「飯沼干拓」の授業② 題材の魅力を伝える単元計画を考えてみましょう!
「飯沼干拓」の授業①でお伝えした通り、この単元の内容には、様々な魅力があります。
そうした魅力を活かす単元計画を考えてみましょう。
社会科は、学習の進め方の自由度がかなり高い教科です。
いろいろな指導方法があります。
*飯沼干拓は途中から出てきます。
*お急ぎの方は大きくスクロールしてください。
(指導法の内容は①~⑥まであります。)
①1時間ごとに見開き2ページ分の内容を学習する方法
この方法は、写真や図、年表や人物の話などの資料から社会的な事象の特徴を取り出しながら授業を進めるタイプの学習で、教師の導きにより、学級児童全員が、資料活用能力や思考力・判断力を伸ばすことができるという利点があります。
先生主導の一斉学習ですが、こうした指導を行う先生は力量が高いことが多く、活動に適した学習形態を柔軟に取り入れ、一斉学習、グループ学習などを組み合わせて、学習に集中させながらさまざまな力を伸ばそうとします。
資料の活用の仕方が分かる、その時間のねらいに迫る展開が思い浮かぶなど、社会科の指導にある程度慣れた先生が行う方法、児童を伸ばすには大人の働きかけが必要であり、トレーニングが必要であることが分かっている先生が利用する方法だと思われます。
そうした先生は、1単位時間の学習のねらいと養う力を明確に捉えることができ、一単位時間の授業の中で、「導入」から「学習課題の設定」につなげ、必要な資料を使って、学習課題を効率的・効果的に解決していく活動を組み込み、学習課題を回収する「まとめ」や「振り返り」の活動を設定していることが多いです。
教科書掲載のそれぞれの資料から必要な情報を取り出し、それらから分かることを話し合うことで、資料だけで充実した授業をすることができるはずです。
資料からは、まず「読み取れること」「分かること」を確認し、次に読み取ったことから学習に必要な事象を「考察する」という資料の扱い方がわかっている先生です。
例えば、水産業の折れ線グラフの資料では、まず「養殖業が○年から増えている」という数値の変化を読み取らせ、その理由(○年から増えた理由)を他の資料と関連づけて考えさせることができるはずです。「○年には200海里問題があったから、魚を育てようと考えて『養殖』が増えたと思う」などのようにです。
このような先生にとって、教科書の本文は、「まとめ」の部分で学習内容の確認のために利用するくらいになるでしょう。
一単位時間の「授業の密度」が濃く、充実した授業を行うことができる先生だと思われます。
言うまでもないことですが、充実したグループ活動や調べ学習が成立するには、一斉授業がきちんとできることが前提となります。一斉学習で培った資料活用の技能、情報活用能力を用いることで、様々な学習活動が充実します。何も教えずに調べ学習に投げてしまうようでは、大半の児童が学びの少ない時間を無駄に過ごすことになります。覚えるのは「コピー&ペースト」「孤立した知識、単なる知識」でしょう。「深い学び」とはほど遠い「学び」になります。
②学習活動のほとんどを「調べ学習」と「発表活動」で構成する方法
この方法は、調べて単元に描かれた内容を理解することをねらいとするタイプの学習方法で、ネット上の資料などを検索して探し、調べた内容をまとめ、分かったことを発表し合うため、教師は見守ることがほとんどとなり、児童主体で学習を進めるという利点があります。
この方法は、検索能力、資料の読み取り能力、まとめる力、発表する力など、児童の能力差が大きく出るタイプの学習でもあります。
社会が苦手な子は、能力の高い子についていくだけになりがちです。進んでいる子の資料の切り取り方、貼り付け方をまね、内容の理解はともかく、形を整えることに労力を注ぎます。
反面、能力の高い子は、調べた知識を関連付けて考えを広め、興味をもって学習に取り組むことができます。内容が理路整然とまとめられた素晴らしいスライドを作る児童も出てきます。
基礎学力や非認知能力の育成が、二分化、二極化しやすい学習方法です。
こうした点に配慮すると、学習活動を充実させることができます。
この学習方法は、社会的事象について考える場面、事象について話し合う場面などが少なく、内容の理解に重点が置かれる授業方法とも言えるでしょう。
図や表などの資料から、学習内容を取り出して考察し、社会的な事象を明確にするなど、基礎的な社会科指導が難しい先生、社会科の指導に慣れていない先生でも取り組むことができるという利点があります。
③はじめに単元の概要を掴み、疑問点を出し合って学習問題を作り、学習課題をグループで分担して解決していく方法
この方法は、単元全体を通した複線型の問題解決的な展開方法と言えます。
複線型行う「調べ学習」と「発表活動」で構成する方法とも言えます。
はじめに単元の概要を掴む活動があります。
そして、その活動には、児童が疑問を持つような「仕掛け」が設定されており、児童はいくつかの疑問を挙げ、それらを整理して学級で解決したい学習問題を作ります。
単元全体を見通して、要点となる学習活動を的確に捉える力があり、それを学習問題として設定させられる力があり、学習問題の解決方法を的確に指導できる力がある先生が行う展開方法です。
複線型なので、一単位時間の授業の中で、グループごとに異なる活動をします。そのため、異なる学習内容・活動内容に応じた的確な指導ができる力量が必要になります。
調べた内容を分かり易くまとめさせ、発表にまで仕上げるアドバイスができる力も必要です。グループ内の児童の能力差に応じた協力方法のアドバイスも必要です。
この方法は、グループごとに、調べてまとめて発表する方法で、発表によって得た知識を共有する学習方法なので、理解重視の学習とも言えます。
グループ内では、学習問題の「答えとしてふさわしいかを考える活動」「まとめる方法を検討する活動」「発表を分担する活動」の相談が行われますので、グループ内での話し合いは活発になります。
用いる資料が異なるので、グループによって身に付けることができる資料活用能力は大きく異なります。
②の方法を複線型にした「応用系」と考えることもできる展開方法です。
④はじめに単元の概要を掴み、疑問点を出し合って学習問題を作り、それを学級全体で一つずつ解決していく方法
この方法は、単元全体を通した問題解決的な展開方法と言えるでしょう。
設定した学習問題に対して、学級全体で学習活動を進めながら、一つずつ問題を解決していく方法です。
はじめに単元の概要を掴む活動があり、そこには、児童が疑問を持つような「仕掛け」が設定されており、児童はいくつかの疑問を挙げ、そこから解決したい学習問題を作ります。
単元全体の学習内容を捉える力があり、学習問題を設定させられる力があり、学習問題の解決方法を見通す力がある先生が行う展開方法です。
一単位時間の学習では、学級全員が同じ問題を解決する活動を行うため、授業の様子は、①のタイプの授業と似ています。
先生から提示された学習課題を解決するのではなく、児童が作った学習問題を解決する点、児童が学習する内容の概要を掴んだ上で、疑問点を深める点が異なっています。
この方法では、資料活用能力や思考力・判断力などを全員に指導することができますし、話し合って考えを深める活動も行うことができます。授業では教師の導きが強くなりますので、子どもの力だけでは考えることが難しいような、深い内容を話し合うことも可能になります。
話合いのある授業、深みのある授業をしたい場合に有効な指導方法と言えるでしょう。
⑤教師が穴埋め問題を作成し、児童が調べて言葉を埋める方法
この指導法は、研究授業などではほとんど見られないものです。
大事な内容を抜けのないように覚えさせたい、押さえさせたいという教師の意向が強く反映された授業方法で、重要語句などの知識の定着に重点を置いた指導と言えます。社会科を「覚える教科」「知識教科」「暗記教科」と捉えている先生が行う授業方法だと思われます。受験では必須の学び方です。
「考える前提となる知識」を確実に押さえたい場面の活動で、単元内の一つの活動として限定的に利用することには適している活動だと思われます。
ただし、深く検討した上で、穴埋めする言葉を考えた問題である場合は、話が違ってきます。活動内容全体を見通し、児童の思考過程を見通して、しっかり話し合わないと入れることができない言葉を問題として設定した問題もあるからです。
この場合、言葉を入れるまでの学習活動は、議論的であったり、討論的であったりして、喧々諤々の話合い活動が行われ、学級児童の考えは深まると思います。そうした場合には、資料をよくよく読みこまないと、答えは出せないような工夫がされていることでしょう。
かなり力量のある先生が行う指導方法だと思われます。
⑥単元の学習内容を踏まえて、これらをミックスさせる方法
単元の学習内容を見通して、単元の前半では①の方法で学習を行い、単元の後半では、発展学習として③の方法で学習を行う単元構成も考えられます。
単元の学習内容を深めるために、単元の後半で発展的な学習を設定し、そこで得た知識を共有することで、学びを深める方法です。
この方法が実践できる先生も、社会科の力量がある先生です。
単元全体の学習内容を捉え、単元全体の学びを的確に把握し、児童の意識の流れや考えの深まり、補充すると良い知識などを深く考慮して単元の活動を設定できる先生です。
社会科の指導を自由自在に行える先生でしょう。
では、「飯沼干拓」は、どの方法が適しているでしょうか?
これは、「飯沼干拓に関する資料の充実度」「社会科の教科観」「飯沼干拓の教材で何を学んでほしいのか(指導観)」「指導する自身の力量」など、様々な要因を考慮して考える必要があります。
まず、飯沼干拓に関する資料の充実度を考えてみましょう。
まず、基本となる資料は「わたしたちの茨城県」に掲載されている資料になります。
飯沼の現在の風景、古い地図、血判状、神社、宮司さんの話、作業の想像図、道具の名前、年表など、いろいろな資料が載っています。
ネットを検索して、トップに来るのはウィキペディアです。
ウィキペディアには、「飯沼」に干拓の概要が短くまとめられています。
4年生の中で学力が高い児童には理解できる内容ではありますが、未学習の漢字、難しい言葉もあり、調べるのを諦めてしまう児童も多いでしょう。
次に、WiX.comの記事があります。
この記事は、小学生向けの簡単な言葉を用いて、飯沼干拓の概要を示している貴重な資料です。ウェブ上で見つかる資料の中で、最も小学4年生が調べやすい資料と考えられます。
多くの学校では、このサイトに接続して、飯沼干拓の概要を理解する児童が多いのではないでしょうか。関連サイトも紹介されており、利用し易い画像や写真を簡単に手に入れることができます。
茨城県の小学4年生と担当する教師にとって、大変にありがたい資料です。
坂東市のホームページにある企画展の資料も利用できます。
この資料は、飯沼干拓の概要が、写真や古地図、挿絵などで分かり易く示されています。スライドにまとめて発表する活動をする際には、利用価値が高いと思います。
詳しい内容は 常総市のデジタルミュージアムにあります。
この資料は、これまでに挙げたサイトの基礎となる資料です。飯沼干拓について詳しく調べることができます(飯沼については、207ページから210ページまで)。
ただし、小学4年生が扱う資料としては難し過ぎると思います。
どうしても使いたい場合には、「noteboklm」を使って「小学4年生に分かるように内容をまとめてください。漢字にはフリガナをお願いします。」とプロンプトを入れると、分かり易い要約を得ることができます。生成された内容には村々の争いなどが数多く含まれていますので、さらに内容を削った上で、児童に提示した方が良いと思います。
詳しく調べたい先生が利用する文献と考えた方が良いでしょう。
その他にも、利用できる資料は見つかりますが、本稿で紹介した資料が、主なものと考えてよいと思います。
こうした資料と「わたしたちの茨城県」の資料や文章を利用すれば、調べてまとめる方式(本稿で示した②や③の単元の流し方)で授業を行うことはできると思われます。
ただし、調べてまとめて発表する方式では、写真や地図等の画像資料や、農民が「苦労した」「団結した」「苦しい生活だった」「くらしが楽になった」という文章の「文字」を通して飯沼干拓を理解するため、知識が表面的なものになる点が惜しいと思います。
長大な水路を掘った様子、その具体的な方法、設計の工夫、人々の感動などを想像することはなかなか難しいと思います。
調べてまとめて発表する活動に加えて、工事の様子を具体的に捉え、人々の働く様子や苦労、その時の気持ちを考える活動を加えたり、三本の水路の働きを考える活動を加えたりすると、学習に深まりが出ると思います。
次に、社会科で情報活用能力や思考能力を高めたい場合、人の気持ちや考えなど人間の営みに焦点を当てた授業を行いたい場合を考えます。
前稿(「飯沼干拓」の授業①)では、この点について簡単に述べました。
社会科における「人の営み」とは、自分が置かれた状況を捉え、それを活かし、苦しい点を克服して、よりよい暮らしに変化させる取り組みのことです。これは、歴史的な内容、地理的な内容、公民的な内容の全てに共通しています。
それを考えるために、地理的条件を捉え、歴史的な状況を捉え、現実社会の問題点を捉え、先人や現代人がそれをどのように改善したのか、どのように改善したらよいのかを考えるのが社会科の授業です。
そこには、単なる知識の習得をはるかに超えた「深い学び」が生まれます。
これが、社会科の ”核心部分” とも言えるでしょう。
このような内容を考え、話し合う授業を行うと、「重要な言葉」が話し合いの材料として「何度も使われる」ことになり、必要な知識が身に付くとともに、その知識は他の知識と強く関連付けられた「生きて働く知識」となります。これも、社会科で知識を定着させる方法の ”核心部分” です。
飯沼干拓で、人の営みに焦点化できるのは、主に次の点にあるのではないでしょうか?
1 飯沼干拓の規模を捉える
江戸時代の人々は、幅が数km南北が20kmを越える「飯沼」を水田に変えたのです。大型の機械がない時代のことです。人間の営みのすごさ、すばらしさを感じるのに十分な教材ではないでしょうか。
ポイントとなるのは、20kmという数字を、身近なことに当てはめて具体的に考えることです。
勤務先の学校から20kmはどの辺りになるでしょうか?
それを先生が教える方法もありますが、飯沼の形を切り抜いた図形を子どもたちが住む地域の地図と重ねるなどの作業をすると、子どもたちは、その広大さを心から実感することができます。おそらく、自校の学区や進学する中学校区よりも、ずっと広いのではないでしょうか。「飯沼干拓」では、それを人力で成し遂げたのです。
こうした活動が、社会科的な活動になります。
方位や距離、縮尺の概念が身に付いていきます。
ぜひ、組み込んでみてください。
2 工事の大変さを捉える
工事は人の手で行われました。機械の無い時代のことです。のべ何万人もが工事に参加しました。
数字だけでもすごいことですが、児童には数字としてしか理解できません。
工事の様子を具体的に想像することが必要です。そうすることで、やっと、人々の大変さが分かり、苦労が分かり、やり遂げようとする気持ちが分かるものです。
教科書には、菅生沼への水路を工事している様子が「想像図」として描かれています。さまざまな道具を使い、人々が協力して活動していることが分かるすばらしい想像図です。大人なら、見ただけでその苦労が想像できます。
しかし、児童はそうではありません。
児童は、想像図を概観するのみで、人々の仕事の辛さ、作業の大変さにまでを想像することが難しいのです。
そうした体験が少ない時代に育ったからです。「もっこ」で山盛りの土を運ぶ様子など見たこともないでしょう。30kgのコメ袋を持つ姿さえ、見たことがないと思われます。体験がないのに、苦労を想像することは簡単ではないのです。
それを克服するには、人々の作業の様子を深く捉えさせる必要があります。
指導に工夫が必要になります。
例えば、「作業の想像図」と「道具の名前」の資料を関連付けて資料を読み込む方法があります。
具体的には、「想像図では、どんな道具を使って、どんな作業をしている人がいますか。それは、何人ずつ描かれていますか?」と問いかけます。
児童は夢中になって、「もっこ」を使っている人の数を数え、「じょれん」を使っている人の数を数えるでしょう。そして、「『もっこ』を使って土を運んでいる」「『じょれん』で土を集めたり土を掘ったりしている」「縄で長さを測っている」「杭を打って崩れないようにしている」など、作業の様子を具体的に捉えることができます。
そうすることによって、山盛りの土が入った「もっこ」を肩に担いでいる辛さなどが想像し易くなります。
こうした活動を行うと、児童の心には「手作業で工事をしたんだ!」という強い印象が刻まれることになります。
そして、「どうして、このような苦労をしてまで工事をしたのだろう?」「何のためにこんな苦労をしようと思ったのだろう?」という強い疑問がわきあがるようになります。人々の気持ちや願い、工事の目的や意図、人々の希望などを、真剣に考えることができるようになるのです。
3 設計などの工夫を捉える
水路を設計するには、様々な工夫が必要です。水は高い方から低い方に流れますから、水路には勾配が必要です。精密な測量が必要なのです。
それから、干拓地を作っても、水害や干害が起こりやすいのなら、米作りはうまくいきません。こうした問題を克服する工夫も必要です。
水路の勾配について
例えば、水路の勾配のつけ方では水戸の「笠原水道」の例があります。「笠原水道」とは、水戸の「下市(水戸城の東側、南側の市街地)」の地下水の水質が悪いために、千波湖の南側台地から湧水を引いた江戸時代の水道事業です。この際には、夜に提灯に明かりをつけ、その明かりを千波湖の水面に映して勾配を確認するような工夫が行われたということです。
飯沼干拓で、勾配を確認した具体的な方法は、資料からは発見できませんでしたが、笠原水道の方法に類するような何らかの工夫を用いたことは確かでしょう。
文献資料には、干拓工事が始まる前に、水田と沼の境目に「杭」を打った(主目的は新田面積の測量のため)と書かれていますので、これによって水面(水平)はとれたのかもしれません。そして、飯沼は南北に長い沼ですので、一つの沼と言っても上流部と下流部では水面に高低差があったはずです。これも利用したことでしょう。
これらを利用した上で、上流部では、旧水面から何m上に東・西仁連川を通す。中流部では何m上に通す、下流部では何m上に通すと計画したのかもしれません。これなら比較的簡単です。
川の勾配については、四年生児童に教えるのには難し過ぎる内容だと思います。知っているからと言って、児童に話し過ぎないようにしましょう。
干拓地の水害対策、干害対策について
干拓地の水害対策、干害対策については、前稿(「飯沼干拓」の授業①)でも紹介しました。飯沼干拓地では、水害と干害に備えた水路が設計され、運用されていたのです。そのために、20km以上の長さの水路を3本も作ったのです。
これも、児童に考えさせたい内容です。
例えば、「飯沼干拓地の断面図」と「わたしたちの茨城県」掲載の「干拓後の様子」の地図を用いて考えさせる方法があります。
まず、「干拓後の様子」から、干拓地には3本の水路が作られていることを読み取ります。「西仁連川」「飯沼川」「東仁連川」です。
これら3本の川の名前を確認し、その流れを指や青鉛筆などでなぞるようにすると、3本の川が作られたことが児童によく理解できます。
児童は、水路は短いものでも21kmあることを知っていますので、「何で3本も作ったのかな?」と考える児童が必ずいます。「1本でいいんじゃないの?」とも思うことでしょう。「21kmだって大変なのに・・」です。
最短で21kmですから、単純計算で3本なら63km以上となります。
疑問に思うのも当然です。
勤務校から63km離れると、どの辺りになるでしょう。先生がディスプレイ上で地図で示しても良いですが、実際の地図上で確認しても良いかと思います。63km先に誰もが知っているような地名が出ると、その距離が具体的にイメージできると思います。63kmが、水路を手作業で作るなど考えることも難しいような、途方もない長さであることが明らかになります。
理由がなければ、3本も水路を掘る必要はありません。
「なぜ、3本も川をほったのだろう?」という強い疑問を共有することができるでしょう。
この疑問を解くには、次の断面図が有効です。

飯沼干拓地は、中央部が低い形状になっています。
そして、元の水面の外縁部に「西仁連川」と「東仁連川」を作り、中央に「飯沼川」を作ったのですから、断面図のような場所を3本の川が流れていることになります。これは、教師が説明してよい内容です。
そして、この断面図を基にして3本も川を掘った理由を考えさせるのです。
はじめは、児童には理由が考えつかないでしょう。
気付くポイントは、「東・西仁連川」の干拓地側に、「堤防らしきものがある」ことと、「台地から流れ込む水」があることです。矢印としてヒントが示されています。
児童は、矢印に気付き、その意味を考えているうちに、干拓地の周りの台地から流れ込む水は、「東・西仁連川」で受け止められて、干拓地に入らないようになっていることに気付くことでしょう。「分かった!ここで、水が止まるんだよ!」などの声が聞こえるようになります。
干拓地に水が流れ込まないように、「東・西仁連川」は作られているのです。
「飯沼川」については、最低部にあるので干拓地の水を流してしまう水路だと気づくことが多いです。
気付かないようであれば、教師が、「周りからの水は、東・西仁連川で止まるけれど、干拓地の中にも大雨は降るよね」などとつぶやいてみせます。
児童は、雨を流してしまう水路が必要なことに気付くことでしょう。
干拓地の排水のために、「飯沼川」は作られているのです。
これだけでも、児童は「3本の川を作った理由が分かった!」と大喜びでしょう。
「東・西仁連川」には、まだ役割があります。
「上流から流れてくる水」を干拓地に流れ込ませない水路であることです。
干拓地の手前で、西仁連川と東仁連川の二つに分けて、流れてくる水を、干拓地に入らないように迂回させているのです。
(グーグルのストリートビューで仁連川の分岐部分を見ると、干拓地側の護岸がコンクリートで二段に固められていることが分かります。「干拓地に水は入れない!」という強い意志を感じることができます。)

これらの働きによって、干拓地が水害から守られているのです。
児童は、分かったことに大満足でしょう。
「東・西仁連川」には、まだ役割があります。干害対策の用水路としての役割です。干拓地の水田の「上」に東・西仁連川は流れていますから、干害時には、簡単に水を流し込むことができます。
児童に考えさせるヒントとしては、「水田は洪水の時に水であふれるのも心配ですが、雨が降らなくて水がないことも心配ですよね。」などと語り掛けると良いでしょう。勘のいい子はすぐに気付いて発言することでしょう。米作りに水か必要なことは、四年生ならだれでも知っています。
こうした考える活動を通して、児童は昔の人の知恵に驚くことでしょう。
そして、60kmを越える3本の水路を作った理由に納得することでしょう。印象に残る「深い学び」になると思われます。
4 人々の願いを捉える
「飯沼干拓」について調べる際に、児童が疑問をもつこととして、「なぜ、干拓しようとしたのか?」「どんな気持ちで干拓したのか?」ということがあります。
現代人なら「沼を水田にしたい」とは思わないでしょう。体力的に厳しく辛い手作業で工事をしたいとは思わないでしょう。この点についても、疑問を解消したいと考えることでしょう。
これについては、「年表」や「文章資料」からの「読み取り」が主要な学習活動になります。
この内容については、「わたしたちの茨城県」の資料が充実しています。
「年表」「干拓にくわしい人の話」「血判状」と「解説文」「沓掛香取神社の宮司さんの話」があります。
年表からは、工事の許可を願い出た経緯、工事を願い出てから許可をもらうまでの期間、工事着工から完成までの期間を読み取ることができます。
「干拓にくわしい人の話」からは、貧しい生活を抜け出したいという願い、許可を得る際の金銭的な苦労、それを乗り越えた様子を読み取ることができます。
「血判状」と「解説文」からは、命を懸けて誓いを立てるという強い意志を読み取ることができます。
「宮司さんの話」からは、人々の干拓工事にかける強い意志と、干拓工事完成への期待を読み取ることができます。
飯沼干拓の工事は、人々の手によって行われましたが、他の有名な干拓工事とは違って、幕府や藩が命令して行ったのではなく、人々が幕府に願い出て承認されて行われた工事なのです。
水平線が見えるような長大な沼の水を流して干拓地を作り、水害にも干害にも強い地平線まで続くような広大な水田を作ることができたのです。
5 完成による暮らしの変化を捉える
干拓の完成による暮らしの変化については、「わたしたちの茨城県」に幾つか資料があります。
「完成した新田の様子(想像図)」と「干拓地のあらまし」です。
「完成した新田の様子(想像図)」には、稲穂が実った新田を農民家族が眺める様子が描かれています。
「干拓地のあらまし」には、作られた新田の広さ、獲れた米の量、新しく栽培した作物などが書かれています。これらによって、生活が豊かになったことが分かります。
その他にも、「干拓前の様子」の地図と「干拓後の様子」の地図を比べると、村の数が増えたことが分かります。村を数える作業をさせましょう。
授業では、これらを確実に読み取り、変化を捉える必要があります。
数分間でできる内容ですが、大切な内容であり、抜けてはならない内容です。
その他にも、これまでに学習した内容を振り返って、人々の気持ちを想像する活動を行うことができます。
例えば、「菅生沼への水路が完成して水が流れた時の様子」「飯沼の水が日に日に低下していく様子を見る人々の様子」「沼の水が流れ去り広大な稲作に適した土地が現れた様子」「そこで稲を育て稲穂が実った様子」などです。
それぞれの場面を振り返りながら、様子をイメージさせることで、人々の努力が報われたこと、その達成感、新たな暮らしへの希望などが共有できると思われます。
そして、飯沼干拓の凄さや素晴らしさ、人々の団結の力と行動力の力を考えることができると思われます。
いかがでしょうか?
飯沼干拓の内容で、人の気持ちや考えなど”人間の営み”に焦点を当てた授業を行ってみませんか?
なお、本稿で公開した断面図は、授業で利用していただいて差し支えありません。
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