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うつ病の治療で2番目に大切なこと|睡眠時間を計測する

うつ病の治療を進めていく上で、二番目に大切なことがある。 それは、ヘルスデバイスを使って、毎日の睡眠時間をしっかり計測することだ。

「うつ病の状態が良くなれば、睡眠障害(不眠症)の状態も良くなっていく」

2年10ヶ月にわたる治療の中で、そして治療が終わった今でも、ぼくはこの事実を身をもって体験し続けている。だからこそ、睡眠データをコツコツと測り、それを基準に治療を進めていくやり方は驚くほど有効だ。

では、なぜそこまでして「デバイスを使った計測」を続けるべきなのか。理由は大きく三つある。

理由①:ぼくらは、自分たちが思っているほど寝られていない

「ベッドに入った時間と、朝起きた時間。その引き算がぼくの睡眠時間だ」と思ったら大間違いだ。実際には、寝付くまでの時間や、夜中にふと目が覚めてしまう「中途覚醒」の時間がある。これらを差し引いた「本当の睡眠時間」は、驚くほど短い。

さらに恐ろしいのは、この中途覚醒の多くは「本人に自覚がない」ということだ。ぼくもヘルスデバイスで可視化するまでは、自分が夜中に何回目覚めているのか正確には分かっていなかった。実際にデータを見たときは、体感以上の数字に驚かされた。

まずは計測して、自分の睡眠の「本当の姿」を知ること。もし短ければ、どうやって睡眠時間を確保するか対策を練る。

ただ、この対策に関して言えば、まずは「必要な睡眠時間を確保できる睡眠薬を、主治医と共に見つけ出すこと」にフォーカスするのがいい。あくまでもメインの治療はうつ病の方なのだから、生活習慣の改善だけで解決するのは不可能だと思う。

ちなみにぼくの場合、「ニトラゼパム10mg + ハルシオン0.5mg」という睡眠薬にめぐり合ったとき、ようやく「それなりに寝られているかも」という主観的な満足感を得られた。それまで5時間ほどしか眠れなかった状態から、データ上も「平均睡眠時間6時間1分」という「少しはマシ」な状態を作り出すことができた。

この「主観的な感覚」と「客観的な現状把握」、そしてそれらをベースに継続して行う微調整のプロセスこそが、ぼくのうつ病治療を確実に一歩前へ進めるための強固な土台になった。

理由②:どんなにがんばっても睡眠は乱れる

ただし、この睡眠時間の数値化には、あらかじめ知っておくべき「厄介な罠」がある。まず、どれだけ生活をルーティン化して「よく眠れる状態」を作っても、睡眠データはそれなりに乱れるものなのだ。

そして何より、抗うつ薬を減らしたり、飲むのをやめたりするとき、一時的ではあるけれど顕著に睡眠の状態が悪化する。薬が減ったり抜けることによる「離脱症状」の影響だ。

これは一時的なものだから、うつ病が再発したわけではない。事前に医師から説明されていたので、頭では「離脱症状が起きるのは仕方がない」と理解していた。それでも、実際に睡眠が乱れ、体のだるさが現れたときは本当に不快だったし、「悪化したんじゃないか」と強い不安に襲われた。そしてその乱れは、ヘルスデバイスのデータにもはっきりと現れた。

ただ、その状態の悪化は「最初の1,2週間」ほどでピタリと治まった。それを超えると、再びそれなりの満足感をもって眠れるようになった。その回復も、ヘルスデバイスのデータにはっきりと現れた。

この一時的な悪化とそこからの回復のプロセスが、ヘルスデバイスにデータとして記録されていたことは、ぼくを救ってくれた。一時的には睡眠が乱れて不快だったけれど、そこを過ぎれデータ上でも体感的にも「確実に前進している」と実感できたからだ。だからこそ、「体調が乱れる不快な期間も、回復へのプロセスの一部なのだ」と受け入れることができた。

このパターンが分かってからは、あらかじめ何が起こるのか想定できるようになった。次に減薬するときは、「最初の1,2週間は、睡眠が1〜2時間乱れても、中途覚醒しても当たり前」と心の準備ができ、冷静に対処できた。この体験は、ぼくの治療を飛躍的に良い方向へ進めてくれたと思う。

その後、完全に薬をなくす「断薬」のステージでは、離脱症状から抜け出すのに数ヶ月を要した。これはぼくの想定を大きく超える過酷なもので、途中で何度もギブアップしそうになった。けれど、「今までのサイクルからして、きっとこうだろう」と睡眠データを追いかけながら長い目で対応したことで、なんとか乗り越えることができた。

理由③:医師とのコミュニケーションが圧倒的に楽になる

主治医との診察で「最近の調子はどうですか?」と聞かれるとき、最初のうちは答えるのが簡単だった。「ずっと気分が落ち込んでいます」「不安が消えないです」「頭が重くて冴えないし、何も考えられないです」など、とにかくメンタルが底辺にいるので、辛さを吐き出すだけで自分の現状がなんとなく伝わっている気がしたからだ。

けれど治療が進むにつれて、だんだんどう答えたらいいのか分からなくなるフェーズがやってくる。

「調子がいい日が多かった気がするけど、先月と比べたらどうだったっけ?」 「調子が微妙な日が続いたけど、先月の方がもっとやばかった気もする……」

じゃあ半年前と比べたらどうか。一年前と比べたらどうか。そうなってくると、もう自分の感覚なんてよく分からなくなってくる。治療が進むと「それなりの状態をキープする期間」が長く続くので、自分が良くなっているのか悪くなっているのか、あるいは何も回復していないのか、輪郭がどんどんぼやけていくのだ。

そんな時に、計測している「睡眠時間のデータ」を医師とのコミュニケーションに加えると、少しだけ進むべき方向が定まるような感触が得られる。

自分の今の状態を、客観的な数字として医師と共有し続けることによって、「そろそろ減薬・断薬のステージに進むか、それともステイするか」といった具体的な相談がとてもしやすくなる。

気分の落ち込みややる気などの「主観的なデータ(感覚)」と、計測した睡眠という「客観的なデータ(数字)」。この合わせ技は、医師とのコミュニケーションをクリアにしてくれる。仮にどちらか片方の調子が悪くても、より納得感を持って治療を進めやすくなるので、おすすめしたい。

うつ病を治すには、寝るしかない

うつ病の原因は、脳の疲労や炎症によるものだと言われている。実際に体験した身からすると、これは本当に正しいのではないかと感じている。

だからこそ、どれだけ適切に脳を休ませられるかが治療において最も重要なファクターになる。そして、脳を休ませる唯一の方法は「寝ること」しかないのだ。

この唯一の方法を、きちんと必要なだけ行えているのかどうか。それを感覚ではなく、客観的なデータを元に判断していくこと。これこそが、うつ病から回復するための最大のコツだ。

完璧な睡眠など存在しない

うつ病と不眠症の治療が完全に終わった今でも、毎日必ず8時間ぐっすり眠れるわけではない。ぼくらの睡眠は多くの要因に影響を受けており、驚くほど毎日ムラがある。どんなに完璧な睡眠をとるために環境を整えて、寝れるように習慣化しても、理想通りにいかない日は結構あるのだ。

「睡眠にはムラがあって当然。そういうものなんだ」

それに気づき、完璧を求めるのをやめて受け入れられたとき、ぼくはもう一歩、深い回復の段階へ進めた気がした。

ぼくが「オーラリング」を使い続ける理由

実は、ぼくはとにかくアクセサリーの類を身につけたくない人間だ。ネックレスはもちろん、腕時計すらつけたくない。

だから治療の初期、データのために我慢してつけていたXiaomiのスマートウォッチは、本当に嫌で仕方がなかった。手首に何かが巻き付いている感覚がどうしても許せなかったのだ。そんなときに出会ったのが、リング型のヘルスデバイス「オーラリング」だった。

本当は何もつけたくないので指輪ですら鬱陶しいのだが、「手首よりはマシ」という理由で愛用している。2024年1月から使い始め、もう2年6ヶ月ほど経つ。ただ、今でもシャワーのときに外すとホッとするくらい、本当はつけたくない。

それでも毎日欠かさず装着しているのは、「データを取らないことの恐怖」が勝るからだ。

オーラリングが吸い上げたぼくの睡眠データは、今まで蓄積された他のバイタルデータ、そしてアプリが採用するアルゴリズムによって分析され、毎日ぼくにその日のコンディションと「どういう1日を過ごしたらいいか」を提案してくれる。

ぼくはそれを見ながら、「今日はアクセル全開で行動していこう」「今日は低空飛行でやっていこう」と判断している。体調に極端な影響が出る前に、少しだけ先回りをしてその日の行動を決める。そうやって、なるべく日々のコンディションが凸凹しないように生活している。

今にして思えば、一つだけ後悔していることがある。 「うつ病や不眠症になる前」から、睡眠のデータを取っておけばよかった、ということだ。

すべての治療が完了し、何の薬も飲んでいない現在のぼくの状態は、病気になる前の自分と「全く同じ」なのだろうか。それとも「何か違う」のだろうか。もし元気だった頃のベースライン(基準データ)があれば、今の自分の状態をより的確に、深く把握できただろうと思う。

だからこそ、いま健康な人であっても、そして今まさに治療中である人にとっても、睡眠を客観的なデータとして記録し続けることには、計り知れない価値があるのだ。

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