人が人を呼び、言葉が言葉を呼ぶ|創作大賞感想
コニシ木の子さんの作品を読んだ。
「#なんのはなしですか」の魅力は、この記事を読めば存分に伝わってくる。なので、私は、私から見た「#なんのはなしですか」の魅力を。コニシ木の子という人物の魅力を書きたい。
三年間、ずーっと発信し続けるということ。リアクションも何もないのに、言葉の可能性を信じるということ。私には、そんなの無理だと思った。思ったけれど、もしかしたら、彼は、誰も見ていない暗闇に向かって書いていたのではないのかもしれない。世界中の誰も読まなくても、たった一人、どこかの誰か一人が読んでくれればいいと願い続けながら、叫び続けていたのかもしれない。その誰か一人の存在が、書く人にとってどれほどの救いになるかを、彼は知っていたのではないだろうか。だからこそ、彼は孤独な夜を泳ぎ切ることができたのではないだろうか。私には、そんな夜を泳ぎ切ってきた人の文章に見えたのだ。
自分よりも面白い人がいると思ったとき、彼はどんな気持ちだったのだろう。嫉妬は、人を簡単に閉じさせる力がある。でも、彼は違う。その感情を、負の感情を、開く力に変えたのだ。
だからこそ、「#なんのはなしですか」は、一人の面白さではなく、たくさんの人の面白さが集まる場所になったのだと思う。人が人を呼び、言葉が言葉を呼ぶ。その中心にいるコニシ木の子という人の在り方に、私も含めて多くの人が惹かれているのではないだろうか。
私は、いつも正解を探してしまう癖がある。Instagramをしていたときも。はてなブログで書いていたときも。今もそう。自分がどう感じたのかを書きたいのに、素直な気持ちを書きたかったのに、他人からの視線が気になって仕方がなかった。
気づけば、必要以上に自分を低く見せることが癖になっていた。謙虚でいようとしていたつもりが、自分で自分の言葉の価値を下げていたのだと思う。その結果、軽く扱われたり、舐められたりすることもあった。自分で自分を低く見せてしまうこと。この人になら何を言っても許されると思わせてしまうこと。
結局、自分で立ち上げたWordPressは、半年も経たずに閉じてしまった。お金も時間も掛けたのに。お仕事としていただいていた書評ブログは、私なんて……と謙遜しているうちに、いつの間にか、私よりも積極的に手を上げられる子に取られてしまった。仕方ないよね、と言い聞かせた。本当は書きたかったのに。悔しい。悔しかった。いつまでいい子で居ようとしてるんだよ。八方美人、そろそろ辞めようよ。心の中の自分の声を消すように、私は、Instagramを消した。
さて。自分語りになってしまったけれど、コニシ木の子の文章には、それがないのだ。自分を大きく見せようともしないし、小さく見せようともしていない。出来ないから、助けて欲しいと、すぐに周りに頼ったり、手を差し出したりするその圧倒的な勇気。
私は、プライドや、断られてしまうかもしれない恐怖から、つい、一人で完璧にやろうとして、勝手に自滅してしまう。けれど、彼は違う。自分一人で背負い込めないものは、素直に誰かに委ねてしまえる強さがある。他人を信じられる強さがある。
もしかしたら、彼はこれまでに、誰かに裏切られたことがあるのかもしれない。信じた言葉を踏みにじられ、たくさん傷ついた過去があるのかもしれない。
あるいは、そうではないのかもしれない。
人の表面なんて、なにも、わからない。その背景に何があったかなんて、わからないのだ。文章だけで、その人の人生がわかるわけがないのだ。文章は簡単に捏造できてしまう。人の記憶なんて、都合の良いように変わる。
でも、私には、時々、コニシ木の子の文章が、心を閉ざして守ることの虚しさを知っている人の文章に見えてしまうことがある。傷みの味を知っているからこそ、あんなにも他人に優しくなれるし、再び開くという選択ができるのかもしれないなあ……と思うことがある。
その、己の弱さを開示する勇気が、どれほど周囲の人の心を救っているか、彼は知っているのだろうか。いや、きっと、ただただ真面目に面白い方向に走っているだけなのかもしれないな。
ただ、言葉を信じて、言葉の面白さを信じている──その姿勢があるからこそ、人の言葉も信じられるのだと思った。自分を信じられない人は、誰かの嬉しかったことを心から喜ぶことは難しい。でも、自分の言葉を信じている人は、誰かの面白さも信じることができる。
私は、その違いを、この作品から、この言葉から、教えてもらった。だからこそ、私はもう、自分を必要以上に小さく見せて、大切な言葉を踏みにじるのを辞めたい。傷つくのが怖くて心を閉ざすのではなく、傷ついたからこそ、自分の言葉を、そして他人の言葉を信じてみたい。
正解なんてどこにもないんだからさ。オチがなくても、まとまっていなくてもいいんだよ。「#なんのはなしですか」と、笑い合えるその場所に、もっともっと笑顔が増えることを願って。みんなが、それぞれの花を咲かせられるように。そして、この魔法の言葉を生み出した、コニシ木の子が報われることを、心の底から願って。
初めて憧れを抱いた大人が、コニシ木の子という人物で良かった。そう思ってしまう自分が、なんだか悔しくて、それでもやっぱり嬉しかった。
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