【妄想note】星に願いを│七夕タイムカプセル
今日は七夕。
わたしは友だちのよりちゃんと学校帰り、地元の七夕祭りに来ていた。
駅前の商店街には笹飾りがゆれていて、
「○○がうまくいきますように」とか、「彼女ができますように」とか、
思い思いの願い事を、ところ狭しとぶらさげられている笹は、みんなの願いを一身に背負ってすごく重たそうだ。
「がんばれよぉ」つい笹に声をかけてしまう。
「笹に話しかけてる人、はじめて見た。……返事とか、くれるの?」
すかさずよりちゃんからの冷静なツッコミとともに、少しだけ気の毒な人を見るような視線がとんできた。いつものことだ。
「…そうだね。『しんどいです』って言ってるよ」
本気とも嘘ともわからない口調で、私も返す。それもいつもどおり。
「それにしてもあっついね!かき氷食べてもう帰ろうよ」
たいして私の返事に関心もない様子で!よりちゃんは話題を変えた。
今夜は1年に1度、願いが空に届く夜…のはずだけど、
空は街の明かりに負けて、ぼんやりとグレー。学校から何度となく空を見上げてみたけれど、ずっと、ずっとグレー。今日だけは見たかったんだけどな。
「そうだよね…星も見えないしね」
小さくため息をついて、私もかき氷屋を探しはじめた。
そんな私をじっと見つめるよりちゃんが、じゃあさ…「うち来る?マンションだし星、もしかしたら見えるかもよ」
優しく笑って提案してくれた。
いいの?
「…あんま変わんないかぁ。
最上階だしここ高台だし、いいと思ったんだけどな」
よりちゃんが、ベランダから空を見上げて言う。
なまぬるい風が、なぐさめるように私の頬を撫でた。
「うん、月とか明るい星ならかろうじて、ね。天の川見たかったな」
「あんた…天の川とか期待されても、そりゃ無理だわ」
天文台か、ど田舎いかないと。
「知ってるもん。見られる場所が限られていることくらい」
私はコップの氷がカラカラと音をてるのを聞きながら、口を尖らせた。
「叶わないとわかっていても、願いたくなるのが七夕でしょ」
今日だけは、今年だけは願い事を聞いてもらいたかったのだ。
「……よりちゃんみたいに遠くに行けば……天の川、見られるのかな」
とうとうがまんできない言葉が、ためらいながらぽろりとこぼれ落ちる。
しまった。
「…やっぱりそれか…仕方ないでしょ」
よりちゃんは、やれやれと言わんばかりに、小さくため息をついた。
彼女は来年この街を出て、遠くの大学に進学することを決めてしまった。
ずっと一緒にはいられない。そんなこと私にだってわかってる。
でも大好きなよりちゃんが、とうとう遠くに行ってしまう。
天の川でもなんでも願いたくなってしまうのだ。
「…ごめんね。あきらめが悪くて」
「ほんとだよ。進学先は変わらないからね」
「知ってるよ。さみしいだけだもん。わかってるよ」
「今生の別れじゃないでしょ」
「そうなんないように、天の川にお願いしときたかったの」
なるほどねぇ…よりちゃんがそう言いながら、静かに夜景を見渡す。
あと何回、この横顔を見ることができるのだろう。
そのとき、よりちゃんがなにかに気がついたような顔をして、私をみた。
「でもさ」
そう言って、遠くの道路を指差す。
「ほら、あれ。あそこの道路。車のテールランプが天の川みたいじゃない?」
視線の先には、たくさんの赤い光の列がゆっくりとカーブを描いて、街の端へと流れていた。幹線道路の脇に広がる街の明かりは、夜空にちりばめられた星のようだ。
「……うん。まるで地上の天の川みたい」
きれい…
その言葉は、口の中で苦くひっかかる。
地上に広がる天の川の流れが、まるでとどまることをゆるさない、時の流れのように儚くうつる。
「ずっと一緒にいたかったよ」
また、心の中の言葉がこぼれてしまう。
よりちゃんは私を見て、ちょっとだけ笑った。
「……ばかね。そう簡単にかわるわけないでしょ」
「そうかな」
「そうだよ、あんたの執念深さは、昔っから知ってるからね」
よりちゃんはベランダの手すりに肘をかけて、横目で私を見ながら茶化すように言った。
「あっ!ひっどーい!」
つられて私も笑ってしまう。
笑い声だけでも、空には届いただろうか。
こんな七夕の夜に、私の願いはただひとつ
今の関係が来年もその先も、ずっとずっと続きますように
空でも地上でもかまわない。
どうか、星に願いを。
🎋
音羽しーなさんの投稿で、ロマンチックなトップ画像を見てしまったその時から、ロマンチックな妄想が止まりませんでした。
音羽しーなさん。トップ画像お借りしました。ありがとう!
ことばとさんの企画に私も参加してみたいと思います。
締切は、7/7午前中!!ギリギリセーフ!?でしょうか。
私の願いはもちろん
今の関係が来年もその先も、ずっとずっと続きますように🎋
ことばとさん、楽しい企画を作ってくださりありがとうこざいます。
#七夕タイムカプセル
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