坂本 の 鼻クソ の サカモト│関谷ユウコさん作品の二次創作
「……ちょっと。ねえ、ちょっと!」
鼓膜に感じた鋭い衝撃に、アイスピックでも突き刺さったのかとビビったら、妻の声だった。
「え、何?」
脊髄が、俺より先に返事した。
「『なに?』じゃないでしょ!やめてくんない?それ、汚い!」
妻は眉間と鼻にシワを寄せ、その視線は俺の目の高さからほんのわずか下にずれていた。そこは、
鼻か?
その時ようやく、俺は自分が鼻をほじっていることに気がついた。
おっかしいな。
たしかに俺は、昔から鼻くそをほじるのをライフワークにしている。
でもそれは、人の目を盗んでこっそりやるものだったはずだ。
それがどうだ。
近頃は、気がつくともう指が鼻の穴におさまっているという有り様だ。
どこでも
かしこでも
ほら、今も。
鼻くその方だってそうだ。
はじめはいつもの厳ついやつとか、なにかのオブジェみたいな輩がヒットしてたのに、最近は0.01mm程度のうっすい皮のような、ヘラいやつしかついてこない。
ほじり尽くしたんかな。
つまんねーな。
仕方ないから、俺も鼻くそとおんなじ顔をして、
「悪い悪い」
妻に調子よく返事をしながら、ヘラい鼻くそと指先はこっそり服に……
「それもっとやめて!」
すかさず今度は、剣山みたいな声が飛んできたもんだから、俺はひゅっと肩をすくめた。
それにしても最近多すぎないか。
尋常ではない鼻のほじり方だ。
まるで自分のコントローラーがイカれたようで、背筋が冷える。
わりと真剣に己の身を案じてはみたものの、そんな時だってほらまた。
指はスクリューしながら鼻の奥めがけて前進してるし、指先にはやっぱり0.01mmの厚みの鼻くそ。
……くそっ。
ま、しょうがねぇか。
どうとでもなれと開き直ってみれば案外、人前で鼻をほじるなんて大したことでもなかった。
俺、なんであんなに必死に隠してたん。
途端に昔の自分を、ぬるついたペラいやつに感じた。
四六時中鼻をほじってる俺を、周りは目をそらしながら少し遠巻きに様子を伺っている。
こっちに(つけて)くんなよ。って怯えた顔なんて、怖えやつを前にした時と一緒。
鼻くその強さに酔いしれた俺は、さらに激しく左右に動かして鼻くそを追い求めた。
もう思い通りにいかないのなんて、鼻くその厚みくらいだ。
すっかりこの生活になじんだ頃。
薄い膜を隔てて見える妻の冷ややかな顔が、漫画かなにかで見覚えのある画質にいつのまにか変わっているのに気づいた。
なんだっけな、あれ。
おれは、指先に半分、記憶を探るのに半分意識を飛ばしながら、妻の顔をじっと見つめた。
あ、楳図かずおか。
すっきりした俺に、すっきりしてない妻が口を開いた。
「……ねえ、あなた。それ、大丈夫なの……?」
「大丈夫って、なにが?」
すっかり定着した鼻くそ顔で俺が聞き返すと、強烈な陰影をまとった顔の妻が、震える手で俺の顔の中央を指さしてきた。
「だって、あなた……それ、つながっちゃってるんじゃないの?」
え!?
俺は慌てて鏡を見た。
本当だ、鼻が大きな一つ穴になってる。あと、楳図かずおにもなってる。
え、貫通した?
くり返し指について来てた、0.01mmのヘラい鼻くそを思い出す。
あの程度なら、なくたって別に同じじゃねぇの。なんてバカにしてたけど、なんだよ同じじゃねぇじゃん。
俺は慌てて家の中にある0.01mmの厚さのものを探して、ようやくアルミホイルをみつけた。それをできるだけ小さくちぎって一つ穴の真ん中にどんどん詰めた。
そしたら銀歯がキーンとした。
こちらは関谷ユウコさんの作品
「神さま。いらっしゃるならどうか、そこに正座しろ」に出てくる「坂本くん」の二次創作にあたる記事です。
みなさんは、読みましたか?
この坂本くんは作品の中で主人公である遥ちゃんが思いを寄せる人で、作者の関谷ユウコさん自身は、彼のことをクソの坂本と裏話で書いています。
遥ちゃんを大切にしてくれない坂本くんのことを私はどうにも好きになれなくて、コメント欄で散々嫌いと書いていました。
ですが作者の関谷ユウコさんが、クソの坂本と言いながらも、同時にこのキャラクターを深く愛しているのが伝わってくるので、毛嫌いしてはいけないな。と反省もしました。
だから以前「惰性」という記事を書いて、坂本の気持ちに寄り添ってもみました。
今回、以前のように坂本くんを嫌うことはないかな。と思っていましたが、やっぱり遥ちゃんを大切にしてくれない坂本のことは嫌いで、バチでも当たればいいのに。と思いながら読み進めていました。
物語の顛末は、ぜひ作品を読んでほしいのですが、結局バチは当たりませんでした。
関谷ユウコさんから、今回も「ひとりたろう(関谷さん特有のくいたろうへのまんざらでもない無茶ぶり)」のご指名をいただいて、だったら二次創作の中でバチを当たらせてやろうと思った次第です。
0.01でも、あるのとないのじゃ大きな違いだかんね!
と、坂本くんの鼓膜がキーンとなるくらいの強火のメッセージも込めました。
0.01ってなに?
って気になる人は、ぜひ関谷ユウコさんの作品をご覧になってくださいね。
関谷ユウコさん、いつも好き勝手ばかりでごめんなさい。あと坂本を毛嫌いしてごめんなさい。
毎回ものすごい熱量をくれる、坂本くんはある意味でとても魅力的なキャラクターなのかもしれません。
そんな作品を書ける関谷ユウコさんが、うらやましいです。
これからも楽しみにしてますね。
どうもありがとうございました!
それから今回、坂本くんの二次創作仲間である、再生補修さんも関谷ユウコさんへのオマージュ作品を同じタイミングで投稿しています。
一緒にやろうよと誘ったら、つきあってくれました。
補修さんはほんとに、つき合いがいい人です。
前回の再生補修さんの二次創作、とても好きでした。なんとかあのしょうもない坂本くんを書きたくて、今回そこをすごくがんばりました。
はぁ、でも全然足りてないなぁ。
つい肩に力が入ってしまいます。
どうしたらあの、魅力的な文章が書けるのでしょうか。
いつか、書けるようになりたいなぁ。
再生補修さんも、ありがとうございました!
一緒になにかするのって、わくわくしますね。またなにか誘ったときはぜひ、一緒に遊んでやってください。
それでは。
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読んでくれてありがとう!うれしいです。