『ペンディングトレイン─8時23分、明日 君と』 最終話「未来を乗せた電車」 感想
概要
放送局:TBS
放送日時:2023年6月23日(金曜日) 22時00分~22時54分
脚本:金子 ありさ
音楽:大間々 昂
プロデューサー:宮﨑 真佐子、丸山いづみ
演出:田中 健太
製作:TBSスパークル、TBS
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感想
あんまりな現実に優斗ですら打ちひしがれた前回ラスト。これまでの彼らなら口にしなかったような投げやりな言葉を呟く様からもその絶望感は伝わってきますが、それでも小惑星激突の時は刻一刻と迫っています。
そこまで闇堕ちしている直哉だからこそ、偶然再会した米澤や玲奈が今までと変わらず「ひねくれ君」として接してくれたことや逆境なりに前を向いて行動していること、彼らの行動に好意的な反応があったことは彼にとって"救い"になったと同時に、この作品が伝えたかったであろう「結束」「信頼」「声を上げれば何処か誰かに届く」というメッセージの表れにもなっていると感じます。ただ、直哉の反応を見るに彼の中では「自分よりも優斗にこそこの"救い"が必要」という複雑な心境も垣間見えるのが(先述したメッセージの表れでもあること含め)辛いところではありますが…。
だからこそなのか、再び優斗と会った直哉が口にした「彼の弱音を聞いた時安心した」「『溺れた奴にしかわからない気持ち』がわかり合えるかもと思った」という本音、個人的には(現在精神的に参っていることも相まってなのか)かなり染み渡りました。特に彼のような幾重にも絶望を味わった人間からしたらただ希望を説かれたところで「美しすぎて目も当てられない綺麗事」「世間知らずの薄っぺらい偽善」にしか聞こえないもの。だからこそ、どういうものであれ清濁併せ呑んだうえで自分の心や思考から出した言動には大なり小なり打てば響くのが人間の性であり美点なのだと思えます。
そして、小春の出産を機に5号車乗客が集合した後彼らが口にした感謝の言葉が本作のハイライトだと感じました。皆を明るい言葉と誠実な態度で導いた優斗にはもちろん、ぶっきらぼうながらも皆を激励し主体性に基づいたチームワーク意識を芽生えさせた直哉にも感謝の意を示したのは彼らの言動に感化され「ただ居合わせただけの乗客」から「協力して困難を打破するチーム」へと進化したことの集大成と言えるでしょう。直哉みたいな「厳しさ・冷徹さの裏にある優しさ」ってわからない人にはわからないですからね。
日本に残る(=隕石衝突の日に亡くなる)と決意した優斗を助ける(=共にスイスへと避難する)ため直哉が説得するシーンは優斗によって心を救われ他者との繋がりや人の温もりを感じられるようになった彼だからこその言葉や心の動き、「共に生きる」ことへの熱い希望が伝わってくるものでした。ただ、最終的な結末が後述する「どちらの暗喩とも取れそうな描写」で示されているのは良く言えば「受け手の想像・解釈に委ねる」部分もあるのでしょうが、どうにもどっち付かずで物足りなく感じてしまいました。せめてどちらかに傾けられる判断材料があれば良かったのかもしれませんが…。
人間性や結束という点では希望を感じられましたが、正直なところ「消化不良」気味な最終回というのは否めないとは思います。
ところで、ラストの蓮見教授や田中さんのシーンは小惑星衝突を回避できたのかできなかったのか、どちらなんでしょうか?僕は回避できなかった「バッドエンドの暗喩」かなと考えています。蓮見教授はどちらとも取れるんですが(肩の荷が下りた安堵と疲労 or 避けられない絶望)、田中さんのいる2060年にタイムカプセル(2023年に米澤が埋めたもの)が比較的まともな状態で届いたのはカプセルが(衝突によって生じた莫大なエネルギーをもとに)タイムスリップしたからなんじゃないかって推測です。真実は彼らのみ知るところですが。
