお話しします。


まず撮影の難易度があります。
子どもは大人のように
「ここで笑って」「こう動いて」という指示が通用しません。
自然な笑顔や活動風景を撮るために、
何十分もカメラを構え続けたり、
何十テイクも撮影したりする必要があります。

この間、撮影者の保育士は保育から離れることになり、
他の保育士の負担が少し増えることもあります。


次に、最も時間がかかると言われているのが素材チェックです。

photo by photoAC

撮影した動画の中に「SNS掲載NG」の家庭の子どもが
1秒でも見切れていないか、
背景に園児の名札や個人情報が書かれた掲示物が
写っていないかを丁寧に確認します。

もしNGの子が写っていれば、そのシーンをカットしたり、
動画編集アプリで顔隠しスタンプを追従させる編集作業が発生します。


その後にようやく編集作業です。
動画を切り貼りし、テンポを整え、テロップ(字幕)を入れます。
「誤字脱字はないか」「言葉遣いは適切か」
といった確認も必要になります。
BGMも著作権フリーのものを選ぶ必要があり、
探すだけでも時間がかかります。

さらに、キャプション(説明文)の作成があります。
動画だけではなく、
「今日のねらい」や「子どもたちの育ち」を
保育士らしい言葉で書き起こす必要があります。

最後に、園長・主任の確認と承認です。
完成してもすぐには投稿できません。
管理職のチェックを受けます。
「この表現は少し気になる」「この子の顔が暗く見える」
などの修正があれば、また編集作業に戻ります。

本来、正しくSNSを運用すると、こうしてやっと一本の投稿が完成します。

ただ、この作業が保育士さんの日々の業務に追加され

・保育とは別業務でも手当がない
・保育とは別に業務時間として確保されていない
・自己流での投稿で正しいかどうか分からない

という状況で進められてしまうと、
結果として現場の先生の負担が大きくなってしまう可能性があります。

photo by  photoAC

② 園長・主任の孤軍奮闘パターン

二つ目は、園長や主任が自分でSNSを運用するパターンです。

理由はとてもシンプルです。

「現場に負担はかけられない」
「情報管理の責任は管理職が持った方が安心」

このような考えから、責任者が自ら投稿を担当するケースです。

安全性は高い方法ですが、一方で課題もあります。


photo by photoAC

園長や主任は

・職員管理
・保護者対応
・行政対応

など、とても忙しい立場です。

その結果

・月に1回しか更新されない
・投稿が止まる
・アカウントが動かなくなる

というケースも見られます。


③ 当番制(持ち回り)パターン

三つ目は、全職員でSNSを回す方法です。

例えば「今週は〇〇組が投稿担当」といった形です。

一見すると公平な仕組みに見えます。
ただ、ここにも少し難しさがあります。

SNSに慣れていない先生にとって

・写真を撮る
・文章を書く
・画像を加工する

という作業は思った以上に大変です。

中には、スマホで文章を書くこと自体が
負担に感じる方もいます。

その結果、操作に慣れている若手がサポートする形になり、
結果として若手の負担が増えてしまうこともあります。


④ 専任担当・外注パターン

(理想に近い形)

四つ目は、専任担当を置く方法です。

例えば

・広報担当
・事務職員
・SNS担当スタッフ

もしくは、SNS運用を外部に依頼する方法です。
この場合、現場の保育士の負担はかなり軽減されます。

ただし課題もあります。

それはコストです。
SNS運用代行は月数万円〜数十万円かかる場合もあります。

photo by photoAC

資金力のある法人なら可能ですが、
一般的な認可保育園や小規模園では導入が難しいことも多いのが現実です。


なぜ「若手依頼」が起きるのか

では、なぜ一番多い若手依頼パターンが起きるのでしょうか。

背景には、SNSやデジタルツールへの理解の差があるように思います。

例えば、経営層はInstagramを
「若い人が趣味で楽しんでいるもの」と
感じていることがあります。

そのため、「空いた時間にお願いね」
という形になりやすいのかもしれません。


若手から見える世界は違う

しかし、若手保育士から見ると状況は少し違って見えることがあります。

保育という、安全第一の現場で働きながら

・画角を考える
・映える写真を撮る
・個人情報をチェックする
・炎上リスクを考える
・ハッシュタグを調べる

これはかなり専門性の高い仕事でもあります。

そして、ここで少し考えてみてほしいことがあります。

これほどの手間と時間をかけてリールを作成しても、
実際には閲覧数やリーチ数が思ったほど
伸びないケースも少なくありません。

それなのに、「片手間でやっているから仕方ないよね」と、
そのまま運用が続いてしまっている園もあるのではないでしょうか。

そもそも、何のために
これほどまでの手間と負担をかけてSNS運用を行うのでしょうか。

採用のためなのか。
園の魅力を伝えるためなのか。
保護者への安心感を届けるためなのか。

もし目的が曖昧なまま運用してしまうと、
先生たちの負担だけが増え、成果は見えにくくなってしまいます。

SNSは
「とりあえず投稿しておけばいい」というものではありません。

photo by photoAC

やるのであれば

  • 目的は何なのか

  • 誰に届けたいのか

  • どんな人に園を知ってほしいのか

こうしたことを明確にした上で、
計画を立て、企画を作っていくことが大切だと思います。


SNSが悪いわけではない

ここで誤解してほしくないのですが、
SNSそのものが悪いわけではありません。

SNSは

・採用
・広報
・園の魅力発信

にとても有効なツールです。

ただ、運用の仕組みがないと誰かの負担になってしまうことがあります。


本来は「仕事として設計」する必要がある

SNSは、「若いからできる」という仕事ではありません。

本来は

・広報
・採用
・マーケティング

の専門的な仕事でもあります。

つまり、仕事として設計する必要があります。

  1. 担当

  2. 時間

  3. 役割

こうしたものを決めていくことで、
先生たちの負担も大きく変わってくると思います。


おわりに

保育園のSNSは、とても可能性のあるツールです。

ただ、現場の先生の負担の上に成り立つものではありません。

もし今、「SNSお願いね」という形で運用している園があるなら、
一度運用の仕組みを見直してみてもいいかもしれません。

ブリッジオでは、
保育園や福祉施設の採用支援の中で、
SNS運用の設計や導線づくりもお手伝いしています。

先生たちの負担を増やす形ではなく、
園の魅力をきちんと伝えながら採用につながる仕組みを、
貴園のチームとして一緒に作っています。

もし採用やSNS運用について悩んでいることがあれば、
気軽にご相談ください。



いいなと思ったら応援しよう!